明日井君は誰かと一緒に帰りたい。   作:Raitoning storm

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レインコート

明日井ユウタはミレニアムハイスクール1年生である。特に特出した才能があるわけではないが、それなりの成績を維持し、それなりの研究結果を出しながら頑張って学校生活を送っていた。

 

そんな明日井にもある一つの悩みがあった。放課後、一緒に帰る友達がいないのである。

 

ここで断っておくが、明日井に友達がいないわけではない。明日井は、交流関係は広い方だ。困っている人から頼られやすい彼は、様々な部活からお呼び出しを受け、無理難題を(できる範囲で)解決してきた人間である。

 

だがそんな彼にも解決できていないのが、この『一緒に帰る人いない問題』である。

 

話が少しズレるが、誰かと一緒に帰るというのは、考えているよりも楽しいものである。くだらない話をして盛り上がったり、少しだけ寄り道をして帰ったり。そういう意味では、青春というものを最も象徴しているのはこの『一緒に帰る』という行為、もしくはその記憶なのかもしれない。

 

だが、彼はそれが達成できていない。なぜなら彼は友達と帰る方向が一緒にならないからだ。彼の家は少し街の外れの方にある。といっても本当に少しだ。家賃が安くて敷地が広い、一人で暮らすには少し大きい家だ。彼が人に家の方向を聞くたびに、彼は残念そうな、少し諦めを含んでいるような顔を浮かべるのであった。

 

そんな彼が、今日はある作戦を思いつき、こうして学校の入り口にて人を待っているのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9月某日、

 

ミレニアムハイスクールの入り口、防犯設備に恵まれたこの場所で、彼はある作戦を実行しようとしていた、が。

 

 

 

 

雨が降った。

 

(終わった…)

 

ユウタは膝をついて絶望した。ゲリラ豪雨だ。天気予報に詳しいユウタは知っている。ゲリラ豪雨の予測がどんなに難しいか。現在までの気象データ150年分を持ってしてもその予測が全く歯が立っていないことを、ユウタは実感を持って知っている。

 

(…今日も、気象台で寝るしかない…のかな。鍵、閉めちゃったけど…。)

 

(…でも、ゲリラ豪雨のデータが取れるなら…今はコンピュータがやってるけど…)

 

とりあえず誰かと一緒に帰るという選択肢がなくなったことを確信したユウタは、準備したあれこれを片付けようと校内に戻ろうとした…が。

 

 

「…あれ?明日井…君?」

 

その言葉に振り返ると、一人の女子生徒…ミレニアムにユウタ以外の男子生徒はいないのだが…がこちらを見ていた。

 

「何してるの?」

 

ゲーム開発部1年、才羽ミドリである。頼りがいのない…と言われている才羽モモイを姉にもち、ゲームのグラフィック担当である彼女は、ゲーム開発部の常識人として苦労を繰り返している…らしい。明日井は部活の内情にはあまり精通していない。

 

「いや…現実に打ちひしがれてた。あとこれから来る未来に絶望してた。」

 

「…大丈夫?ていうか話しかけてよかった?」

 

「うん。むしろ正気に戻してくれた。ありがとう」

 

「…う、うん。どういたしまして?でいいのかな…」

 

 

 

「明日井君はこれから帰るところ?」

 

「うん。」

 

「傘はある?すごい雨だけど…」

 

「一応…折りたたみと本傘は気象台に置いてある…あとカッパも何着かは」

 

「よかった…濡れる心配はなさそうだね」

 

「…ミドリは?」

 

「忘れちゃったんだよね。まさかこんなに降るとは思わなかったし…」

 

「…お姉さん…とか、他の部員さんたちは?」

 

「先帰っちゃった。もうちょっとデザイン考えてから帰るって言ったから…」

 

ユウタは時計を見る。目の前の『ゲリラ豪雨』という事実に打ちひしがれていた彼は気づかなかったが、かなり長い時間が経っていた。たしかに学生にしては少し遅い時間だ。

 

「この雨だと迎えに来てもらうのもあれだしな…どうしよう…」

 

「…傘、二つあるから一個使う?一個あれば家には帰れると思うけど…」

 

「申し訳ないし、大丈夫だよ?それに返すのに時間かかっちゃうし…気にしないで?」

 

「…わかった」

 

ユウタは考える。このまま気象台に戻れば丸く収まる自分と違って、才羽ミドリには帰るべき場所があって、そこで待っている人がいる。このまま何もなかったように戻るのは良心が痛む。

 

そして先程『これから家に帰る』と発言したと言った手前、気象台に戻るのも格好がつかない気もする。

 

「…ねぇ、ゲリラ豪雨ってさ。どれくらいで止むかわかる?」

 

「…長くても、1時間くらいだと思う。観測して一番長かったのは1時間26分だったけど…」

 

「…それくらいか。ねぇ、この後って予定とか…ない、よね?こんな雨だし…」

 

「…うん」

 

本来は誰かと一緒に帰るつもりだったのだ。あるはずもない。唯一あるとすれば枕を濡らすことくらいか。

 

 

 

「…ならさ、ちょっとゲームでもしてかない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここが、ゲーム開発部。」

 

「うん。あれ?来たことなかったっけ…?」

 

「何回かお手伝いしたことはあったけど…中に入ったのは初めてかな…会うときはだいたいモモイ…さんに廊下で捕まえられてるし…」

 

「ごめんなさい」

 

「気にしてないから大丈夫だよ。人の役に立てるなら苦じゃないし」

 

「…それなら、まあ…それより、何のゲームしよっか。やりたいゲームとかある?」

 

「ゲーム…あんまりやったことない。おすすめとかある?」

 

「そうだなぁ…まあ初めはRPGゲームだよね。定番だし。『テイルズ・サガ・クロニクル』は置いといて…これとかどう?」

 

「ミドリのおすすめなら」

 

 

この後、ミドリのアドバイスを聞きながらRPGゲームをした。家に帰らなかったが、楽しい時間を過ごした。

 

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