朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版) 作:とも667
VSヤーコン。
コウキはプラズマ団の家を出て、ヤーコンのジムへと向かう。本来なら、ジム前にヒュウがいるはずだが……
「いないか……まぁ、普通に考えて『鍛える』って言って走っていって、もう攻略完了……なんて有り得ないもんな」
ゲームとの違いを実感しながら、コウキはジム内へと足を踏み入れた。そして、それに気づいた係員が声をかける。
「ホドモエジムへようこそ、初めての方ですよね?」
「えぇ、そうです。普通のジムとは違うみたいですね」
「はい。このジムはそこにあるリフトで降りて、暗い中をベルトコンベアで進んでいただきます。進んでいけば、必ずヤーコンさんにたどり着きますよ」
そう言われて、一言お礼を言い……コウキがリフトのスイッチを押す。すると、リフトが降りて……止まった。
「実際見ると暗いな……どう進むんだったか、そこまで覚えてないや」
コウキはそう言ったあと、楽観的に呟く。
「まぁ、進んでいればいずれたどり着くだろう。行こう」
コウキはそう言って、目の前のベルトコンベアに乗り込んだ。それから、一時間が経過した頃。
「……どうしよう、道がわからん」
コウキは迷子になっていた。暗い中を進んできて、段々明るくなってはきたのだが……それでも、ヤーコンのところに辿り着けない。
「なぁみんな、どっちだと思う……?」
「エンブゥ……」
「マリィ?」
ポケモン達も分からない様子だ。コウキが頭を抱えていると……
「ボラッ!! ボラッ!!」
「シンボラー? あ、もしかして見つけたのか!?」
「ボラァー!!」
シンボラーは頷いて、コウキを先導するように飛んで行った。コウキはシンボラーの後ろから、トレーナーを倒しながら進んでいく。そして……
「……ここまで来れた!! ありがとうシンボラー!!」
「ボラァー!!」
「よし、行くぞ……!!」
シンボラーをボールに戻して、コウキはヤーコンのいる場所にようやく辿り着いた。
「来やがったか、お前がシンボラーのトレーナーだな?」
「ど、どうも……ポケモントレーナーのコウキです」
「シンボラーが飛んでるから、何事かと思ったら……まさか、ポケモンに俺様を探させてたってのか?」
コウキはそう言われて、申し訳なさそうに言う。
「お恥ずかしながら……」
「……まぁ、いい。ここまで来たなら、やることは一つだ。暗い迷路はからっきしらしいが……トレーナーとしてどうなのか、お手並み拝見といこうかね」
「よろしくお願いします!!」
コウキとヤーコンが、同時にボールを構えた。コウキが繰り出すのはもちろん……
「頼むぜ、マリルリ!!」
「マッリィィ!!」
「いけ、ワルビル!!」
「ルルビィルッ!!」
そこでコウキは、またしても『記憶と違うこと』を見つける。いや、厳密に言えば記憶にあるにはあるのだが……
(レベル34!? これ、チャレンジモードのレベルのはずだろ!? それに手持ちが4匹……いつの間にチャレンジモードに!? さては神の野郎、断りもなく変えやがったな……!?)
「マリルリ、早く倒さないとまずい!! 『じゃれつく』だ!!」
「マリィィィッ!!」
「遅せぇな!! ワルビル!! 『すなあらし』!!」
「ワルルゥゥ……!!」
ワルビルを中心に、砂嵐が展開される。しかしマリルリは、その程度では怯まない。そのまま、ワルビルへと向かっていき……可愛らしい音と共に殴って蹴る。
「マリリィィッ!!」
──ポカポカポカポカ!!
「ル、ビィィル……」
「やるじゃねぇか、俺様のポケモンを一撃とは……相当鍛えてるな」
ヤーコンは素直に賞賛の言葉をかけた。コウキは笑顔で感謝しながらも、内心では焦っている。
「そう言ってもらえて光栄です」
(くっ……まずいな、ドリュウズとサンドパンの特性は『すなのちから』と『すながくれ』だ……特にまずいのは『すなのちから』!! 砂嵐が吹いている時、攻撃力が1.3倍になる……レベル差があるとはいえ、ドリュウズの攻撃種族値なら全抜きされかねないぞ!!)
「さて、早速真打登場といこうか……ぶち抜け!! ドリュウズ!!」
「ドリュウゥゥッ!!!」
「やはり出してくるか……!!」
今のマリルリは砂嵐のダメージを受けている上、ワルビルの威嚇のせいで攻撃力が一段階落ちてしまっている。コウキは少し考えて……
「マリルリ!! 『あまごい』……」
「甘いな!! ドリュウズ、『じならし』!!」
「ウゥズゥゥゥッ!!」
──ズゴゴゴゴッ!!
地鳴りと共に、地面が揺れる。体勢を崩したマリルリが転んで、あまごいを中断させられた上にダメージを受けてしまった。
「やはり、ダメか……!!」
「今だ、ドリュウズ!! 『いわなだれ』!!」
「マリルリ、戻れ!!」
コウキはマリルリをボールに戻す。あわよくば雨で上書きするつもりだったが、させてくれないのでは仕方がない。代わりに繰り出したのは……
「エンブオー!! 『いわなだれ』を受け止めろ!!」
「エェェン……ブゥゥ!!」
──ズドドドドォォン!!!
「ほう、止めたか……だが、無駄だ!! ドリュウズ、もう一発『じならし』!!」
「ドリュウゥゥッ!!」
──ズゴゴゴゴゴッ!!
またしても地鳴りと共に、エンブオーがバランスを崩す。しかし……コウキは笑みを浮かべている。それに気づいたのか、ヤーコンが警戒して眉間に皺を寄せた。
(ほのおタイプなんだ、効果抜群のはず……素早さダウンは、元々素早さが低いからいいとしても……抜群のダメージは痛いはずだろ?)
「……前方不注意だぜ!! ドリュウズ!!!」
「なに!? これは……くっ、ドリュウズ!! 『メタルクロー』で迎撃しろ!!」
──ジャギィィンッ!!
そこでヤーコンは、コウキの意図を察した。
「なるほど、ただ受けるのではなく受け止めさせたのは……転んだ衝撃で岩をこっちに寄越すためか」
「そういうことです!!」
「しかし、まだ甘いな!! その程度の岩なんざ、ドリュウズにとっちゃ豆腐みたいなもんだぜ!!」
──ジャギギギィィン!!
ヤーコンの言う通り、山のようにあった岩がドリュウズによって、どんどんバラバラに引き裂かれてゆく。ドリュウズの猛攻が再び始まるのも、時間の問題だ。だが……コウキにはそれも想定内。ドリュウズが目の前にあった岩を切り裂いた、その時……
──ゴォォォォッ!!
「エェンブゥゥッ!!」
「なに!? ドリュウズ、『じならし』!!」
「ドリュウゥゥ!!」
──ズゴゴゴゴゴッ!!
『ニトロチャージ』を使って、突っ込んできたエンブオー。それに対応するために、ドリュウズがまたしても『じならし』で攻撃する。またしてもバランスを崩す……と思いきや、コウキとエンブオーはそこで口角を上げた。
「エンブオー、ジャンプだ!!」
「ブォォォォッ!!」
「残念だったな!! 踏みしめる地面が揺れてたせいで、高度が低いぜ!! ドリュウズ、『いわなだれ』!!」
ヤーコンはそう言って、エンブオーを大量の岩で押し潰そうとする。しかしエンブオーもコウキも、まだ諦めてはいない。
「今だ、エンブオー!! 『かえんほうしゃ』で、更に上へ!!」
「ブォォォォッ!!」
──ゴォォォォォッ!!
「なっ……!? 空中でいわなだれを避けただと!?」
──ズドドドドォォン!!
ヤーコンもこれには驚愕を隠せない。そして、エンブオーはドリュウズの真上まで辿り着いた。
「そのまま『ヒートスタンプ』ッ!!!」
「ブァァァァァァ!!!」
「ドリュウズ、『きりさく』で迎撃しろ!!」
「ドリュウゥゥゥッ!!!」
──ズゴァァァァァッ!!!
二つの攻撃がぶつかり合って、轟音がジム全体を揺らす。煙が晴れて、そこに立っていたのは……
「……ド、リュ……」
「ブゥッ、ブゥッ……」
「よっし!! ありがとう、エンブオー!!!」
勝利したのは、エンブオーの一撃だった。倒れたドリュウズを見て、ヤーコンが呟く。
「……まさか、ここまでとはな。相打ちには持ち込めると思ったんだが、俺様の読みが甘かったか」
「こっちだってボロボロですよ。ありがとうエンブオー、戻ってこい」
「だがまだだ、砂嵐はまだ続いてる!! サンドパン、行け!!」
「サァァァーンッ!!」
そこでヤーコンは、サンドパンを繰り出した。特性『すながくれ』は、砂嵐が吹いている時だけだが、攻撃が当たりづらくなる効果がある。『すなのちから』と同じ、厄介な特性だ。
「頼む、ハハコモリ!!」
「ハハァーリッ!!」
「草タイプか……だが、虫タイプなら話は別だ!! サンドパン、『いわなだれ』!!」
「パァァァァンッ!!」
サンドパンが、いわなだれをハハコモリの上に呼び出す。しかし、コウキは冷静に指示を出す。
「ハハコモリ、避けながら『ねばねばネット』をバラ撒け!!」
「モォーリッ!!」
──ズドドドドォォン!!
「躱してくるか。それなら……サンドパン、『つめとぎ』だ!!」
──ギャリンッ!!
刃を研ぐような音が聞こえてくる。攻撃力と、命中率を上げる技。次は躱せない、コウキはそれを察して、ハハコモリにサンドパンから見て左に行くよう指示を出す。
「……ハハコモリ、俺の指す位置に!!」
「ハハリッ!!」
「悠長にしてていいのか!? サンドパン、『いわなだれ』!!」
大量の岩が、ハハコモリを狙って出現する。そこでハハコモリに、コウキが指示を出した。
「ハハコモリ、突っ込め!! 『リーフブレード』だ!!」
「ハハリィィィッ!!」
「捨て身の特攻か? 残念だが、サンドパンには当たらんよ!!」
無論、サンドパンもただ突っ立っているわけがない。左から突っ込んできたので、後ろに跳べばその先は右。その先にあるのは……さっき吐いた、ねばねばネットだった。
「足元に気をつけろよ!!」
「……!? サンドパン、そっちはまずい!!」
「『すながくれ』を信じすぎたな!!」
一度避けてしまえば、『すながくれ』の性質上もう一度見つけるのは困難になる。だから、一度避けて、探している間にいわなだれを叩き込む。それがヤーコンの作戦だったのだが……なにも砂で前が見えにくいのは、ハハコモリやコウキだけではない。
──ベチョオ……
「パンッ!?」
「そこだ、『リーフブレード』!!」
「ハァリィィィ!!」
「サンドパン、『いわなだれ』で押し潰せ!!」
ヤーコンはハハコモリを道連れにするために、ネットに絡め取られたサンドパンに指示を出す。そこでサンドパンの体に、リーフブレードが振るわれた。
「ハリッ、ハリッ!! ハァリィィィ!!」
──ズジャジャジャッ!!!
「サァン、ドォォォ……」
「ハハコモリ、『こらえる』!!」
──ズドドドドォォォン!!!
その瞬間、大岩がハハコモリに殺到した。本来なら、脆いハハコモリは一撃だ。しかし……こらえるのおかげで、ハハコモリはHP1で耐えていた。
「『すなあらし』のダメージがある。残念だが、ここまでだな」
「……それはどうかな?」
「ッ……砂嵐が消えた!? ここでか!?」
ヤーコンもそれに困惑し……すぐに気づいた。
「まさか、お前……ワルビルが砂嵐を放った時も、さっきねばねばネットを放った時も……その時から時間や、着地地点をわかっていたのか!?」
「そういうことですね!! 描いた放物線で、大体どの辺に着地したかはわかる。いわなだれはハハコモリの『こらえる』で何とかなるから、あとはリーフブレードを当てるだけだった、ってわけです」
「なんて野郎だ……ここまで計算づくなのか。俺はまんまと嵌められたってわけかよ。チッ……」
舌打ちした後、ヤーコンはサンドパンを戻し……最後のボールを取り出す。そこでコウキは、消耗したハハコモリをボールに戻した。
「ありがとう、ハハコモリ……最後は頼むぜ、マリルリ!!」
「やっぱりそいつか……行け、イワーク!!」
「グォォォォッ!!」
消耗してはいるが、まだマリルリのHPは残っている。効果抜群を取られるエンブオーより、マリルリの方が戦えると判断したのだ。コウキがそこで啖呵を切る。
「このまま勝たせてもらいます!!」
「普通に考えれば、そうなるだろうな。だが……!! 諦めるのは簡単、いつだってできることよ!!」
「マリルリ、イワークに『じゃれつく』だ!!」
そこでヤーコンは、その行動を見て……イワークに指示を出す。
「イワーク、『ロックカット』!!」
──ギャギギギッ!!
「ウォォォォォッ!!」
(素早さを上げたか……マリルリの素早さはそこまでじゃないし、『アクアジェット』も持ってない。素早さが逆転したな)
そのままマリルリがイワークに突っ込んで、可愛らしい音と共に何発も殴りつけて、離脱する。
「マリィィィー!!」
──ポカポカポカポカ!!
「グォッ……!!」
「まだだ、イワークはその程度じゃ落ちねぇ!!」
コウキもそれは理解していた。攻撃の意図は、あくまで特性『がんじょう』の対策のため。
(HPが必ず1残るのは、HPが満タンの時だけだ。さっき『じゃれつく』で攻撃力が下がったから、一撃くらいは耐えられるはず……イワークの攻撃の種族値は低いから、大丈夫だ)
「マリルリ!! 『アクアテール』でトドメだ!!」
「マリィィィッ!!」
「やらせるかよ、イワーク!! 『じならし』!!」
「グォォォォォン!!」
──ズゴゴゴゴゴッ!!
イワークは地面を揺らして、マリルリを転ばせようとする。しかし、もちろんその程度想定内でないはずもない。
「甘い!! マリルリ、『アクアテール』をその場に叩きつけて『とびはねる』!!」
「マッリィィィィ!!」
──ドパァァァァァン!!
「攻撃を跳躍のために使うとは……だが、まだだ!! イワーク、『いわなだれ』で追撃しろ!!」
「グォォォォォォッ!!!」
大岩がマリルリの上を取った。そこでコウキはヤーコンにとって、衝撃的な命令をする。
「今だ、マリルリ!!」
「来るか!!」
「……『あまごい』!!」
「なんだと!?」
攻撃してこないことに、ヤーコンは驚愕する。そのまま着地して、マリルリが走り出す。
「空中じゃ自由に動けない。いわなだれで袋叩きにされたら、消耗したマリルリじゃ受けきれない可能性もありますからね!! それに……いわなだれを出してる最中に、他の技は出せないでしょ!?」
「くっ……イワーク、『いわなだれ』をマリルリの目の前に!!」
「グォォォォォッ!!!」
──ドドドォォォン!!
マリルリの目の前を塞ぐように、大岩が次々に出現する。しかし、コウキは全く怯まない。
「マリルリ!! 『アクアテール』で岩の上に飛び乗れ!!」
──ドパァァァァン!!
「マリィィーッ!!!」
「押し潰せ、イワーク!!!」
「もう一回だ、マリルリッ!!!」
──ドッパァァァァァァン!!!
──ズガァァァァン!!!
コンマ一秒の差で、マリルリが岩の上から離脱する。マリルリの位置は、イワークの頭の真上。コウキが、マリルリと共に全力で叫ぶ。マリルリが一回転しながら、イワークに全力のアクアテールを叩き込む。
「『アクアテール』だぁぁぁぁぁッ!!!」
「ルッリィィィィィィ!!!」
──ドバギャアァァァァァ!!!
「オ、オォ、ォ……」
──ズドドドォォォォ……ン。
大岩の蛇が倒れ込んで、辺りに砂埃が舞う。それを見たヤーコンは、ひとつため息をついてから言った。
「やれやれ……本気で戦って負けると、清々しいな!!」
「よっしゃあぁぁぁぁっ!!!」
「マリィー!!」
コウキの喜びようを見て、ヤーコンはバッジと賞金を差し出した。
「フンッ、くれてやる。元々これが欲しくて来たんだろ?」
「ありがとうございます!!」
「ほら、こいつも持っていきな。『じならし』のわざマシンだ。お前なら使いこなせるだろうよ」
コウキはそれも受け取って、お礼を言う。
「ありがとうございます!!」
「ったく……とんでもねぇのが現れたもんだ。二年前には、トウコとかいうヤツもいたが……あいつと同じ……いや、それ以上かもな」
「そこまで言ってもらえるなんて、嬉しいですね!!」
純粋に喜ぶコウキを見て、ヤーコンは優しい目になった。
「フッ……その目を見ると、嫌でも思い出しちまう。タロのヤツは、元気でやってるだろうか……」
(そういえばタロちゃん、ヤーコンさんの娘さんだって言ってたよな……)
「娘さんですか?」
知っているとは言わずに、コウキは知らないていで尋ねる。
「あぁ、とにかく『かわいいポケモン』が大好きなヤツでな。炭鉱や宝石には見向きもせず、可愛らしいポケモン引き連れて、離島の学園に行きやがった。全く、手のかかる娘だ……おっと、身の上話しててもしょうがねぇか」
「僕はもっと聞きたいですけどね」
「そうか? まぁ、それはまた今度だ。連れていきたいところがある、ワシに着いてこい!!」
そう言って、ヤーコンはコウキと共に外に出た。そこで、ヤーコンを見つけたヒュウが叫ぶ。
「あ、お前はもうジムをクリアしたのか? 流石だなッ!!」
「ヒュウ兄さん、これから挑戦?」
「ちょっと待ってろ、すぐ戻ってきてやる」
そう言ってヤーコンは、PWTの方へ歩いていく。コウキはそれについて行く。
「……ここだ。ここが『ポケモンワールドトーナメント』、略して『PWT』さ!!」
「わぁぁ、すごい活気だ……!!」
「なんたって、イッシュだけじゃない……全地方をあげた一大イベントだ。チャンピオンも来るって噂だぜ? アンタなら、ここに参加してもいいだろう……じゃあ、エントリーは早めにしとけよ!!」
そう言って、ヤーコンは去っていった。コウキはお礼を言って、ホドモエトーナメントにエントリーしに行く。
「……はい、エントリー完了です。大会開始まで、しばらくお待ちください」
「ありがとうございます……さてと、今日はもう遅いし、明日から準備するか」
コウキはそう言って、今日宿泊するホテルへと向かった。
その日の夜のこと。コウキは夢の中で、誰かの声に起こされる。
『……目覚めてください、人の子よ』
「ん……ん!? 神か!?」
『あなたの知っている『神』ではありませんが、そうです』
そう言ってコウキの前に現れたのは、光の塊のような存在だった。それにコウキは、見覚えがある。
「ア、アルセウス……!? なんでアンタがここに? 神は?」
『あの不届き者は私が消しました。これでもう、奴の欲望に振り回されることはありません』
「あ、ありがとうございます……死んだのか。なんか可哀想な気も……」
コウキがそう言っていると、アルセウスは明らかに申し訳なさそうな口調で言った。
『申し訳ありませんでした。私が軽はずみに許可したばかりに、あなたの命を奪うとは……謝っても許されないことはわかっています、しかし……』
「い、いやいや!! アルセウスさんは悪くないでしょ!? 悪いのはあいつで……」
『それは私にも責任があります。相手のポケモンが強かったのは、私からの謝罪のひとつです。あなたの『強い相手と戦いたい』欲望を読み取り、相手を強くしました』
あれはアルセウスがやったのか。コウキはそれを聞いて、少し驚いた。
「あ、ありがとうございます……」
『しかし、それだけでは不足。せめてものお詫びの印に……こちらをお受け取りください』
「これ、マスターボール!? ひいふうみい……何個あるんですか?」
恐る恐る聞くと、アルセウスはとんでもないことを言った。
『100個あります』
「いやいやいやいや!! 初代のバグ技じゃないんですから!!!」
「それだけではありません、ポケモンを強くするアイテムに、特訓用の道具に、お金に変えられる玉に、それから私のプレートを一枚……」
「待って待って待って!!! そんなにもらえませんよ!!!」
あまりに過剰な施しに、コウキは嬉しいを通り越してドン引きしていた。アルセウスはそれを見て、言う。
『やはりこれでは不足ですか、では……』
「増やすな!!! 減らして!!!」
『そんなことはできません。あなたに奴が行ったことを考えれば……』
コウキは申し訳なさそうなアルセウスに、必死に伝える。
「確かに、僕は勝手にポケモン世界に転生させられちゃいましたけど……今、すごく楽しいですし!! 大満足ですよ!!」
『しかし……何かしないと、私は……欲しいものを言ってください、どのような物でも出しますよ』
「……それじゃあ、僕の言う物を出してもらえますか?」
コウキは埒が明かないと思って、出して欲しい物をアルセウスに伝える。
『わかりました、どうぞ』
「一瞬!? すげぇ、流石は創世神……」
『奴の作った『ヒロイン図鑑』は、私が引き継ぎましょう。私はいつでも、あなたを見守っています』
そう言って、アルセウスが消える。コウキはその瞬間、また眠りに落ちた。そして、次の朝……
「ん……もう朝か……って、机の上が!?」
机の上に、注文した大量のアイテムが所狭しと置かれていた。コウキはそれを見て、ため息をつく。
「欲を言うなら……バッグに詰めといて欲しかったなぁ」
そう言ってコウキは、アイテムを頑張って鞄に詰めることになったのであった。
次回、努力値を振ったり色々します。