朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版) 作:とも667
ついに最後のジムです。
コウキとユウリは、ソウリュウシティから出て、サザナミタウンに来ていた。目的はセイガイハシティに繋がる道、マリンチューブだ。
「……おぉ、こうして見ると壮観だな」
「綺麗……なんか、デートみたいだね」
「一緒に来てよかったな、ユウリ」
透明なガラスのトンネルの外には、綺麗な青い海が広がっており、その中を悠々と水ポケモン達が泳いでいる。『歩く水族館』の名は伊達ではない。
「コウキ。プラズマ団を倒したら、また来ようね」
「うん、絶対行こう。でも今は……プラズマ団を片付ける」
「わかってる、さっさと片付けちゃおう」
二人でプラズマ団を倒す決意を固めて、セイガイハシティにたどり着く。
「ここがセイガイハシティ……潮風が気持ちいいな」
「コウキ、お前も来たか!! 待ってたぞッ!!」
「ヒュウ兄さん、もう来てたんだね」
ヒュウはコウキを見つけて、駆け寄ってきた。ここにヒュウがいるのは、コウキも知っていることだ。
「あぁ。いでんしのくさびは、絶対に取り戻す……そのためには強くないといけない!! まずはジムリーダーに勝て、コウキ!!」
「わかった。ヒュウ兄さんはもう勝ったの?」
「あぁ、何とかな……しかし、これじゃ全然ダメだ。まだなにかが足りない……コウキ、俺には何が足りないと思う? 基礎ポイントも振ってみたけど、それでもお前に追いつける気がしない」
コウキはそれを聞いて、少し考えた後にヒュウに言った。
「そうだな……俺を目指すんじゃなくて、ヒュウ兄さんだけの強さがあるんじゃないかな?」
「俺だけの強さ……?」
「ヒュウ兄さんは、誰よりもポケモンを大事にしてる。だから、ポケモンをもっと大切にして愛情を注げばいいんじゃないかな……って思うよ」
コウキはそう言って、ジムの方に向かっていく。ヒュウはコウキを見ながら、言われたことを考える。
「ポケモンを大事に……か」
「じゃあ、ユウリ!! ヒュウ兄さん、行ってくるから!!」
「行ってらっしゃい、待ってるよ」
そしてコウキは、ジムの中に入った。蓮の葉が浮いている、まるでリゾートのようなジムだ。
「ついに最終ジムだな。気を引き締めていこう」
コウキはそう言って、葉っぱの上に乗り……ジムリーダーのいる場所へと進んでいく。そして、シズイのいる場所まで来た。
「初めまして、シズイさん」
「お、早速来たか!! おはんの噂は聞いとるで、めちゃくちゃ強いらしいやないか!!」
「えぇ、強さには自信があります」
コウキがそう言うと、シズイは楽しそうな笑みを浮かべている。
「ええのう、ええのう!! よっしゃ、おいも全力で相手したるわ!!」
「ありがとうございます、お願いします!!」
「ほな、早速始めよーかい!!」
シズイがボールを取り出す。コウキもそれに合わせて、ボールを取り出した。そこでコウキは、少しだけ驚いた。
(ボールが六個……最終だけあって、ジム戦も最高難易度ってわけか!!)
「行くで、プルンゲル!!」
「プルゥゥゥ~!!」
シズイの初手はプルンゲル。コウキはそこで、初手に何を出すかを決めた。
「行け、エンブオー!!」
「ブォォォォォッ!!」
「エンブオー……?」
シズイはそれを見て、明らかに怪しんでいる。しかし、コウキのやることは変わらない。
(シズイのプルンゲルは、バフ技を持ってない。行動したが最後、『ふいうち』を叩き込む……それから『ナイトバースト』でトドメだ!!)
「うーむ……そうやのぅ……」
(悩んでるのか? ここでの最大火力は『ハイドロポンプ』のはず……何をするつもりなんだ? 俺の知ってるシズイと、技構成が違うのか?)
コウキがそう考えていると……シズイは予想外の行動に出た。
「よし、戻れ!! プルンゲル!!」
「なにっ!? ここで交換!?」
「行け、アバゴーラ!! 『アクアジェット』!!」
コウキはそれを聞いて、慌ててエンブオーに……否、ゾロアークに指示を出す。
「ッ、エンブオー!! 『ナイトバースト』!!」
「ブォォォォッ!!」
「ゴォラァァァァ!!」
──ドゴォォォォン!!
──ドパァァァァン!!
お互いの攻撃がぶつかり合って、ゾロアークとアバゴーラがどちらもダメージを受けた。しかしそれは、ゾロアークにとっては致命的な一打だ。イリュージョンが解けて、真の姿が見える。
「きゅあっ……!!」
「し、しまった……!!」
「はっはっはっ、まさかゾロアークとはのぅ!! 危うく一本取られるところだったわい!!」
シズイはなにかがおかしいことに気づき、それを確かめるために、特性『がんじょう』と先制技を持つアバゴーラに交換したのだ。もし本物だったなら『がんじょう』で耐えて突っ張ればいいし、偽物なら起点にしていけるから。
(まずいぞ……イリュージョンはもうシズイに通じない!! その上、『きあいのタスキ』も使えなくされたし……このままじゃ、起点にされる!!)
「今じゃ、アバゴーラ!! 『からをやぶる』!!」
「アバゴォォォ!!」
防御を捨てる代わりに、素早さと攻撃力が二段階上昇する技。これ以上積まれたら、手がつけられなくなってしまう。
「くっ、ゾロアーク!! 戻れ!!」
「賢明な判断じゃな……さて、何を出す?」
「……マリルリ、頼んだ!!」
「マッリィィィ!!」
コウキが選択したのは、マリルリだった。エンブオーは上から水タイプ攻撃をされるし、ドリュウズも相性が良くない。何より、相手も六匹だというこの状況では、先に一匹落とした方が圧倒的不利を強いられるのだ。
「マリルリか……なら、アバゴーラ!! 『いわなだれ』じゃ!!」
「構うな、マリルリ!! 『アクアブレイク』!!」
「ゴォラァァァァ!!」
「ルゥリィィィィ!!」
──ズゴゴゴォォォォン!!
上空から、大岩が山のように降ってくる。その間を抜けていくマリルリ。しかし、シズイもそう簡単に抜けさせてはくれない。
「アバゴーラ、自分の周囲に岩を落とせ!!」
「アバァゴォォォ!!」
──ズドドォォン!!
「これは……!! くっ、マリルリ!! 目の前の岩に『アクアブレイク』だ!!」
「今じゃ、アバゴーラ!! もう一回『からをやぶる』!!」
なんとアバゴーラは、二回『からをやぶる』を積んでしまった。つまり、全抜きの準備が整ってしまっている。ここで何とかしないと、本当に勝機が消えてしまう。そこで、コウキが取った行動は……
「マリルリ!! 今だ、『はらだいこ』!!」
「マリィィィッ!!」
「隙あり!! アバゴーラ、もう一丁『いわなだれ』!!」
その隙を逃さず、アバゴーラに命令を出すシズイ。そして、大岩が容赦なくマリルリめがけて降り注いでくる。しかし……コウキの顔には、笑みが浮かんでいた。
「マリルリ!! 『アクアジェット』で、目の前に突っ込め!!」
「マァリィィィィ!!」
──ドガァァァァン!!
「なっ……!? アバゴーラ、自分の前に……」
しかし、もう大岩はマリルリめがけて降らせてしまった。一度決めたベクトルを変えることは、アバゴーラにもできない。そして、はらだいこをした状態のマリルリの一撃が……アバゴーラに炸裂した。
──ドパァァァァン!!
「アバ、ゴォ……」
「ふぅ……何とか、先手を取らせてもらいましたよ」
「なるほど、先んじて大岩にヒビを入れておき、そこで『はらだいこ』をして明らかな隙を晒し、『いわなだれ』を誘発……そこで迎撃ではなく突撃を選んで意表を突いたか。いやぁ、一本取られたわい!!」
なんとか一匹分取ったとはいえ、突撃を選んだ代償は重い。マリルリはほぼ瀕死に追い込まれている。
「まだ一本だけですがね……」
「あぁ、その通り!! 頼むで、スターミー!!」
「タァミィィィィ!!」
二匹目はスターミー。コウキの選んだ行動は、もちろん突っ張ることだ。はらだいこ状態を無駄にするわけにはいかないから。
「マリルリ、『じゃれつく』!!」
「スターミー、『10まんボルト』!!」
「マァリィィィィ!!」
「スゥタァァァァ!!」
──ポカポカポカポカ!!
──バヂュヂヂィィッ!!
コウキは、これで相討ちに持ち込めたと、そう思っていた。しかし……結果はそうではなかった。
「マリィィ……」
「タァァミィィ!!」
「これは、まさか……『きあいのタスキ』か!?」
「当たりじゃ、よくわかったのう!!」
スターミーは元々耐久が低い。なので、HPが1でもなんら問題ないのだ。またもや5対5に戻されてしまった。
「マリルリ、ありがとう……頼む、シンボラー!!」
「ボラァァァァッ!!」
「ほう、ここでシンボラーか……スターミー、『10まんボルト』!!」
「タァミィィィィ!!」
無論シズイは、一番火力の出る攻撃を使用した。しかし、それもコウキは計算済みだ。
「シンボラー、『ひかりのかべ』!!」
「ボラァァァァッ!!」
──バチュヂヂィィッ!!
「食らう直前で軽減したか……!!」
「今だ、シンボラー!! 『エアスラッシュ』!!」
そこでコウキは、シンボラーに次の指示をする。スターミーのHPは1だから、これで削り切れるはず。しかし……またしてもシズイは、予想外の行動をとる。
「スターミー、戻れ!! 頼むで、プルンゲル!!」
「ルゥゲェェェッ!!」
「なにっ、ここでか!?」
──ビュシュシュシュッ!!
命中はしたが、プルンゲルの高い特防のせいであまり効果がない。その上、反撃が飛んでくる。この状況では交換も無理だ。
「プルンゲル、『シャドーボール』じゃ!!」
「プルゥゥゥゥッ!!」
「し、しまった……!!」
──ドゴォォォォン!!
プルンゲルの持ち物は、『たつじんのおび』。相手に効果抜群の攻撃をした時、威力が上がる。そしてタイプ一致と抜群の倍率も、そこに乗る。流石に『ひかりのかべ』があっても、耐え切れるはずもない。
「ボラァァァ……」
「くっ、やられた……ごめん、シンボラー!!」
「残念だったのう、これで4対5じゃ!!」
コウキはそこで切り札を切ることにした。出し惜しみはもう、していられない。
「頼んだぞ、ハハコモリ!!」
「ハハァーリッ!!」
「とっておきのポケモンか!! 確かに、そいつはまずいのう!! しかし、簡単にやられてはやれんな!!」
シズイはなにか考えがあるようだ。だが、この状況でやれることはひとつしかない。
「ハハコモリ、『タネマシンガン』!!」
「ハァリィィィッ!!」
──ズダダダダダダ!!
「プルンゲル、『シャドーボール』!!」
「プルゥゥゥ……!!」
ダメージを受けながらも、シャドーボールが放たれる。お互いにそれが全弾命中し……プルンゲルが倒れた。
「プルゥゥゥ……」
「よし、これで4対4……!!」
「頼んだで、パルシェン!!」
「パァルゥゥゥ!!」
そこで出てきたのは、パルシェンだった。コウキはまた、『タネマシンガン』で攻撃しようとする。
「ハハコモリ、『タネマシンガン』!!」
「ハァリ……リッ?」
「ん? どうした!?」
「わっはっは、賭けはおいの勝ちのようじゃのう!!」
そこでコウキは、それの正体に気がついた。
「プルンゲルの特性……『のろわれボディ』か!?」
「そうじゃ、『タネマシンガン』さえ封じれば、ハハコモリも怖くないからのぅ!! パルシェン!! 『つららばり』じゃ!!」
「くっ、ハハコモリ!! 戻れ!!」
コウキは、そこでハハコモリを戻す。ハハコモリを失うわけにはいかないから。そしてコウキが次のポケモンとして選んだのは……
「頼む、エンブオー!!」
「ブォォォォォッ!!」
「ほう!! エンブオーか……しかし、甘いな!!」
「シェェェェン!!」
──ズダダダダダ!!
そこで『つららばり』が飛んでくる。特性『スキルリンク』により、回数が絶対に最大になる。
「ブォッ、オ……!!」
「なっ、これは……怯んで動けないのか!? ということは……」
「そう!! パルシェンは『おうじゃのしるし』を持ってる!!」
『おうじゃのしるし』。攻撃に一割の確率で、怯み効果を与える道具。そして『つららばり』は五回連続で当たる技……つまり、半分の確率で怯む技というわけだ。
「くそっ、なんてことだ……!!」
「まだまだ行くぞ? パルシェン!! 『ロックブラスト』!!」
「パルゥゥゥッ!!」
──ズドドドォォン!!
(フレアドライブで突っ込むか……!? いや、ヤケになるな。そうなったら終わりだ……冷静に考えろ、どうすべきなのかを……みんなと一緒に勝つ、その方法を!!)
コウキは攻撃を受けるエンブオーを見ながら、必死に頭を回す。そして……行動を決める。
「さぁ、もう一発!! 『ロックブラスト』じゃ!!」
「エンブオー、戻れ!! 行け、ドリュウズ!!」
「ドリュウゥゥゥッ!!」
ドリュウズは岩技を4分の1にできるし、氷技も等倍だ。この状況なら、最適解のポケモン。しかし、怯みまではどうしようもない。
──ズドドドォォォン!!
「ドリュウズか……さぁ、怯みにどう対処するか、お手並み拝見じゃな!!」
「ドリュウズ!! 『いわなだれ』をできる限り、バラけさせて出せ!!」
「ドリュウゥゥッ!! ……ドリュッ!?」
いわなだれをある程度出したところで、ドリュウズが怯んでしまう。そこでシズイがパルシェンに、追加の命令を出す。
「今じゃ、『つららばり』!!」
「おっと。上に気をつけた方がいいぞ!!」
「ん? ……なにっ!? パルシェン、避けろ!!」
パルシェンのいる場所に、大岩が突然降ってきた。それだけではなく、あちこちに大岩がどんどん降ってくる。
「ドリュウズを怯ませても、『いわなだれ』自体が消えたわけじゃない!! 僕にもどこに落ちるかはわからない……避けないと、いずれ潰されちゃいますよ!! さぁ、もう一回『いわなだれ』だ!!」
「くっ、パルシェン!! 『つららばり』!!」
「シェェェェン!!」
「リュウズゥゥゥ!!」
──ズダダダダダッ!!
──ドゴゴゴォォン!!
『つららばり』を撃っている間にも、上空から岩が降り注いでくる。岩が妨害になって、『つららばり』がどんどん当てづらくなっていく。そしてついに……大岩のひとつが、パルシェンに命中した。
──ドゴォォォン!!
「パルッ!?」
「い、いかん……!!」
「やれ、ドリュウズ!! 『いわなだれ』だ!!!」
「ドリュウゥゥゥゥッ!!!」
そこでドリュウズが、パルシェンめがけて大岩を降らせる。これには流石に、パルシェンも耐えきれない。
「シェェン……」
「今度の賭けは、僕の勝ちですね?」
「またしても一本取られた、か……楽しくなってきたな!! 行け、ヌオー!!」
「ヌオォー!!」
そこで出てきたのは、ヌオーだった。コウキはそれを見て、ポケモンを入れ替える。
「ドリュウズ、戻れ!! 頼む、エンブオー!!」
「ブォォォォォッ!!」
「ほう、ここでエンブオーとは……なにか、考えがあるのか?」
コウキの考えは、単純だ。ヌオーは草タイプが四倍弱点。だが、シズイがそれに何の対策もしていないとは思えない。なので、残りHPの少ないエンブオーで削りを入れるつもりなのだ。
「エンブオー、『インファイト』!!」
「エェンブゥゥゥッ!!!」
──ズドドドドォォン!!
「ウッ、パァァァ……!!」
エンブオーのインファイトが炸裂し、大ダメージを受けたヌオー。しかし、そこでシズイが一言言った。
「今じゃ、ヌオー!! 『カウンター』!!」
「カウンター!? そんな技まで……!?」
「ヌオォォォォ!!」
──ズゴォォンッ!!
「ブゥッ、ア……!!」
これには流石に、耐えられない。エンブオーは為す術なく倒れ込んだ。
「エンブオー、ありがとう……危なかった」
「ハハコモリが出てきたら、こいつで倒すつもりだったんじゃが……かかってくれんかったか。流石じゃのう」
「それ程でもありませんよ」
コウキは笑って、次のポケモンを繰り出す。
「後は頼んだぞ、ドリュウズ!!」
「ドリュウゥゥゥッ!!」
「なるほど、確かにそいつなら確実にヌオーより早い……」
ドリュウズは『こだわりスカーフ』で、確実にヌオーより早く動ける。ヌオーを仕留められることは、シズイの目から見ても明らかだった。
「ドリュウズ、『じしん』で仕留めろ!!」
「なんの!! こっちも『じしん』じゃ、ヌオー!!」
「リュウズゥゥゥッ!!」
「ウッパァァァァ!!」
──ズゴゴゴゴォォォォ!!
二人が同時に『じしん』で攻撃し、ジム全体が揺れる。そして、ヌオーとドリュウズがお互いにダメージを受けて……
「ドリュウゥ……」
「ヌオォォ……」
「お互いにあと二匹か……面白くなってきたのう!!」
「そうですね、勝負はまだついてません!!」
お互いに笑みを浮かべて、ボールを取り出す。二人の次のポケモンは……
「行け、スターミー!!」
「行け、ハハコモリ!!」
「ハハァーリッ!!」
「タァミィィィ!!」
瀕死のスターミーと、まだ万全なハハコモリ。勝負は見えている。しかし、シズイは全く諦めていない。スターミーが覚えている技で、一番ハハコモリに効くのは……
「スターミー!! 『サイコキネシス』!!」
「……ゾロアーク!! 『わるだくみ』だ!!」
「なにっ!?」
ハハコモリの正体はゾロアークだった。それを知って、シズイが驚愕する。そして、悪タイプにエスパータイプは無効。スターミーは『わるだくみ』を積む起点にされたのだ。
「水タイプに対して、草タイプを出すのは普通。見えている『10まんボルト』も今一つにしていける以上、何もおかしい選択ではない……ですよね?」
「覚えてはおったが、まさかここで使ってくるとは……!! スターミー、『ねっとう』……」
「遅い!! ゾロアーク、『ふいうち』だ!!」
「きゅあぁぁぁっ!!」
──ズダァァァン!!
『ふいうち』が、スターミーに先んじて炸裂する。HP1である以上、耐久されることは有り得ない。
「タァ、ミィィ……」
「くっ……おはんには『わるだくみ』を積んだゾロアーク、その上ハハコモリまでいる。対しておいはあと一匹……でも、何故じゃろうな」
「シズイさん。まだ勝負はついてませんよ、最後までやりましょう!!」
コウキがそう言うと、シズイが豪快な笑みを浮かべて言った。
「元よりそのつもりよ!! 後がないのに、ワクワクしてたまらんわい!! 頼んだぞ、ホエルオー!!」
「グォォォォォー!!」
「あれは、『こだわりスカーフ』……!!」
コウキはそれを目視で確認した。それもそのはず、ホエルオーの体に巻ける程大きいのだから。
「ホエルオー、『とびはねる』じゃ!!」
「逃がすな、ゾロアーク!! 『ふいうち』!!」
「きゅあぁぁっ!!」
「エェェェェルッ!!」
──ズガァァァッ!!
──ブワァァッ!!
ゾロアークの『ふいうち』を受けても尚、ホエルオーは天高く飛び上がる。あの巨体に押し潰されれば、ひとたまりもないだろう。
「そのまま押し潰せ、ホエルオー!!」
「それなら……ゾロアーク!! 『かえんほうしゃ』と『ナイトバースト』を地面に撃て!!」
「なにぃ!?」
「きゅあぁぁぁーっ!!」
──ギュオァァァァ!!
──ゴァァァァァッ!!
二つの光線の勢いで、ゾロアークはどんどん上へと上昇していく。そしてコウキはそこで命令を出した。
「ゾロアーク、噴射をやめて振り向け!!」
「きゅうっ!!」
「そのまま『ナイトバースト』だ!!!」
「きゅあぁぁぁーっ!!!」
『わるだくみ』で威力の増した黒い波動が、ホエルオーの巨体めがけて放たれた。そして、体が大きいということは……当たり判定も大きいということに他ならない。
──ギュオォォアァァァ!!!
「グゥ、オォォォ……!!」
「ホエルオー、押し切れ!!!」
「ゾロアーク、押し返せッ!!!」
「きゅあぁぁぁぁー!!!」
──ドゴォォォォォン!!!
勝ったのは、ゾロアークだった。ホエルオーは天井にぶつかり、黒い波動が爆裂。水の中に落下する。凄まじい水しぶきと轟音が上がり、ジムの中に雨が降る。
──ゴボォアァァァァッ!!!
──ザァァァァァ……
「はぁっ、はぁっ……」
「……大したもんじゃ、ええポケモン育てとるな!! おはん強そうじゃなく、わっせ強いんじゃな!!」
「やった……やったぞぉぉぉ!! ありがとう、ゾロアーク!!」
「きゅうっ、きゅっ!!」
コウキとゾロアークが手を取りあって喜ぶ中、シズイは二人に賞賛の言葉をかける。
「いやぁ、おいもたまげたよ……おぉ、そうじゃ!! 驚きのあまり忘れてたが、これを渡さないとダメじゃな!! ほれ!!」
「あっ、ありがとうございます!! ウェーブバッジと賞金、頂戴します!!」
「えーっと、技マシンも渡すんじゃな。ほれ、技マシン『ねっとう』じゃ!! 受け取れ!!」
コウキはそれを受け取って、また一礼する。
「ありがとうございました!!」
「ほな、行っとこかい!! 着いてくるとえーよ!!」
「あ……行っちゃった、自由な人だな。とりあえず俺も、ジムから出るか」
コウキはそう言って、セイガイハジムを後にした。
一方、その頃。負けたサレナは、どこに行くかもわからないまま、フラフラと歩いていた。サレナの耳に、過去の声が聞こえてくる。
『返して、返してよ!! その子は大切な……』
『うるせぇ!! 寄越せって言ったら寄越せ!!』
──ドガァァッ!!
『あっ、が……パパ、ママ……おねぇ、ちゃ……』
全てが狂ったあの日。プラズマ団に、全てを奪われた。
『酒を持ってこい!! おい、さっさとしろ!!』
『また負けたのか!? あぁ!?』
『ごめん、なさい……!!』
狂ってしまった父。そんなある日、サレナは……見てはいけないものを見てしまった。
『サレ、ナ……あ、ああ……!!』
『え……おとう、さん……?』
──ボタ、ボタ。
『あああああああ!!!』
──ジャシュッ。
あかぐろい、なにかが、とびちった。すべてがそれに、おかされていった。
「……プラズマ、団……」
負けたら終わり、みんなああなる。希望なんてない。サレナは、そう思って戦い続けていた。それなのに、自分の価値観は否定された。
「私は……強いんだ……そうで、ないと……」
サレナはうわ言のように呟きながら、歩いていく。煮えたぎる復讐心と、どうしようも無い感情を抱えたまま。
次回、サレナ回です。