朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版)   作:とも667

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 VSユウリ、PWT決勝戦。


第14話 ガラルチャンピオンのユウリ

ユウリはサレナに余裕の勝利を収めて、休憩しに自販機のあるロビーに来ていた。ミックスオレを飲んで、ユウリがため息をついた。

 

「はぁ……」

 

「コウキ、さっきの試合もすごかったな!! 流石だぜ!!」

 

「えへへ、ありがとう。ヒュウ兄さん」

 

 ふと、他の選手の声が聞こえてきて……ユウリがそちらを見ると、一回戦で敗退したトレーナーのヒュウと、既にチャンピオンを二人も倒しているダークホース、コウキがいた。その様子を見て、ユウリは昔を思い出す。

 

『ユウリ、バトルしようぜ!!』

 

『この時間がずっと続けばいいのにな!!』

 

『俺達、ずっと友達だぜ!!』

 

 思い出される、明るい親友の顔。チャンピオンになった自分にも、対等に接してくれた……ユウリのかつてのライバル、ホップ。だが、今となってはもう……

 

「ここまで来たなら、目指すは優勝だね。応援させてもらうよ」

 

「決勝戦、絶対勝てよなッ!! 俺も応援してるぞ!!!」

 

「うん、もちろん!! 任せといてよ!!」

 

 彼らは純粋に、ポケモンバトルを愛している。ユウリもかつてはそうだった。しかし、今はもうその感覚は、消えてなくなってしまった。

 

『流石はチャンピオン、余裕の勝利だぁーっ!!』

 

『いいぞー、チャンピオン!!』

 

『やっぱり敵わないか……流石ですね、チャンピオン!!』

 

 毎回、変わり映えしない勝利の景色。追い詰められる感覚を味わいたくて、少し手を抜いてみても……それでも、勝ってしまう。ユウリは強くなりすぎていたのだ。ホップは別の道に進んでいったし、他のみんなと戦ってみても……結果はお察し。ユウリは広いガラルで、一人ぼっちになった。

 

「私もあんな風に、なれたらな」

 

 ユウリはそう呟いて、控え室に戻っていった。決勝戦の相手は、チャンピオン二人に勝って一躍時の人となっている、ポケモントレーナーのコウキだ。しかし……ユウリの顔に、期待から来る笑みや緊張は、欠片も浮かんでいなかった。

 

「……どうせ、『勝てちゃう』よ。さっきの人も、すぐ勝てたし」

 

 諦観を口にしながら、控え室のソファに座り込むユウリ。いくら懐かしんでも、二度と戻らないあの過去。からっぽの心を顔に出さないように、ユウリは無理矢理笑顔を作る。

 

「そろそろかな。ユニフォームに着替えよう」

 

 その後、ユウリはアナウンスの指示に従って、ガラルのユニフォームに着替え……ボールを持って会場に向かっていった。

 

 

 

 場所は変わって、熱気に満ちた会場内。そこでアナウンサーが叫ぶ。

 

『さぁ、皆さんお待たせしました!! PWTホドモエトーナメント、シングルバトルもいよいよ大詰め!! それでは皆さん、ビジョンをご覧くださいッ!!』

 

『準決勝戦、ユウリVSサレナ!! ガラルチャンピオン強い!! ヒュウに圧勝したサレナに何もさせずに勝利ッ!!』

 

『そして、誰もが熱狂した準決勝戦!! アオイVSコウキ!! またしてもコウキの下克上!! この上なく熱い戦いを制したのは、コウキだーッ!!!』

 

 会場中から歓声が上がる。アナウンサーはそこで、さらにその熱に油を注ぐ。

 

『さぁ、ついにPWT決勝戦!! 選手入場のお時間ですッ!!!』

 

「「ワァァァァァァァー!!!」」

 

『まずは、左コーナー!! ポケモンバトルが特別盛んなガラル地方で、チャンピオンになった強者の中の強者!! ガラルチャンピオンユウリの入場です!!!』

 

「「うぉぉー!! ユウリ!! ユウリ!! ユウリ!!」」

 

 歓声とスポットライトを浴びながら、ユウリが歩いてくる。観客席に笑顔で手を振りながら、リングに上がった。そして、続けて右コーナーにスポットライトが当たる。

 

『右コーナー!! 初挑戦でチャンピオン二人抜き!! 破竹の勢いで猛進する、歴代最強のダークホース!! ポケモントレーナーのコウキ、入場だァ!!!』

 

「「うぉぉー!! コウキ!! コウキ!! コウキ!!」」

 

「ここまで来たら、目指すは優勝以外ねぇよな!! 絶対勝ってやる!!」

 

 そう言って、コウキは自分の頬を叩いて気合を入れる。二人がリングに上がると、ビジョンに二人が映し出される。

 

「よろしくお願いします!!」

 

「はい!! みんな!! 私のチャンピオンタイム、思う存分楽しんでいってね!!」

 

「「ワァァァァァァ!!!」」

 

 またもや歓声が上がる。これ以上ない程の熱気に包まれた会場で、アナウンサーが声を上げる。

 

『決勝戦!! ユウリVSコウキ!! レディ……ファイト!!!』

 

「行け、ドラパルト!!」

 

「ドラァァ~!!」

 

 ドラパルトがユウリのボールから現れる。それを見たコウキは、そこで出すポケモンを決めた。

 

「頼むぜ、ドリュウズ!!」

 

「ドリュウゥゥゥッ!!!」

 

(相手はドラパルトか……相性的にはこっちが有利だ。ドラゴンアローは半減にしていけるし……だがそれは、相手もわかっていることのはず。状況が変化すれば、交換してくるだろう。控えのポケモンがなにかはわからないが……まずは出方を伺うか)

 

 コウキはそう考えて、命令を出そうとする。そこでユウリも、ドラパルトに命令を出した。

 

「ドラパルト、『おにび』!!」

 

「パルゥゥゥ!!」

 

「ッ、ドリュウズ!! よく見て避けろ!! それには当たっちゃいけない!!」

 

 コウキが叫ぶと、ドリュウズはその危険性を理解したのか、鬼火をしっかり見てかわす。それを見たユウリは、素直に感心した。

 

「避けたか……やるね」

 

(おにびは避けられた、同じ手は多分通じない。でも、まだまだこっちの手は残ってる)

 

「ドリュウズ、ここだ!! 『アイアンヘッド』!!」

 

 コウキが命令を出すと、ドリュウズが体を鋼鉄のようにして、ドラパルトに頭突きを繰り出す。そこでユウリが、ボールを取り出して言った。

 

「ドラパルト、戻れ!!」

 

「なにっ!?」

 

「行け、ウーラオス!!」

 

「ラォォォォッ!!」

 

 出てきたのはウーラオス。それもれんげきの型だ。れんげきの型は格闘・水タイプなので、はがねタイプは今一つになる。しかし、こだわりスカーフを持っているので、途中でやめることはできない。あちらもこだわりスカーフを持っており、こだわりスカーフの素早さにも対応して攻撃してくる。

 

「今だ、ウーラオス!! 『すいりゅうれんだ』!!」

 

「ウゥーラァァッ!!」

 

「ッ……ドリュウズ、ウーラオスの拳に『アイアンヘッド』だ!!」

 

 ──ズシュシュシュッ!!

 

 ──ズガァァァァン!!

 

「ドォリュッ……ドリュウゥゥ!?」

 

 ドリュウズは水を纏った連撃を受けて、大きく吹っ飛ばされてしまう。しかし、ドリュウズは倒れていなかった。大ダメージを受けたが、立っている。

 

「倒し切れてない? どうして……」

 

「簡単なことですよ。アイアンヘッドを一瞬の連撃に対して打ち込むことで、ある程度勢いを相殺したんです。それでも、生き残れただけですが……」

 

(倒れなかったか。でも、問題はない……もう一度すいりゅうれんだをすれば、ドリュウズは押し切れる。もし交換されたとしても、控えにはドラパルトがいる。なんの問題もない!!)

 

 このウーラオスは、ガラルでは比較的多いエースバーンの対策をしてあるポケモンだ。こだわりスカーフも、本来はそのため。ユウリはドリュウズを倒すために、もう一度『すいりゅうれんだ』の命令をする。

 

「ウーラオス、『すいりゅうれんだ』!!」

 

「ウゥゥラァァッ!!」

 

「今だ、ドリュウズ!! 戻れ!!」

 

 ドリュウズがボールに戻る。これは、ユウリの想定内だ。

 

(やはり、交換か。なら、打ち終わったら戻してドラパルトに……)

 

「行け、ハハコモリ!!」

 

「ッ、草タイプ!? まずい……!!」

 

 ──ズシュシュシュッ!!

 

 水を纏ったウーラオスの連打が、ハハコモリの体に突き刺さる。しかし……ハハコモリは草タイプなので、水タイプを半減にして受け切る。ハハコモリとコウキが、打たれながらも笑みを浮かべた。

 

「今だハハコモリ、『タネマシンガン』!!」

 

「ハァリィィィィッ!!」

 

 ──ズダダダダダッ!!!

 

「ラオォォォッ!?」

 

 タネマシンガンが、連打を打っていたウーラオスに突き刺さる。技の最中なので、ボールに戻すこともできず……技をまともに受けてしまう。耐久に振っていなかったウーラオスでは、最大回数のタネマシンガンを受けきれない。

 

「ウーラオス!? ッ、やられた……!!」

 

「ウ、ラァァ……」

 

『ウーラオス戦闘不能、ハハコモリの勝利!!』

 

 これでコウキがまずは、一歩リード。コウキはハハコモリとハイタッチする。

 

「ありがとう、ハハコモリ!!」

 

「ハリィッ!!」

 

「私が先に、一点を取られた……」

 

 ユウリはその事実に、少し呆然とする。こんなことは、いつ以来だろうか。昔のことが、ユウリの脳裏を過ぎる。

 

『よし、一匹倒した!!』

 

『まだまだ、ここからが本番だっ!!』

 

『だよな、ユウリはこんなもんじゃない!!』

 

 その様子を心配して、コウキがユウリに声をかけた。

 

「あ、あの……大丈夫ですか?」

 

「えっ……あ!! 私は大丈夫、ごめんね!! ここからだよね!!」

 

「そうですね、まだ勝負は決まってません!!」

 

 ユウリは思い出を振り払って、目の前のバトルに集中する。出すポケモンは、当然あのポケモンだ。

 

「行け、ドラパルト!!」

 

「ドラァァ~!!」

 

「やはり出てきたか……!!」

 

 コウキにとっては、ドラパルトが一番の鬼門だ。何故なら、ドラパルトの素早さに追いつけるポケモンが手持ちにいないから。

 

(素早さで追い抜くことはまずできない。攻撃の威力も侮れないし……短期決戦で勝負を決めるしかないか!!)

 

「ハハコモリ!! 『トリプルアクセル』だ!!」

 

「ハハァリィッ!!」

 

 ハハコモリが地面を滑るように移動し、ドラパルトに近づいていく。しかし、ユウリは冷静に最適な行動を考える。

 

(ドラパルトの持ち物は『じゃくてんほけん』。弱点の攻撃を受けると、攻撃と特攻が二段階上がる……このドラパルトはミミッキュ対策で、耐久に振ってあるから、三回でも耐えられる。それなら取るべき行動は……)

 

「ドラパルト、『ドラゴンアロー』準備!!」

 

「ドラァッ!!」

 

 ドラパルトが頭を前に出して、頭についているドラメシヤを発射体勢にする。そして……向かってくるハハコモリに打ち出す。

 

「ハハコモリ、そのまま突っ込め!!」

 

「ドラパルト、撃て!!」

 

「パァルゥゥゥッ!!」

 

「メシャ~!!」

 

 ──ズドォォォン!!

 

 ドラメシヤが、向かってくるハハコモリに突撃する。まず一発食らったが、ハハコモリは怯まない。そのまま突撃して、トリプルアクセルの回転を活かして体当りする。体当りされた部分に氷が散り、氷が割れるような音が響く。

 

「ハリッ……アァァリッ!!」

 

 ──パキィンッ!!

 

「ドラッ……!!」

 

「怯むな、ドラパルト!! もう一発!!」

 

 二発目のドラゴンアローを、ドラパルトが構える。そこにハハコモリが、トリプルアクセルの二発目を打ち込んだ。

 

「ハァァリィッ!!」

 

 ──パキィィン!!

 

「ドラッ……パルゥゥッ!!」

 

「メシャーッ!!」

 

 ──ズドォォォン!!

 

 二発目もハハコモリに命中して、ハハコモリが吹っ飛ぶ。流石に手負いのハハコモリでは、二発目を耐え切ることはできなかった。弱点保険が発動して、ドラパルトの攻撃力が上昇する。

 

「ハァ、リィィ……」

 

「ありがとう、ハハコモリ……あとは任せろ」

 

(最後の一匹か、それともあと一撃喰らえば終わりのドリュウズか……どちらを出してくる? 今のドラパルトなら、どちらでも仕留められるけど……)

 

 ユウリが予測を立てている中で、コウキが選択したのは……ドリュウズだった。

 

「もう一回頼むぜ、ドリュウズ!!」

 

「ドリュウゥ……ッ!!」

 

「そっちを出してきたか……」

 

 コウキとユウリが、同時に考えを巡らせる。無言の激しい戦いが、二人の間で起こっていた。

 

(あと一撃喰らえば終わりだが、火傷を一度耐える程度にはHPが残っている。鬼火を選択されても一回は耐えて攻撃できる、が……そう上手くいくとは思えないな)

 

(ドリュウズは火力が高い上に、ドラパルトはハハコモリの攻撃で手負いだ。ドラゴンアローで倒してもいいけど……今の体力でドリュウズの地震を耐え切れるかは、正直不安だな。それなら……)

 

「ドラパルト、『ゴーストダイブ』!!」

 

 ユウリが命令すると、ドラパルトは一瞬で闇の中に潜って姿を消した。コウキはそれを見て、対応策を考える。

 

(どうする……まず、地面の下にいるわけじゃないから、じしんは当たらないと見ていい。アイアンヘッドも、ドラパルトの素早さについていけなければ終わり。どうするか……)

 

「……ドリュウズ、自分の後方に、『いわなだれ』だ!! 一気に落とすんじゃなく、ゆっくり落とせ!!」

 

「ドリュウゥゥゥッ!!」

 

 ──ズドドドォォン!!

 

(……後方に出てくると読んで、先に落としているのか。ゆっくり落とすことで、後方からの奇襲を防いでいる。だけど……ゴーストダイブは、どこにでも出てこれるんだ!!)

 

 ユウリは見えた好機を逃さず、ドラパルトに命令を出した。その瞬間、ドラパルトが闇から飛び出してくる。そして……コウキの顔に笑みが浮かぶ。

 

「今だ、ドラパルト!! 前方から『ゴーストダイブ』!!」

 

「今だ、ドリュウズ!! 残った岩を前方に落とせ!!」

 

「なにっ!?」

 

「ドリュウゥゥッ!!!」

 

 ドラパルトが出てきた瞬間、ドリュウズの目の前に、大岩が山のように落ちてくる。高速で飛び出して、襲いかかろうとしたドラパルトは……急に止まることはできず、そのまま大岩に突っ込んでいく。そして……勢いのまま、大岩に激突した。

 

 ──ドゴォンッ!!

 

「パァルゥゥ……!?」

 

「まさか、ゆっくり落としていた理由は……!!」

 

「半分は当たりですよ。もう半分がこれだったというだけです!! ドリュウズ、今度はドラパルトに『いわなだれ』だ!!!」

 

 コウキが笑ってそう言って、ドリュウズに次の指示を出す。ドリュウズは全力で、大岩をドラパルトへと落とす。いくら動きが早くとも……頭を強打した後、すぐに動き出すことはドラパルトにはできなかった。

 

「ドリュウゥゥゥ!!!」

 

 ──ズドドドォォォン!!!

 

「ドラッ、パァァ……」

 

『ドラパルト、戦闘不能!! ドリュウズの勝利!!』

 

 ユウリはドラパルトをボールに戻して……記憶がまた、脳裏を過ぎっていく。チャレンジャーに、ポケモンを一匹倒されることは何度かあったが……追い詰められるのは、チャンピオンになってから今まで、一度もなかったことだ。

 

『どうした、そんなものか!? チャレンジャー!!』

 

『まだだ……負けない、負けてたまるか!!』

 

(……負けたくない。このまま負けるなんて、私のプライドが許さない。絶対に、勝つんだ!!)

 

 ユウリの燃え尽きた闘志が、再び燃え上がる。あの日の思いが、湧き上がってきた。最後のボール、自分の相棒のボールを……想いを込めて、強く握りしめる。

 

「行けぇぇ!! エースバーン!!」

 

「バァァァーンッ!!!」

 

「エースバーン……あれが、彼女の切り札か!!」

 

 コウキがそう言うと、ユウリが笑みを浮かべて叫ぶ。

 

「驚くのはまだ早い!! いくよ、エースバーン!!!」

 

「バァーニィィッ!!」

 

「ポケモンをボールに戻した!? ということは……」

 

 ──キュイィンッ!!

 

 エースバーンがボールに戻り、ユウリのつけている腕輪……ダイマックスバンドから、光が溢れ出す。その光がボールに降り注ぎ……音と共にボールを巨大化させた。ユウリはあたかも、サッカーのスローインのように、それを後ろに投げる。ボールが開く音がして、エースバーンがどんどん巨大化していく。

 

 ──ピキュイィィィン!!

 

 ──ズドォォォォォン!!!

 

「バァニィィィィッ!!!」

 

「デ、デカい……なんて大きさだ!!」

 

「これがキョダイマックス、私達の切り札だよ!! その強さ、その身に刻み込め!!!」

 

 エースバーンは耳が大きく伸びた姿で、超巨大火球の上に乗っている。その大きさは最早常軌を逸した大きさで、PWT会場の天井にまで届いている。

 

「ドリュウズ!! 『いわなだれ』だ!!」

 

「ドリュウゥゥゥ!!!」

 

「させるかッ!! エースバーン、ぶちかませ!! 『ダイナックル』だぁぁ!!!」

 

「バァァァァーンッ!!!」

 

 ──ゴォォォォォォ!!!

 

 とても大きな拳が、ドリュウズに向かって隕石の如く落下する。ドリュウズも『いわなだれ』で抵抗したが……今のエースバーンにはいまひとつで、そのまま拳を受けてしまう。

 

 ──ドゴォォォォォン!!!

 

「ドリュ、ウゥゥッ……!!」

 

「ドリュウズ……ありがとう、後は任せてくれ!!」

 

「ダイナックルで倒したから、攻撃が上昇する。これで次のポケモンも……!!」

 

 コウキは、炎と格闘の複合タイプのエースバーンに、いわなだれがあまり効かなかった理由を、既に知っていた。

 

「特性はやはり『リベロ』か……!!」

 

「知ってるんだね。調べはついてるって感じ?」

 

「まぁ、そんなところです」

 

 これはSV以降の仕様なので、タイプ変化は一度だけだが……とはいえ、この状況がまずいことに変わりはない。残っているのはエンブオーだけで、相手はあと2ターンキョダイマックスしていられる。

 

(ダイマックス技は回避不可能だ。その上、ダイナックルの効果で攻撃力が上がっている。だから、俺とエンブオーのやるべきことはシンプル。やられる前に、やるしかない!!)

 

「いくぞ、エンブオー!! 絶対に勝とうぜ!!!」

 

「ブォォアァァァッ!!!」

 

「そう上手くはいかない!! こっちの方が早いんだ!! エースバーン、『ダイジェット』!!!」

 

 コウキの声に応えて、エンブオーが雄叫びをあげた。ユウリは勝負を決めるために、エースバーンに効果抜群技の指示を出す。当たれば、無事では済まないだろう。

 

「エンブオー、『フレアドライブ』だ!!!」

 

「ブゥオォォォォォ!!!」

 

 ──ゴォアァァァァッ!!!

 

「これで終わりだぁぁぁぁ!!!」

 

 ユウリがそう叫ぶ。会場の誰もが、間に合わないことを察した。勝者はユウリだと、その場の誰もが思った。しかし……コウキは笑って、叫んだ。

 

「まだまだ、勝負はここからだぜ!!! 火球に突撃しろ、エンブオー!!!」

 

「エェェンブゥゥゥゥ!!!」

 

 ──ドグォォォォォォン!!!

 

「バッ、バァァンッ!?」

 

 完全に、ダイジェットを撃つ体勢に入っていたエースバーンは……立っている場所を揺らされて、否応無しに見当違いの方向を向いてしまう。向いたのは真上……天井の方向だ。凄まじい大竜巻が、会場の天井を突き破る。

 

 ──ギュオォォォォォッ!!!

 

「なっ……!?」

 

『なにぃぃぃっ!? 天井が破られたぁぁぁ!!!』

 

「エンブオー!!! エースバーンに全力で『フレアドライブ』だぁぁぁぁ!!!」

 

 コウキの叫びに応えて、エンブオーが雄叫びを上げて激しい炎を纏う。飛び上がって、巨大化したエースバーンの体へと突撃していく。今のエースバーンは格闘タイプ……つまり、炎タイプは等倍だ。

 

「エースバーン、『ダイジェット』……」

 

「もう遅い!! いっけぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「ブゥオォォォォォォ!!!」

 

 ──ゴバオォォォォォン!!!

 

 轟音が響き渡り、会場を揺らす。凄まじい威力の炎を纏った体当たりが、エースバーンに炸裂した。いくらキョダイマックスしていても、これには耐え切れない。コウキとエンブオーが、二人で雄叫びを上げながら……エースバーンを壁へと押し出していく。

 

「バァ、ニィィィ……!!」

 

「「オォォォォォォォッ!!!」」

 

 ──ドギャァァァァァン!!!

 

 ──ドゴォォォォォン!!!

 

「バニ、イィィ……」

 

 エンブオーの全力のフレアドライブは、キョダイマックスしたエースバーンを壁に激突させて、漸く止まった。大爆発を起こして、エースバーンはみるみるうちに小さくなり……元のサイズに戻って、倒れ込んだ。そして、PWT会場に一瞬の静寂が訪れる。

 

「……」

 

「「……」」

 

『……エースバーン、戦闘不能』

 

 その言葉と共に……ユウリがエースバーンをボールに戻して、立ち尽くす。

 

「あ……」

 

『PWTホドモエトーナメント、優勝は……コウキだーッ!!!』

 

「「ワァァァァァァァ!!!」」

 

 その瞬間、凄まじい歓声がコウキとエンブオーに浴びせられる。コウキもそこで、勝利を実感し……エンブオーの手を取って、喜び合う。

 

「やった、やったよエンブオー!! 俺達、三人もチャンピオンを倒しちゃったぞ!!!」

 

「ブォッ、ブォォォ!!!」

 

「すごすぎるぞ!! こんなこと有り得るのか!?」

 

「……負け、た? 私が?」

 

 ユウリはしばらく呆然とした後……心の奥底から消えていた感情が、溢れ出してくるのを感じた。全力を尽くして負けた。悔しいけど、清々しい。久しぶりにバトルを楽しめて、嬉しい。だけど、やっぱり悔しくて……ユウリは感情がごちゃごちゃになってしまって、収拾がつかない。そこでコウキが、ユウリに言った。

 

「あっ、ユウリさん!!」

 

「……なに?」

 

「すごく楽しかったです、ナイスファイト!!」

 

 コウキはそう言って、手を出してきた。ジム戦の後にはいつも、ジムバッジをもらうのと同時に笑顔でやる……お互いを称え合う握手。ユウリは、それを少し懐かしんだあと……右手を出した。

 

「ありがとう。次は、私が勝つから」

 

「はい、いつでも待ってますよ!! って……逆か。俺が挑戦する側だな」

 

「……バカなの?」

 

 ユウリは心の底から浮かんできた言葉を、素直に口にする。それを言われて、コウキがムッとした。

 

「バ、バカ!? し、失敬な!! 一体僕のどこがバカだって言うんですか!? こう見えても、そこそこ勉強できるんですよ!?」

 

「そういうところだよ……ふふっ」

 

「どういうところだよ!?」

 

 コウキと話していると、ユウリは悩んでいたのがバカらしくなってきた。コウキは色々と弁明をしているが、それはユウリの笑いを誘うだけだ。

 

「あっははは、あーおかしい……!!」

 

「何がそんなにツボに入ってるの!? 外人のツボ独特すぎない!? ……叫んでたら喉乾いてきたよ、サイコソーダ飲みたいなぁ」

 

「あはははははは!!!」

 

 こうしてコウキは、チャンピオンとの三連戦を全戦全勝で終えて……波乱のPWTを、見事に制覇したのだった。そして、それと同時に……壊れかけだった一人の人間も、救ってみせた。

 

「あっはは、あははは……!!」

 

「だから、俺の何がそんなに……あ゛、声がれだ……」

 

「はっはっは、お腹痛いよぉ……!!」

 

 コウキ本人に、自覚はないようだが。




PWT編、完。
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