朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版) 作:とも667
全年齢版もよろしくお願いします。
朝日が差し込む家の中。大きく伸びをして、一人の男が目を覚ます。この男の名前は
「ふわぁーあ、よく寝た……さてと」
いつも通りコウキは、とりあえず顔を洗うためにベッドから降りようとした。しかし。
「……うわぁぁっ!?」
コウキはバランスを崩して、転倒する。そこでコウキは気づいた、やけに自分の手足が短いことに。そして、部屋のレイアウトもよく見れば全く違う。
「ここは、どこだ……?」
「コウキ、大丈夫? すごい音したわよ?」
「えっ……!?」
そこにいたのは、この体の持ち主の母親であった。それだけならば、まだよかったが……コウキはその人の顔に、見覚えがあった。
「転んだの? 大丈夫、痛くない?」
「う、うん。大丈夫だよ」
「そう? それならいいけど……とりあえず!! 朝ご飯出来てるから、いらっしゃい!!」
そう言って、『お母さん』は部屋を出ていった。困惑しながら、コウキは部屋を出る。すると、テレビの音が聞こえてきた。
『ポケモンニュース、今日のニュースは……』
「ポケ、モン……?」
「どうしたの、ポケモン欲しいの? でも、まだダメよ? 一人でお世話できないでしょ?」
それを聞いてコウキは、洗面所に鏡を見に行く。そこには、コウキも見覚えのある顔つきの……少年がいた。
「なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!?」
コウキはとりあえず、ここが何処なのかを確認した。するとここはイッシュ地方の、ヒオウギシティであることがわかった。それを確認して、親が作ってくれたご飯を食べながら考える。
『……さっき確認したけど、ヒュウ兄さんもいた。ポケモンのタマゴを持ってたけど、あれが御三家のタマゴかな……』
『それでは、次のニュースです。ポケモン解放団体『プラズマ団』の演説が、今日も行われています』
「プラズマ団……ッ!!」
ニュースの画面に、コウキの嫌いな『ヤツ』が映る。拾ってきた息子を道具としか見ず、あんな部屋に閉じ込め続けた男。ゲーチスだ。
『皆さん!! ポケモンは、都合のいい道具などではありません!! 今一度、彼らとの関わり方を考え直すべきです!!』
「熱心ね……最近よく見るけど」
『都合のいい道具にしてんのはどっちだよ、このゲス野郎が……』
心の中で、テレビに映るゲーチスに唾を吐くコウキ。そしてその夜、ベッドに潜ってコウキはこれからのことを考えた。
「とりあえず、今の俺にできることはないが……成長したら、俺も主人公の仲間入りだ」
敵は、壊滅したはずのプラズマ団。発狂しかけのゲーチスが実質ボスのイカれた組織。さっさと止めなければ、本当にまずい。
「俺の常識がどこまで通用するか、だな」
コウキは所謂、『努力値』などの詳細を知っている『ガチ勢』だった。根気もあるので、レベル上げもよく行うタイプである。つまり、ゲーム通りなら無双が可能なはずである。
「それにしても、ポケモンの世界に来るとは……どういう原理なんだ?」
真っ先に思い浮かんだのは、アルセウスだった。ゲームでも過去の世界に飛ばされていたし、やりかねない……そう考えたが、すぐに可能性を否定する。奴なら絶対に、何か目標を課してくるはずだ。
「うん、わからん。考えても仕方ないな」
コウキは考えるのをやめた。一般人の頭で考えうる範疇の物ではないと、そう考えたのである。
「ポケモン世界の女の子って、可愛いからな……」
不安をすぐに忘れて、コウキがニヤける。イッシュ地方は、可愛らしい子がたくさんいた。彼女達と一人でもお近付きになれれば、コウキはとても嬉しい。
「そのためにも、今のうちから勉強しとかないとな」
コウキは勉強をより一層頑張ることを決めた。そして、数年後……コウキの知っている通りの、悲劇が起きる。ヒュウは、雨の中で泣き叫ぶ妹を抱き締めて、コウキに言った。
「チョロネコが……プラズマ団に……」
「そう、なんだね……」
「うわぁぁぁぁんっ!!!」
その様子を見て、コウキは改めて思った。プラズマ団をどうにかしなければいけない、と。
「俺は、プラズマ団を許さねぇ!!」
「あぁ、僕もだ」
「コウキ……絶対、ポケモントレーナーになろうな」
「うん、ヒュウ兄さん」
コウキはそう言って、ヒュウと約束を交わした。それから、一年ほど経った頃。
『緊急速報です。ポケモンリーグから、大きな城のような物が突如出現しました』
「あらやだ、物騒ね……」
『Nの城……出たな。あそこで一旦決着がつくはずだ』
コウキは過去の記憶を頼りに、心の中で呟く。しばらくすると、ゲーチス逮捕のニュースが流れた。
『ゲーチスの逮捕に貢献したのは、カノコタウン出身のトウコさん(18)と、チェレンさん(18)です。また、プラズマ団のボスは行方不明となっています』
Nはエンディングで、ゼクロムかレシラムに乗って飛び去ってしまう。そして、BW2の時まで姿を現すことはない。
「……あと、二年すれば……」
コウキの記憶の通りなら、ポケモンがもらえるはずだ。そう思って、コウキは勉強しながら時を待った。そして、遂に……その時が来る。
「コウキー!! ただいまー!!」
『来たッ!!』
「はーいっ!!」
少しスキップしながら、この世界の『お母さん』のところへ向かうコウキ。すると、コウキは思っていた通りのことを言われる。
「アララギ博士って知ってる? ママの古い友達なんだけど、久しぶりにお話してたの」
「博士? 博士が俺になんの用?」
「ふふふ、よくぞ聞いてくれました!! 突然ですが、コウキ!! 自分のパートナーとなるポケモンは、欲しい?」
そう言われて、コウキが満面の笑みで言った。
「すっごく欲しい!!」
「よし、第一ステップクリア!! じゃあ、ポケモン図鑑って知ってる?」
「知ってるよ、捕まえたポケモンが自動で記録されるハイテク図鑑でしょ?」
コウキはすらすらと答えてみせた。この世界で十数年生きてきたが、コウキはポケモンのことだけは一時たりとも、忘れたことはない。
「よし、第二ステップクリア!! またまた質問です、あなたポケモン図鑑も欲しいよね?」
「欲しい!!」
「よし!! 第三ステップクリア!! コウキ、あなたのやるべきことが決まったわ!!」
コウキは、ポケモンを初めて買い与えられた日のことを思い出す。本当に冒険しているような、あの感覚。いつでも、どこでも、どんな時でも……大冒険がポケットにあった。想像しただけで、ドキドキしてくる。
「俺のやるべきこと?」
「あなたに会うために、ベルという女の子が来ます。アララギ博士の助手で、大きな帽子が目印だって!!」
「ベルさん……」
コウキは、心臓がこれまでにない程高鳴るのを感じた。当然だ。子供の頃の夢が今、目の前にあるのだから。
「そう! あなたは、ベルという女の子を探すのよ!! そして、パートナーとなるポケモンと、ポケモン図鑑を受け取るのです!!」
「俺のポケモン……ワクワクしてきた!!」
「その意気よ!! バッグの中、ライブキャスターは入ってるよね?」
コウキはバッグの中身を確認する。必要なものは、いつでも入れてあった。
「いつでもいけるよ!!」
「OK!! それじゃ、ベルちゃんを探してあげてね!!」
「行ってきますっ!!」
コウキはやる気満々で、外に出た。腕にライブキャスターを巻き付けて、笑う。
「やるべきことは山積みだが、とりあえず……行くべきは高台だな」
それから原作通りヒュウに出会い、ヒュウは先に一緒にいた妹を家に帰らせて、コウキと共にベルを探すことにした。そして、コウキは真っ直ぐ高台に向かって……ヒュウに言う。
「ヒュウ兄さん、ここじゃないかと思うんだけど」
「なるほどな、ヒオウギシティといえば高台。ベルって人も、きっと高台で景色を見ているはずッ!! さあ、ポケモン貰ってこいよ!!」
「うん、貰ってきます!!」
コウキは見覚えのある後ろ姿を見て、息を整える。ベルの隣に立って、ベルの顔を見た。ベルは景色に見とれているようだ。しばらくするとベルがコウキに気づいて、言う。
「絶景だよねぇ!! ねぇねぇ、あなたもそう思わない?」
「えぇ……本当に、いい景色ですね。ベルさん」
「あれっ、私のこと知ってる? あ、もしかしてだけど……あなた、コウキくん?」
コウキが頷いて、丁寧に自己紹介をする。すると、ベルは崩れた帽子を直してそれに応えた。
「はい。僕はコウキ、ポケモントレーナー志望の者です」
「うわー、聞いてたとおりだよ!! はじめまして、私はベル!! 会えてよかった!!」
「こちらこそ。あなたに会えて嬉しいです」
コウキはベルをじっと見つめる。とても可愛らしくて、目が離せない。
「ご丁寧にありがとう!! では、あなたにお尋ねします……ポケモン図鑑完成に、協力してくれますか?」
「はい、よろこんで!!」
「ありがとう、あなたのおかげでアララギ博士の研究が捗ります!! それに、ポケモン図鑑を埋めていくのって楽しいんだよ!!」
コウキはやっと冒険ができることに、胸を躍らせていた。
「今から楽しみだな、冒険……」
「それでは、じゃじゃーん!! この中にあなたのパートナーになるポケモンがいるよ!!」
「モンスターボール……!!」
差し出された横長のカプセル。その中に、三つの紅白の球が入っている。コウキはそれを、ずっと欲しがっていた。そして迷わず、ひとつのボールに手を伸ばす。そのボールの中身は。
「わあ、ポカブってあなたにぴったりだよね!!」
「そうですかね? ありがとうございます」
「ポケモンの次は、これ!! ポケモン図鑑だよ!!」
赤くて薄い、液晶付きの機械。これに全てのポケモンを登録することが、コウキに課せられた役目。コウキはベルから図鑑の説明を受けて、受け取る。
「ありがとうございます、大切に使いますね」
「快くオーケーしてくれてありがとう!! 博士も、こういう人なのがわかってたから、オーケーを貰わずに出発させたのかな?」
「おぉ、そいつがお前のパートナー!! よかったな……」
ヒュウはどこか寂しげな表情をしている。コウキは、それに何も言うことができなかった。
「……」
「妹も言ってたけど、ポケモンは絶対大切にしろよな!!」
「うん!!」
コウキは、ポケモンを邪険に扱うつもりなど毛頭なかった。自分に夢をくれた相棒を、邪険になんてするわけがない。
「そういえばお前、持ってるそれなんだよ?」
「それはポケモン図鑑だよ」
「……俺にも、ポケモン図鑑をください。ポケモン図鑑があれば、ポケモンに詳しくなれる。つまり、強くなれるだろッ!!」
ヒュウがベルに、ポケモン図鑑が欲しいと頼み込む。ヒュウは自己紹介をした後、ベルからポケモン図鑑をもらうことができた。
「うん、そうだね!! どんな理由かわからないけど、旅に出るのはいいことだもの!! ちょうど予備のポケモン図鑑もあるし!!」
「ありがとうございますッ!!」
「よかったね、ヒュウ兄さん」
そしてヒュウは、コウキに向き直ってボールを取り出す。
「さあて、お前がどれだけのトレーナーか確かめる!! 俺がタマゴから育てたミジュマルでッ!!」
『やっぱりミジュマルなんだな……わかってたけど』
「手加減しないよ、ヒュウ兄さん!!」
そして、二人が距離をとり……ボールをお互いに投げた。
「いけ、ミジュマル!!」
「頼む、ポカブ!!」
「ポカァー!!」
「ミッジュー!!」
人生初のポケモンバトル。コウキはこの瞬間をずっと待っていた。その時、コウキはおかしなものを見る。
「これは……?」
「……おい、どうした?」
『なんで、どうして『これ』が見えるんだ? ゲームでもないのに』
そこには、見慣れたポケモンの戦闘画面が表示されていた。HPバーに、経験値バー。上部にはLv5と書かれている。ミジュマルのHPバーも、同じように見えていた。レベルはあっちも5だ。
「もしかして、体調悪いとか? 大丈夫かよ……?」
「……いや、大丈夫。続けよう、ヒュウ兄さん!!」
「二人とも頑張れっ!!」
コウキは一旦考えるのをやめて、戦闘に集中することにした。二人は同時に、同じ技の指示を出す。
「ポカブ、『たいあたり』だ!!」
「ミジュマル、『たいあたり』!!」
──ドガァッ!!
「ポカァ!!」
「ミジュッ!!」
二匹がぶつかって、吹っ飛んだ。そして、二匹が同時に立ち上がる。
「ミジュマル、もう一回『たいあたり』だ!!」
「ポカブ、横に跳んで躱せ!!」
「ミジュ!?」
ポカブは、向かってくるミジュマルを横に逸れて躱し、そのまま『たいあたり』を打ち込む。
「今だ、『たいあたり』!!」
「ポカァァ!!」
──ドゴォッ!!
「ミジュウゥ!!」
ミジュマルが吹っ飛んだ隙を、コウキは見逃さない。コウキは続けて、ポカブに命令する。
「もう一発『たいあたり』だ!!」
──ドゴォォン!!
「ミジュマルッ!!」
「ミジュウゥ~……」
ミジュマルが気絶。戦闘不能……コウキとポカブの勝利だ。
「やったな、ポカブ!!」
「ポカァ~!!」
「負けたか……野生のポケモンとは違うな……まぁいいや、お前が頼れるトレーナーだとわかっただけで充分!!」
負けたヒュウは悔しそうにしている。コウキは、ポカブの経験値が溜まり切り……Lvが6に上がったのを見た。やはり、幻覚ではない。
「ありがとう、いい戦いだった」
「じゃあ、俺は先に行くからな!! お前も、もっと強くなっておけッ!!」
「どっちのポケモンも、すごく頑張ったよね!!」
ベルが主人公の隣に立った。コウキはそこで、さらにおかしな物を見た。原作にもなかった、おかしな物を。
「……!?」
「ん、どうしたの? なにか付いてる?」
「いえ、なんでも……」
付いている……というか浮いている。頭の上に、ゲージが。その中にはピンク色のゲージがあって、それが一旦満タンまで溜まり……ポケモンと同じように、Lv2になった。あれは一体、なんなんだ。コウキの疑問はますます深まる。
「さて、戦って傷ついたその子のためにも……」
「ポケモンセンター、ですよね」
「大正解!! さ、元気にしてあげよ!!」
コウキはそう言われて、ポケモンセンターに向かい……回復させて、それから『お母さん』にランニングシューズ、ヒュウの妹からタウンマップを貰った。
「ねぇ、そのタウンマップ……どうして二つもあるの?」
「一つはお兄ちゃんに渡して欲しいの」
「なるほど、わかった。ちゃんと届けるから、安心して」
コウキはそう言って、タウンマップをふたつ預かった。
「さあ、次の目的地は19番道路だよ!! 私、先に行ってるね!!」
「それじゃあ母さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい、怪我には気をつけてね!!」
二人に見送られて、コウキは旅立つ。目指すはチャンピオンだ。そして、プラズマ団のことも歩きながら考える。
「俺がどうにかすることになる……もちろん、あいつも」
思い浮かぶのは、ゲーチスの顔。発狂しかけた精神を執念で繋ぎ止めて、世界の支配を目論む男。
「お前だけは、俺が止める」
そう言ってコウキは、ベルの待つ19番道路へと歩いていった。
ここからか本番です。