朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版)   作:とも667

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 コウキくん、ジムに挑みます。


第三話 初めてのポケモンジム

色々あって『ヒロイン図鑑』をもらったコウキ。とりあえずコウキは、ヒオウギシティに戻ることにした。

 

「おーい、コウキ!!」

 

「あ、アデクさん!!」

 

「言い忘れておった。お前さんならわかっておるとは思うが、ジムリーダーは強い。だが、お前さんとポケモンが力を合わせれば、かならず勝てる!!」

 

 アデクはコウキに、激励の言葉をかけている。コウキもそれでやる気が出てきた。

 

「はい、頑張ります!!」

 

「いい報告を待っておるぞ!!」

 

「さて……頑張らないとな」

 

 コウキは頬を叩いて気合を入れ、ヒオウギジムへと向かう。コウキは、ここで戦うジムリーダーを知っていた。

 

「チェレン……懐かしいな」

 

 昔の思い出を懐かしみながら、歩いていると……人と肩がぶつかった。

 

「あっ、すみません」

 

「あ、こ、こちらこそ……」

 

「オカルトマニア? カロスの服装だったな……」

 

 カロスから旅行に来たのだろうか。そう思いつつ、コウキはヒオウギジムへと向かう。

 

「トレーナーズスクール、ここだな」

 

 コウキはその中に入って、ジムに一直線に歩いていく。そこでコウキは、ジムの中から声が聞こえてくることに気づいた。

 

「それじゃ、これがベーシックバッジだ」

 

「ありがとうございました」

 

「あなたもジムに挑戦してたんですね。おめでとうございます」

 

 コウキがそう言うと、エリートトレーナーはコウキを一瞥し……すぐに去っていってしまった。

 

「クールな人だなぁ……あ、お邪魔します」

 

「ようこそ!! 僕はチェレン、ヒオウギシティのジムリーダーをやってます。いや、やっているというよりは、なりましたと言ったほうが正しいな」

 

「チェレンさん、初めまして。僕の名前はコウキ、ポケモントレーナーになりたての男です」

 

 コウキも自己紹介を返す。そしてチェレンが、ジムトレーナー達に指示を出し始めた。

 

「自己紹介も終わったことだし、ジムとして君を迎える準備をしないと。二人とも、チャレンジャーを迎えるよ。持ち場に移動して」

 

「はい!!」

 

「あの二人に勝てたら、僕が相手をしますから」

 

 コウキにそう言って、チェレンは奥に行った。そしてコウキは、迷わず前に出る。内心コウキはドキドキしていた。

 

『これがジムの緊張感か……!! くぅ~、ワクワクするな!!』

 

「よし、準備はいいみたいだな!! いくぞ!!」

 

「よろしくお願いします」

 

 コウキはこうして、初めてのジムに挑戦することになった。コウキの鍛え上げられたポケモンの前には、ジムトレーナーのポケモンも敵わない。

 

「チャオブー、『つっぱり』!!」

 

「チャブゥゥゥ!!」

 

 ──ズダダダァァン!!

 

「ミィィィ……」

 

 ミニスカートのミネズミが気絶した。これで、コウキの勝利だ。

 

「ありがとうございました」

 

「あぁ、負けちゃった……強いね、キミ」

 

「それほどでもありませんよ。それではチェレンさん、お願いします」

 

 それを見ていたチェレンが、冷静にコウキのポケモンを分析する。

 

『チャオブー……もう進化させている。それにまずルリリを出して、しっかり経験値を与えているようだ。知識不足なども全く見られない……できる』

 

「あぁ、わかってる。君にとっては初めてのジム挑戦だが、僕にとってもまだ二回目だ。さっきの人は強かった、執念のようなものを感じる程に……まるで昔の僕のようだったよ」

 

「昔のチェレンさん……ですか」

 

 コウキはそう言ったが、昔のチェレンのことを知っている。ひたすら強さを求め、負けには意味などないと考えていた、上昇志向の塊。

 

「おっと、おじさんの昔話をしても面白くないよね。それじゃ……お互い悔いを残さないよう、ベストを尽くそう!!」

 

「はい、よろしくお願いします!!」

 

「さてと……よし。やるぞ!!」

 

 チェレンも頬を叩いて、気合を入れ直す。コウキもそれを見て、ボールを取り出した。

 

「いけ、ルリリ!!」

 

「ゆけっ、ミネズミ!!」

 

「ルリィ!!」

 

「ミッズゥ!!」

 

 二匹がバトルフィールドに出現する。そして、ルリリを出したのを見てチェレンは考える。

 

『やはり出してきたな。経験値が目的なんだろう……それなら、交換した後の隙で『ふるいたてる』をして、それから攻める!!』

 

「今だ、ミネズミ!! 『ふるいたてる』!!」

 

「甘い!! ルリリ、『あまえる』だ!!」

 

 それを聞いて、チェレンが驚愕する。交換すると踏んで、変化技の指示を出してしまった。無防備なミネズミに、ルリリが近づいて……

 

「なにっ!? ミネズミ!!」

 

「ルリリィ~♪」

 

「ミ、ミッズゥゥ……」

 

「これで変化技の分はチャラだな!!」

 

 ミネズミの攻撃ががくっと下がる。攻撃+1が-2されて、差は-1だ。

 

「くっ……!! まさか読み違えるとは……!!」

 

「ルリリ、すかさず『バブルこうせん』だ!!」

 

「ミネズミ、『みきり』!!」

 

「ルリィィィッ!!」

 

 ──ダババババッ!!

 

 バブルこうせんを見切ったミネズミが、綺麗にバブルこうせんを躱す。それを見て、コウキが不敵な笑みを浮かべた。

 

「いいぞ、ルリリ!! 戻ってこい!!」

 

「まさか……攻撃を当てるのが目的ではなかったのか!?」

 

「バブルこうせんは、前方に泡の光線を発射する攻撃……だから、それを推進力にすれば目くらまししながら戻ってこれる!!」

 

 コウキの狙いはそこだった。それがわかって、チェレンは冷や汗を流す。

 

『このトレーナー、本当に初心者なんだよな? まるで、何十年もポケモントレーナーをやっていたようなテクニックだ……!!』

 

「行ってこい、チャオブー!! 『ニトロチャージ』だ!!」

 

「……ミネズミ!! 『たいあたり』で迎え撃て!!」

 

 『ふるいたてる』をしてもやられるだけ。そう判断して、チェレンはHPを削ることを優先した。二匹が接近していき……正面衝突する。

 

「チャアァブッ!!」

 

 ──ズドォォン!!

 

「ミッズゥゥ!!」

 

「そこだ、チャオブー!! 『ニトロチャージ』で追いつけ!!」

 

 チャオブーがもう一度炎を纏い、吹っ飛ぶミネズミに追いついた。そして、そこでコウジが指示を出す。

 

「チャオブー、『つっぱり』だ!!」

 

「チャブゥゥゥッ!!」

 

 ──ズダダダァァン!!

 

「ミズゥゥゥ……」

 

 ミネズミは、つっぱりの連撃を受けて戦闘不能になった。それを見て、チェレンがミネズミをボールに戻す。

 

「……想像以上だな。とても初心者とは思えない」

 

「ありがとうございます」

 

「だけど僕は!! ジムリーダーとして、君の壁でありたい!! 行け、ヨーテリー!!」

 

 チェレンがヨーテリーを繰り出す。それを見てコウキは、脳内であの曲が流れ始めるのを感じた。

 

『チェレンの闘志を感じる……だけど俺達の闘志も負けてはいない!! 勝負だ、チェレン!! 『勝利は目の前』だぜ!!』

 

「ヨーテリー!! 『ふるいたてる』だ!!」

 

「ワンワンッ!!」

 

「チャブッ!!」

 

 チャオブーは、仕掛けようと体勢を低くした。しかしコウキは冷静に、仕掛けるタイミングを見計らう。

 

「待て、チャオブー。『まるくなる』だ!!」

 

「チャオ? チャオッ!!」

 

「……仕掛けてこない、か」

 

 チェレンは自分の作戦が読まれたことに、またしても冷や汗を流す。

 

『今のチャオブーはニトロチャージを二回放ったあと。だから、素早さが二段階上がっているはずだ。仕掛けてきたら、それを利用してチャオブーに勢い余らせるつもりだったが……ここまで読んでくるか!!』

 

「……ヨーテリー!! もう一度『ふるいたてる』だ!!」

 

「もう一回『まるくなる』だ!!」

 

 『ふるいたてる』は、一回で攻撃と特攻を一段階上昇させる。それに対して『まるくなる』は、防御力を一段階上昇させる技。そしてチェレンのヨーテリーは、特殊技を覚えていない。

 

『これ以上やっても無駄、か……!!』

 

「行け、ヨーテリー!! 『たいあたり』だ!!」

 

「ワウーンッ!!」

 

 それを見て、コウキも仕掛けるべきタイミングだと察した。コウキも満を持して、攻撃の指示を出す。

 

「チャオブー!! こっちも『たいあたり』だ!!」

 

「チャブゥゥゥッ!!」

 

「ニトロチャージじゃない……!?」

 

 コウキは一度同じ戦法を、ヒュウにされたことがあった。だから、同じ手は食わない。スピードの遅いたいあたりならば、急停止が効くから。二匹が接近して……ぶつかる。

 

 ──ドガァッ!!

 

「チャブッ……!!」

 

「キャンッ!!」

 

「そこだ、仕掛けろ!! 『ニトロチャージ』!!」

 

 コウキはチャオブーに、チャオブーの一番欲しかった指示を出す。チャオブーが笑みを浮かべて炎を纏い……怯んだヨーテリーに、突貫する。

 

「しまった、避けられない……!!」

 

「チャアァブゥゥッ!!!」

 

 ──ズゴォンッ!!

 

「キャイィィン!!」

 

 怯んだヨーテリーには、高速で突っ込んでくるチャオブーを避けられず……為す術なく、当たってしまった。それをみすみす見逃す程、チャオブーもコウキも甘くはない。

 

「チャオブー、トドメだ!! 『つっぱり』ッ!!!」

 

「チャブゥゥゥッ!!!」

 

 ──ズダダダダァァァン!!!

 

「キャウゥゥーン……」

 

 ──ドサッ。

 

 静かな音と共に、ヨーテリーが倒れ込む。そして、少しの静寂の後……審判が叫んだ。

 

「ヨーテリー、戦闘不能!! チャレンジャーコウキの勝利です!!」

 

「……やったぁぁぁぁ!!」

 

「チャブゥゥゥゥ!!」

 

 二人が跳んで跳ねて喜ぶ。チェレンは、それを見て……笑った。

 

「……そう!! これが、ポケモン勝負なんだよ!!」

 

「ありがとうございました!!」

 

「ジムリーダーとして……二人目のチャレンジャーが君でよかった。素直にそう思える、素晴らしい戦いでした!!」

 

 コウキとチェレンは握手をした後、チェレンが賞金とジムバッジを手渡す。

 

「これはささやかな賞金と……そんなポケモンと、君の強さを称えるための、ベーシックバッジだ!! 是非受け取って欲しい!!」

 

「……これが、ベーシックバッジ!! ありがとうございます!!」

 

「そして、これも受け取ってほしい!! 『ふるいたてる』の技マシンさ!!」

 

 コウキはそれを受け取って、またお礼を言う。

 

「ありがとうございます!!」

 

「このイッシュ地方には、八つのポケモンジムと八つのジムバッジがある。君もポケモントレーナーなら、全てのジムバッジを集めなよ!!」

 

「はい、ありがとうございました!!」

 

 コウキはそう言って、ジムを出ていった。それを見て……チェレンが呟く。

 

「トウコ、君にも見て欲しいな……きっと彼は、君をも超えるチャンピオンになるよ」

 

「ふぅ……!!」

 

「おーい!! どうだった、ジムリーダーとのポケモン勝負?」

 

 ベルにそう聞かれて、コウキは自慢気にさっき手に入れたベーシックバッジを見せつけた。

 

「ベーシックバッジ!! すごいすごい、ポケモンと旅を始めたばかりなのに!! あなたにはトレーナーの才能があるよ、絶対!!」

 

「そうですかね? ありがとうございます」

 

「それじゃ、私からはこれ!! 『おんがえし』の技マシンだよ!! ポケモンが懐いてれば懐いてるほど、威力が上がる素敵な技なの!!」

 

 コウキはそれを受け取って、お礼を言った。

 

「ありがとうございます……あはは、なんか今日はお礼してばっかりだな」

 

「ふふっ……それにしても、チェレンったら」

 

「ベル!! 二年ぶりだね」

 

 ベルは、いきなりチェレンが出てきて、すごく驚いている。

 

「うひゃあ!? ど、どうしたの?」

 

「せっかくだからライブキャスターの登録を、と思ってね」

 

「いいんですか? 是非とも!!」

 

 コウキはライブキャスターに、チェレンを登録する。

 

「これで僕のライブキャスターから、君に連絡ができるね」

 

「あ、それなら私も!! ……よし!! 一緒にアララギ博士も登録しといたよ!!」

 

「色々ありがとうございます……ん?」

 

 ライブキャスターが鳴り始めて、コウキが画面を起動する。通話相手はアララギ博士だ。

 

「ハーイ、コウキ!! 私がアララギよ!! ベルから聞いたわ!! ポケモン図鑑を受け取ってくれて、本当にありがとう!!」

 

「あっ、初めまして!! こちらこそ、ありがとうございます!!」

 

「あなたのおかげで、私達とポケモンは更に仲良くなれるわ!!」

 

 そこでベルが楽しそうに話し始めた。

 

「博士、こっちは面白いですよ!! 二年前は確認できなかったポケモンが、たくさんいますね!!」

 

「ベル、遠くまでおつかいありがとうね。そしてチェレン、ジムリーダーはどうかしら?」

 

「アララギ博士、お久しぶりです!! 相変わらずお元気そうで。ジムリーダーですか? 難しいですね……いつものパートナーなら」

 

 愚痴をこぼすチェレンに、博士は笑う。

 

「まぁ、チェレンったら……ギリギリの勝負をすることで、挑戦者とポケモンの絆を深めさせるジムリーダーになるんでしょ?」

 

「ギリギリの戦いは、今のところできていませんけどね……今まで二人来ましたが、どちらにも完敗しました」

 

「大丈夫ですよぉ!! チェレンは新米ジムリーダー、私はポケモン博士のタマゴ、コウキはまだポケモントレーナーになりたてだけど、いつもポケモンがいてくれますから!!」

 

 ベルがそう言うと、博士がそれに続ける。

 

「そうよ、ベル!! 私達の世界は、ポケモンとの世界なの!! みんなそのことをいつも考えて、その上で自分のやりたいこと、できることをポケモンと追い求めてね!!」

 

「わかっていますよ、博士」

 

「特に、コウキ!! ポケモン図鑑も大事だけど、まずはポケモンとの旅を、心ゆくまで楽しんでね!!」

 

 コウキはそう言われて、頷く。

 

「もちろんです!!」

 

「それじゃ、私は研究があるので失礼します!! バーイ、コウキ!!」

 

「切れた……すごいな、ライブキャスターって」

 

 コウキがそう言うと、ベルが嬉しそうに言う。

 

「でしょ? ライブキャスターって、ホントすごいよね!! あ、私に電話してくれたら、ポケモンがどれくらい懐いてるか教えてあげるよ!!」

 

「ふむ、それなら僕はポケモンの特性やタイプの相性について、知っていることを教えてあげるよ」

 

「二人とも、色々とありがとうございます……あ、ヒュウ兄さん!!」

 

 ヒュウはチェレンのところに、一直線に走ってきた。

 

「ジムリーダーだな!! 早速だけど挑戦だぜッ!!」

 

「君も手強そうなトレーナーだね……了解!! ではポケモンジムにおいで」

 

「なんだよ!! 絶対に勝つからなッ!!」

 

 コウキは感情的なヒュウを見て、少し呆れたような顔をする。

 

「ジムリーダーって、想像以上に大変だねぇ」

 

「それで、どうするのお? サンギタウンを超えた先のタチワキシティなら、別のポケモンジムもあるけど?」

 

「もちろん、そこに行きます!!」

 

 コウキはそう言って、走っていった。まずは、アデクのところにいい報告だ。

 

「アデクさん!!」

 

「言わずともわかる!! チェレンに勝ったのだろう? お前さんならやれると思っておった!! だが天狗になるなよ、ポケモントレーナーは一生成長し続けるのだ!! ポケモンと共にな!!」

 

「はい、わかってます!!」

 

 コウキはそう言って、アデクの家を出て……20番道路を走り抜ける。そこでコウキは、一匹のポケモンを捕まえた。

 

「チャオブー、手加減して『たいあたり』」

 

「マユゥゥゥ!!」

 

「よし、モンスターボールだ!!」

 

 コウキがモンスターボールを投げた相手は、クルマユだ。コウキは草タイプが欲しかったので、そのためのものだ。

 

「レベル上げは……タチワキコンビナートでやるか」

 

「おーい!!」

 

「あ、ベルさん。どうしました? そんなに慌てて」

 

 ベルは忘れていたことを思い出したのだ。コウキの持っている、ポケモン図鑑のパワーアップ。

 

「ごめんね、コウキくんに託したポケモン図鑑のパワーアップを忘れてたよ!! その名も、生息地リスト!! これ、すごいんだよ!! ちょっと図鑑を借りるね!!」

 

「……いけましたか?」

 

「生息地リストは、エリアごとにどんなポケモンがいるか確かめることができる、ポケモン図鑑のモードなんだよ!!」

 

 コウキは、バレなかったことに安堵した。ヒロイン図鑑……誰でも触れるようになっているのではないかと思ったが、どうやら自分以外には見えていないらしい。

 

「便利ですね……あ、こうやって使うんだ」

 

「そうそう、上手!! ポケモン図鑑を埋めることは、あなたの世界を広げること!! だから色んな場所に行って、色んなポケモンに出会ってね!! じゃあね」

 

「ありがとうございましたー!! ……好感度レベル9か」

 

 コウキは、ヒロイン図鑑を見てみる。すると、情報が一部追加されていた。

 

「こんな感じなのか……どういう仕組みなんだか」

 

 コウキはそう言いながら、タチワキシティへと歩いていった。

 

 

 

 一方その頃、プラズマフリゲートにて。船上で、ヴィオの驚愕の声が響いた。

 

「なんだと!? その少年が、ゲーチス様を知っていた……!?」

 

「は、はい。どうやらそうらしく……一体どこから漏れたんでしょうね?」

 

「チッ……また、どこの誰ともわからぬトレーナーか。トウコ……奴には煮え湯を飲まされた。となると、早めに排除しておいた方がいいか……」

 

 そう言いながら、ヴィオはゲーチスとアクロマへの報告のため……船の奥へと歩いていった。

 

「……アクロマ様。報告は以上です」

 

「なるほどっ!! その子供は何故か秘密を知っていて、しかも強そうなポケモンを連れていた……と!!」

 

「そのような報告になっております。あの辺りに強いポケモンはいないはず……一体どうなって?」

 

 ヴィオの懸念を他所に、アクロマは探究心をどうしようもなく刺激されていた。

 

「素晴らしい……!! そんな場所に、そのような異分子がいるとは!! 是非とも会ってみたい、そして聞いてみたいっ!! ポケモンの力を引き出す、その方法を!!」

 

「ア、アクロマ様……?」

 

「もう下がって構いませんよ、ヴィオさん」

 

 そう言われて、ヴィオが一礼して部屋を出た。

 

「……あの人には、危機感というものがないのか? 秘密が漏れているんだぞ?」

 

 ヴィオはブツブツと呟きながら、ゲーチスのいる場所へと向かった。そして、ゲーチスの部屋。

 

「なんだと!? その、よくわからないトレーナーが!?」

 

「は、はい。そのようで……ひっ!?」

 

 ──ガンッッ!!!

 

「裏切り者をすぐに探しなさい!! 見つけ次第、海に放り込め!!」

 

 ゲーチスは杖で床を強く突いて、ヴィオを怒鳴りつける。そう言われてはヴィオも従う他ない。

 

「は、はっ!!」

 

「……有り得ぬ、有り得てはならぬ。今度こそ絶対に、どこの誰ともわからぬ、くだらぬトレーナーなんぞに、私の邪魔はさせない……!!」

 

 ゲーチスは自分の部屋で、杖で地面を突きながらブツブツとそう呟き続けていた。そして結局、裏切り者は見つかることがなかった。




次回、タチワキシティ。
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