朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版)   作:とも667

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 ここからが本番です。


第11話 重なる物語

コウキは荷物を鞄に詰めた後、ホテルから出た。これからコウキがやることは、もう決まっている。

 

「とりあえず、あのポケモンを捕まえて……努力値振りながら、レベル上げだな」

 

 努力値。コウキが『現代にいた』頃は、何度も目にした言葉。この世界では『きそポイント』と呼ばれているものだ。

 

「とりあえず、古代の抜け道に行こう」

 

 コウキはPWT横の、古代の抜け道へと向かう。そこでコウキは、目当てのポケモンを発見した。

 

「いた、モグリュー!!」

 

「モグッ!?」

 

「シンボラー、『サイケこうせん』だ!!」

 

「シィィィィッ!!」

 

 ──ジュドドドドッ!!

 

 モグリューを見つけるや否や、コウキはすぐに指示を出す。シンボラーから放たれた、サイケデリックな色の光線がモグリューに直撃した。モグリューはそれだけで倒れそうになっている。

 

「モ、モグゥ……」

 

「今だシンボラー、『さいみんじゅつ』!!」

 

「ボラァァァァッ!!」

 

 『さいみんじゅつ』でモグリューを眠らせて、コウキがそこでボールを投げる。

 

「今だ、スーパーボール!!」

 

 ──カチッ。

 

「よし、モグリューゲット。ありがとう、シンボラー!!」

 

「ボラッ!!」

 

 ドリュウズの進化前のポケモン、モグリュー。コウキはそれを捕まえて、抜け道から出る。

 

「……さてと。ここからが本番だ」

 

 コウキはそう言って、ポケモン達にアルセウスからもらったアイテムを与え始める。

 

「まず『まっさらもち』をみんなに食べさせて、基礎ポイントをゼロにする……」

 

 それからコウキは、色とりどりのミントを取り出した。それをみんなにひとつずつ与えていく。

 

「エンブオーとマリルリにいじっぱりミントを、モグリューとハハコモリにはようきミント、シンボラーとゾロアにはおくびょうミントを……よし」

 

 全員の育ち方を変えて、コウキはそれから栄養ドリンクを取り出す。必要なお金を残して、買えるだけ買ったものだ。

 

「これを与えて、足りない分は人力で……パワー系アイテムがあると、もらえる努力値が増えるからな。よし、努力値振りに行こう」

 

「何やってんだろ、あの人……」

 

「ドーピングか? そこまでして勝ちたいのかよ、卑怯者め」

 

 別に違反や犯罪なわけではないのだが、何故か評判が悪い栄養ドリンク。コウキは集中していたので、言われていることにも気付かず……そのままその場を去っていった。そして……

 

「……きゅっ?」

 

「あ、進化か……わっ!!」

 

「きゅあぁん!?」

 

 ゾロアが驚いて進化を止める。進化キャンセルだ。

 

「ごめんなゾロア、進化はもうちょっと後だ」

 

「きゅん……」

 

「落ち込むなって、今日中には進化できるからさ」

 

 コウキはそう言いながら、どんどんポケモン達を成長させていく。そして……しばらくして、日がすっかり暮れてしまった頃。

 

「……よし、努力値振り終わり!! レベルもいい感じに上がったな」

 

「きゅう!!」

 

「いいよ、ゾロア。進化だ」

 

 ゾロアはそう言われて、嬉しそうに笑って光に包まれる。体がどんどん大きくなり……ゾロアークに進化した。

 

「きゅあぁぁーん!!」

 

「よし、明日からも頑張ろうな?」

 

「きゅあっ!!」

 

 その日はそこで切り上げて、次の日。コウキはモグリューのレベル上げをしていた。そして……

 

「……よし、こんなもんでいいだろう」

 

「モグッ……!!」

 

「進化していいよ、モグリュー」

 

 モグリューはそう言われると、光に包まれて姿を変え……ドリュウズに進化した。

 

「ドリュウゥゥッ!!」

 

「よし、あと重要なのは……教え技と、これだな」

 

 コウキが手に持っているのは、『ものまねハーブ』だ。それを覚えているポケモンがいれば、タマゴ技を遺伝させられる優れもの。しかし……コウキはそこで気づく。

 

「あっ……しまった!! 遺伝元のポケモン捕まえてねぇじゃん!!」

 

 コウキはそう言って、すぐにすごいスピードで走り出す。このままでは、万全でない状態で大会に臨むことになってしまうから。まだ捕まえていなかった二匹の名前を、全力で叫ぶコウキ。

 

「ダルマッカァァァ!!! マラカッチィィィィ!!!」

 

「……なんだあいつ」

 

「あれ、コウキ……だよな?」

 

 周りの人やヒュウは、その様子に困惑していた。そして、すぐに戻ってきて……その日の残りの時間を使って、ダルマッカを育てた。

 

「同時進行で育てておいたダルマッカ。レベルは36……『はらだいこ』を覚えてるな。こっちはバスラオ、『アクアジェット』を覚えてる。これを遺伝させないとな」

 

「……マリッ?」

 

「これを嗅いで、マリルリ」

 

 マリルリは技忘れで、技を二つ忘れて空欄が二つの状態だ。その状態で、コウキはまずマリルリにものまねハーブを嗅がせて、ダルマッカを出す。

 

「ダルマッカ、『はらだいこ』を教えてあげてくれ」

 

「マッカァ~」

 

「マリッ、マリッ!!」

 

 ダルマッカの動きをマリルリが真似る。するとマリルリの技に、『はらだいこ』が追加された。

 

「よし、ダルマッカ。ありがとう……さて、バスラオも頼む。『アクアジェット』を教えてあげてくれ」

 

「ラォォォ……」

 

「ルリィィ!!」

 

 今度は『アクアジェット』を真似させて、習得させる。最後に、さっき捕まえてきたマラカッチに『ふいうち』を教えてもらう。教えさせるのはエンブオーとゾロアークだ。

 

「……よし、二匹とも覚えたな。ありがとう、マラカッチ」

 

「カッチィ~♪」

 

「さて、あとはこの街の教え技で『アイアンヘッド』をドリュウズに覚えさせて……それから、わざマシンやわざレコードで技を覚えさせないとな」

 

 コウキはそう言って、ホドモエシティに戻る。そこでコウキは、ある人物に出会った。

 

「こんにちは、コウキさん。お久しぶりですね」

 

「あ……アクロマさん!! こちらこそ、お久しぶりです」

 

「見ていましたよ、あなたの修行の様子。さっきまでと比べて、全員の力が引き出されているのを感じる……素晴らしい!! やはり、あなたにはポケモンの力を引き出す力がある!!」

 

 アクロマは興味津々という表情で、コウキとポケモンを見ている。コウキは褒められて、素直に嬉しかった。

 

「へへっ、ありがとうございます」

 

「あなたを追っていれば、いつかきっと辿り着ける。ポケモンの力を、最大まで引き出す方法に……ああ、そうだ。私もPWTにエントリーしたので、よろしくお願いします」

 

「負けませんからね」

 

「楽しみにしています、それではまた……」

 

 アクロマはそう言って、去っていった。コウキはそこで、考えを巡らせる。

 

(今回は俺の影響で、大分展開に違いが出てきている。本当に最終戦の相手がアクロマなのかすら定かじゃない……十全に準備をしておかないとな)

 

「さて……技教えのところに行くか」

 

 コウキは技教えで、ライモンシティでもらった赤いかけらを渡すことで、『アイアンヘッド』を教えてもらった。

 

「よし。あとはアルセウスからもらった、この技マシンや技レコードで……」

 

 技マシンや技レコードで、みんなの技を完成させていく。イッシュにはない技マシンや、入手が難しいものなどももらったので、状態は万全だ。

 

「……後はこれを使えば、完璧だ!!」

 

 アルセウスからもらった、最後のアイテム。特性パッチ……隠れ特性に特性を変更できるアイテムだ。二つあったそれを、エンブオーとドリュウズに使って……それぞれの特性を『すてみ』と『かたやぶり』に変更する。

 

「ふぅ、これでよし!! みんなお疲れ様!!」

 

「エンブゥ!!」

 

「うん、相棒。これで相当強くなったはずさ」

 

 コウキのパーティは、こうして完成した。みんなの技構成を、コウキが改めて確認する。

 

「エンブオーがフレアドライブ、ふいうち、ワイルドボルト、インファイト。マリルリはアクアブレイク、はらだいこ、アクアジェット、じゃれつく。二匹とも物理アタッカーだな」

 

 次に確認するのは、ゾロアークとハハコモリだ。

 

「ゾロアークはナイトバースト、かえんほうしゃ、わるだくみ、ふいうち。ハハコモリはタネマシンガン、とびかかる、はたきおとす、トリプルアクセル」

 

 『トリプルアクセル』はSVから、『とびかかる』はSMからの技だが、アルセウスは用意してくれた。その他わざマシンも、全てアルセウス製だ。

 

「何が起こるか全く分からないんだ、やれることはやっておかないと……シンボラーはサイコシフト、サイコキネシス、エアスラッシュ、ひかりのかべ。ドリュウズはアイアンヘッド、じしん、いわなだれ、つのドリル……だな。よし、間違ってはない」

 

 コウキはそれぞれに、仕上げとして持ち物を持たせていく。これはアルセウスに何個かもらったでかいきんのたまを売って、ホドモエで買った物だ。

 

「エンブオーにはいのちのたま、マリルリにはオボンの実。ゾロアークはきあいのタスキで、ハハコモリにはいかさまダイス。シンボラーにかえんだま、そしてドリュウズにこだわりスカーフ。よし……これで完璧だ」

 

 コウキはなんとか、大会開始日までに育成を終わらせることができた。あとは全力を尽くすだけだ。

 

「誰が参加するんだろうか……ここも変わってるのかな? 楽しみだな!!」

 

 こうしてコウキは明日が遠足で眠れない子供の気分になりながら、明日のために就寝した。

 

 

 

 時間は何日か遡り、フキヨセシティにて。一機の飛行機が、そこに着陸する。そこからPWT目当ての人々が次々に降りてきた。

 

「PWT、チャンピオンも出るらしいぞ!!」

 

「マジかよ、それじゃ一人勝ちじゃねぇか!!」

 

「わかんないぞ、昔のチャンピオンみたいなダークホースがいるかも……」

 

 そんな喧騒の中で、一際大きな人だかりができている部分があった。その中心にいるのは……

 

「ハルカさん、PWTに参加なさるとのことですが……本当ですか!?」

 

「はい、優勝目指して頑張ります!!」

 

「おぉぉぉ、ホウエンチャンピオンが出るってよ!! これは期待できる!!!」

 

 そこにいるのは、ホウエンチャンピオン兼ポケモンコンテスト優勝者。ポケモントレーナーの、ハルカだ。

 

「では、マイクに意気込みをどうぞ!!」

 

「ポケモン達と一緒に、頑張ります!! 皆さん、応援よろしくお願いします!!」

 

「ありがとうございまーす!!」

 

 激しいインタビューと人だかりの中……そこから少し離れた場所で、隠れてグルメを楽しむ少女とその友達。

 

「ハルカさん、すごい人気だね……」

 

「ホウエンチャンピオンってことは、強いんだろうなぁ。 一回戦ってみたいなぁ~!!」

 

「相変わらずだね、生徒会長は……」

 

 パルデアの、グレープアカデミー生徒会長兼、チャンピオンランクのネモ。それを横目で見ながら、ヒウンアイスを舐めるチビチビ食べる女の子……元スター団ボス、カシオペアのボタン。

 

「アギャス!!」

 

「ふふっ、ミライドンの分もあるよ? はい」

 

「アギャ~♪」

 

 バイオレットを基調とした、未来的なデザインの不思議なポケモン、ミライドン。そして、そのトレーナーであり、パルデアの現チャンピオンのアオイ。ミライドンはアイスをもらって、まるで犬のように喜んで齧り付く。

 

「おーい、みんな!! 『ビレッジサンド』買ってきたぜ!! みんなで食べ……」

 

「アギャギャス!!」

 

「おぉ、ミライドン。さっきまで食ってたのに、まだまだ腹ぺこちゃんか? そう言うと思って……ほら、お前の分もあるぜ」

 

 差し出されたビレッジサンドを、美味しそうに食べるミライドン。みんなもそれをもらって一緒に食べる。

 

「……美味しい!!」

 

「こりゃ美味い、パルデアでも作れないか試してみよう!! 具は何かなっと……」

 

「イッシュにもこんなに美味しいサンドイッチがあるんだね!! ブルーベリー学園にはなかったから、新鮮だよ!!」

 

 みんなでグルメを楽しんでいた時、ネモが全員に言う。今回の旅の、真の目的を。

 

「ところでみんな、忘れてないよね? 今回の旅の目的!!」

 

「ポケモンワールドトーナメント、略してPWT。でしょ? 忘れてないよ」

 

「私も出たかったんだけど……定員オーバーでね、残念。だけど、アオイは出られるからね!! その応援のために来たの!!」

 

 アオイはそう言われて、少し照れている。

 

「えへへ……世界最強を決めるなんて、なんか緊張しちゃうな」

 

「いつも通りでいいだろ、アオイはめっちゃ強いしな!!」

 

「うん、私が保証する!! なんたって私のライバルだからね!!」

 

 四人が仲良く話している中……ハルカとは違うマスコミに囲まれながら、歩いていく少女が一人。ガラル現チャンピオンの、ユウリだ。

 

「チャンピオンユウリ!! イッシュは今のところいかがでしょうか?」

 

「素晴らしい場所だと思います。グルメも美味しいですし、ヒオウギの高台などにも行ってみたいですね」

 

「おぉ、流石はチャンピオン! 冒険心旺盛ですね!! ではチャンピオン、PWTへの意気込みをお願いします!!」

 

 そう言って向けられたマイクに、ユウリは笑顔でポーズをとって答える。

 

「私のチャンピオンタイム、見逃さないでね!! レッツ、チャンピオンタイム!!」

 

「チャンピオンタイム、いただきました!! ありがとうございまーす!!」

 

「ユウリさん。ホドモエに向かいますので、車にお乗りください」

 

 ユウリはそう言われて、車に乗り込んで……笑顔で手を振りながら、ホドモエへと向かってゆく。そして、カメラが無くなった途端……ユウリは虚無を顔に出す。

 

(これがダンデさんの気持ち、か……)

 

 チャンピオンだった時のダンデは、ずっとテレビを意識して演技をしていた。今、ユウリも同じ状態になっている。その上ユウリには、一人たりとも追いつける人間がいなかった。強さゆえの孤独と、チャンピオンを演じる苦しみ。友人たちはみんな、別の道に進み……自分らしく生きている。

 

(今の私は……『自分らしい』のかな?)

 

 そうでなかったとしても、どうにもならない。自分はチャンピオンなのだから。みんなの夢で、憧れでいなければ、いけないのだから。ユウリは自分をどんどん追い込んでいた。

 

(今回もきっと、圧勝だろう。毎回全力で戦うとすぐに終わって、聞こえてくる歓声……相手からの賞賛の言葉。あの頃のドキドキは、もう感じられない)

 

 あの日に戻りたいと、ユウリは願う。しかし、どれだけ願っても時間は戻らないのだ。残酷な現実に泣きたくなっても、泣くことは許されない。自分は、チャンピオンだから。

 

「あぁ……そっか」

 

「どうされました?」

 

「いや、なんでもないです!!」

 

 笑顔でそう答えて……ユウリはようやく気づく。自分に負けた時に見せた、とても悔しそうな顔の後の……あの、笑顔を。

 

(いつかあんな笑顔、できるといいな)

 

 そう思いながら、ユウリはPWTへ向かっていった。他のみんなもそれぞれ、PWTへと向かってゆく。アオイ達は車に乗り込んで、談笑している。

 

「楽しみだね、アオイ!!」

 

「うん!!」

 

「どんな人が出るんだろう? もし強い人がいたら、一回戦わせてもらいたいな~!!」

 

「相変わらずのバトル大好きちゃんだな……」

 

 そしてハルカも、車でPWTに向かっていく。

 

「オダマキ博士も、ユウキも、お母さんも見てるだろうし……頑張らなきゃね!!」

 

 彼女達は……いや、コウキすらもまだ知らない。これが、運命の決定的な分水嶺であったことを。そして……新たな物語の、幕開けであることも。

 

「「「絶対に勝つ!!」」」

 

 最大のPWTが、今……幕を開ける。




次回、PWT。
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