狼姫とその友人のヒーローアカデミア(仮) 作:少年少女を見守り隊
「おーい、ケン。お前宛に封筒が来たぞー」
試験の翌日、パン屋が定休日な為にのんびりしていたケンは父親にそう呼ばれて自室から顔を出す
「封筒ー?手紙じゃなくて?」
階段を上がって来た父親は分厚い封筒をケンに渡す。
「こんなに分厚いんだ、しっかり受かってるだろうさ」
そう言って父親はわしゃわしゃとケンの頭を撫でる。
「パン屋の事なら心配するな、お前はお前の道を行け、父さんも母さんも応援してるからな」
「分かったよ、父さん」
そう言ってケンは自室に戻り、封筒を開ける
「ん?なんだこれ…?ビデオテープ…?いや投影機か」
どう付ければいいのかと弄っていると、いきなり投影機が起動した
『私が投影された!』
「おうっ!?」
驚いて投影機を落としかけるも何とか持ち堪える。
『驚いているだろう増田少年!実は私、今年から雄英高の教師になることが決まってね!これが教師になってからの初仕事というわけさ!!』
映像の中で「HAHAHA!!」と高笑いするオールマイトにケンは頭がスッと冷静になる
「なるほど、No. 1ヒーローなら色々学べるからって事か」
『おっと、話が逸れたね、改めて結果発表だ!!最初に筆記試験!!なんと驚くことに合格点ギリギリで合格だ!!頑張ったね!』
「やっぱギリギリだったのか…途中なんも分からんかったし」
もしヴェナが聞いていたとしたらブチギレものである。
『続いて実技試験!!まずはヴィランポイント...55ポイント!!』
「割と頑張ったけど60行かなかったか…ん?まずは??」
その言葉に疑問を思うも、すぐにオールマイトは説明した
『実は、我々が見ていたのはヴィランポイントだけではない!!』
その言葉と同時にオールマイトの後ろのモニターに【rescue】の文字が表示された
「rescue…救助?」
『そう!レスキューポイント!!人を助けずして何がヒーローか!!君のレスキューポイントは75ポイント!!総ポイント125ポイント!!おめでとう!!合格だ!!』
「おぉ…?」
「来いよ!!ここが君のヒーローアカデミアだ!!」と言い残して、投影は終了した。
「…イマイチピンと来ないけど、合格したならよかったか…まぁ、頑張ってくしかないよな」
そんな事を呟いて、ふと窓の外を見る
「ふぁぁっ!?」
何せ、ヴェナが窓に張り付いていたからだ。
「お前それ完全に不審者だろうが!」
急いで窓を開けて、ヴェナを部屋に入れる
「私が合格したのに、ケンが不合格だったらどうしようって心配になったから居ても立っても居られずに部屋を飛び出したの」
すん、と真顔でそう言うヴェナ
証拠として向かいにある彼女の部屋の窓は全開だった。
「飛び出して来たって物理的過ぎるだろ、玄関から来いよ、玄関から」
「うん、次から玄関から来るようにするね」
そう言って衣服を整えるヴェナ
「それで、ヴェナはどうだったんだよ?合格っても筆記の点数や実技のポイント数とかあるらしいけど」
「私は筆記は満点、ヴィランポイント115ポイント、レスキューポイントは45だったよ。それと…主席合格みたい」
「強い…強過ぎる…」
改めて幼馴染の高スペックさを実感したケンは、ヴェナから手を引っ張られる。
「……それより、早く行こう?」
「行くって何処に?」
「…買い物。制服、教科書、カバンとか……揃えたいし」
「ああ確かに…幾ら数週間後って言ってものんびりしたらダメだしな」
ケンは一人っ子な為に誰かのお下がりという物もなく、現在使っている通学カバンも、同級生の男子達とバカ騒ぎして振り回される為、ボロボロだ。
「……もう少し、モノは大切にした方がいいと思う」
「…だよな…気を付ける」
ボロボロなまま床に転がっている通学カバンを見てヴェナにそう言われ、ケンは反省した。
その日、ケンは珍しくテンションの高いヴェナによってあちこちに連れ回され、通学に必要なものからお揃いのキーホルダーまで買う事になった。
◆
そして4月。雄英高校の入学式だ。
「…にしても早めに買ってよかったよな、定期券」
「…前日、駅に人混み出来てたもんね」
入学式の4日前に二人で定期券を買いに行ったケンとヴェナはそう言って駅から出て雄英に歩いて向かう、幸いにも駅からは徒歩十分たらずで到着した。
「にしても相変わらず大きいよな」
「…暫くは何処に行けばいいか、迷う事もあるかもしれないね」
ケンもヴェナも一年A組な為、広い校舎を歩き回って教室を探す。
「お、あったな」
「…まだ誰も居ないみたい」
ようやく教室を見つけ、ドアを開けるとまだ誰も居ない為に中は静まり返っていた。
「…えーっと席は…ここか」
「…ケンと遠い」
「仕方ないだろ、あいうえお順なんだし」
そのまま席に荷物を下ろして、ケンとヴェナはスマホを取り出して時間を潰す。
ケンはソシャゲ、ヴェナはヒーローに関する電子書籍を読んでいた。
そして数分後、教室のドアが開く
「む!君達は!」
「あー…誰だったか?」
「…実技試験の時に注意して来たメガネの人だよ」
「あぁ…確かに居たな」
ヴェナにそう言われ、ケンは思い出す
「俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ!よろしく!」
飯田はそう言って頭を下げる
ケンとヴェナも揃って頭を下げた
「増田顕、よろしく」
「ロウヴェナ・ホワイト、よろしく」
飯田が来た事を皮切りに、続々と生徒達が入って来る。
その姿も千差万別、個性に溢れた生徒達だった。
そして、入学式ともなれば皆気が緩む。
男子は活発な人達がグループを作りなにやら話をし
女子もグループを自然と形成し、外国人であるヴェナは自然とその輪の中に入れられる。
ピンク髪のクラスメイトに質問責めをされ、困惑しているヴェナが助けを求める様にケンに視線を送るも、ケンはスルーした。
ヴェナはその個性の関係上、クラスで孤立していた為に、ケンやケンの家族、自分の家族以外とのコミュニケーションをした事がない為、ケンは雄英高校という新しい舞台で自分以外の友達を作って欲しいという気持ちがあった。
そして、教室内でワイワイガヤガヤしていると声が響いた
「お友達ごっこがしたいなら他所に行け、ここはヒーロー科だぞ」
声の出所は廊下、全員が一斉に見ると、寝袋に入ったままゼリー飲料をジュッと飲み干している無精髭を生やした男性だった。
「…不審者か?」
「…ホームレス?」
「違う...ハイ、静かになるまで八秒かかりました、時間は有限、君たちは合理性に欠くね」
寝袋から出てきたのは、首に布のような物を巻いた全身真っ黒の男性、明らかに怪しい雰囲気を纏うその男は、教室中を眺めながら自己紹介を始めた
「担任の相澤消太だ、よろしくね」
相澤先生は寝袋からスルリと雄英のジャージを取り出し話始めた。
「早速だがコレ着てグラウンドに出ろ、机の中にある」
机の中にあると説明を受け、生徒達は机の中から体操服を引っ出す。
「おお、良いデザインだな」
「時間は有限だからな、早く着替えろよ」
そう言って相澤先生は教室を出た。
◆
そうして、体操服に着替えた生徒達はグランドに集まった。
「よし、集まったな。これより個性把握テストを始める」
「「「個性把握…テスト!?」」」
「入学式は!?ガイダンスは!?わからない事だらけなんですけど!?」
丸顔の生徒がそう叫ぶも
「ヒーローになるならそんな悠長な行事に出る時間ないよ」
と一言でバッサリ切り捨てられた。
テストの内容は「ソフトボール投げ」「立ち幅跳び」「50m走」「持久走」などなど…中学の頃からやっていた「個性禁止の体力テスト」の個性使用許可版との事
「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる、合理的じゃない、まぁ文部科学省の怠慢だよ...」
そう言って相澤先生はポケットから取り出したのはソフトボール程度の大きさの球だった。
説明によると特殊な機械が付いており、それで飛距離を計るとの事。
「…それじゃあ…ロウヴェナ、中学の時ソフトボール投げは何mだった?」
「…85mです」
「じゃあ、個性を使って投げてみろ」
「…先生、個性を使うとしても、どの程度でしょうか?」
ヴェナは真っ直ぐ相澤先生を見つめて質問する。
「その質問は合理的じゃないな…当然全力で、だ。機器の破損は気にせずに、全力を出せ」
「…わかりました、先生」
そう言ってヴェナは前に出て、円の中に入る
「あー…全員驚くなよ?」
「え?驚くなってどういう…?」
ケンのその言葉に、近くの生徒が聞き返そうとした時
「ふー……ヴゥゥ…!」
ヴェナは個性を使った。
全身から白銀の剛毛が生え、その身を包み込む。
瞳は黄色に変化して煌々と輝きを放つ
そして、肉体は徐々に膨らみ、その身体をより大きくさせる
「…えー…ヴェナってアレでも加減してたのか…?」
そうして、現れたのは
5m越えの二足歩行の狼人間だった。
『グルルル…!』
「ヴェナー、野生に帰ってないかー?ヴェナー?」
その姿にビビる一部生徒以外は、見惚れる様にヴェナを見ていた。
『野生に帰るなんてないから、ケンは心配し過ぎ』
よく響く声で、ケンの言葉に呆れた様な表情(毛に覆われているので分かりにくい)で返すヴェナ
『先生、握り潰さない様に気を付けます』
「気にするな、全力で投げろ」
そう言われ、ヴェナはボールを握る
パキン
そんな、軽い音が響く
「………」
『……先生、すいません』
ヴェナが手を開くと手のひらの上で、無惨にも粉々になったボールの残骸があった。
「……チャンスは2回ある、次投げれればいい」
『…はい』
残骸を砂を落とすようにパンパンと払い、改めてヴェナはボールを優しく握る。
『…ふんっ!』
ビャッ!というあんまり聞き慣れない音がした後、暫くして相澤先生の持つ計測器から飛距離が出た。
「…999.9m…カンストか」
そう呟く相澤先生は頭を掻いて空を見上げる。
「…何処にもぶつかってなきゃいいんだが」
「…そうならない様に調整はしました」
いつの間にか戻っていたヴェナはそう呟く
「クッソぉぉぉ!アレで服破れてないのかよぉぉ!!」
背の小さな生徒がそう叫ぶと周囲の女子生徒から冷たい目線が集まっていた。
「…でも、なんだこれすげー面白そう!!」
「個性思いっきり使えるんだ!!流石ヒーロー科!!」
「....面白そう...か」
その言葉に相澤先生は鋭く生徒達を見つめる
「君たちはヒーローになるための三年間、そんな腹づもりで過ごす気で居るのかい?」
「よし、トータル成績最下位の者は見込みなしとして、【除籍処分】としよう」
「「「はぁぁぁぁ!?」」」
グラウンドに生徒達(主に男子)の絶叫が響いた。
そして
第一種目、50m走
「…うん、地面抉り過ぎた」
「隕石落ちた後みたいになってんぞ」
ヴェナによって地面が抉れたり
「パン屋は体力勝負だ、舐めんな!」
「「「んな事言っといてゴッツイバイク使ってやがる!?」」」
ケンは『複製』でブースターの付いたゴツイバイクで爆速し
第二種目、握力
「先生、壊れました」
「…無限って事にしておくぞ」
ヴェナは握力計を破壊し
「パン屋は毎日パン生地捏ねてるからな!ふんぬぉぉ!」
「「「そんな事言っておいてメカっぽいグローブ付けてやがる!?」」
ケンは複製したアシストグローブで500キロを叩き出し
第三種目、立ち幅跳び
「ふんっ!」
ヴェナが着地で砂を大量に巻き上げる事になったり
「立ち幅跳びなんて楽勝だぜ!うぉぉぉぉ!」
「…56m」
「「「いやそこは普通なのかよ!?」」」
第四種目、反復横跳び
「…先生」
「なんだ?」
「一日中でも続けられますが、正確に測った方がいいですか?」
「…無限って事にしておいてやる」
ヴェナは記録:無限を叩き出し
「反復横跳び苦手なんだよなぁ…」
「「「そう言いながら普通に速い!?」」」
第五種目、ハンドボール投げ
「ホワイトは除外だ、さっきやった通りだろう?」
「そうですね」
ヴェナは最初の時の記録のままで他の生徒達のみでやる事になった。
そして、ケンの順番が来た
「先生、数々の記録でまぁまぁ不正したと思うんですけど」
「いや、個性を使っている以上不正じゃないが」
そう言う相澤先生に、ケンは納得した
「じゃあハンドボールも個性を使用してなら大丈夫なんですね」
そう言って、ケンはとあるものを複製する
「男のロマンと言えば大砲だよなぁ!」
「「「いやちっっさ!?」」」
両手で持てる程度の大きさの大砲を複製し、そこにハンドボールを詰める。
「よし、ファイア!」
ドォン!という音と共に、ボールは記録線の位置に落下する。
「…715mだな」
「まずまずだなぁ」
その後、緑髪の少年の番となったが
「緑谷くんはこのままだとまずいぞ...?」
「ったりめーだ、無個性のザコだぞ!?」
どうやらあの緑色の男子は緑谷くんというらしく、飯田のいう通り、このままでは落第コースまっしぐらになる。
「無個性…?ならどうやって入れたの?」
「そりゃ体を鍛えてとか…?」
無個性なのに入学出来たと言う事実に、ヴェナとケンは疑問に思いながら緑谷くんを見つめる
緑谷くんは円の中に立つとボールを持つ腕に力を入れ、ボールを投げた。
46m
「…今、個性を使おうとしていた」
「ん?使おうとしてたならなんであれくらいなんだ?」
「個性を消した」
相澤先生は目を見開いて緑谷を見つめながらそう言う
「…雄英高校の先生は全員プロヒーロー、そして…個性を消す事が出来るヒーローは、私が知ってる限り、一人だけ…抹消ヒーローイレイザーヘッド」
「個性を消す個性か…確かに適任だよな」
個性を消されたら、個性に頼った戦法しか知らない者は何も出来ない、個性持ちキラーの個性、彼の視界に入れば皆等しく「無個性」
そんな個性だからこそ、生徒の感情的な暴走や個性による暴走という危険を孕んだ生徒達を速やかに鎮圧するとなれば、一番適任だろう。
SMASH!!!
凄まじい風圧と音で思考から引き上げられる、見れば緑谷が個性を使用し、大きな記録を出していた。
個性のデメリットなのか、個性を行使した右手人差し指が紫色に変色していた。
「おー!!すげー飛んだな!」
「やっとヒーローらしい記録出したよー!」
「指が腫れ上がっているぞ、入試の件と言いおかしな個性だ....」
生徒達からは喜びの声が上がる、しかしその声を割く様に、一人の生徒が勢いよく前に出て来た。
「どーいうコトだ!!ワケを言いやがれデクテメェ!!」
「…止める?」
「止めるか」
ヴェナに問われ、ケンは個性を使った。
緑谷に迫らんとする生徒の前に眩い光が差し込み、突如として巨大なゼリー状の壁が現れる
「ジャマすんなぁ!」
生徒は個性を使い爆破させようと手を出すが
「はい、チェックメイト」
その壁はまるで生きているかのように生徒を包み込んだ。
「…!?このっ…出しやがれ!!」
「暴れても無理だって、理科の実験でスライム作らなかった?アレのなんか動くバージョンだよ」
「「「なんか動くスライムってなんだよ!?」」」
「…そもそも、貴方も今は生徒、暴力沙汰を起こせば貴方が除籍される。その危険性を分かってないの?」
「…チッ!分かってるっての!」
ヴェナにそう言われ、生徒は舌打ちをしてスライムから抜け出すと元の場所に戻って行った。
第六種目、上体起こし
「ふんっ…!」
「ファイト」
ペアになったヴェナと共に頑張るものの、腹筋が足りずに25回でギブアップになってしまった。
ヴェナは涼しい顔で100回を達成していたが
第七種目、長座体前屈
「んむむむ…!!」
ヴェナは頑張って記録を伸ばそうとするも、胸によって思う様に伸びない
「「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」」
一部男子から歓喜の声が出るも、ヴェナが睨んだ為に目を逸らす。
「ふっ、前屈は得意なんだよ!」
「「「そう言いつつも全然動いてねぇ!!」」」
身体がガチガチなのか、ケンの記録は悲惨だった。
最終種目、持久走
ヴァナが4位、ケンは5位だった。
飯田と爆豪は個性の相性が良かった為にほぼ爆走状態だった。
そして、全種目が終了、相澤先生の端末から結果が映し出された
ヴェナは4位、そしてケンは10位だった。
そして、最下位は
緑谷出久
緑谷が悔しそうに涙を堪えていると、相澤先生が結果を消しながら一言つぶやく
「ちなみに除籍は嘘な」
「は?」
「君たちの最大限を引き出すための合理的虚偽」
「「「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」
「あんなの嘘に決まってるじゃない...ちょっと考えればわかりますわ!!」
「…普通はそうだよね」
「言ってる時の顔はガチだったけどなー」
と、ポニーテールの女子、八百万さんが話す。
この後は着替えて簡単なガイダンスと自己紹介、そしてカリキュラムの確認となり、その日は帰宅となった。