明日井君は誰かと一緒に帰りたい。 作:Raitoning storm
「ということで」
「…ということで?」
「明日井君にゲーム開発部に来てもらったよ」
「やったー!ミドリがよく話してたから、一回会ってみたかったんだよね!」
ゲーム開発部。いつの日かミドリと一緒に遊んだこの場所で、ユウタは才羽姉妹に挟まれていた。
「何のゲームして遊ぶ?パーティーゲーム?あ、でもそれなら四人の方がいっか。パズルゲームもあるし…あ、せっかくならTSCを…」
「それはだめ」
「なんで!?ここでしかできないゲームなのに!」
「ここでしかやらないの間違い…ていうか私たちもそんなにやってないでしょ!」
「レトロRPGの良さが詰まってるのに…!」
「ゲーム歴浅い人にこんなニッチなものやらせないでよ!」
「ガタガタ」
二人の言い争い、そして震えるロッカーの音を聞きながら、ユウタはどうしてこうなったのかを思い出した。
事の発端は2時間前。朝の準備を終えて、セミナーに今月の収支報告を提出しにきた。
「失礼します。」
3回ノックをして入室する。ミゾレはこういうところにうるさい。
「あら、よく来たわね。」
セミナーの会計、早瀬ユウカさん。机の上に積んである書類の数を見たところ、今日も仕事に忙殺されているらしい。
「…今月の、収支報告書です。これで、大丈夫ですか。」
「ありがとう。…うん、OKよ。毎月忘れずにありがとね。」
「…ミゾレが、ちゃんとやれって言ってくれるので。忘れずに済んでるだけです。」
「それでも出してくれてることに変わりはないもの。気象部は黒字を出してくれる数少ない部活だから、助かるわ。」
「電気代が馬鹿にならないので、使った分くらいは。」
「…それが充分すごいのだけれどね。」
呆れとも感心とも違う表情をしながら、ユウカさんは言った。
「…そういえば、リオ会長は。」
「…まだいらっしゃらないわ。ごめんなさい、私も何も知らなくて…」
「いえ。早瀬さんのせいじゃないです。…ありがとうございました。また来月、来ます。」
そういって部屋を後にしようとしたとき、
「来月じゃなくても!」
「…?」
「…別に、いつでも来ていいのよ。ここはセミナーで、ミレニアムの生徒会なんだから。ミレニアムの生徒が来ることはなんらおかしいことじゃない。」
「…」
「そ、それに!収支報告のことについて私から聞くことがあるかもしれないし!それでセミナーまで来てもらうことがあるかもしれないし!そ、それに…」
「…ありがとうございます。ユウカさん。」
「…っ。」
「…また、近いうちに来ます。」
「…うん。待ってるわ。いつでも。」
そうしてセミナーを後にした後、
「あっ、明日井君。」
ミドリに会った。
「来てたんだ。今日もウタハ先輩のところ?」
「いや、今日はセミナーに…」
「セミナーに?ってことは、ユウカ?」
「まあ、うん。ユウカ先輩に…」
「…へー…」
そう、目を細めながら返事を返すミドリ。そして思い出したように、
「そういえば、この前の約束覚えてる?」
「…また、遊ぼうねってやつ?」
「うん。今日はこの後時間ある?」
「提出しなきゃいけないのは出したし、時間はある、けど…」
「私も明日井君と遊びたいし、ダメ、かな?」
そう言って、少し上目遣いでユウタを見上げる。身長差のせいでこうなってしまうのだ。決して他の意があるわけではない。ええ、決して。
「…うん。僕も行きたい。」
「…ほんとに?やった。じゃあ行こっ。」
…こうして、今に至るということらしい。回想が終わった。
「はぁっ…今日は、このくらいにしておいてあげるよ…!ミドリ…」
「9割お姉ちゃんの自滅だったけどね?」
「ガタガタ」
こっちも終わったらしい。ミドリが勝ったので、"TSC"はなしになったらしい。
「ふぅ。…じゃあ、何のゲームしよっか。気になるものとかある?」
「…さっき言ってたパーティーゲームって、どういうの指すの?」
「あ、そういうのがいい?なら…」
そう言って積んでいるゲームパッケージを崩して、一つのゲームを取り出す。
「これとかは?『梅娘電車』。ルールも簡単だし、人数多いほど盛り上がるよ。」
「…楽しそう。やってみたい。」
「なら私もやる!ふっふっふ…ユウタくんには悪いけど、ゲーム開発部の実力ってやつを見せてあげるよ」
「初心者に本気出して恥ずかしくないの?」
そうして、3人でゲームをすることになったのだが…
「なんで!?またスラれた…。信頼できそうな社員だったのに…」
「お姉ちゃん…って、私も脱税バレた!?税務署も丸め込んだのに…」
「……(株で収益が3倍に増えた)」
勝った。
「いやー、まさかユウタくんにこんな才能があるとは…」
「ね。ゲーム開発部を二人も倒したんだから、もっと誇っていいよ。」
二人が自滅したから、なんて言えない。
「…ありがとう。」
結局、ちょっと微笑むだけに留めておいた。
「…よし。次のゲーム選ぼっか。何がいい?」
「…二人は、いつも何のゲームやってるの?二人がやってるの、やってみたい。」
「お!?じゃあ、この格ゲーやってみる?」
「お姉ちゃんが負けて、よくアイス買わされてるやつね。」
「う、うるさい!この前はミドリに勝ったし!逆にアイス買わせたし!」
「…楽しそう。いい?」
「うん!もちろん!」
こちらは流石に勝てなかった。だってまだ操作に慣れてないんだもん。
「あー、楽しかった!」
「ね。また遊びたいな。」
「…うん。また誘ってくれたら、僕も嬉しい。」
「誘うとかじゃなくて、好きなときに来なよ!いつもゲームしてるかちょっと喧嘩してるかだし!」
「いや、あの喧嘩は…」
「…わかった。時間あったら、来るね。」
「うん!」
「いつでも来てね。」
そう言って、ゲーム開発部を後にした。気象台に向かうまでの間に一件の通知。
『久しぶりに、こちらにも顔を出してほしいものですね。ユウタ。』