朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版)   作:とも667

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 ついに最後のジムです。


第22話 最終ジム、VSシズイ

コウキとユウリは、ソウリュウシティから出て、サザナミタウンに来ていた。目的はセイガイハシティに繋がる道、マリンチューブだ。

 

「……おぉ、こうして見ると壮観だな」

 

「綺麗……なんか、デートみたいだね」

 

「一緒に来てよかったな、ユウリ」

 

 透明なガラスのトンネルの外には、綺麗な青い海が広がっており、その中を悠々と水ポケモン達が泳いでいる。『歩く水族館』の名は伊達ではない。

 

「コウキ。プラズマ団を倒したら、また来ようね」

 

「うん、絶対行こう。でも今は……プラズマ団を片付ける」

 

「わかってる、さっさと片付けちゃおう」

 

 二人でプラズマ団を倒す決意を固めて、セイガイハシティにたどり着く。

 

「ここがセイガイハシティ……潮風が気持ちいいな」

 

「コウキ、お前も来たか!! 待ってたぞッ!!」

 

「ヒュウ兄さん、もう来てたんだね」

 

 ヒュウはコウキを見つけて、駆け寄ってきた。ここにヒュウがいるのは、コウキも知っていることだ。

 

「あぁ。いでんしのくさびは、絶対に取り戻す……そのためには強くないといけない!! まずはジムリーダーに勝て、コウキ!!」

 

「わかった。ヒュウ兄さんはもう勝ったの?」

 

「あぁ、何とかな……しかし、これじゃ全然ダメだ。まだなにかが足りない……コウキ、俺には何が足りないと思う? 基礎ポイントも振ってみたけど、それでもお前に追いつける気がしない」

 

 コウキはそれを聞いて、少し考えた後にヒュウに言った。

 

「そうだな……俺を目指すんじゃなくて、ヒュウ兄さんだけの強さがあるんじゃないかな?」

 

「俺だけの強さ……?」

 

「ヒュウ兄さんは、誰よりもポケモンを大事にしてる。だから、ポケモンをもっと大切にして愛情を注げばいいんじゃないかな……って思うよ」

 

 コウキはそう言って、ジムの方に向かっていく。ヒュウはコウキを見ながら、言われたことを考える。

 

「ポケモンを大事に……か」

 

「じゃあ、ユウリ!! ヒュウ兄さん、行ってくるから!!」

 

「行ってらっしゃい、待ってるよ」

 

 そしてコウキは、ジムの中に入った。蓮の葉が浮いている、まるでリゾートのようなジムだ。

 

「ついに最終ジムだな。気を引き締めていこう」

 

 コウキはそう言って、葉っぱの上に乗り……ジムリーダーのいる場所へと進んでいく。そして、シズイのいる場所まで来た。

 

「初めまして、シズイさん」

 

「お、早速来たか!! おはんの噂は聞いとるで、めちゃくちゃ強いらしいやないか!!」

 

「えぇ、強さには自信があります」

 

 コウキがそう言うと、シズイは楽しそうな笑みを浮かべている。

 

「ええのう、ええのう!! よっしゃ、おいも全力で相手したるわ!!」

 

「ありがとうございます、お願いします!!」

 

「ほな、早速始めよーかい!!」

 

 シズイがボールを取り出す。コウキもそれに合わせて、ボールを取り出した。そこでコウキは、少しだけ驚いた。

 

(ボールが六個……最終だけあって、ジム戦も最高難易度ってわけか!!)

 

「行くで、プルンゲル!!」

 

「プルゥゥゥ~!!」

 

 シズイの初手はプルンゲル。コウキはそこで、初手に何を出すかを決めた。

 

「行け、エンブオー!!」

 

「ブォォォォォッ!!」

 

「エンブオー……?」

 

 シズイはそれを見て、明らかに怪しんでいる。しかし、コウキのやることは変わらない。

 

(シズイのプルンゲルは、バフ技を持ってない。行動したが最後、『ふいうち』を叩き込む……それから『ナイトバースト』でトドメだ!!)

 

「うーむ……そうやのぅ……」

 

(悩んでるのか? ここでの最大火力は『ハイドロポンプ』のはず……何をするつもりなんだ? 俺の知ってるシズイと、技構成が違うのか?)

 

 コウキがそう考えていると……シズイは予想外の行動に出た。

 

「よし、戻れ!! プルンゲル!!」

 

「なにっ!? ここで交換!?」

 

「行け、アバゴーラ!! 『アクアジェット』!!」

 

 コウキはそれを聞いて、慌ててエンブオーに……否、ゾロアークに指示を出す。

 

「ッ、エンブオー!! 『ナイトバースト』!!」

 

「ブォォォォッ!!」

 

「ゴォラァァァァ!!」

 

 ──ドゴォォォォン!!

 

 ──ドパァァァァン!!

 

 お互いの攻撃がぶつかり合って、ゾロアークとアバゴーラがどちらもダメージを受けた。しかしそれは、ゾロアークにとっては致命的な一打だ。イリュージョンが解けて、真の姿が見える。

 

「きゅあっ……!!」

 

「し、しまった……!!」

 

「はっはっはっ、まさかゾロアークとはのぅ!! 危うく一本取られるところだったわい!!」

 

 シズイはなにかがおかしいことに気づき、それを確かめるために、特性『がんじょう』と先制技を持つアバゴーラに交換したのだ。もし本物だったなら『がんじょう』で耐えて突っ張ればいいし、偽物なら起点にしていけるから。

 

(まずいぞ……イリュージョンはもうシズイに通じない!! その上、『きあいのタスキ』も使えなくされたし……このままじゃ、起点にされる!!)

 

「今じゃ、アバゴーラ!! 『からをやぶる』!!」

 

「アバゴォォォ!!」

 

 防御を捨てる代わりに、素早さと攻撃力が二段階上昇する技。これ以上積まれたら、手がつけられなくなってしまう。

 

「くっ、ゾロアーク!! 戻れ!!」

 

「賢明な判断じゃな……さて、何を出す?」

 

「……マリルリ、頼んだ!!」

 

「マッリィィィ!!」

 

 コウキが選択したのは、マリルリだった。エンブオーは上から水タイプ攻撃をされるし、ドリュウズも相性が良くない。何より、相手も六匹だというこの状況では、先に一匹落とした方が圧倒的不利を強いられるのだ。

 

「マリルリか……なら、アバゴーラ!! 『いわなだれ』じゃ!!」

 

「構うな、マリルリ!! 『アクアブレイク』!!」

 

「ゴォラァァァァ!!」

 

「ルゥリィィィィ!!」

 

 ──ズゴゴゴォォォォン!!

 

 上空から、大岩が山のように降ってくる。その間を抜けていくマリルリ。しかし、シズイもそう簡単に抜けさせてはくれない。

 

「アバゴーラ、自分の周囲に岩を落とせ!!」

 

「アバァゴォォォ!!」

 

 ──ズドドォォン!!

 

「これは……!! くっ、マリルリ!! 目の前の岩に『アクアブレイク』だ!!」

 

「今じゃ、アバゴーラ!! もう一回『からをやぶる』!!」

 

 なんとアバゴーラは、二回『からをやぶる』を積んでしまった。つまり、全抜きの準備が整ってしまっている。ここで何とかしないと、本当に勝機が消えてしまう。そこで、コウキが取った行動は……

 

「マリルリ!! 今だ、『はらだいこ』!!」

 

「マリィィィッ!!」

 

「隙あり!! アバゴーラ、もう一丁『いわなだれ』!!」

 

 その隙を逃さず、アバゴーラに命令を出すシズイ。そして、大岩が容赦なくマリルリめがけて降り注いでくる。しかし……コウキの顔には、笑みが浮かんでいた。

 

「マリルリ!! 『アクアジェット』で、目の前に突っ込め!!」

 

「マァリィィィィ!!」

 

 ──ドガァァァァン!!

 

「なっ……!? アバゴーラ、自分の前に……」

 

 しかし、もう大岩はマリルリめがけて降らせてしまった。一度決めたベクトルを変えることは、アバゴーラにもできない。そして、はらだいこをした状態のマリルリの一撃が……アバゴーラに炸裂した。

 

 ──ドパァァァァン!!

 

「アバ、ゴォ……」

 

「ふぅ……何とか、先手を取らせてもらいましたよ」

 

「なるほど、先んじて大岩にヒビを入れておき、そこで『はらだいこ』をして明らかな隙を晒し、『いわなだれ』を誘発……そこで迎撃ではなく突撃を選んで意表を突いたか。いやぁ、一本取られたわい!!」

 

 なんとか一匹分取ったとはいえ、突撃を選んだ代償は重い。マリルリはほぼ瀕死に追い込まれている。

 

「まだ一本だけですがね……」

 

「あぁ、その通り!! 頼むで、スターミー!!」

 

「タァミィィィィ!!」

 

 二匹目はスターミー。コウキの選んだ行動は、もちろん突っ張ることだ。はらだいこ状態を無駄にするわけにはいかないから。

 

「マリルリ、『じゃれつく』!!」

 

「スターミー、『10まんボルト』!!」

 

「マァリィィィィ!!」

 

「スゥタァァァァ!!」

 

 ──ポカポカポカポカ!!

 

 ──バヂュヂヂィィッ!!

 

 コウキは、これで相討ちに持ち込めたと、そう思っていた。しかし……結果はそうではなかった。

 

「マリィィ……」

 

「タァァミィィ!!」

 

「これは、まさか……『きあいのタスキ』か!?」

 

「当たりじゃ、よくわかったのう!!」

 

 スターミーは元々耐久が低い。なので、HPが1でもなんら問題ないのだ。またもや5対5に戻されてしまった。

 

「マリルリ、ありがとう……頼む、シンボラー!!」

 

「ボラァァァァッ!!」

 

「ほう、ここでシンボラーか……スターミー、『10まんボルト』!!」

 

「タァミィィィィ!!」

 

 無論シズイは、一番火力の出る攻撃を使用した。しかし、それもコウキは計算済みだ。

 

「シンボラー、『ひかりのかべ』!!」

 

「ボラァァァァッ!!」

 

 ──バチュヂヂィィッ!!

 

「食らう直前で軽減したか……!!」

 

「今だ、シンボラー!! 『エアスラッシュ』!!」

 

 そこでコウキは、シンボラーに次の指示をする。スターミーのHPは1だから、これで削り切れるはず。しかし……またしてもシズイは、予想外の行動をとる。

 

「スターミー、戻れ!! 頼むで、プルンゲル!!」

 

「ルゥゲェェェッ!!」

 

「なにっ、ここでか!?」

 

 ──ビュシュシュシュッ!!

 

 命中はしたが、プルンゲルの高い特防のせいであまり効果がない。その上、反撃が飛んでくる。この状況では交換も無理だ。

 

「プルンゲル、『シャドーボール』じゃ!!」

 

「プルゥゥゥゥッ!!」

 

「し、しまった……!!」

 

 ──ドゴォォォォン!!

 

 プルンゲルの持ち物は、『たつじんのおび』。相手に効果抜群の攻撃をした時、威力が上がる。そしてタイプ一致と抜群の倍率も、そこに乗る。流石に『ひかりのかべ』があっても、耐え切れるはずもない。

 

「ボラァァァ……」

 

「くっ、やられた……ごめん、シンボラー!!」

 

「残念だったのう、これで4対5じゃ!!」

 

 コウキはそこで切り札を切ることにした。出し惜しみはもう、していられない。

 

「頼んだぞ、ハハコモリ!!」

 

「ハハァーリッ!!」

 

「とっておきのポケモンか!! 確かに、そいつはまずいのう!! しかし、簡単にやられてはやれんな!!」

 

 シズイはなにか考えがあるようだ。だが、この状況でやれることはひとつしかない。

 

「ハハコモリ、『タネマシンガン』!!」

 

「ハァリィィィッ!!」

 

 ──ズダダダダダダ!!

 

「プルンゲル、『シャドーボール』!!」

 

「プルゥゥゥ……!!」

 

 ダメージを受けながらも、シャドーボールが放たれる。お互いにそれが全弾命中し……プルンゲルが倒れた。

 

「プルゥゥゥ……」

 

「よし、これで4対4……!!」

 

「頼んだで、パルシェン!!」

 

「パァルゥゥゥ!!」

 

 そこで出てきたのは、パルシェンだった。コウキはまた、『タネマシンガン』で攻撃しようとする。

 

「ハハコモリ、『タネマシンガン』!!」

 

「ハァリ……リッ?」

 

「ん? どうした!?」

 

「わっはっは、賭けはおいの勝ちのようじゃのう!!」

 

 そこでコウキは、それの正体に気がついた。

 

「プルンゲルの特性……『のろわれボディ』か!?」

 

「そうじゃ、『タネマシンガン』さえ封じれば、ハハコモリも怖くないからのぅ!! パルシェン!! 『つららばり』じゃ!!」

 

「くっ、ハハコモリ!! 戻れ!!」

 

 コウキは、そこでハハコモリを戻す。ハハコモリを失うわけにはいかないから。そしてコウキが次のポケモンとして選んだのは……

 

「頼む、エンブオー!!」

 

「ブォォォォォッ!!」

 

「ほう!! エンブオーか……しかし、甘いな!!」

 

「シェェェェン!!」

 

 ──ズダダダダダ!!

 

 そこで『つららばり』が飛んでくる。特性『スキルリンク』により、回数が絶対に最大になる。

 

「ブォッ、オ……!!」

 

「なっ、これは……怯んで動けないのか!? ということは……」

 

「そう!! パルシェンは『おうじゃのしるし』を持ってる!!」

 

 『おうじゃのしるし』。攻撃に一割の確率で、怯み効果を与える道具。そして『つららばり』は五回連続で当たる技……つまり、半分の確率で怯む技というわけだ。

 

「くそっ、なんてことだ……!!」

 

「まだまだ行くぞ? パルシェン!! 『ロックブラスト』!!」

 

「パルゥゥゥッ!!」

 

 ──ズドドドォォン!!

 

(フレアドライブで突っ込むか……!? いや、ヤケになるな。そうなったら終わりだ……冷静に考えろ、どうすべきなのかを……みんなと一緒に勝つ、その方法を!!)

 

 コウキは攻撃を受けるエンブオーを見ながら、必死に頭を回す。そして……行動を決める。

 

「さぁ、もう一発!! 『ロックブラスト』じゃ!!」

 

「エンブオー、戻れ!! 行け、ドリュウズ!!」

 

「ドリュウゥゥゥッ!!」

 

 ドリュウズは岩技を4分の1にできるし、氷技も等倍だ。この状況なら、最適解のポケモン。しかし、怯みまではどうしようもない。

 

 ──ズドドドォォォン!!

 

「ドリュウズか……さぁ、怯みにどう対処するか、お手並み拝見じゃな!!」

 

「ドリュウズ!! 『いわなだれ』をできる限り、バラけさせて出せ!!」

 

「ドリュウゥゥッ!! ……ドリュッ!?」

 

 いわなだれをある程度出したところで、ドリュウズが怯んでしまう。そこでシズイがパルシェンに、追加の命令を出す。

 

「今じゃ、『つららばり』!!」

 

「おっと。上に気をつけた方がいいぞ!!」

 

「ん? ……なにっ!? パルシェン、避けろ!!」

 

 パルシェンのいる場所に、大岩が突然降ってきた。それだけではなく、あちこちに大岩がどんどん降ってくる。

 

「ドリュウズを怯ませても、『いわなだれ』自体が消えたわけじゃない!! 僕にもどこに落ちるかはわからない……避けないと、いずれ潰されちゃいますよ!! さぁ、もう一回『いわなだれ』だ!!」

 

「くっ、パルシェン!! 『つららばり』!!」

 

「シェェェェン!!」

 

「リュウズゥゥゥ!!」

 

 ──ズダダダダダッ!!

 

 ──ドゴゴゴォォン!!

 

 『つららばり』を撃っている間にも、上空から岩が降り注いでくる。岩が妨害になって、『つららばり』がどんどん当てづらくなっていく。そしてついに……大岩のひとつが、パルシェンに命中した。

 

 ──ドゴォォォン!!

 

「パルッ!?」

 

「い、いかん……!!」

 

「やれ、ドリュウズ!! 『いわなだれ』だ!!!」

 

「ドリュウゥゥゥゥッ!!!」

 

 そこでドリュウズが、パルシェンめがけて大岩を降らせる。これには流石に、パルシェンも耐えきれない。

 

「シェェン……」

 

「今度の賭けは、僕の勝ちですね?」

 

「またしても一本取られた、か……楽しくなってきたな!! 行け、ヌオー!!」

 

「ヌオォー!!」

 

 そこで出てきたのは、ヌオーだった。コウキはそれを見て、ポケモンを入れ替える。

 

「ドリュウズ、戻れ!! 頼む、エンブオー!!」

 

「ブォォォォォッ!!」

 

「ほう、ここでエンブオーとは……なにか、考えがあるのか?」

 

 コウキの考えは、単純だ。ヌオーは草タイプが四倍弱点。だが、シズイがそれに何の対策もしていないとは思えない。なので、残りHPの少ないエンブオーで削りを入れるつもりなのだ。

 

「エンブオー、『インファイト』!!」

 

「エェンブゥゥゥッ!!!」

 

 ──ズドドドドォォン!!

 

「ウッ、パァァァ……!!」

 

 エンブオーのインファイトが炸裂し、大ダメージを受けたヌオー。しかし、そこでシズイが一言言った。

 

「今じゃ、ヌオー!! 『カウンター』!!」

 

「カウンター!? そんな技まで……!?」

 

「ヌオォォォォ!!」

 

 ──ズゴォォンッ!!

 

「ブゥッ、ア……!!」

 

 これには流石に、耐えられない。エンブオーは為す術なく倒れ込んだ。

 

「エンブオー、ありがとう……危なかった」

 

「ハハコモリが出てきたら、こいつで倒すつもりだったんじゃが……かかってくれんかったか。流石じゃのう」

 

「それ程でもありませんよ」

 

 コウキは笑って、次のポケモンを繰り出す。

 

「後は頼んだぞ、ドリュウズ!!」

 

「ドリュウゥゥゥッ!!」

 

「なるほど、確かにそいつなら確実にヌオーより早い……」

 

 ドリュウズは『こだわりスカーフ』で、確実にヌオーより早く動ける。ヌオーを仕留められることは、シズイの目から見ても明らかだった。

 

「ドリュウズ、『じしん』で仕留めろ!!」

 

「なんの!! こっちも『じしん』じゃ、ヌオー!!」

 

「リュウズゥゥゥッ!!」

 

「ウッパァァァァ!!」

 

 ──ズゴゴゴゴォォォォ!!

 

 二人が同時に『じしん』で攻撃し、ジム全体が揺れる。そして、ヌオーとドリュウズがお互いにダメージを受けて……

 

「ドリュウゥ……」

 

「ヌオォォ……」

 

「お互いにあと二匹か……面白くなってきたのう!!」

 

「そうですね、勝負はまだついてません!!」

 

 お互いに笑みを浮かべて、ボールを取り出す。二人の次のポケモンは……

 

「行け、スターミー!!」

 

「行け、ハハコモリ!!」

 

「ハハァーリッ!!」

 

「タァミィィィ!!」

 

 瀕死のスターミーと、まだ万全なハハコモリ。勝負は見えている。しかし、シズイは全く諦めていない。スターミーが覚えている技で、一番ハハコモリに効くのは……

 

「スターミー!! 『サイコキネシス』!!」

 

「……ゾロアーク!! 『わるだくみ』だ!!」

 

「なにっ!?」

 

 ハハコモリの正体はゾロアークだった。それを知って、シズイが驚愕する。そして、悪タイプにエスパータイプは無効。スターミーは『わるだくみ』を積む起点にされたのだ。

 

「水タイプに対して、草タイプを出すのは普通。見えている『10まんボルト』も今一つにしていける以上、何もおかしい選択ではない……ですよね?」

 

「覚えてはおったが、まさかここで使ってくるとは……!! スターミー、『ねっとう』……」

 

「遅い!! ゾロアーク、『ふいうち』だ!!」

 

「きゅあぁぁぁっ!!」

 

 ──ズダァァァン!!

 

 『ふいうち』が、スターミーに先んじて炸裂する。HP1である以上、耐久されることは有り得ない。

 

「タァ、ミィィ……」

 

「くっ……おはんには『わるだくみ』を積んだゾロアーク、その上ハハコモリまでいる。対しておいはあと一匹……でも、何故じゃろうな」

 

「シズイさん。まだ勝負はついてませんよ、最後までやりましょう!!」

 

 コウキがそう言うと、シズイが豪快な笑みを浮かべて言った。

 

「元よりそのつもりよ!! 後がないのに、ワクワクしてたまらんわい!! 頼んだぞ、ホエルオー!!」

 

「グォォォォォー!!」

 

「あれは、『こだわりスカーフ』……!!」

 

 コウキはそれを目視で確認した。それもそのはず、ホエルオーの体に巻ける程大きいのだから。

 

「ホエルオー、『とびはねる』じゃ!!」

 

「逃がすな、ゾロアーク!! 『ふいうち』!!」

 

「きゅあぁぁっ!!」

 

「エェェェェルッ!!」

 

 ──ズガァァァッ!!

 

 ──ブワァァッ!!

 

 ゾロアークの『ふいうち』を受けても尚、ホエルオーは天高く飛び上がる。あの巨体に押し潰されれば、ひとたまりもないだろう。

 

「そのまま押し潰せ、ホエルオー!!」

 

「それなら……ゾロアーク!! 『かえんほうしゃ』と『ナイトバースト』を地面に撃て!!」

 

「なにぃ!?」

 

「きゅあぁぁぁーっ!!」

 

 ──ギュオァァァァ!!

 

 ──ゴァァァァァッ!!

 

 二つの光線の勢いで、ゾロアークはどんどん上へと上昇していく。そしてコウキはそこで命令を出した。

 

「ゾロアーク、噴射をやめて振り向け!!」

 

「きゅうっ!!」

 

「そのまま『ナイトバースト』だ!!!」

 

「きゅあぁぁぁーっ!!!」

 

 『わるだくみ』で威力の増した黒い波動が、ホエルオーの巨体めがけて放たれた。そして、体が大きいということは……当たり判定も大きいということに他ならない。

 

 ──ギュオォォアァァァ!!!

 

「グゥ、オォォォ……!!」

 

「ホエルオー、押し切れ!!!」

 

「ゾロアーク、押し返せッ!!!」

 

「きゅあぁぁぁぁー!!!」

 

 ──ドゴォォォォォン!!!

 

 勝ったのは、ゾロアークだった。ホエルオーは天井にぶつかり、黒い波動が爆裂。水の中に落下する。凄まじい水しぶきと轟音が上がり、ジムの中に雨が降る。

 

 ──ゴボォアァァァァッ!!!

 

 ──ザァァァァァ……

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

「……大したもんじゃ、ええポケモン育てとるな!! おはん強そうじゃなく、わっせ強いんじゃな!!」

 

「やった……やったぞぉぉぉ!! ありがとう、ゾロアーク!!」

 

「きゅうっ、きゅっ!!」

 

 コウキとゾロアークが手を取りあって喜ぶ中、シズイは二人に賞賛の言葉をかける。

 

「いやぁ、おいもたまげたよ……おぉ、そうじゃ!! 驚きのあまり忘れてたが、これを渡さないとダメじゃな!! ほれ!!」

 

「あっ、ありがとうございます!! ウェーブバッジと賞金、頂戴します!!」

 

「えーっと、技マシンも渡すんじゃな。ほれ、技マシン『ねっとう』じゃ!! 受け取れ!!」

 

 コウキはそれを受け取って、また一礼する。

 

「ありがとうございました!!」

 

「ほな、行っとこかい!! 着いてくるとえーよ!!」

 

「あ……行っちゃった、自由な人だな。とりあえず俺も、ジムから出るか」

 

 コウキはそう言って、セイガイハジムを後にした。

 

 

 

 一方、その頃。負けたサレナは、どこに行くかもわからないまま、フラフラと歩いていた。サレナの耳に、過去の声が聞こえてくる。

 

『返して、返してよ!! その子は大切な……』

 

『うるせぇ!! 寄越せって言ったら寄越せ!!』

 

 ──ドガァァッ!!

 

『あっ、が……パパ、ママ……おねぇ、ちゃ……』

 

 全てが狂ったあの日。プラズマ団に、全てを奪われた。

 

『酒を持ってこい!! おい、さっさとしろ!!』

 

『また負けたのか!? あぁ!?』

 

『ごめん、なさい……!!』

 

 狂ってしまった父。そんなある日、サレナは……見てはいけないものを見てしまった。

 

『サレ、ナ……あ、ああ……!!』

 

『え……おとう、さん……?』

 

 ──ボタ、ボタ。

 

『あああああああ!!!』

 

 ──ジャシュッ。

 

 あかぐろい、なにかが、とびちった。すべてがそれに、おかされていった。

 

「……プラズマ、団……」

 

 負けたら終わり、みんなああなる。希望なんてない。サレナは、そう思って戦い続けていた。それなのに、自分の価値観は否定された。

 

「私は……強いんだ……そうで、ないと……」

 

 サレナはうわ言のように呟きながら、歩いていく。煮えたぎる復讐心と、どうしようも無い感情を抱えたまま。




次回、サレナ回です。
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