朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版)   作:とも667

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 新章突入……って感じの回です。


第15話 水を差す霹靂

ユウリとコウキの激闘が、終わりを告げた後。見事に優勝したコウキは、みんなから囲い込まれていた。

 

「コウキさん、なにか一言!!」

 

「コウキさん、こっち向いて!!」

 

「コウキさん、ポケモンを強くする秘訣は!?」

 

 四方八方から言葉を投げかけられて、コウキはキャパオーバーになっている。

 

(ど、どうしよう……有名人ってこんなに大変なのか!? 聖徳太子じゃないから、一気に全員分聞くなんて無理だよ……!!)

 

「ちょっと通してくれ!! コウキ、こっちだッ!!」

 

「あ、ヒュウ兄さん……!!」

 

 マスコミやファンを掻き分けて、ヒュウがコウキを外に連れていく。コウキは助けてくれたヒュウにお礼を言った。

 

「ありがとう、ヒュウ兄さん……」

 

「いいよ、困ってたしな。まぁ、それはそれとして……お前、ホントに優勝したんだって!? スゲェな!!」

 

「うん、全員強かったけど……なんとかね」

 

 コウキは少し照れながら、頭を搔く。そこに、チャンピオンのみんなが現れた。

 

「おーい、コウキくん!!」

 

「あ、ハルカさん、アオイさん、ユウリさんも!!」

 

「君も大変だね。有名になっちゃってさ」

 

 ユウリはそう言って、コウキに同情する。そのつらさをこの中で一番よく知っているのは、彼女だから。それに対してコウキは、苦笑いしながら答える。

 

「あはは……少しならいいんですが、あんなに囲まれると答えにくくて」

 

「それにしても、本当に優勝しちゃうなんてね!!」

 

「メガシンカも、テラスタルも、ダイマックスも使ってないのに……どこからその強さが来るんだろう?」

 

 そう言われても、コウキは転生者であること以外は、普通のポケモントレーナーだ。実際にこのような戦い方を始めたのは、つい最近である。

 

「強いて言うなら、根気ですかね……」

 

「分かる。根気が大事だよね、ポケモンを育てるには」

 

「根気か……俺も、もっと根気強くポケモンと向き合うべきなのか?」

 

 ヒュウは、ポケモンを強くする方法を模索し続けている。コウキはそこで、基礎ポイントのことを教えようとする。

 

「じゃあ、一つポケモンを強くする秘訣を……」

 

「おーい!! ヒュウくん、コウキくん!!」

 

「あっ、ベルさん!!」

 

 そこにやって来たのは、ベルだった。ここでは来ないはずなのだが……コウキは彼女が現れたことに、少し驚く。

 

「見てたよ、コウキくんの大会!! すっごい戦いだったねぇ!! そっちにいるのは……チャンピオン!? わぁ、すごいや!!」

 

「君も来たのか、ベル。コウキくん、優勝おめでとう」

 

「あ、チェレンさんも!! ありがとうございます!!」

 

 チェレンはコウキの優勝を祝いながら、ベルを見て笑う。

 

「少し見ない間に、二人とも見違えただろう?」

 

「うんうん、すごいや!! 特にコウキくん!! 丁度近くにいたから、お祝いしに来たんだよ!!」

 

「えへへ、そうですかね? ありがとうございます」

 

 コウキ達がそう言っていた、その時。空から、機械の駆動音が聞こえてきた。

 

 ──グォォォォォン……

 

「ん、なんの音だ?」

 

「これは……空からだよな? ひこうタイプポケモン、じゃなさそうだが」

 

「あっ、見て!! あれはなに?」

 

 コウキはそれを見て……絶句する。それが、見たことのあるもので……そして、ここに来てはまずいものだったから。

 

「空飛ぶ……帆船!?」

 

(プラズマフリゲート……!? 何故ここに……いやそれよりも!! 飛んでるってことは、まさか……!!)

 

「みんな伏せろッ!! 撃ってくるぞぉぉぉ!!!」

 

 コウキの叫びに、全員が反応する。そしてコウキの予想通り……船の大砲が、火を噴いた。いや、火ではなく……氷弾が飛んできたのだ。

 

 ──ドォォォォォン!!

 

 ──バキィィィィン!!!

 

「なっ……地面が凍った!?」

 

「狙いはPWTの凍結か……!! お前らの好きにさせるかよ!!!」

 

「こんなことをするのは、プラズマ団しかいない。重要人物が集まっているから、そこに氷弾を撃ち込むつもりなんだろう」

 

 コウキがボールを取り出して、自分の相棒を出す。

 

「エンブオー!! 飛んできた氷弾に『フレアドライブ』だ!!!」

 

「ブゥオォォォォォッ!!!」

 

 ──ドォォォォン!!

 

 ──ゴォォァァァァッ!!!

 

「氷が溶けた……よし!! 私達も!!」

 

 そこに一人の女性が歩いてくる。そして、船を睨みつけて……一言呟いた。

 

「クズ共め。やってくると思っていた……お願い、シャンデラ!! 『だいもんじ』!!!」

 

「シャアァァァン!!!」

 

 ──ゴォォァァァァッ!!!

 

「サレナさんも……ありがとうございます!!」

 

 コウキがそう言っても、サレナは返事を返さない。ただ、プラズマ団への憎しみだけが心を支配しているから。

 

「私達もやろう!! ゆけっ、バシャーモ!!」

 

「行っておいで、ラウドボーン!!」

 

「行けっ、エースバーン!!」

 

 三人も自分の相棒を繰り出して、氷弾からPWTを守る。

 

「バシャアァァァッ!!」

 

「ラゥゥゥゥド!!」

 

「バァァァァーン!!」

 

 三匹が炎を放って、氷を溶かしていく。それに気づいた人々が、蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。

 

「うわぁぁぁっ!! 逃げろぉぉ!!」

 

「落ち着いて!! 落ち着いて避難してください!!」

 

「避難誘導します!!」

 

 ベルとチェレンが、逃げ惑う市民達を避難誘導する。そこでコウキは、不可解な物を目にすることになった。

 

「全く……プラズマ団は無粋ですね。コウキさんの優勝を祝う暇さえ与えないとは」

 

「ッ、アクロマ……さん!? 早く逃げて!!」

 

「そうですね、私も逃げた方がいいでしょう」

 

 アクロマもそう言って、避難誘導に従う。だがコウキは、それが不可解で仕方なかった。

 

(おかしい。アクロマはプラズマ団のボスだろ? どうしてボスを避難させずに、氷弾を撃ってるんだ? 奴らの目的を考えても、アクロマを今失うわけにはいかないはず……)

 

「ゲーチスめ、一体何を考えて……まさか、色々とやり過ぎて、早めに気が狂ったか? まずいな……行動不能じゃなくて、暴れる方にシフトしたんだとしたら……」

 

「コウキ危ねぇ!! ダイケンキ、『シェルブレード』!!」

 

 ダイケンキが出てきて、飛んできた氷弾を頭の剣で切り裂く。

 

「ズォォォォォッ!!!」

 

 ──ズバァッ!!

 

「ありがとう、助かった!!」

 

「無事でよかった……それにしても、何が目的だ?」

 

 コウキはプラズマ団の目的を考える。まさか、もう遺伝子の楔が見つかったのか? 情報を漏らしてはいないはず……そう考えていた、その時。コウキが、ひとつの可能性に気づく。

 

「……やってみるか」

 

「ん? コウキ、お前何して……?」

 

「わっ!? 急になんだ……? えっと、これは……」

 

 コウキはベルに、ライブキャスターで通話をかけてみた。すると避難誘導を行っていた彼女は、焦った様子で……まるで初めて使うかのようなぎこちない動作で、通話ボタンを押した。

 

「どうしたの、コウキくん? 通話なんてしなくても、直接話せば……」

 

「……おかしいな。どうして今、『焦った』んですか?」

 

「えっ?」

 

 コウキはそう言って、目の前のベルの姿をした人物を怪しむ。

 

「あなたは二年前から、これをずっと使っているはず。あんなぎこちない動作をするのはおかしい。いや、ライブキャスターはそもそもみんなが身につけているものだ。お前は本当にイッシュの人間か?」

 

「……ケッケッケ。まぁ、バレちゃあしょうがねぇな」

 

「なに!? ベルじゃないのか!?」

 

 チェレンが驚いている。二年前からの友人すら見破れないほど、完璧な変装。ベルの姿をした何者かは、笑みを浮かべて言った。

 

「本物をどこにやった?」

 

「今頃ホテルの部屋でおねんねしてるだろうよ。まさか、俺様の変装を見破るなんて……全く、子供はこれだから嫌いなんだ」

 

「お前もプラズマ団かッ!? くそっ、よくもベルさんを……!! 正体見せろッ!!」

 

 ヒュウが、ベルの姿をした何者かに掴みかかる。ベルの姿をした何者かは、そこで被っていた化けの皮を脱ぎ捨てて、ヒュウに投げつけた。

 

 ──バサァァッ!!

 

「うわっぷ……!?」

 

「ヒュウ兄さん!! ッ、お前は……!?」

 

「俺様は、ロケット団幹部のラムダ様だ!! 特技は変装さ、覚えときな!!」

 

 コウキはその男がここにいることに驚愕する。ロケット団は金銀で、完全に解散したはずなのに。

 

「お前ら、解散したんじゃ……」

 

「あぁ、解散したよ。けどな、プラズマ団の奴らに言われたんだ……『我々に協力すれば、ロケット団再建に協力してやってもいい』ってな!!」

 

「ロケット団……悪名高い組織の幹部が、こんなところまで来てるとはね」

 

 そう言って、ユウリがラムダを睨みつける。それを見て、ラムダが嫌そうな顔をした。

 

「チッ、また子供か。三人もいやがる……ま、今回はお前らを潰しに来たんだがな」

 

「やはり目的はそれか!!」

 

「信用させたところで、後ろからポケモンで殺す予定だったんだが……勘のいいガキのせいで、失敗しちまったよ」

 

 コウキはそれを聞いて、冷たい口調で言う。

 

「失敗したなら、大人しく帰ったらどうだ」

 

「それは無理だね。そのために準備もして来たんだ!! 来い、お前ら!!」

 

「……プラズマ団!!」

 

 ラムダは嫌な笑いを浮かべながら、言った。

 

「ロケット団の残党共を全員連れてきた。お前らに倒し切れるかな!?」

 

「やるなら、相手になってやる!!」

 

「言っておく……俺は今から怒るぜッ!!」

 

 ヒュウとコウキが怒りを露わにして、ボールを構えた。そして、チャンピオン達もボールを出す。

 

「せっかくお祝いムードだったのに……許せない!!」

 

「これからイッシュを旅する予定だったのに……!! 絶対許さない!!」

 

「勝てると思わない方がいいよ。格が違うんだ」

 

「……外道に加担する外道共め。ここで引導を渡してやる」

 

 三人とサレナがロケット団を睨みつける。そして、そこでアオイの友達も出てきた。

 

「あれ、ロケット団だよね……ヤバくない?」

 

「アオイが困ってる!! 助けに行こう!!」

 

「よし!! 久々に暴れてやろうぜ、マフィティフ!!」

 

「バウバウッ!!」

 

 思ったよりたくさんいて、ラムダは少し驚く。

 

「……思ってたよりもたくさんいるな。けど、問題ない!! お前を倒して、あいつらも倒す!!」

 

「ヒュウ兄さん、後ろは任せた!!」

 

「OK!! 任せろッ!!」

 

 ヒュウに背中を任せて、コウキはラムダに向き直る。

 

「言っとくが、俺様を舐めるなよ!? チャンピオンがいるって聞いて、ポケモンをとびっきり強くしてきたんだ!!」

 

「かかってこいよ」

 

「ぐぐっ……なにからなにまでムカつくやつだな!! 行け、マタドガス!!」

 

「マータドガァース!!」

 

 コウキはそれを見て、出すポケモンを決める。

 

「……行け、ドリュウズ!!」

 

「ドリュウゥゥゥッ!!」

 

「へへっ、残念だったな。こいつの特性は『ふゆう』なのさ!!」

 

 コウキはそれを理解していた。そして、お構い無しにドリュウズに命令を出す。

 

「ドリュウズ!! 『じしん』だ!!!」

 

「リュウゥゥズッ!!」

 

 ──ズゴゴゴゴゴッ!!!

 

「ガ、ガァスゥゥ……!?」

 

 浮いているのに揺れに巻き込まれる。そんな、おかしな状況にラムダは目を丸くしている。

 

「なっ、なんだ!? 何が起きて……」

 

「残念だったな。こいつの特性は『かたやぶり』だ!!!」

 

「ドガァァァ……」

 

 特性にかまけて、完全に余裕だったマタドガスはそのまま倒れてしまった。それを見て、ラムダが冷や汗を流す。

 

「マ、マジかよ!? まだ何もしてねぇのに!?」

 

「早めに降参したらどうだ?」

 

「ふ、ふざけんなっ!! 恐ろしいのはここからだ!! 行け、ドンカラス!!」

 

「カァァァァァ!!」

 

 コウキはそれを見て、ドリュウズをボールに戻す。

 

「ドリュウズ、戻れ!! 頼んだぜ、マリルリ!!」

 

「マッリィィ!!」

 

「こっちは空にいるんだぜ!? 届くもんかよ!!」

 

 コウキはそれを聞いて、ラムダに対して笑みを浮かべてみせる。

 

「それはどうかな!? マリルリ、地面に向かって『アクアブレイク』だ!!」

 

「ルゥゥリィィッ!!」

 

 ──ドパパパァァン!!

 

「バカめ、ジャンプしたなら好都合だよ!! ドンカラス、『ブレイブバード』!!」

 

「カァァァァッ!!」

 

 それを好機と見たラムダが、ドンカラスに命令を出す。ドンカラスが『ブレイブバード』で、マリルリに捨て身の特攻を仕掛ける。しかし……コウキはもちろん、それも想定している。

 

「バカはどっちかな!? マリルリ、飛んできたドンカラスを掴め!!」

 

「マァァァリィッ!!」

 

 ──ガシッ!!

 

「ドォンッ!?」

 

「なにぃ!? 振り落とせ、ドンカラス!!」

 

 高速で突っ込んできたところで、ドンカラスは体を掴まれてしまう。暴れて振り落とそうとするが、マリルリは落ちない。

 

「特性は『ちからもち』だ!! 簡単に落とせると思わない方がいいぞ!!」

 

「ドンカラス!! 『アクロバット』でボコボコにしてやれ!!」

 

「カァァァァァ!!!」

 

 ドンカラスが高速で動いて、マリルリを振り落としながら攻撃を仕掛ける。ラムダはそれを見て笑っているが……それすら、コウキの想定通りだ。

 

「ケケッ、これでおしまいだな!!」

 

「終わるのはそっちだ!! マリルリ、『じゃれつく』!!!」

 

「マァァァリィィ!!!」

 

「カァァァァァ!!!」

 

 ──シュバババババッ!!

 

 ──ポカポカポカポカ!!

 

 二人のポケモンが、空で揉み合いになりながら落ちていく。そして、落下した場所で立っていたのは……マリルリだった。

 

「カ、カァァァ……」

 

「ありがとう、マリルリ!!」

 

「な、なんでだっ!? あの時、確かに『ブレイブバード』を受けたはず……」

 

 その理由はシンプルだ。コウキは笑って理由を教える。

 

「マリルリの持ち物は、『オボンの実』なのさ。攻撃に全振りしたドンカラスのブレイブバードを耐えて、オボンの実を使ったあと……アクロバットを耐えて、じゃれつくで押し切った。簡単な話だろ?」

 

「ち、畜生ッ……!! 邪魔な子供ってのはどうしてこうも強いんだ!?」

 

「悪の栄えた試しはない。それだけの話だ」

 

「まだだ、まだ負けたわけじゃねぇ!! 行けっ、モロバレル!!」

 

「モォロォォ!!」

 

 それを見て、コウキはポケモンをまた入れ替える。

 

「戻れ、マリルリ!! 頼むぜ、シンボラー!!」

 

「シィィィィッ!!」

 

「やれ、モロバレル!! 『どくどく』だ!!」

 

「モォロォォォッ!!!」

 

 モロバレルがどくどくを使って、シンボラーを猛毒状態にする。

 

「ボラッ!?」

 

「へっ、ざまぁみやがれ!! これであとは倒れるまで耐えるだけで……」

 

「なるほどな。それなら、耐えてみたらどうだ?」

 

 猛毒を受けたのにも関わらず、シンボラーの動きは全く鈍っていない。それにラムダは、違和感を感じた。

 

「どうなってやがる? まさか、躱したのか?」

 

「いや、当たったよ。見事な『どくどく』だったね……ひとつ教えてやるよ、シンボラーの特性は『マジックガード』なんだ」

 

「『マジックガード』ってことは……じゃあ、どくどくしても意味ねぇってことか!?」

 

 特性自体は知っていたらしく、ラムダが驚愕する。それを見て、コウキが笑った。

 

「ジョウトやカントーでは、ピッピが持ってる特性だからな。お前らも知ってたか」

 

「い、いや!! だが……これならどうだ!! モロバレル、『ベノムショック』!!」

 

「バァレェェェル!!!」

 

 モロバレルから、毒々しい液体が針のように噴射された。それは容赦なく、シンボラーに襲いかかっていく。

 

 ──ズダダダダッ!!

 

「ボラァァァ……!!」

 

「よし、これで!!」

 

「隙あり。シンボラー、『サイコキネシス』」

 

「シィィィィィッ!!!」

 

 ──ギュオォォォォッ!!

 

 シンボラーの目が光って、モロバレルはあちこちに叩きつけられる。ラムダはその様子に、またしても困惑していた。

 

 ──ズガガガガァァン!!

 

「モ、モォロォォ……」

 

「なっ、なんでだ!? ベノムショックはマジックガードで無効にならないはず……」

 

「喋ってる間にシンボラーに『ひかりのかべ』を貼らせていたのさ。これでベノムショックは半減になって、毒状態でない時に撃ったのと同程度まで抑えられる」

 

「く、くっそぉぉぉ……もう残り一匹なのかよ!? もっと持ってくればよかった……!!」

 

 コウキはその様子を見て、嘲笑を浮かべる。

 

「どうした、ラムダ。俺を倒すんじゃなかったのか? 今のところ、俺は一体も落としていないぞ」

 

「だ、黙れ!! 子供が生意気言いやがって、目に物見せてやる!! 行け、ペンドラー!!!」

 

「ギャアァオォォォ!!!」

 

 ──ズシィィィン!!

 

 轟音を立てて出てきたペンドラーを見て、コウキはシンボラーをボールに戻す。

 

「そいつがお前の切り札か? なら、俺も切り札を出そうか」

 

「何が出てきたって無駄だぜ、こいつは耐久に基礎ポイントを振ってあるんだ!!」

 

「行け、エンブオー!!!」

 

「ブァァァァァッ!!!」

 

 ──ズシィィィン!!

 

 それを見て、ラムダがペンドラーに命令する。

 

「やれるもんならやってみろ!! ペンドラー、『てっぺき』だ!!!」

 

「ペェンドォォォ!!」

 

「あぁ、やってやるよ!! エンブオー!! 『フレアドライブ』だ!!!」

 

「エェンブゥゥゥッ!!!」

 

 ──ゴォォアァァァッ!!!

 

 激しい炎を身に纏い、エンブオーが『てっぺき』で防御を二段階上げたペンドラーに突撃していく。ラムダはそれを見ながら、反撃の準備をしていた。

 

(ケッ、本当にやれると思ってやがるようだな。攻撃を耐久で受けたら、あいつも反動を受けるはず。あとは、そこに『どくづき』を打ち込んだら終わりだ!!)

 

「ブォォォァァァァッ!!!」

 

 ──ゴバォォォォォン!!!

 

「ギャアォォォォ!?」

 

「焼き尽くせ、エンブオー!!!」

 

 エンブオーが『フレアドライブ』でペンドラーを弾き飛ばす。それを見て、ラムダは命令を出した。

 

「今だ、ペンドラー!! 『どくづき』!!」

 

「……」

 

「おい、どうした!? 『どくづき』だよ、『どくづき』!!」

 

 ペンドラーは……倒れていた。それを見て、ラムダが青ざめる。

 

「残念だったな。俺達の勝ちだ」

 

「う、嘘だろ……こんなバカな……サカキさま、申し訳ありません……」

 

「……あっちも終わったようだな」

 

 ロケット団のしたっぱ達は、一人残らずチャンピオンとその仲間に蹂躙されていた。

 

「ムゲンダイナ、『ダイマックスほう』!!」

 

「ダイナァァァァッ!!!」

 

 ──ズビャオォォォォッ!!!

 

「う、うわぁぁぁぁ!? 俺達のポケモンが!?」

 

 ユウリはムゲンダイナを使って、ロケット団を薙ぎ払っている。他のみんなも負けてはいない。

 

「ミライドン、『イナズマドライブ』!!」

 

「アギャアァァァッ!!!」

 

 ──バヂュヂヂィィッ!!!

 

「マスカーニャ、『トリックフラワー』!!」

 

「ニャオォォォッ!!」

 

 ──ズゴォォォォン!!

 

 そして、他の場所でボタンとペパーも戦っていた。

 

「ニンフィア、『ムーンフォース』!!」

 

「フィアァァァッ!!」

 

 ──ギュアァァァァッ!!

 

「マフィティフ、『かみくだく』!!」

 

「ギャウゥゥゥッ!!」

 

 ──ガギィィィン!!

 

 そして、ハルカもメガシンカを駆使して、大量にいたロケット団を掃討していた。

 

「うっ、うわぁぁ!? こいつ、早すぎる……!!」

 

「バシャーモ、『インファイト』!!」

 

「バシャアァァァッ!!!」

 

 ──ズダダダダダァァン!!!

 

「ぎゃあぁぁぁぁ!?」

 

 そうしている間に、全員が倒されてしまった。ラムダはそれを見て、後退りする。

 

「く、くそっ……お前らのポケモンを奪って、ついでにお前らも倒してやろうと思ったのに……くっ、こんなことになるなんて!!!」

 

「さぁ、とっとと帰るんだな」

 

「そうだ、警察に出頭しろッ!!」

 

 ヒュウがそう言った、その時。サレナがラムダの前に歩いてきた。

 

「退きなさい。私が、この人殺しを駆除するわ」

 

「……人殺し? プラズマ団に、誰かを殺されたんですか?」

 

「あなたには関係ないでしょう。退きなさいよ」

 

 しかし、コウキは通すわけにはいかなかった。殺すというのが、脅しでは無いのがわかったから。

 

「いくら何でも、殺すのは……」

 

「フッ、甘いですね。所詮は子供ですか」

 

「誰だ!? ……お前は!!」

 

 コウキは、その男にも見覚えがあった。その男はラムダを煽りながら、名乗る。

 

「情けないですね、ラムダ。あれだけ威勢のいいことを言っておきながら、誰にも勝てないとは。名乗っておきましょうか。私はランス、ロケット団幹部の一人です」

 

「ラムダを迎えに来たってわけか」

 

「く、くそっ……情けねぇ……覚えとけよ!!」

 

「そういうわけなので、それでは」

 

 そう言って、ランスがゴルバットをボールから出した。しかし、それをみすみす見逃すはずもない。

 

「逃がすか!! エンブオー、そいつらを拘束……」

 

「フッ……何の対策もしていないとでも?」

 

 ──ブワァァァァッ!!!

 

「ッ!? ゲホッ、ゲホ……これ、『けむりだま』か!! クソッ……!!」

 

 結局、ランスとラムダには逃げられてしまった。それを見て、サレナがコウキの胸倉を掴む。

 

「どうするのよ!? アンタのせいで、あいつらが逃げたじゃない!!」

 

「……すみません」

 

「そのせいで人が死ぬかもしれないのよ!? 大体アンタは……」

 

「そこまでにしときなよ、サレナさん」

 

 そう言ってサレナを止めたのは、ユウリだった。サレナはそれに反抗的な態度を取る。

 

「ガラルチャンピオン!? 退きなさい、私は……」

 

「コウキを殴っても、何も解決しない。あなたに何があったのかは知らないけど、イライラしてたらポケモン達も悲しむよ」

 

「それは……くっ、くそっ!!」

 

 サレナは悔しそうにコウキを解放すると、また走っていってしまった。コウキはその背中を心配そうに見つめる。

 

「……彼女に、一体何が?」

 

「聞いても話してくれないと思うよ。とりあえず追い払えたことを喜ぼう」

 

「そう、ですね……」

 

 そこでチェレンが、ホテルで縛られていたベルを救出して連れてきた。

 

「やぁ。護衛がいて、少し手間取ってしまったよ」

 

「ごめんね、まさか捕まっちゃうなんて思わなくて……」

 

「こんなことになるなんて……クソッ、プラズマ団め!!」

 

 コウキは察していた。これは始まりでしかないことを。自分の知識は、役に立たなくなっていくであろうことを。

 

(たとえどんな展開になろうと……イッシュは俺が守る。子供の頃の思い出を、壊させるわけにはいかないんだ)

 

 心の中でコウキは、イッシュを守る決意を固めたのだった。

 

 

 

 一方その頃。プラズマフリゲートに戻ってきたアクロマは、ヴィオからゲーチスからの伝言を受け取っていた。

 

「……なるほど。人員増加のために、『ロケット団』の人員を追加したのですね」

 

「はい。そして……アクロマ様がいない間の代理のボス兼、研究主任を務められる方もいらっしゃいます。今は研究室にいらっしゃいますよ」

 

「私の代わり……?」

 

 アクロマは少なくとも、自分を優秀だと思っている。アクロマが書いているものは、素人や普通の科学者程度に読める論文ではない。気になったアクロマは、研究室に向かう。

 

「……初めまして、あなたが私の上司ですか?」

 

「あなたが、私の代理のボスですか」

 

「えぇ。申し遅れました、私の名前は……」

 

 白髪と白衣、目には赤いサングラスをかけている。顔には知識欲ではない嫌な笑みが浮かんでおり、アクロマはそれに嫌悪感を覚えた。

 

「元ギンガ団の天才科学者……プルートと申します」




次回、フキヨセシティに行きます。
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