朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版) 作:とも667
VSホミカ。
コウキは約束通り、ホミカのジムへと向かった。中からは、バンドの激しい演奏が聞こえてくる。
「……ギミックは同じのようだな」
コウキはそう呟いて、中に入る。ホミカと数人がそれぞれの楽器を演奏して、脳に直接響くようなロックを奏でていた。
「おっと、コウキさんですか? お待ちしておりましたよ。今まで二人ほど挑戦者が来ましたが、楽しそうではありませんでしたから」
(二人……一人はエリートトレーナーの人で、もう一人はヒュウ兄さんかな?)
「そうなんですね、それなら丁度いいや」
コウキはそう言って、やる気を見せている。
「今、ホミカさんは演奏に夢中なようですが……止めるんですよね?」
「もちろん、バトルして止めますよ。さて……まずは、あなたからだ」
「邪魔するヤツはぶっ飛ばす!! 邪魔しねぇヤツもぶっ飛ばす!!」
そう言ってスキンヘッズのクックは、ドラムを打つ手を止めてボールを構えた。コウキもボールを構えて……バトルが始まる。
「マリルリ、『アクアテール』だ!!」
「ルゥリィィ!!」
──バシャアァァン!!!
「ガァスゥゥ……」
水の入ったバケツをひっくり返したような音が響いて、アクアテールが炸裂。コウキはクックのドラムの演奏をやめさせた。
「あー、負けちまった……アンタ、ホミカさんの噂してたコウキか? どうりで強いわけだ」
「僕なんてまだまだですよ。次はあなたですね」
「ギターを弾いてる時、ポケモンを対決させる時!! あたし、まっすぐでいられるの!! 止めたいなら止めてみな!!」
「止めてみせますよ」
コウキはそう言って、不敵な笑みを浮かべて……ボールを構えた。
「チャオブー、『ニトロチャージ』!!」
「チャオォォォ!!」
──ズゴォォッ!!
「ドガァァ……」
ドガースの体に、炎と大質量が同時に叩きつけられる。ドガースが吹っ飛んで、倒れた。これでコウキの勝利だ。
「流石だね、リーダーが認めてるだけあるよ!! ほら、行ってあげな。リーダー、きっと待ちくたびれてるよ」
「ありがとうございます。それでは……ホミカさん!! 約束通り、来ましたよ!!」
「……遅いよ!! 待ちくたびれた!! 演奏しても演奏しても、心のモヤモヤが取れなくて……こんなこと初めてだよ!!」
ホミカがそう言って、思いの丈を口にした。ホミカはまだ、それが初恋であることに気づいていない。
「すみません、待たせちゃって。じゃあ、そろそろ始めましょうか!!」
「当然ッ!! 行くよ、アンタの理性ぶっ飛ばすから!!」
「上等だ!! いざ勝負!!」
コウキとホミカが、同時にボールを取り出す。ホミカはギターを掻き鳴らしながら、叫ぶ。
「いけっ、ドガース!!」
「頼んだぜ、コイル!!」
「ドガァァース!!」
「ルルゥッ!!」
ホミカはそれを見て、コウキが対策してきたことを察する。
「なるほどね、対策はバッチリか……でも、それだけじゃ甘い!! ドガース、『クリアスモッグ』!!」
「ガァスゥゥ!!」
──ブシュウゥゥッ!!
「……目眩しか」
白いスモッグに辺りが覆われて、何も見えなくなる。しかしコウキは、不敵な笑みを浮かべる。
「そこだ、ドガース!! 『ダメおし』!!」
「甘い!! コイル、『でんじは』だ!!」
「ッ、読まれてた!? どうして……!?」
ホミカはそのことに驚愕したが、コウキのしたことは何も特別なことではない。
「確かにクリアスモッグで、ポケモンは見えなくなったが……空気の動きまでは誤魔化せない。ポケモンが見えないなら、他のことに目をやるまでだ」
「麻痺してるの!? クソッ、ドガース……!!」
「今だ、コイル!! 『エレキボール』!!」
「コォルルルルゥッ!!」
──ジュヂヂヂヂィッ!!
エレキボールは、相手より素早さが高ければ高いほど威力が上がる。レベル差と、麻痺による素早さの半減……それにより、最大火力のエレキボールが放たれた。
「ガァァスゥ……!!」
「くっ……!! ドガース、動いて!!」
「まだまだ!! コイル、もう一発『エレキボール』だ!!」
そこにコウキが、コイルに命令して追い討ちでエレキボールを撃ち込む。しかしそこで、ドガースが動き……それを間一髪躱した。
「避けたか……なら、もう一発!!」
「させないっ!! ドガース、『クリアスモッグ』だ!!」
「ドォガァァァ!!」
──ブシュウゥゥッ!!
またもや白いスモッグに辺りが覆われて、敵が見えなくなる。しかしそれだけなら、さっきと何も変わらない。
「甘いぞ、コイル!! エレキ……」
「甘いのはそっちだ!! ドガース、『スモッグ』!!」
「なにっ!?」
──プシュウゥゥ……
更に空気が追加されて、空気がスモッグの吹き出された勢いで動く。
「そうか、これなら空気の動きで見切ることはできない!!」
「麻痺しても、その場でスモッグを吐くことくらいはできる!! どこにいるかわかるかな!?」
「やるな……!!」
コウキもこれでは、ドガースの場所が分からない。コウキはどうすればいいか、勝ち筋を考える。
(コイルまでスモッグに覆われて、相手もどこにいるかわからない。スモッグの中で一方的に攻撃され続ければ、いくら相性が今一つでも……)
「ドガース、『たいあたり』!!」
──ドガッ!!
「ルゥッ!?」
後ろからぶつかられて、ドガースがすぐ消える。霧の中に隠れたドガースへの対策を、コウキは考える。
「ドガース、『たいあたり』し続けろ!!」
「ガァスゥゥッ!!」
──ズガガガガガッ!!
「……コイル!! 動き回って霧を晴らせ!!」
コウキはそう指示して、スモッグを晴らすことに専念させる。しかし、ホミカもそう甘くはない。
「そう上手くはいかない!! ドガース、もう一度『クリアスモッグ』だ!!」
「ドガァァス!!」
──ブシュウゥゥゥ!!
「……今だ、コイル!! でんきショックを、左右に撃て!!」
晴れ始めた霧をまた再展開されたその時、コウキがそう叫ぶ。そこでコイルが指示通り、でんきショックを左右に放った。すると……
「コォォルルゥッ!!」
──バヂュヂュヂュッ!!
「ドガァァァァ!?」
「なっ……当たった!? どうして!?」
ホミカはそれに驚愕しているが、当然だ。コウキは彼女に、その原理を説明する。
「『偏差撃ち』……相手の移動を予測して弾を撃ち込む、本来は銃の技術だが……ドガースは何度も、たいあたりしては逃げる、ヒットアンドアウェイを繰り返していた……」
「……まさか!? 逆に、繰り返したから!?」
「そうさ!! 短期間のヒットアンドアウェイは、ドガースの『癖』になるには十分……!! 何も考えずともできるようになっていたから、今回も体が勝手に移動しちまったのさ!!」
ドガースは地面に落ちてしまっている。それを見逃すほど、彼も甘くはない。
「コイル、『エレキボール』だ!!」
「ルルゥゥゥッ!!」
──バヂュヂヂィィィッ!!
「ガァァスゥゥゥ……!!」
エレキボールが炸裂し、ドガースが倒れる。彼女は悔しそうにしながら、ドガースを戻した。
「クソッ……!! やるじゃん、あたしが認めただけあるね……!!」
「それ程でもありませんよ。お疲れ様、コイル。戻ってこい」
「でも、まだまだ!! いっけぇぇ、ホイーガ!!」
「ホォォガァァッ!!」
ホイーガ、彼女の切り札だ。コウキもそれに応えるように、自分の相棒を出した。
「頼むぜ、相棒!! 行け、チャオブー!!」
「チャオォォォッ!!」
「ここから盛り上げて、あたしが勝つの!! 爆裂ッ!!」
ホミカが声を張り上げて、自分とホイーガを鼓舞する。それを見たコウキも、声を張り上げた。
「俺達だって、気合なら負けてないぜ!! だろ、チャオブー!?」
「チャブゥゥッ!!」
「勝つのはあたし達だ!! ホイーガ、『どくばり』!!」
──ヴィィィィン!!
ホイーガが回転しながら走り回り、毒針を敵に打ち込もうとする。コウキはそれを見て、笑みを浮かべた。
「チャオブー、囲まれるな!! 『ニトロチャージ』で範囲から抜けろ!!」
「チャアァブッ!!」
──ゴォォォッ!!
「逃がすな、ホイーガ!! 旋回して追いかけろ!!」
ホイーガがチャオブーを追い回す。コウキも、もちろんそう来ると思っていた。
「チャオブー、旋回して『ニトロチャージ』!!」
「チャオォォォッ!!」
「追いかけろ、ホイーガッ!!」
──ゴォォォォッ!!
──ヴィィィィン!!
ホイールと火炎のデッドヒート。先に止まったほうが負けの、チキンレースだ。そこで有利なのは……チャオブーだった。
「まだだ、チャオブー!! もっと加速しろ!!」
「くそっ……!! ホイーガ、まだいけるよね!?」
「ガァァァッ!!」
ホイーガはその声に応えて、どくばりを撃ちながら走る。しかし、チャオブーはどんどんホイーガを突き放していた。
「ホイーガ、後のことはいい!! もっとスピード上げて!!」
「ホォォルゥゥッ!!」
──ギャルルルルッ!!!
「いっけぇぇぇっ!!」
ホイーガの装甲は地面に激しく噛みつきながら、チャオブーへと走っていく。しかし、コウキはそれにニヤリと笑った。
「それを待っていた!!! チャオブー、旋回して……横に跳べ!!!」
「チャブゥッ!!」
「そこだ、撃ち込め!! ホイーガッ!!」
──ビシュシュシュッ!!!
暴風のような激しい毒針の嵐が、チャオブーに迫る。しかし、コウキもチャオブーも至って冷静だ。そこでコウキは……予想外のことを口にした。
「チャオブー!! 『まるくなる』だ!!!」
「えっ!?」
「チャブゥッ!!」
チャオブーは頭を下げ、腕を体に当てて……体を丸くして、完全に防御態勢だ。ここで攻撃してくると思っていた彼女は、それに面食らう。毒針は屈んだチャオブーに当たることはなく、その後ろの壁を貫くだけに終わった。
(どうして!? ホイーガが止まってるのは今だけ、絶好の攻撃チャンスなのに……!!)
「……ホイーガ、走り出せ!!」
「イィガァァ!!」
──ギャルルルルッ!!!
またホイーガが地面を噛んで、走り出す。それを見て……コウキは、不敵な笑みを浮かべた。
「ホミカ!! この勝負、俺がもらった!!」
「なに!?」
「チャオブー!! 『ころがる』だ!!!」
体を丸くしたまま、チャオブーが地面に着き……凄まじい勢いで、走り出した。ニトロチャージよりも、もっと速く。
「なっ……!?」
「それじゃ、旋回も間に合わないだろ!!!」
「ホイーガ、止まって『まもる』!!」
急いでホミカが、防御命令を出す。ホイーガは急停止し、向かってくるチャオブーに対して光の盾を展開した。それに行く手を阻まれて、チャオブーは金属を叩いたような音と共に、弾かれた。しかし、それすら彼の想定内。
──ガキィィン!!
「チャオブー、今だ!! 『ニトロチャージ』!!!」
「しまった、本命は……そっちか!!」
「チャアァオォォッ!!!」
──ゴバォォォォォッ!!!
烈火と、ニトロチャージの積み重ねで上昇したスピード。その二つが合わさって、とてつもない威力と化したニトロチャージが、ホイーガに炸裂した。
「イィ、ガァァ……」
「ホイーガ!! くそぉっ……!!」
「ホイーガ、戦闘不能!! 勝者、チャレンジャーコウキ!!」
審判がそう言って、コウキがチャオブーと共に腕を掲げて喜ぶ。
「やったぁぁぁぁっ!!!」
「チャアァブゥゥゥ!!!」
「……あーあ、負けちゃった。でも、全力出せたし!! 清々しい気分!! ほら、これは賞金と……トキシックバッジ!!」
ホミカに差し出された、バッジと賞金を受け取り……コウキがバッジをケースにしまう。
「トキシックバッジ……ありがとう!!」
「あと、これも持って行きな!! 『ベノムショック』のわざマシン!! 結局使えなかったけど、ホイーガが覚えてたんだよ」
「ありがとう、大切にする!!」
そこでホミカは、自分が汗だくであることに気がついた。
「こんなに熱中したの、いつぶりだろう……色々とありがとね。すごく感謝してる」
「こっちこそ、いい勝負だったよ」
「それと、親父のこともね。おかげでみんな、ヒウンシティに行けるようになったし」
そこでコウキは、ふとホミカの好感度を見る。すると……書いてある数値がすごい勢いで上がっていっていた。
(80、90……100!? レベルMAX……何が起こるんだ?)
「それ程でも……あ、もうこんな時間か」
「みんな、今日のライブはおしまい!! 忘れ物、しないようにね!! それじゃ、あたしも……」
コウキは、そこで……お母さんに言われたことを思い出した。
「ホミカさん……良かったら、一緒にコンビナートまで行きませんか?」
「えっ……? い、いいけど……」
「見せたいものがあるんです」
コウキはそう言って、ホミカの手を引き……夜景を見に行くことにした。そして……コンビナートのベンチに、二人で座る。
「綺麗……」
「俺も初めて見たけど……綺麗だ、都会じゃこんな綺麗に見えないしな……」
「これをあたしに、見せようって……?」
ホミカがコウキを見て、尋ねた。それにコウキは笑顔で答える。
「はい、汗だらけだったので……ここなら、涼めるかなって」
(なに、この感情……心臓が痛いくらいに脈打ってる……顔、まともに見れない……)
「どうしました? 顔が赤いですけど……」
純粋に心配して、コウキが声をかける。そこでコウキは、こっそりヒロイン図鑑を覗いてみた。
(情報が全部解禁されてる……このハートマーク、100になると付くのか?)
「……そのっ、あたし、は……」
(もしかして……告白!? 待て待て、急だって!! まだ心の準備が……)
コウキは、そんなことを心の中で思いながら、どうにか平静を装う。彼女はそんな中で、考えていた。
(言うのが、すっごく怖い……でも、口に出さないとずっと苦しい……吐き出すしか、ないか)
「あたし……アンタの顔、見れなくなった……アンタ見てると、苦しくて……変な気分で……いつもはギター鳴らせば、治るのに……アンタがいなくなるって思うと、痛くて痛くてたまらないの……!!!」
「……そう、なんですね」
「痛い、よぉ……お願い、助けて……うっ、ぐす」
ホミカには、『恋』というものがわからない。だから、できることは……目の前のその原因に頼むことだけ。自分と家族を救ってくれた人に、この痛みを救ってくれるよう、頼む。そして、コウキは……
(どうしよう、泣いちゃった……!! こういう時、どうするんだ!? 何すればいいの、図鑑にも書いてないしさ……!! クソッ、選択肢とかないのか!? ゲームなら出てくるだろ!!)
「……ホミカ。それは、恋だよ」
「恋……」
ホミカは痛みの正体を知る。自分はこの男が、好きで好きでたまらないのだと。だから、それがいなくなることが、どうしようもなく寂しいのだと。しかし、それがわかっても痛みは消えない。
(言ったけど……どうするんだ、このまま無視して帰れるわけないし……くそっ、もうどうにでもなれ!!)
「あたし、痛いのはやだ……お願い、なんとかできるなら……んっ!?」
「……っはぁ。どうですか? 痛みの方は」
コウキは、ホミカにキスをした。キスをされた彼女は、少し時間を置いたあと……頭から煙を吹き出して、真っ赤になる。
「い、いいい今、ななな、何して……!?」
「キスです。好きな人が好きな人にやる行為」
「す、好きな人が好きな人、に……え?」
ホミカは何かしら言おうとして、口をパクパクさせたが……しばらくして、言われたことの意味に気がつく。
「……俺もホミカのことが好き。そういうこと」
「そう、なの……嘘じゃない?」
「嘘なんてつかないよ、相棒に誓って……わっ!?」
ボールを取り出して、コウキが言うと……ホミカは泣きながら、コウキに抱きついてきた。
「う、うぅぅ……!! コウキ……好きっ!!」
「うん。知ってる」
「大好きッ、愛してるッ……うぅぅぅっ!!」
そう言って泣きつくホミカを見て……コウキは、心の中でため息をついた。
(はぁ~上手くいった、危なかったぁぁ!! 警察呼ばれるかと思ったわ!! 先に進むのはどうしようもないけど……これで少しでも、彼女が楽になるのなら)
「ホミカ……」
「うっ、うぅぅぅ……!!!」
ホミカは泣きながら、自分の痛みが無くなったことを感じる。そして……その痛みは全部、別のものに変換された。
(あぁ……そっか。恋ってこんなに……嬉しいものなんだ。毒みたいだけど、薬でもある……変なの)
「そろそろ帰ろっか。お父さん心配しちゃうよ」
「じゃあ、うち来なよ!! 今日は泊めてあげる!!」
ホミカは勢いに任せて、そう言った。コウキはそれを聞いて……ホミカを二度見した。
「……え? なんて?」
「だから!! 家に来て欲しいって言ってんの!!!」
「はぁぁぁぁ!?」
コウキもホミカも、顔が真っ赤になった。こうしてコウキは、なし崩し的にホミカの家に泊まることになったのであった。
時間は少し遡り、船着き場の前にて。プラズマ団の三人組が、サレナとバトルをしていた。その結果は……
「ミッズゥゥ……」
「ニャオォォ……」
「お、俺たちのポケモンが……!?」
サレナは、プラズマ団三人とトリプルバトルをして、たった一人で全滅させた。サレナの使っているポケモンは……ランプラーと、ダルマッカと、ドテッコツ。どれも強いポケモンになるポケモンばかりだ。
「身の程を思い知った? さっさとどきなさい、ゴミ共。さもないと……死ぬことになるわよ」
「こ、こいつ……狂ってやがる!!」
「チクショウ、覚えてやがれ!!」
捨て台詞を吐いて、サレナの前から逃げていくプラズマ団達。サレナはそれに冷酷かつ、憎悪の籠った視線を向けたあと……ため息をつく。
「……奴らも、いつか殺す。奴らの本拠地丸ごと、全員殺し尽くしてやる」
プラズマ団への呪詛を呟きながら、サレナは船へと乗り込んだ。
次回、ヒウンシティに行きます。