朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版)   作:とも667

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 これで、最終回です。


最終回 真実と理想の未来

全員がキュレムに向かって、ボールを投げる。みんなのポケモンがボールから飛び出して、雄叫びを上げる。

 

「行け、ダイケンキ!!」

 

「ズォォォォォッ!!」

 

「お願い、ギガイアス!!」

 

「ギッガァァァァ!!」

 

 それに続けて、チェレンとベルがボールを投げた。

 

「頼んだぞ、ダイケンキ!!」

 

「ダァァァァイッ!!」

 

「お願いね、ジャローダ!!」

 

「ジャロォォォォッ!!」

 

 ホミカとリツコが、それに続けてボールを投げた。

 

「行けっ、ペンドラー!!」

 

「ギャアァオォォッ!!」

 

「行きなさい、ゴースト……」

 

「ゴォスゥゥゥ……!!」

 

 そして最後に、トウコとユウリがボールを投げる。

 

「行っけぇぇ、ムゲンダイナ!!」

 

「ダイナァァァァッ!!」

 

「ゆけっ、エンブオー!!」

 

「ブォォォォォッ!!」

 

 コウキと同じ、エンブオーがもう一匹。そして元気になったコウキのエンブオーが、構えを取り直す。

 

「よし……行こう、エンブオー!! 絶対勝つぞ!!!」

 

「ブォォォッ!!」

 

「有象無象がいくら増えたところで、無駄なんですよ!! キュレム、『クロスフレイム』と『クロスサンダー』で消してやりなさい!!」

 

「バァーニバキュロムッ!!!」

 

 ──バヂュヂヂィィッ!!!

 

 ──ゴォアァァァァッ!!!

 

 凄まじい雷と、凄まじい炎がまた迫ってくる。しかし、今の彼らにとっては敵ではない。ホップが盾の勇者ザマゼンタに、命令を出す。

 

「ザマゼンタ、みんなを庇ってくれ!!」

 

「ウルゥゥード!!」

 

 ──ドゴァァァァァン!!!

 

「なにっ!? あれを食らって無傷だと!?」

 

 『クロスフレイム』と、『クロスサンダー』の直撃を受けてもなお、ザマゼンタは倒れない。それどころか、殆ど無傷だ。だが、それもそのはず。

 

「ザマゼンタは盾の勇者だ。防御なら誰にも負けないよ!! ザシアン、『きょじゅうざん』!!!」

 

「ウルゥゥゥゥド!!!」

 

 ──ジャシュシュシュッ!!!

 

「ヒュッ、ラァ……!!」

 

 ザシアンの全力の一撃。それを受けて、キュレムに大ダメージが入る。しかし、キュレムはまだ倒れない。

 

「……やっぱり、王冠を……テラパゴスを引き剥がさないと無理か!!」

 

「それなら、俺達が隙を作る!! その間にお前は王冠を落とせッ!!!」

 

「わかった!! 構えろ、エンブオー!!」

 

 エンブオーがいつでも突撃できる構えになる。しかし、それをみすみす許すほどゲーチスも甘くない。

 

「まとめて凍ってしまえ!! キュレム、『ふぶき』です!!!」

 

「ヒュララァァァ!!!」

 

 ──パキパキパキパキッ!!

 

「ゴースト、『うらみ』……!!」

 

「ゴォスゥゥッ……!!」

 

 ゴーストの『うらみ』によって、キュレムの『ふぶき』のPPがゼロにされた。しかし、それを知る由もないゲーチスは、もう一度『ふぶき』をするつもりでいる。

 

「ダイケンキ、『ハイドロポンプ』だッ!!!」

 

「それなら、ダイケンキ!! 僕らも『ハイドロポンプ』だ!!!」

 

「「ズォォォォォォッ!!!」」

 

 ──ドボボァァァァァッ!!!

 

 凄まじい水の奔流が『ふぶき』の中で氷の槍となって、キュレムに襲いかかっていく。更にユウリが、それを押し込むために命令を出す。

 

「ムゲンダイナ、『ダイマックスほう』!!!」

 

「ダァイナァァァァッ!!!」

 

 ──ジュバァァァァァッ!!

 

「なっ、押し込まれ……!?」

 

 ──ドゴォォォォォン!!!

 

「グォォォ……!!」

 

 キュレムがそれを受けて、思わずよろける。その隙にホミカが命令を出した。

 

「ペンドラー、キュレムの足元を狙って『メガホーン』!!」

 

「ペェンドォォォォ!!」

 

 ──ドゴォォォォォン!!!

 

「ヒュラァッ……!!」

 

 ──ズシィィィィン!!!

 

 全員の攻撃で怯んだところに、ジャローダの『グラスミキサー』の一撃。しかし、ゲーチスもそのままやられてはくれない。

 

「立ちなさい、キュレムッ!!!」

 

「ヒュラァァ!!!」

 

「今よ、コウキ!! ギガイアス、キュレムの足元に『ストーンエッジ』!!!」

 

「ガァイアァァァッ!!!」

 

 ──ドゴォォォォォン!!!

 

 『ストーンエッジ』が命中し、キュレムが立つのが更に遅れる。その隙を逃さず、コウキとトウコはエンブオーに命令を出した。

 

「今だ、エンブオー!! キュレムの頭に『フレアドライブ』ッ!!!」

 

「決めろ、エンブオー!! キュレムの頭に『フレアドライブ』だぁぁぁ!!!」

 

「「ブォォォアァァァァッ!!!」」

 

 ──ゴォアァァァァッ!!!

 

 二匹のエンブオーが、キュレムの頭めがけて飛んでいく。この状況からでは、『トライブリザード』も撃てない。

 

「キュレム、どうした!! キュレム!! 早く立て!!! これは王の命令だぞッ!!!」

 

「お前みたいな暴君、誰だってゴメンだよ!!!」

 

「いっけぇぇぇぇぇ!!!」

 

 二匹のエンブオーが凄まじいスピードと質量、そして炎を纏って飛んでいく。そうして、二匹がキュレムの頭に激突した。

 

 ──ドババオォォォォォン!!!

 

「ヒュウ、ラァァ……!!」

 

「パゴッ……!!」

 

「なっ、テラパゴスが……!?」

 

 その衝撃で、テラパゴスが落下してポケモンの姿になる。その隙を逃さず、コウキはアルセウスからもらったボールを取り出した。

 

「今だっ!! 行け、マスターボール!!!」

 

 ──カキンッ!!

 

「……弾かれた!? まさか、妨害電波か!?」

 

「ハッハッハ、その通り!! 残念でしたね、テラパゴス!! もう一度王冠に……ッ、貴様は!?」

 

「いやはや、すみません。これを渡すのを忘れていましたね。興奮しすぎて、うっかりしていました」

 

 ゲーチスが驚愕の声を上げた人物は、アクロマだった。アクロマはマスターボールを取り出し、コウキに手渡す。

 

「これにテラパゴスは入っていました。あなたにお渡しします」

 

「ありがとうございます!! 戻れ、テラパゴス!!」

 

「テェラァァ……」

 

 マスターボールの中に、テラパゴスが収納される。それにより、周囲にいたテラパゴスの力を受けた者達が加護を失う。それにより、ゲーチスの右半身がまた動かなくなった。

 

「ぐぅぅっ!? こ、こんなことが……!?」

 

「ヒュラ、ラ……!!」

 

「エンブオー!! もう一発『フレアドライブ』!!!」

 

「ブゥオォォォォッ!!!」

 

 ──ドバオォォォォン!!!

 

 テラパゴスを失ってしまって、力が大幅に落ちたキュレム。そこに、『フレアドライブ』が直撃する。これは流石に耐えきれない。三匹が分離し、レシラムとゼクロムが二人の元に戻る。

 

「モエルーワ!!」

 

「レシラム!! よかった……!!」

 

「ババリバリッシュ!!」

 

「ゼクロム!! 分離できたんだね!!」

 

 元のキュレムが、その場に倒れ込む。コウキはその様子が心配になった。キュレム自身に罪は無いからだ。

 

「だ、大丈夫かな……?」

 

「大丈夫だ、キュレムは僕達が責任を持って保護しよう。元気になったら、ジャイアントホールに放すよ」

 

「チェレンさん……はい、お願いします!!」

 

 こうして、ゲーチスのキュレムを使った野望は終わった。それと同時に、浮上したNの城が粉々に砕け散って沈んでゆく。ゲーチスはそれを見て、怒りに体を震わせている。

 

「……ふざけるなッ!! こんなことがあってたまるものか!!! 私はイッシュの支配者だぞッ!!! 負けなど有り得ない、王に敗北はないのだ!!!」

 

「お前は負けたんだ。ここでお前の野望は終わりだよ」

 

「黙れ黙れ黙れぇぇぇぇ!!! どこまでも忌々しい子供め!!! 貴様だけは、貴様だけは許さんッ!!! 何があろうとも、貴様だけはこの私の手で地獄に送ってやるッ!!!」

 

 ゲーチスに最早、降伏の二文字は残されていない。あるのは、破滅か勝利の二択のみ。破滅することを悟ったゲーチスは、せめてコウキだけでも道連れにするつもりなのだ。

 

「やらせるかッ!! ……コウキ!?」

 

「俺だけでやらせてくれないか、ヒュウ兄さん。こいつとは……俺が決着をつけたい」

 

「いいぜ、そういうことなら……気をつけろよ!!」

 

「……わかったわ。後はお願いね、コウキ」

 

 サレナとヒュウの思いを受け取って、コウキはゲーチスに向き直る。ベルがやって来て、エンブオーを回復してくれた。

 

「はい、これで大丈夫だよ。絶対負けないでね、コウキくん!! それと、あの子も忘れないであげてね」

 

「ドリュウゥッ!!!」

 

「ドリュウズ!! そうか、キュレムを倒したからか。よし、一緒に戦ってくれ!!!」

 

「ドリュッ!!」

 

 ドリュウズを一旦ボールに戻して、ゲーチスに向かって、不敵な笑みを浮かべるコウキ。それを見たゲーチスが、更に怒りを強める。

 

「調子に乗るなァッ!!! やれ、デスカーン!!!」

 

「ヴェオォォォ……!!」

 

「よし、頼んだぜ!! シンボラー!!」

 

「ボラァァァッ!!!」

 

 コウキの初手のシンボラーを見て、ゲーチスはすぐに攻撃を選んだ。怒りに支配されている状況では、尚更攻撃を選ぶ理由がある。

 

「デスカーン、『シャドーボール』だ!!!」

 

「今だ、『ふいうち』!!」

 

「『ふいうち』だって!? シンボラーはそんな技覚えないはず……」

 

「いや、違うよチェレン。あれはきっと……」

 

 トウコが、横からそう言った。『シャドーボール』を撃つ前に、シンボラーが『ふいうち』をデスカーンに打ち込んだ。

 

「シィィィィッ!!」

 

 ──ズガァァァッ!!

 

「そのぐらい計算済みですとも!! 消し飛べ!!!」

 

「スカァァァァン!!」

 

 ──ドゴォォォォン!!

 

 『シャドーボール』が命中して、ゲーチスがニヤリと笑みを浮かべる。しかし……コウキもそれと同時に、笑みを浮かべた。

 

「ゾロアーク、やれ!! 『ナイトバースト』!!!」

 

「なんだと!?」

 

「きゅあぁぁぁーっ!!!」

 

 ──ドゴォォォォン!!!

 

 ゾロアークの『ナイトバースト』が命中して、デスカーンが早速戦闘不能にされた。それを見たゲーチスが、信じられないといった顔をしている。

 

「やっぱりね……あの子、やるじゃん」

 

「馬鹿な、こんなにも早くデスカーンを……!!」

 

「あれは……ボクを助けてくれたゾロア!! あの時はアリガトウ!!」

 

 ゾロアークはNを見て、懐かしそうな顔をしている。ゲーチスは次のボールを取り出して、コウキに向かって叫ぶ。

 

「一匹倒した程度で、図に乗るなよォ!!! 行け、ガマゲロゲ!!!」

 

「ガァマァァァ!!」

 

「ゾロアーク、戻れ!! 頼むぜ、ハハコモリ!!」

 

「ハハァリィッ!!」

 

 次に出てきたポケモンは、ガマゲロゲだった。それを見てコウキは、ハハコモリを繰り出す。

 

「読めているんだよ!! ガマゲロゲ、『ヘドロばくだん』!!!」

 

「バカはどっちかな!? ハハコモリ、『タネマシンガン』!!!」

 

「ゲロゲェェェッ!!!」

 

「ハァリィィィッ!!!」

 

 ──ズダダダダダッ!!!

 

 ──ボゴォォォォン!!!

 

 二人の攻撃が同時に相手にぶつかる。しかし、ハハコモリは倒れなかった。倒れたのはガマゲロゲだけだ。

 

「ガァァ、マァァァ……」

 

「な、何故だ!? 確かに弱点を突いたのに……」

 

「レベルがほぼ同じ状態なのに、不一致二倍弱点程度で、ハハコモリを落とせるとでも思ったか? 大体、ハハコモリの四倍弱点は二つもあるんだ。お前のシビルドンは『アクロバット』を覚えてるんだし、出さない理由がないだろ?」

 

 コウキがそれを指摘すると、ゲーチスは握り拳を血が出るほど強く握って、コウキに叫んだ。

 

「偉そうなことを抜かすなァァ!! やれ、シビルドン!!!」

 

「シビィィィルッ!!!」

 

「ハハコモリ、戻れ!! 頼むぜ、ドリュウズ!!」

 

「ドリュウゥゥゥッ!!!」

 

 そこで出てきたドリュウズを見て、ゲーチスはそれに嘲笑を送る。何故なら、地面技は『ふゆう』で無効だからだ。

 

「ハッハッハッハ、馬鹿め!!! じめんタイプ技が効くと思いましたか!? 浮いているのに当たるわけがないでしょう!!!」

 

「あぁ、そうだな。お前の言う通りだよ」

 

「勝負を捨てたようですねぇ!! シビルドン!! 『かえんほうしゃ』です!!!」

 

「普通ならな!! ドリュウズ、『じしん』!!!」

 

 コウキが命令すると、シビルドンが『かえんほうしゃ』をするより前に、シビルドンに『じしん』が命中した。ゲーチスはそんな、常識破りな状況に目を丸くしている。

 

「リュウズゥゥゥッ!!!」

 

 ──ズゴゴゴゴォォォッ!!!

 

「シビィィィィッ!?」

 

「なっ!? 何故、何故浮いているのに当たるんだ!? おかしいぞ、どうなっている!?」

 

「特性すら調べていないようだな。ドリュウズの特性は『かたやぶり』だ。相手の特性を無視する特性……『ふゆう』も、もちろん無視できる」

 

 それを聞いて、ゲーチスが冷や汗を流した時にはもう遅い。空からシビルドンが降ってきて、地面に叩きつけられた。誰がどう見ても戦闘不能だ。

 

「シッ、ビィィル……」

 

「これで残り半分だな、ゲーチス」

 

「ロケット団ですら調べてきてたのに、その程度調べてないなんて……本当に余裕が無いんだね」

 

 ユウリの言葉を聞いて、ゲーチスの血圧が更に上昇する。顔に太い青筋を浮かべながら、次のボールを投げた。

 

「ぎぎぃぃぃ……!! 行け、ドヒドイデ!!!」

 

「ドリュウズ、戻れ!! 頼むぜ、シンボラー!!」

 

「ボォラァァァッ!!」

 

「あれは……ボクを助けてくれたシンボラーだ!!」

 

 そしてコウキとゲーチスは、二匹にほぼ同時に命令を出した。

 

「シンボラー、『ひかりのかべ』だ!!」

 

「ドヒドイデ、『どくどく』!!」

 

「シィィィィッ!!」

 

「ドイデェェェェ!!」

 

 ドヒドイデの『どくどく』が命中して、シンボラーがどく状態になる。しかしコウキはもちろん慌てない。特性『マジックガード』があるからである。

 

「今だ、シンボラー!! 『サイコキネシス』!!」

 

「ボォラァァァッ!!!」

 

「喰らえ!! ドヒドイデ、『ベノムショック』!!!」

 

「ドォヒィィィッ!!!」

 

 特性『ひとでなし』によって、攻撃は確実に急所に当たる。急所一致二倍ベノムショックがシンボラーに迫る。しかし、シンボラー側もドヒドイデに負けじと、『サイコキネシス』で効果抜群を取る。

 

 ──ギュオォォォォッ!!!

 

 ──ジュババババァッ!!!

 

 二人の攻撃がぶつかり合う。その結果は、どちらも生存。『ひかりのかべ』を貼ったおかげで、シンボラーは生き残ることができた。そして先に動いたのは、素早いシンボラーの方だ。

 

「シンボラー、もう一発『サイコキネシス』!!!」

 

「シィィィィッ!!!」

 

 ──ギュオォォォォッ!!!

 

「ドイデェェ……」

 

「く、くそっ!! 使えない道具どもめが!!!」

 

 ポケモンを生物としてすら見ない、ゲーチスの邪悪な思想。コウキとゲーチスのどちらが強いかは、この時点で既に見えている。

 

「それを選んだのはお前だろ、ゲーチス。本当に使えないのは、お前の頭じゃないのか?」

 

「黙れぇぇぇぇッ!! 行け、コノヨザル!!!」

 

「ノォォヨォォ……!!」

 

 コノヨザルを見て、コウキはまたポケモンを入れ替える。次に出てきたポケモンは……

 

「頼むぜ、マリルリ!!」

 

「マッリィィィ!!」

 

「コノヨザル、『かみなりパンチ』!!!」

 

「負けるな!! 『じゃれつく』で迎撃しろ!!」

 

 マリルリとコノヨザルが、お互いに狙いをつけて走っていく。そして、二匹が雄叫びを上げながら拳を振りかぶる。

 

「マァリィィィィ!!」

 

「ノォォヨォォッ!!!」

 

 ──ポカポカポカポカ!!

 

 ──バヂュヂヂィィッ!!

 

「ノォヨォォ……!!」

 

「やられた!? チッ、使えないヤツめ……!!」

 

 ゲーチスがそう言って、コノヨザルを見限る。コウキは、吹っ飛んだコノヨザルを倒すために、追撃の命令をする。

 

「マリルリ、もう一回『じゃれつく』……」

 

「コノヨザル、『いのちがけ』!!!」

 

「なんだと!?」

 

「ウゥオォォォォ!!!」

 

 ──ドゴォォォォン!!!

 

 『いのちがけ』は、自分の今のHPを全て削り、それをそのままダメージとして、相手に与える技だ。それを受けて、マリルリが大きく吹っ飛ぶ。それを見たゲーチスが、嫌な笑みを浮かべた。

 

「ノォ、ヨォォ……」

 

「よし、やった!!」

 

「それはどうかな……よく見てみな」

 

「マリィ……マリッ!!」

 

 マリルリは赤ゲージまで削られたが、倒れてはいなかった。そこでチェレンが、その原因に気づく。

 

「なっ、何をしたッ!?」

 

「なるほど、『オボンのみ』か……敢えて『はらだいこ』を使わず、攻撃を耐えるためにも使える。やはり木の実は便利だね」

 

「そういうことだ。残念だったな……お前はもう残り一匹だぜ。俺はみんな残ってるけどな……戻れマリルリ!!」

 

 ゲーチスは自分が追い詰められている、それを認めたくなかった。しかし、事実として残っているポケモンは一匹だけなのだ。ゲーチスは、そのポケモンの入ったボールを投げる。

 

「くっそぉぉぉッ!! 絶対に勝て、サザンドラッ!!! もし負けたら、貴様を殺してやるぞッ!!!」

 

「サザァァァン!!!」

 

「酷い……脅して無理やり従えるなんて……!!」

 

 ゲーチスの切り札は、やはりサザンドラだった。そしてゲーチスは懐から、テラスタルオーブを取り出す。

 

 ──ギュオォォォォッ!!!

 

「私もこれを使えるんだ!! サザンドラ、テラスタルしなさい!!!」

 

 ──パキュパキキィッ!!!

 

 ──バリィィィィン!!!

 

「ザァンドラァァァァッ!!!」

 

「それがどうした、勝つのは俺達だ!! 頼んだぞッ、エンブオー!!!」

 

「ブゥオォォォォッ!!!」

 

 コウキの相棒であるエンブオーと、ドラゴンタイプのテラスタルをしたサザンドラが対峙する。そこでアクロマが笑って、コウキにあるものを投げる。

 

「コウキさん、私からプレゼントです!!」

 

「えっ!? おわっ……これは!?」

 

「テラスタルオーブです。私も持っていたのですが、使う機会がなかったので……あなたに差し上げます」

 

 アクロマはそう言って、コウキに笑いかけた。それを見てコウキは、笑い返して言う。

 

「ありがとうございます!! 行くぜ、エンブオー!! こっちもテラスタルだ!!!」

 

「なんだと!?」

 

 ──ギュオォォォォッ!!!

 

 ──パキュパキキィッ!!!

 

「赤い宝石……やっぱり、炎テラスだよな!!」

 

 ──バリィィィィン!!!

 

「ブゥアァァァァッ!!!」

 

 これで、条件は対等。テラスタル同士の、真剣勝負だ。ゲーチスがアクロマへの怒りを込めて、サザンドラに命令を出す。

 

「全員殺してしまえ、サザンドラ!!! 『りゅうのはどう』だ!!!」

 

「そんなこと、誰がさせるか!! 『インファイト』だ、エンブオー!!!」

 

「ブゥオォォォッ!!!」

 

「サァザァァァン!!!」

 

 ──ブワァァァァッ!!!

 

 ──ギュオォォォッ!!!

 

 『りゅうのはどう』を受けても、そのまま突き進むエンブオー。そして、サザンドラに張り手を連続で叩きつける。まだチャオブーだった、あの日のように。

 

 ──パシュィィィィン!!!

 

『チャオッ……オォォォォッ!!!』

 

「ブゥッ……エェンブゥゥッ!!!」

 

 ──ズダダダダァァン!!!

 

「ザァンッ……!!」

 

 コウキはその隙を逃さず、サザンドラに追撃を行うために次の命令をする。

 

「逃がすな!! 続けて『ワイルドボルト』だ!!!」

 

『ポッカァァァ!!』

 

「ブォォォォォッ!!!」

 

 ──バヂュオォォォン!!!

 

「サザァァン……!!!」

 

 まだ出会ったばかりの、あの日。はじめて命令した『たいあたり』。エンブオーは同じように、電気を纏った体を、思いっきりサザンドラに叩きつけた。サザンドラは、エンブオーの体当たりを受けて、為す術なく跳ね飛ばされていく。ゲーチスはそれを認められず、サザンドラに命令を叫び続ける。

 

「『りゅうのはどう』だ、サザンドラッ!! おいッ!! 早くしろ!! 王の命令が聞けないのかぁぁぁっ!!!」

 

「トドメだ、エンブオー!!」

 

「ブォォッ!!」

 

 土壇場で言うことを聞いてくれない、ゲーチスのサザンドラ。心と心で通じあっている、コウキのエンブオー。どちらが勝つかは、火を見るより明らかだ。

 

「『フレアドライブ』だぁぁぁぁぁッ!!!」

 

『ブォォォッ!!』

 

『ブァァァァッ!!!』

 

「ブォォォアァァァァッ!!!」

 

 ──ゴォアァァァァッ!!!

 

 凄まじい炎熱が、エンブオーの体を包み込む。今までの旅路で培ってきたもの、全てを込めて……エンブオーが、跳んだ。目的はひとつ、目の前の敵を倒すためだ。そこでゲーチスが、杖を持ってコウキに向かって走る。

 

「コウキッ!!! 貴様だけは絶対に殺すッッ!!!」

 

「杖で突き刺すつもり!? コウキ、逃げてっ!!!」

 

「いや……あいつは逃げねぇよ」

 

 ヒュウがそう言って、ユウリがコウキを見ると……コウキの目には、サザンドラに向かっていくエンブオーと同じ闘志が宿っていた。それを見てユウリは、歯を食いしばって覚悟を決める。

 

「……コウキ!! やっちゃえー!!!」

 

「お願い、コウキ!! ゲーチスを倒して!!!」

 

「任せたよ、コウキ!!!」

 

「ぶん殴れ、コウキッ!!!」

 

 みんなの声援を受けながら、向かってくるゲーチスを見る。技も何もない、怒りに任せた杖先の一撃。コウキは……それを、顔を横に逸らすことで躱した。

 

「なにっ!? 避けただと!?」

 

「オォォォォォォッ!!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

 二人の叫びが重なる。サレナの憎しみ、ヒュウの悲しみ、ヒュウの妹の涙、みんなの怒り、そしてコウキがここまで、ポケモンを愛してきたあの日々。全てを込めて、コウキは握り拳を握る。そして……

 

「ゲーチスッ!!! 俺達の、これまでの全て!!! 受けてみろぉぉぉぉッ!!!」

 

「「いっけぇぇぇぇぇっ!!!」」

 

「ブゥゥオォォォォッ!!!」

 

「なっ……!? ぐふぅぅぅぅっ!!!」

 

 ──ドバオォォォォン!!!

 

 ──ボグオォォォォッ!!!

 

 二人の拳が、顔面にめり込む。そのまま、力を入れて……抉り込むようにして、殴り抜いた。殴られた彼らが、吹っ飛んでいく。サザンドラのテラスタルが解除され、空にキラキラと輝きが舞う。

 

「サ、ザァ……」

 

 ──バキィィィィン!!!

 

「ぐっ、はぁぁ……ごぉっふぅぅ!?」

 

 ──ズドォォォォン!!!

 

「……」

 

 ──ズシィィン。

 

 エンブオーが静かに、地面に降り立つ。ゲーチスは落下してきたサザンドラの下敷きになって、体中の骨が粉々になってしまい、動けなくなる。それを見て、コウキは……何も言わずエンブオーと共に、腕を上に掲げた。

 

「や……」

 

「「やったぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

「終わったんだな……ふぅ、ありがとうな。お前が相棒でよかったよ、エンブオー」

 

「ブォォッ!!」

 

 『こちらこそ』。そう言いたげな様子で、エンブオーが腕を差し出す。コウキはそれに応えて、エンブオーと握手した。倒れたゲーチスに、Nがゆっくりと歩いていく。

 

「あえて、こう呼びます……父さん!! 分かってください!! ポケモンは、道具ではないのです!! ポケモンは、お互いを高みへと誘っていける素晴らしきパートナーなのです!! それをわかっている人達もいるのです!! だのに!!!」

 

「だ、まれ……ポケモンの言葉を、話す化け物が……人間の、言葉を……語る、な……!!!」

 

「やはり、あいつこそ心がない人間だな」

 

 チェレンがそれを見て、そう吐き捨てる。それを見ていたダークトリニティが、どこからか現れた。

 

「ゲーチス様は、もう正気では……ここは、私達に……」

 

「うん……父さんがいなければ、プラズマ団はもう……」

 

「それでは……」

 

「我々の理想は潰えた……か」

 

 そう言った後、ダークトリニティとゲーチスが消える。コウキ達の完全勝利である。それを見たヴィオも負けを確信し、自首しに向かう。

 

「やったな、コウキ!! お前、やっぱすげぇよ!!」

 

「ありがとう……おかげで、一つ区切りをつけられた気がする。あなたのおかげよ……本当に、ありがとう」

 

「いえ……まさか、こんな大事になるとは思ってませんでした。何とかなってよかったです」

 

 コウキがそう言っていると、アクロマが目を輝かせながら歩いてくる。

 

「ふむ、やはり素晴らしい!! さっきの戦いで、ポケモン達は限界以上の力を発揮していたっ!! これが絆の力ですかっ!!!」

 

「興味、湧いてきましたか?」

 

「えぇ、とても。それではコウキさん、またお会いしましょう」

 

 そう言ってアクロマは、どこかに歩いていってしまった。次の瞬間、コウキは後ろからも前からも抱きつかれる。

 

「コウキ!! ありがとう、イッシュを救ってくれて!! 流石はあたしのカレシだね!!」

 

「当然だよ、私の彼氏でもあるんだから!! ね、コウキ?」

 

「えっ、そうだったの……?」

 

 サレナがそう言って、明らかに落胆の色を見せる。それを見て、ジト目で二人がコウキを見つめてくる。

 

「前言撤回。この女たらし」

 

「私も同じく。この唐変木」

 

「酷くない!?」

 

 コウキはそう言われて、誰から何を言っていいかわからなくなる。それを見ていたリツコが一言言った。

 

「……あなた、『女難の相』が出ているわね。これからは女性関係で苦労しそう」

 

「え、嫌なんだけど!! リツコさん、回避方法を教えて!!」

 

「運命は定まっている。誰一人として、そこから逃れることはできない……」

 

「遠回しに見捨てないでくれませんか!? あぁっ、待って!! 行かないで!!!」

 

 チェレンやベルにコウキが視線を向けたが、二人ともチャンピオンの介抱で忙しいようだった。最初に立ち上がったのは、アイリスとレンブだ。

 

「大丈夫ですか、チャンピオン? 四天王の皆さんも……」

 

「あっ……ごめんなさい、やられちゃった……」

 

「くっ、不覚だ……ゲーチスは!?」

 

「それなら、コウキくんが倒してくれましたよ」

 

 ベルがそう言って、一筋の希望が見えた……コウキはそう思ったのだが、コウキの様子を見た途端全員が目を逸らした。

 

「ねぇ、正妻は私だよね? コウキ」

 

「あたしじゃなきゃヤダよ、コウキ……」

 

「私には興味ないの……? そうよね、私なんかに魅力ないわよね……」

 

「うわぁぁぁぁ!? ヒュウ兄さん助けて~!!」

 

 コウキは最後の希望である、ヒュウに泣きつくことにした。とはいえヒュウも、どうすればいいのかわからない。

 

「いや、俺に頼られても困る……うぉわぁぁ!?」

 

「……人と人が奏でるハーモニー、人とポケモンの奏でるハーモニー。どれも美しいね……ありがとうトウコ。僕にこれの大切さを教えてくれて」

 

「ちょっと違う気もするけど……まぁ、どういたしまして?」

 

 こうして……コウキのポケモン世界での冒険は、ひとまず終わりを告げたのだった。

 

 

 

 一方、その頃。ずっと空気だったプルートは、どうなったのかというと……

 

「へっくしょん!! くそぉ、アクロマのヤツめぇ……私をこんな寒いところに置いていきおって、許さんぞ……!!」

 

「ヒュララ……」

 

「キュ、キュレム!? ぎゃあぁぁぁっ!! アカギ様、助けてぇぇぇ!!」

 

 ジャイアントホールに一人、置き去りにされていましたとさ。




ここまで読んでいただき、ありがとうございました。これで一先ず、この作品は完結となります。

いつか後日談などを書くかもしれませんので、興味があればよろしくお願いいたします。

重ねて皆様に、感謝を申し上げます。この作品に付き合っていただいて、本当にありがとうございました。
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