朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版)   作:とも667

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 カゴメタウンに行きます。


第19話 カゴメタウンの伝説

コウキはポケモンセンターでポケモンを回復させて、ヒュウと一旦別れたあと……ルリからの電話を受けていた。

 

『もしもし、コウキさんですか?』

 

「ルリさん、こんにちは。今はサザナミタウンにいますよ」

 

『サザナミタウンですか、いいですよね。潮風が気持ちいいし、たまに行くとリフレッシュできますよね』

 

 ルリは楽しそうに言う。そしてコウキは、次の行き先をルリに伝えた。

 

「次はカゴメタウンに行って、ソウリュウシティに向かう予定です」

 

『ソウリュウシティ……ジム巡りですか?』

 

「まぁ、そんなところです。後は博士から頼まれた用事もあるんですけど……」

 

 コウキはそう言いつつ、この先起きることを思い出す。ソウリュウシティは、氷弾による爆撃を受けて氷漬けにされ……ダークトリニティにより、『いでんしのくさび』を奪われてしまう。

 

(できれば、阻止したいな。あれさえなければ、ゲーチスの計画は破綻するはず……)

 

『あ、呼ばれちゃいました。それじゃ、また電話しますね』

 

「はい。ありがとうございました……さて、これであと一回か」

 

 描かれていない部分でも何回か通話をしていたコウキは、ちゃんと回数を数えていた。あと一回で、彼女に出会う条件を満たせる。

 

「さて。カゴメタウンに向かうか」

 

 コウキはそう呟いて、カゴメタウンに向かう。そこでコウキは、またもや原作と違う点を見つけた。

 

「……コバルオンがいない? 何故だ?」

 

 原作にはない、新しい危機を察知したのだろうか。コウキはそう思いながら、歩いていく。全てのポケモンシリーズをやっているとはいえ、それが何かまではわからない。

 

(イッシュに来たロケット団か、それともプラズマ団が新しいことをしようとしてるのか……どちらにせよ、何とかしないとな)

 

「ハーイ、とも!! また会ったわね!!」

 

「あ、アララギ博士!! それにベルさんも!!」

 

 コウキが考えながら歩いていると、カゴメタウンに着いており、コウキはアララギ博士とベルに出会った。

 

「『そらをとぶ』を使ったから、コウキくんを追い越しちゃったみたい。リバースマウンテンではありがとね」

 

「いえ、こちらこそ。いいことを聞かせてもらいました」

 

「このカゴメから、真っ直ぐ進めばソウリュウシティ。でも、その前にあなた達にも聞いて欲しい話があるの」

 

 アララギがそう言うと、ベルが興味を持ってアララギに尋ねた。

 

「どんなお話ですかあ?」

 

「いいからいいから、とにかく行きましょ!!」

 

「わかりました、行きましょうか」

 

 コウキとベルは、アララギに連れられて民家の前に辿り着く。そこには、一人の老婆が立っていた。

 

(やっぱりこの話か。キュレムのおとぎ話……一部脚色が入ってるみたいだけどな)

 

「カゴメの昔話を聞きたいのはアンタらかね?」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「そうかそうか、ワシに着いてくるとええ」

 

 コウキ達は老婆に言われるまま、家の中に入った。そして、老婆が座布団に座るように促す。

 

「立ち話もなんじゃし、座って話そう。楽にしてくれてええよ」

 

「ありがとうございます」

 

「さて……カゴメの裏には、そりゃもう大きな穴がある。知っとるか? ジャイアントホール」

 

 ジャイアントホール。キュレムが住んでいる、キュレムのパワースポットだ。それを聞いてベルが、コウキの方を向いて言った。

 

「あのね、最近ジャイアントホールの近くでも、一瞬だけマイナス50度を計測したんだって!! って、チェレンが教えてくれたんだけど」

 

「道が塞がっていて、今は行けないけれど……」

 

「むかしむかしのことじゃ。ジャイアントホールとは、空から大きな隕石が降ってきてできた穴らしいな。その隕石にはなぁ、恐ろしいポケモンが潜んでおったそうな……」

 

「……隕石」

 

 コウキはそれを聞きながら、自分なりに考える。どこが事実で、どこが脚色なのかを。

 

(まず、できた経緯については違和感はないな。だけど隕石に潜んでいたのは、多分その時の人々の思い込みだ。そうでないなら、英雄の話とこの話で矛盾が生じる……)

 

「辺りが闇に包まれると、ポケモンは凍えるような冷たい風と共に現れ、人やポケモンを凍てつかせては、人やポケモンを取っては喰らう……そう恐れられていたんじゃ」

 

「ポケモンが人を……た、食べちゃうのですかあ!?」

 

 コウキはこれを、昔の人の思い込みだと考えている。伝説のポケモンに限って、そんなこと有り得ない。

 

(元々、キュレムは二つの英雄の器なんだ。それが人を食うだなんて、有り得ない……きっと調べに行った人が死んで戻ってこなかったから、そこから派生したんだろう)

 

「じゃから昔の人々は、ポケモンが入ってこれないように街を塀で覆ったり、夜は外に出ないように街の掟を決めたのじゃ……ほら!! 昔話はこれでおしまいじゃ!!」

 

「とても興味深いお話、ありがとうございました。これからの研究にとても役立ちます。では、みんな。おいとましましょう」

 

 アララギに言われて、コウキ達も家を出る。

 

「実に面白い昔話だったわね。正体不明のポケモンとはいえ、伝わっている力が強すぎる」

 

「そうですねえ。辺り一帯を凍らせるだなんて、伝説のドラゴンポケモンにも匹敵する力ですよねえ」

 

「……プラズマ団の船が撃ってきた氷弾も、それに関係あるんでしょうか」

 

 コウキがそう言うと、アララギは頷いてとりあえずの肯定を示す。

 

「私はそう考えてる。だって、あれ程の力……人工的に出せる物じゃないし、こおりタイプポケモンでも、あの大きさを連射はできないはず」

 

「じゃあやっぱり、そのポケモンはこおりタイプのポケモン……?」

 

「そうね、ベル。その昔、燃え上がる炎でイッシュを焼き払ったとされるレシラムや、激しい雷でイッシュを焼き払ったとされる、ゼクロムみたいだわ」

 

 対になる理想と真実の竜、ゼクロムとレシラム。そして、その器となるキュレム。そしてその内の一体は、今……プラズマ団に利用されている。

 

「ところでコウキ。ゼクロムとレシラムについての話は覚えている?」

 

「えぇ、覚えてますよ」

 

「そう、ヤマジタウンで少し話したわね。ゼクロムは理想を追い求める者を英雄と認め、力を貸し与えると言われる、伝説のポケモン。レシラムは逆に、真実を追い求める者に力を貸し与えるポケモン。二匹とも凄まじい力の持ち主よ」

 

 二匹はそれぞれ、二年前に英雄を選び……そしてそれぞれの英雄と共に、どこかに行った。

 

「博士は昔話のポケモンと、伝説のポケモンが何か関係あるとお考えなのですか?」

 

「……隕石ね」

 

「隕石ですかあ?」

 そう言われて、アララギが続ける。

 

「ゼクロムとレシラムはそれぞれ、ダークストーンとライトストーンという石から復活したらしいの。そして、昔話の隕石がそれと同じものだとしたら……」

 

「……つまり、隕石として落ちてきた物の中にダークストーンやライトストーンがあった、と?」

 

「そうね。というのもセッカシティにあるリュウラセンの塔と、ジャイアントホールの近くから……同じ時代の成分が発見できたのよね。根拠としては弱いけれども、偶然として切り捨てるには無視できない要素なのよね……」

 

 それを聞いて、コウキは考える。あくまでコウキ自身の考察であり、明確な根拠があるわけではないが……

 

(もし本当に二匹が宇宙から来たんだとすれば、デオキシスと同じような存在ってことになるな。そういえばデオキシスも、ポケモンの映画でコアだけになって、宝石のような姿になっていたな。それなら、キュレムにも同じような形態が……?)

 

「だとしたら、とても強いポケモンのはずなのに……夜にしか姿を現さないのは、何か理由があるんでしょうか? たとえば、太陽の光が苦手とか」

 

「そうね、ベル。その辺りは調べてみないとわからないけど……そっか。カゴメという街の名前には『かこめ』という意味があるのかも。ポケモンから街を守るために、街を塀で囲ったエピソード」

 

 コウキはアララギが話している最中にも、自分なりの考えをまとめていた。

 

(だとすれば、隕石は二つ落ちたってことになるよな。片方は分離前のキュレムだとして、あとのもう一つは? 『いでんしのくさび』かな? それとも……)

 

「話が長くなったわね。コウキ、その辺もシャガさんに聞いてね!! 私たちはフィールドワークです、ベル!! 手伝ってね!!」

 

「ソウリュウシティのシャガさんは、ポケモンを鍛えるために自らレスリングをしちゃうんだよ!! あ、アララギ博士!! 待ってくださいよお!!」

 

 二人を見送ったあと、コウキはビレッジブリッジに行くために12番道路へ向かう。そこにはコウキの予想通り、ヒュウがいた。

 

「あっ、ヒュウ兄さん!! ここまで来てたんだね!!」

 

「よう、コウキ。お前、ここら辺でプラズマ団を見なかったか? そういう噂を聞いたんだけど……」

 

「やれやれ、それはご苦労な話だな。物好きなトレーナーよ」

 

 そこで聞こえてきた、壮年の男の声。コウキとヒュウが振り向くと、そこにいたのは……プラズマ団を数人連れた、ヴィオだった。

 

「ヴィオ、初めましてだな。俺がポケモントレーナーのコウキだ」

 

「そうか、貴様が……ゲーチス様は貴様のせいで、ずっと機嫌が悪いのだ。私から見ても、正気を失いかけている……それもこれも、貴様のせいだ」

 

「そりゃ悪いことをしたな。なら、大人しく隠居させてやったらどうだ?」

 

 コウキは皮肉を込めて言ったが、ヴィオは諦める様子を見せていない。

 

「そんなわけにはいかん。私が今もプラズマ団にいるのは、世界の変わる様を知るためだ。いいか? ポケモンは自然、モンスターボールは文明だ。文明を知った人間は、中々それを捨てられぬ」

 

「だから捨てさせるって? 神にでもなったつもりかよ。大体、お前らだってモンスターボールを使ってるじゃねぇか。ダブルスタンダードもいいとこだぜ」

 

「その通り。自然も文明も、どちらも大事だからな。しかし、プラズマ団が世界を支配すればどうなる? 人々は、モンスターボールという文明を捨てることになる!! その様子を見たいのだ!! 知りたいのだ!! 楽しみたいのだ!!」

 

 コウキはそれを聞いて、ため息を吐く。ヒュウも前に出て、言葉に溢れる怒りを込めて言う。

 

「はぁ……言葉は通じても話は通じないようだな、お前らには」

 

「……口を閉じろよ。俺は奪われたポケモンを取り戻すだけだ。コウキ、力貸してくれッ!!」

 

「あぁ、わかってる。こいつらを一緒に倒そう」

 

 ヴィオは二人の様子を見て、嫌な笑みを浮かべて言った。

 

「やはりこうなるか。残念だが、私達に勝ち目はなさそうだ……今のままなら」

 

「何だと?」

 

「そこの男はともかく……コウキ。貴様には貴様の相手を用意してある。出番だ」

 

 ヴィオが合図をすると、後ろから人が歩いてきた。コウキはその男が誰なのか、すぐにわかった。

 

「やっとですか、待ちくたびれましたよ」

 

「ランス……!! お前もいたのか!!」

 

「正直言って、彼らがどうなろうと、私にはどうでもいいのですが……あなたはいずれロケット団の脅威になり得る。ここで消えていただきましょうか」

 

 ランスはそう言って、ボールを構えた。コウキもそこでボールを構える。

 

「上等だ。簡単に勝てると思うなよ……!!」

 

「言っておく。俺は今から怒るぜッ!!」

 

「ランス、そちらは任せたぞ」

 

 ヴィオとプラズマ団が、二人がかりでヒュウと戦い始める。ランスもそれを見て、ボールを投げた。

 

「行け、ゴルバット!!」

 

「頼むぜ、ドリュウズ!!」

 

「ゴァァァァァ!!」

 

「ドリュウゥゥ!!」

 

 ランスの初手は、原作通りのゴルバットだ。それを見て、コウキはドリュウズを繰り出した。

 

「ドリュウズ、『いわなだれ』だ!!」

 

「想定内の行動ですね!! 戻りなさい、ゴルバット!!」

 

(ゴルバットを戻した……ランスの手持ちは原作だと、二匹しかいない。だが、さっき見えた手持ちの数は5体だ……何を出す?)

 

 コウキはランスの出方を伺う。そしてランスが繰り出したのは……

 

「行け、ドクロッグ!!」

 

「クヒヒヒヒーッ!!」

 

「ドクロッグ……なるほどな」

 

 かくとうタイプには、いわタイプの『いわなだれ』は今一つだ。ランスはそのまま、ドクロッグに追撃の命令を出す。

 

「ドクロッグ!! 『インファイト』です!!」

 

「ドォォクロォォォ!!」

 

「ドリュウズ、戻れ!! 行け、マリルリ!!」

 

 出てきたマリルリはフェアリータイプ。そしてフェアリータイプは、かくとうタイプを今一つにできる。インファイトを受けても、大ダメージにはならない。

 

 ──ズガガガガガッ!!!

 

「マリィィ……!!」

 

「今だ、マリルリ!! ドクロッグに……!!」

 

「馬鹿め、ドクロッグはどくタイプ!! そのまま仕留めろ、『どくづき』!!」

 

 しかし……そこでコウキが、笑みを浮かべてマリルリに命令を出した。

 

「マリルリ、後ろに跳んでかわせ!!」

 

「マリッ!!」

 

「速い!? マリルリは鈍足なはず……!?」

 

 コウキが言うよりも前に、その答えがわかる。マリルリの姿が変わっていき……そこに現れたのはゾロアークだった。

 

「ゾロアークは紙耐久の代わりに、速いポケモンだぜ!! 最速ドクロッグでも抜けない!!」

 

「……それは『きあいのタスキ』!? そうか、最初からそれが狙いで……!!」

 

「今だ、ゾロアーク!! 『かえんほうしゃ』!!」

 

「きゅあぁぁーっ!!」

 

 ──ゴォアァァァァ!!

 

 ゾロアークの火炎放射がドクロッグに命中して、『インファイト』で特防が下がっていたドクロッグが、瀕死寸前にまで追い込まれる。

 

「ドクロッグ!! 『きしかいせい』だ!!」

 

「今だ、ゾロアーク!! 『ふいうち』!!」

 

「ドクッ……ロォォォ!?」

 

「きゅあぁっ!!」

 

 ──ズドンッ!!

 

 鈍い音と共に、『ふいうち』が命中して……ドクロッグの体がくの字に曲がって、そのまま倒れ込む。

 

「これでまずは一匹……大したことないな?」

 

「くっ……図に乗るな、まだポケモンはいるんだ!! 行け、マタドガス!!」

 

「ガァスゥゥゥ!!」

 

 そこで出てきたポケモンは、ただのマタドガスではなかった。それを見たコウキは、すぐにその正体を見破る。

 

「ガラルマタドガス……どこから調達した?」

 

「フッ、観光客が偶然持っていたのでね……有効活用させてもらいますよ。マタドガス、『ワンダースチーム』!!」

 

「ガァァスゥゥゥ!!」

 

「ゾロアーク、戻れ!!」

 

 コウキはそれを見ると、ゾロアークを手持ちに戻し……すぐに次のポケモンを繰り出す。

 

「頼む、ドリュウズ!!」

 

「ドリュウゥゥ!!」

 

「やはりか。そうしてくるのは読めていました」

 

 ランスは、ラムダとコウキの戦闘を見てコウキの動きを理解していた。だから、ドリュウズを繰り出してくることもわかったのだ。『ワンダースチーム』は、はがねタイプによって今一つとなる。

 

「ドリュウズ、今だ!!」

 

「今です、マタドガス!! 『みちづれ』!!」

 

「ドォガァァァ……!!」

 

「……『いわなだれ』!!」

 

 コウキはそう言って、『いわなだれ』の命令を出す。アオイの時にやったのと同じ戦法だが、ランスはそこまでは知らなかった。

 

「なっ……『じしん』を使わないだと!? 特性は『かたやぶり』で無効にしていけるのに……!!」

 

「ドォリュウゥゥッ!!」

 

 ──ズドドドォォォン!!

 

「ガァァ、スゥゥ……!!」

 

 いわなだれを受けて、マタドガスが瀕死ラインまで追い込まれる。しかし、倒れてはいないので『みちづれ』は発動しない。

 

「残念だったな。予想がまた外れたぞ?」

 

「クッ……図に乗るな!! マタドガス、『ねっぷう』だ!!」

 

「ドリュウズ、戻れ!! 行け、マリルリ!!」

 

 コウキはそこで、本物のマリルリを繰り出す。水タイプには、炎タイプは今一つとなる。

 

「ルリィィィ!!」

 

「『ねっぷう』に構うな!! 『アクアジェット』で突っ込め!!」

 

「マァリィィィ!!」

 

「ッ、マタドガス!! 『みちづれ』……」

 

 しかし、マタドガスは『ねっぷう』で攻撃している最中。他の行動をすぐにすることはできない。そのまま、マリルリの『アクアジェット』が命中する。

 

 ──ドパァァァァン!!

 

「ドガァァァ……」

 

「これで二匹目。どうした、まだ一匹も落とせてないぞ? 対策済みだと聞いたはずなんだがな……俺の耳が遠くなったのか?」

 

「くそっ、少し強いからって調子に乗るなよ……!! 行け、ドオー!!」

 

「ドオォォォォ!!」

 

 ランスの三匹目はドオーだった。目的は明らかにマリルリとエンブオーの対策だ。

 

「……ドオーの耐久力、特性のちょすい。そして、じめんタイプでエンブオーの対策ってところか?」

 

「よくわかりましたね。しかし、わかったところでどうにもなりませんよ。ドオー、『じしん』だ!!」

 

「オォォォォッ!!」

 

(入れ替えを読んでの『じしん』か。マリルリで突っ張っても、有効打はない。それなら、望み通り入れ替えしてやる……!!)

 

 コウキはそう思って、マリルリをボールに戻す。そして、繰り出したポケモンは……

 

「マリルリ、戻れ!! 行け、ハハコモリ!!」

 

「ハハァーリッ!!」

 

「ハハコモリ!? しまった……!!」

 

「地面は4分の1、全然効かないぜ!! ハハコモリ、そのまま『とびかかる』だ!!」

 

 ドオーは鈍足なポケモン、ハハコモリの素早い動きでの攻撃を避けることはできない。そのまま『とびかかる』が命中する。

 

「ハハァリィッ!!」

 

 ──ズガァァッ!!

 

「ドオッ……!!」

 

「舐めるな!! ドオー、『どくづき』だ!!」

 

「オォォォォッ!!」

 

 ──ズシュシュシュッ!!

 

 しかしランスも、ドオーに命令して反撃する。『どくづき』がハハコモリに命中したが……しかしハハコモリは、まだ倒れない。

 

「今だ、ハハコモリ!! 『トリプルアクセル』!!」

 

「なんだと!? 効果抜群のはずなのに……!?」

 

「ハァリィィィッ!!」

 

 ──バキキキィィィィン!!!

 

 氷が砕けるような音と共に、トリプルアクセルが三回命中する。『とびかかる』を受けたあとの効果抜群の三回攻撃に、ドオーは耐えられない。

 

「ドォォォ……」

 

「種明かしをしてやるよ。まず一つ、『とびかかる』の追加効果で攻撃が下がっていたこと。二つ目……多分そのドオー、特殊受けにしてるだろ? だとしたら、攻撃には振ってないはずだ」

 

「ッ、何故わかった……!? どうして知っているんだ!?」

 

 コウキは自分なりに予想がついていた。ランスは自分の戦法をある程度知っている、それはどうしてなのか。見ていたとしたら……ラムダとの戦闘だと、そう思ったのだ。

 

「お前が見たのはラムダとの戦いだろ? それなら、ドオーで見たいのはエンブオーじゃなくて……マリルリとシンボラーじゃないのか?」

 

「くっ、そこまでわかっているのか……!!」

 

「やはりな、だとしたら説明つく。まぁ、一つの戦闘を見ただけで、俺を測ろうとしたのが間違いだったな」

 

 ランスは悔しそうにしながらも、次のボールを取り出した。

 

「行け、ゴルバット!!」

 

「ゴルバット……ハハコモリには不利な相手、ってわけか……」

 

「ゴルバット、『あやしいひかり』!!」

 

「ゴォルゥゥゥゥ!!」

 

 ハハコモリはそれを受けて、混乱してしまう。コウキはそれを見て、ハハコモリを戻した。

 

「ハァ、リィィ……?」

 

「ハハコモリ、戻れ!! 頼む、シンボラー!!」

 

「ボラァァァッ!!」

 

 そこにまたしても、ランスは同じ技の指示をした。

 

「ゴルバット、もう一度『あやしいひかり』!!」

 

「ゴバァァァァ!!」

 

「ボォォ、ラァァ……?」

 

「シンボラー、『サイコキネシス』だ!!」

 

 しかしシンボラーは、その命令を聞き取れず……近くにあった民家に体をぶつけてしまう。

 

 ──ガァンッ!!

 

「ボラッ……!!」

 

「ほら、コウキさん。このままでは倒れてしまいますよ? 交換したらどうです?」

 

「そうだな……」

 

 コウキはそう言って、ボールを取り出す。そこでまたしても、ランスはゴルバットに指示を出した。

 

「ゴルバット、『あやしいひかり』!!」

 

「シンボラー!! もう一度『サイコキネシス』!!」

 

「なにっ!?」

 

「ゴォルゥゥゥッ!!」

 

 それを聞き取れなかったのか、シンボラーはまたしても体をぶつける。だが、予想が外れたランスは驚いているようだ。

 

 ──ドゴンッ!!

 

「何故だ、何故交換しない……どんどんシンボラーの体力が削れていってるんだぞ!?」

 

「あぁ、そうだな。でも、忘れたのか? シンボラーの持ち物を……」

 

「シンボラーの持ち物は『かえんだま』だろう。ゴルバットは特殊型だ、『サイコシフト』は意味が無いぞ!!」

 

 コウキは、それも理解していた。だからこそ、シンボラーのままで戦っているのだ。

 

「『マジックガード』のおかげで火傷ダメージは無効。そして、火傷状態で物理攻撃力は半減してしまう。混乱状態で自分を攻撃する時は、必ず『物理攻撃』をするんだ……もうわかるだろ?」

 

「まさか……『かえんだま』を、ダメージの軽減に使ったとでも言うのか!? 馬鹿な……!!」

 

「シンボラー、頼む!! 『サイコキネシス』!!」

 

 そこでシンボラーが、ようやく目を覚ました。そしてゴルバットに、『サイコキネシス』で攻撃する。

 

「シィィィィッ!!」

 

「ゴァァァァッ!?」

 

 ──ドガガガガァァァン!!

 

「ゴォ、アァ……」

 

 ゴルバットも撃破され、残り一匹となったランス。今のところ、コウキは一匹たりとも落としていない。

 

「残念だが、俺の対策はこれっぽっちもできていなかったようだな……シンボラー、ありがとう。休んでくれ」

 

「くっ……まだだ!! 行け、スカタンク!!」

 

「スカァァァァッ!!」

 

 最後に出てきたポケモンは、スカタンクだ。それを見てコウキは、ポケモンを入れ替える。

 

「行け、ドリュウズ!!」

 

「ドリュウゥゥッ!!」

 

「読めているんだよ、そんなことは!! スカタンク、『かえんほうしゃ』!!」

 

 そう言ってランスは、火炎放射をドリュウズに放つ。しかし、コウキは笑みを浮かべて……言ってみせた。

 

「カァァァンクッ!!」

 

 ──ゴォアァァァッ!!

 

「そっくりそのまま返してやる!! ドリュウズ、かわして『アイアンヘッド』!!」

 

「また『じしん』じゃない……何のつもりだ!?」

 

 ドリュウズは火炎放射を避けて、スカタンクに接近する。それを見て、ランスが叫んだ。

 

「今だッ、スカタンク!! もう一度『かえんほうしゃ』だ!!!」

 

「……ゼロ距離射撃か」

 

「この距離なら避けられまい!! 燃え尽きろ!!!」

 

 そんなことは、コウキも理解していた。だからこそ、『アイアンヘッド』を選択したのだ。そのまま『アイアンヘッド』が命中する。

 

「リュウズゥゥゥッ!!」

 

 ──ズゴォォォォン!!

 

「スカッ……!!」

 

「なにっ!? 『かえんほうしゃ』が……」

 

「『アイアンヘッド』は、相手のポケモンが三割で怯む技なんだ。覚えて帰るといい!! ドリュウズ、とどめの『アイアンヘッド』!!!」

 

 コウキの命令に従って、ドリュウズが『アイアンヘッド』を繰り出す。もう、この状況では避けられない。

 

「ドォリュウゥゥッ!!!」

 

 ──ズガァァァァッ!!!

 

「カァァン、クゥゥ……」

 

「馬鹿な、こんなことが……私ともあろうものが……!? 三度までも、こんな子供に……!?」

 

 コウキはランスの戦略を全て打ち破り、見事に勝利を収めた。そこでヒュウの方も、決着がついたようだ。

 

「く、くっそぉぉ……こいつも強い!!」

 

「言うだけのことはあるな。少々舐めていたよ」

 

「どうだ!! これが俺の力だッ!!」

 

 しかしそこで、ヴィオが二人に言った。

 

「しかし……残念だったな。私達が負けることも、私は考慮に入れていたのだ」

 

「なんだと!?」

 

「来い、お前達!!」

 

 ヴィオがそう叫ぶ。そして、プラズマ団が大量に出てくる……ことはなかった。

 

「……どうなっている? 確かに待機させておいたはず……」

 

「悪いけど、そいつらなら倒しちゃったよ」

 

「あっ……アオイさん!! 他の皆さんも!!」

 

 そこにいたのは、パルデアチャンピオンのアオイと、友達の三人だった。

 

「いやぁ、あの数は流石に苦労したなぁ!!」

 

「そんなこと言って、生徒会長楽しそうだったやん」

 

「ビレッジサンド食べてたら、悪そうなヤツらが橋を渡るのが見えたから、追いかけてみたら……案の定だったな!! さぁ、観念しな!!」

 

 ヴィオとランスは作戦が失敗して、悔しそうにしている。しかし、ヴィオがそこで呟いた。

 

「絶体絶命か……しかし、諦めるわけにはいかん。『いでんしのくさび』を手に入れて、ゲーチス様の帰りを待たねば!! さらばだ!!」

 

「また逃げる気か!! 今度はそう上手くは……」

 

「フリージオ、『れいとうビーム』!!」

 

 コウキはその発言を聞いて、驚愕する。そして叫んだ。

 

「みんな、伏せろッ!!」

 

「リィジィィィ!!!」

 

 ──バキバキバキバキ!!

 

「フッ……さらばだ!! ゴルバット、『そらをとぶ』!!」

 

 ゴルバットに乗って、二人は去っていった。そしてコウキは、今の行動にゾッとする。

 

「一切躊躇わずに、人に攻撃するなんて……なんて奴らだ」

 

「みんな、怪我は無い?」

 

「俺は大丈夫。コウキこそ大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫。当たってないよ」

 

 そこで、騒ぎを聞きつけた人達がここに来る。

 

「なんだなんだ、すごい音がしたぞ?」

 

「うわっ、ヤバい……見つかったら、俺たちが犯人だと思われるかも……!!」

 

「よし、逃げよう!!」

 

 アオイがそう言って、コウキ達はその場から逃げていった。




次回、ソウリュウジム。
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