朝起きたらBW2の主人公になってました(全年齢版) 作:とも667
色々盛り沢山の回です。
コウキは現在、ライモンシティに直行せず寄り道をしていた。どこに来ているかというと……
「あー、砂が目に入って痛い……『ぼうじんゴーグル』が欲しいなぁ」
コウキはそう言いながら、砂漠の中を歩いていく。ここはリゾートデザート……『こだいのしろ』がある場所でもある。そこでコウキは、トレーナー達を倒しながら歩いていた。
「マリルリ、『アクアテール』!!」
「ルゥリィィ!!」
「マスゥゥ……」
「あぁ、デスマス……!!」
この辺のトレーナーを倒し終わり、コウキはポケモンを探す。それも、特別なポケモンを。
「……お前はどうだ?」
「シィィィィッ!!」
(光った!! 間違いない、『Nのポケモン』だ!!)
Nのポケモン、二年前にNが逃がしたポケモン達。BW2の時代では、そのほとんどが野生化して彷徨っている。プレイヤーは特定のイベントを見れば、それを捕まえることができるのだ。
「ボラァァァァッ!!」
「『サイケこうせん』か!! マリルリ、『とびはねる』でかわせ!!」
「マリッ!!」
サイケこうせんは、地面に当たって不発に終わる。そして上から、マリルリがシンボラーめがけて落下する。
「少し右側を狙って、『とびはねる』だ!!」
「ルゥリィィィッ!!」
「シィィィィ!?」
赤ゲージではあるが、狙いを逸らしたおかげで倒れてはいない。その上、麻痺状態になってくれた。
「よし、今だ!! 行け、スーパーボール!!」
「ボラッ……!?」
──カチッ。
「よっしゃあ!! シンボラーゲットだぜ!!」
マリルリとコウキが一緒になって喜ぶ。コウキはすぐシンボラーの治療を行い、リゾートデザートを出ようとする。
「さて、こんな場所はさっさと出てしまおう。砂嵐が痛くて仕方ない」
「……ここもダメ。あの時感じた気配は、一体どこに?」
「あ、あれはあの時の……」
そこにいたのは、カロスのオカルトマニアだ。コウキは、その人と肩がぶつかったことを覚えていた。そして、その人がコウキに気づく。
「っ……あなたは!?」
「え、はい……?」
「やっぱり、そうだ……!! あなたから匂いがするとこの子達が言っている!!」
オカルトマニアの後ろには、四体のポケモンがいる。それぞれデスマス、バケッチャ、ゴースト、サマヨールだ。
「あなたは……?」
「私の名前はリツコ……オカルトマニアよ。この子達はさまよう魂とか、そういうオカルトなものがわかるの……だから私の活動に協力してもらってるのよ」
「そ、そうなんですね……僕の名前はコウキ、ポケモントレーナーです」
コウキがそう言うと、彼女はコウキを舐め回すように全方向から見る。
「やはり匂いはあなたからか……あなた!!」
「はい、なんでしょう」
「あなたとその体は何かが変。魂がこの世のものではないみたい……一体何者?」
これまで誰にも指摘されなかったことを言われて、コウキはすごく驚いた。どうしてそれがわかるのか、と。
「……どうして、そんな細かいことまでわかったんだ?」
「この子達が言ってるの。デスマスはさっき捕まえたばかりだけどね」
「そうか……ゴーストポケモンって不思議だな」
コウキはそう言ったあと、真面目な顔になって言う。
「えぇ、その通りです。俺はこの世界の人間じゃない……アルセウスじゃない神を名乗る男に、この世界に連れてこられました」
「そうだったのね……ふふふ、興味深いわ……!!」
「僕もよく分かりません」
リツコはそう言われて、納得したように言った。
「あなたと会えてよかった……また会うことになると思うから、よろしくね」
「あぁ、はい」
「次は迷いの森に行ってみましょうか……おかしな噂がある場所だけど……」
それを聞いて、コウキはこれから起こることを察する。
(あそこにいるのはゾロアーク。幻覚を見せて、自分の身を守ってた……迷うのもそれが原因だったな)
「お気をつけてー!!」
(さっきの人、俺の話を聞いたら好感度がすごい勢いで上がった。出会うのは時々になりそうだけど……いつか仲良くなれるかもな)
コウキはそう思いながら、ライモンシティへと進むのだった。そこでコウキは、一つBWからの追加要素を思い出す。
『ジョインアベニュー……オンライン要素がないと遊べない場所だ。何かしら変わってるのか、それとも……?』
「……あった!! しかも、結構栄えてるぞ……?」
「おぉ、ジョインアベニューにようこそ!!」
そこでオーナーが、コウキに話しかけてきた。
「こんにちは。僕はコウキと申します」
「いやー、彼女の手腕は素晴らしい!! 少し時間があっただけなのに、ここまで発展させてしまうとは!!」
「彼女って?」
コウキはそれが気になって、尋ねた。その質問にオーナーが答える。
「メイという名前の人なんですが、もう素晴らしいのなんの!! 彼女は今さっきライモンシティに向かっていったんですが……」
「なるほど、メイか……」
「お、もしかしてお知り合いですか? それなら尚更、ジョインアベニューを楽しんでいってください!!」
コウキはオンラインが使えない自分の代わりに、メイがやったことを知った。確かにこの先でメイは登場する。
「くじ引きにマーケット、それに古道具屋など……色々たくさんありますよ!!」
「……わかりました。是非見ていきます」
「えぇ、是非とも!!」
コウキはとりあえず、くじ引きをしてみることにした。一日一回なので、やっておけば得だと判断したのだ。
「くじ一回お願いします」
「わかりました!!」
「さて、何が出るかな……」
コウキは期待の目で見つめる。そして……出たのは八等だった。
「八等が出ました!! ハイパーボールをどうぞ!!」
「悪くないな……ありがとうございます」
「またのお越しをお待ちしております!!」
コウキはくじを引いて、先に進む。この先に、メイがいるはずだ。コウキがそう思って、歩を進めると……やはりいた。
「あ、そこの人!!」
「なんでしょう?」
「あのギアステーションって建物の中で、ポケモン勝負ができるの!! それでね、腕試しに来たらなんとサブウェイマスターがいたの!!」
目の前にいるのは、ノボリとクダリの二人だ。コウキは、何度も挑んでやられたのをよく覚えている。
「ラッキーですね」
「でしょ!? しかも二対二なら、特別にここで相手してくれるって!!」
「……なるほど。事情はわかりました」
コウキはメイと一緒に戦うことになる。それをわかっていたので、さっきみんなを回復しておいた。
「すっごいチャンスでしょ!? お願いっ、一緒に戦って!!」
「わかりました、よろこんで」
「ありがとう!! あ、私の名前はメイ。サブウェイマスターを超える、最高のペアになろうね!!」
「僕の名前はコウキです。よろしくお願いします」
コウキはそう言って、メイと共に二人に向き直る。
「というわけで、サブウェイマスターに挑ませてもらいます!!」
「このような場所での勝負はイレギュラーですが……これも何かの縁、戦うことで見える景色……わかることもあるでしょう。ではクダリ、なにかございましたらどうぞ!!」
「ルールを守って、安全運転!! 目指すは勝利、出発進行!!」
二人がボールを構えたのを見て、コウキとメイがボールを構える。
「お願いします、ガントル!!」
「行きなさい、ドテッコツ!!」
「トルゥゥゥッ!!」
「ドッテェェェ!!」
コウキの知っている通りの手持ち。コウキは構えたボールを、メイと共に投げる。
「お願い、ジャノビー!!」
「頼んだぜ、マリルリ!!」
「ジャノォォォ!!」
「マリィィィィ!!」
お互いのポケモンが出揃った。先に動いたのはもちろん……コウキのマリルリだった。
「マリルリ!! ドテッコツに『じゃれつく』!!」
「ルリィィィッ!!」
「ドテッコツ、躱して『けたぐり』!!」
じゃれつくを躱したドテッコツは、そのままけたぐりをマリルリに放つ。しかしコウキもマリルリも、その程度は読んでいる。
「マリルリ、『とびはねる』!!」
「マッリィィィ!!」
「なに、避けられた!?」
そのままマリルリが、ドテッコツに向かって急降下していく。
「喰らえっ!!」
「させません!! ガントル、『うちおとす』!!」
「させないよ!! ジャノビー、『グラスミキサー』!!」
ガントルがマリルリを打ち落とそうとしたが、ジャノビーのグラスミキサーを受けて、照準がズレてしまった。
「ジャノォォォ!!」
──ギュオォォォッ!!
「ガントォォォ!?」
「ありがとう!! そのままぶつかれ、マリルリ!!」
マリルリはそのまま、ドテッコツに突っ込む。ドテッコツも、流石にこれは避けられない。
「ルゥリィィ!!」
──ズドォォォォン!!
「ドッテェェェ……」
「ドテッコツ……!!」
あとはガントル一匹だけ。そう思った二人が、同時にガントルに目を向ける。
「マリルリ、『アクアテール』だ!!」
「ジャノビー、もう一回『グラスミキサー』!!」
「ガントル、『パワージェム』で迎撃しろ!!」
「トォォォルッ!!」
色とりどりの石の刃が、マリルリとジャノビーに襲いかかる。しかし、二人とも反撃してくることはわかっていた。
「マリルリ、ジャノビーを庇え!!」
「マリッ!!」
「今だよ、ジャノビー!! マリルリを飛び越えて『グラスミキサー』!!」
ジャノビーはマリルリを飛び越えて、草の竜巻を発生させる。そして、それをガントルにぶつけた。
「ジャノォォォォ!!」
──ギュオォォォォッ!!
「ガン、トォ……」
「ガントル!! まさかやられるとは……」
コウキとメイは、見事に二人で勝利を収めた。それを二人が褒め称える。
「ブラボー!! あなた様に見せていただいたのは、トレーナーとしての煌めきです。ですが一言言わせていただきましょう!! あなた様方なら、もっともっと上を目指せましょう」
「ぼく、クダリ。ノボリと一緒に負けちゃった。君たちのコンビネーション、最高!! バツグン!! ものすごーく強いトレーナー!!」
「ありがとうございました」
ポケモンバトルを終えて、二人分の賞金を受け取る。そして、ノボリが言った。
「是非、是非!! 今度は地下鉄にご乗車になって勝負してくださいまし!! それでは出発進行!!」
「強かった、流石サブウェイマスター……!!」
「やりましたね、メイさん」
コウキがそう言うと、メイは目を輝かせて言った。
「もっともっと鍛えて、いつか本気のサブウェイマスターと戦いたい!!」
「応援してます」
「あなたもすごく強かったよ、おかげで勝てた!! これはお礼だよ、受け取って!!」
そこでコウキは、メイからバトルレコーダーを受け取った。
「ありがとうございます、大切に使いますね」
「コウキ、あなたと戦うのすごく面白かったよ!! また付き合ってくれると嬉しいな、じゃあね!!」
「……行っちゃった。好感度だいぶ上がってたな」
コウキはそう呟いて、これからのことを考える。
「とりあえずポケセンに行って……もうカミツレに挑んじゃうか。シンボラーのレベル上げは後でも間に合うし」
コウキはそう言って、ポケモンセンターに立ち寄ったあと……すぐにジェットコースター乗り場になっている、元ジムに向かう。
「ここの奥まで行けば、彼女がジムに戻ってくるはずだ。頑張ろう」
そう言ってコウキは、ジェットコースターに乗り込んだ。そして、そこの一番奥にて。
「あら? ジムリーダーを探しに来たの?」
「えぇ、ですが……不在のようですね」
「残念ね、今ちょうど入れ替わりでジムに戻っていったわ。ここまで来た記念に、これを持っていきなさいな」
「麻痺治し……使わせてもらいます。ありがとうございました」
コウキはお礼を言って、彼女のいるジムへ向かう。そこに行くと……暗い中で、色とりどりの光が光るランウェイがあった。
「おぉ、実際見ると圧巻だな……」
「どうですか、驚いたでしょ!? このジムはハッキリ言って、煌めくファッションショーの眩いステージなんすよね!!」
「楽しみですね。それでは、行ってきます」
おいしい水を受け取って前に進む。すると目の前にいた女の人に、スポットライトが当たる。観客席から歓声が上がった。
「ようこそ、ライモンジムへ!! ポケモンとトレーナーが作る、華麗なファッションショーとポケモンバトルの始まりよ!!」
「よろしくお願いします」
「「わぁぁぁぁぁぁ!!」」
こうしてコウキの、ドラマチックなジムバトルが始まった。ジムトレーナーとのバトルは、当然ながら勝利。
「ショーはこれから……ってあれ、もう終わり? 残念だなぁ……」
「ありがとうございました……さて、次だな」
「「ひゅーひゅー!!」」
コウキに向かって、歓声が浴びせられる。なんだか照れくさい気分になりながら、ランウェイを歩いていく……そして、最後のジムトレーナーを倒す。
「エンブオー、『ヒートスタンプ』!!」
「エンブゥゥッ!!」
「エレキィィ……」
エンブオーのヒートスタンプを受けて、ジムトレーナーのエレキッドが倒れる。
「その強さと美しさ……!! カミツレ様のステージに立ってもいいんじゃない?」
「ありがとうございました……さてと」
「……待たせたわね」
そこで漸くジムリーダーのカミツレに、三つのスポットライトが当たる。そしてカミツレがポーズをキメると、シャッターの音と歓声が響いた。今日一番の盛り上がりだ。後ろのモニターには、カミツレが映っている。
「「わぁぁぁぁぁぁっ!!!」」
「ようこそ、このステージへ。私の愛しのポケモン達と、あなたのポケモン達……どちらの輝きが本物か、ここで比べましょう!!」
「望むところですよ!!」
コウキがボールを構えると、カミツレは微笑を浮かべて……黄色いファーを脱ぎ捨て、またポーズをキメた。
「頼んだ、エンブオー!!」
「行きなさい、エモンガ!!」
「ブォォォォォッ!!」
「エモ~!!」
相手は電気飛行タイプ、普通なら不利な状況。しかしコウキは全く焦らない。コウキは勝ち筋がもう見えていた。
(彼女のエモンガの技構成はわかってる。そしてその中で、エンブオーに抜群を取れる技はひとつしかない……!!)
「エモンガ、『つばめがえし』!!」
「突っ込め、エンブオー!! 『ニトロチャージ』だ!!」
つばめがえしは、必中の技。だから、コウキは攻撃を避けない。エンブオーはそれに従って、炎を纏って突撃する。
「エッモォォ!!」
──ジャシュッ!!
「っ、勢いが落ちない……!?」
「エェンブゥゥ!!」
──ズゴォォォッ!!
炎を纏った、大質量の突撃。エモンガはそれを躱しきれず、吹っ飛ばされた。
「エモォォッ……!!」
「エンブオー、すかさず『かえんほうしゃ』!!」
「ブォォォォォッ!!!」
──ゴァァァァァッ!!!
吹っ飛ばしたエモンガに、エンブオーの吐いた火炎放射が襲いかかる。無防備な状態で火炎放射を受けてしまい……レベル差もあって、エモンガが倒れる。
「エッモォォ……」
「やるわね……!!」
「いいぞー、コウキ!! エンブオー!!」
「負けるな、カミツレー!!」
みんなの歓声が聞こえてくる。コウキはそれを聞いて、ガラルのジム巡りを思い出す。
(懐かしいな。剣盾のBGMも、こんな感じだったなぁ……)
「行きなさい、モココ!!」
「モコォー!!」
モココが出てきたのを見て、コウキは一旦エンブオーをボールに戻す。
「よし、よくやった。エンブオー、戻れ」
「……交換するのね」
「行け、ハハコモリ!!」
「ハァリィィィ!!」
コウキは、ハハコモリを繰り出す。カミツレのエースとの戦いに向けて、エンブオーの体力を温存するためだ。
「モココ、『あやしいひかり』!!」
「モッコー!!」
「ハハコモリ、目を瞑れ!!」
目を瞑ることで混乱を回避する。しかしカミツレも馬鹿ではない、その隙を逃さず技を放つ。
「今よ、モココ!! 『でんじは』!!」
──ヂュヂヂヂィ!!
「ハハコモリ、『ねばねばネット』!!」
「ハァリィィ……イッ!?」
そこででんじはを受けて、ハハコモリは麻痺してしまう。
「流石はジムリーダー、強いですね」
「ありがとう。でも、ここまでよ!! モココ、『とっしん』!!」
「くっ……!!」
麻痺して遅くなった状態のハハコモリに、モココが突進してくる。ハハコモリは、体が痺れて動けない。
「モコォォ!!」
──ズドォォン!!
「ハリッ……!!」
「ハハコモリ、動いてくれ!!」
コウキがそう言って、ハハコモリは何とか動こうとするが……やはり動きが鈍重だ。そこにカミツレは、追撃の命令を出す。
「もう一回『とっしん』よ!!」
「ハリィィッ……!!」
「くっ……!!」
コウキはハハコモリが動けないので、バッグに手を入れた。麻痺治しを使ってくると踏んだカミツレは、モココにでんじはの命令をする。
「モココ、もう一回『でんじは』!!」
「今だ、ハハコモリ!! 『リーフブレード』!!」
「なっ……!?」
コウキは笑ってそう言った。でんじはを撃ってしまい、大きな隙が生まれたモココに……鈍重にはなっているが、ハハコモリがしっかりと近づいてリーフブレードを振り下ろす。
「ハァ……リィィッ!!」
──ズジャアァ!!
「モコォォォー!!」
「まさか、全部演技だったの?」
そう尋ねてきたカミツレに、コウキはウィンクして笑ってみせる。
「さて、何のことやら……」
「モコォォ……」
「とっしんを二度も使ってしまったから、反動ダメージが大きかったようですね」
モココはそのまま戦闘不能になってしまった。それを見ていた観客が、更に盛り上がる。
「おぉー、チャレンジャーは演技派だなぁ!!」
「いいぞー、そのままいけぇー!!」
「まだあいつが残ってるだろ、カミツレー!!」
カミツレは一旦目を瞑り……微笑を浮かべ、最後のボールを取り出した。
「そうね……!! 行け、ゼブライカ!!」
「ピャアァァァァッ!!!」
「ピンチを乗り越える!! ファンの期待に応えないと!!」
そう言って出てきたゼブライカに、コウキもハハコモリを引っ込める。
「もう一回頼むぜ、エンブオー!!」
「エェンブゥゥゥッ!!!」
「ゼブライカ!! 『ボルトチェンジ』!!」
電気の塊を生み出して、ゼブライカはそれをエンブオーにぶつけようとする。しかし、コウキもエンブオーも、その程度では驚かない。
「ゼブゥゥゥッ!!」
「エンブオー!! ジャンプして『ヒートスタンプ』だ!!」
「ブォォォォッ!!」
ボルトチェンジは避けられ、エンブオーがゼブライカの真上を取る。しかし彼女もジムリーダーだ、そう簡単にやられはしない。
「ゼブライカ、後ろに避けて『ボルトチェンジ』をチャージ!!」
「ピャッ!!」
──ズドォォォォン!!
「今よ、ゼブライカ!!」
ゼブライカがエンブオーに、ボルトチェンジを撃ち込む。ここから動いて躱すのは無理だった。しかし、エンブオーとコウキは不敵な笑みを浮かべてみせる。
「エンブオー!! 『かえんほうしゃ』で、ボルトチェンジを打ち消せ!!」
「ブォォォォォッ!!」
──ゴァァァァッ!!
──バヂュヂヂィィッ!!
「ッ、ゼブライカ!! 『ニトロチャージ』!!」
ゼブライカはそれを目眩しにして、エンブオーにニトロチャージで突っ込む。だが……それが運命の分かれ目だ。エンブオーの火炎放射が、ボルトチェンジを飲み込み……そこに高速で迫ってくるゼブライカ。
「ゼブゥゥゥッ!!」
「甘い!! エンブオー、体で受け止めてゼブライカを掴め!!」
「ブォォォォッ!!」
エンブオーはその体で、まるで力士が相手力士のぶちかましを受け止めるかのように、しっかり受け止めてみせた。そしてゼブライカの細い体をしっかりホールドする。
「なっ……ビクともしない!?」
「そのまま『つっぱり』だぁぁぁ!!」
「エンブゥゥゥゥッ!!!」
──ズダダダダァァン!!!
凄まじい張り手の嵐が、無防備なゼブライカの体に襲いかかる。ゼブライカは為す術なく、大きく吹っ飛んだ。そして、コウキはそのまま追撃の命令を出す。
「本物を見せてやれ、エンブオー!!!」
「ブォォォォォーッ!!!」
「これは……!!」
炎を纏った、エンブオーのぶちかまし。それはまるで、横綱の大技のような気迫を感じさせた。オボンの実を食べて、なんとか立ち上がったゼブライカにエンブオーが迫る。
「これが本家本元の!! ニトロチャージだぁぁ!!!」
──ズガァァァァッ!!!
「ゼブゥゥゥ……」
「……ゼブライカ、戦闘不能!! チャレンジャーの勝利です!!」
コウキはそのまま、観客席に振り向いて……エンブオーとグータッチをして見せた。そして、少しだけの静寂の後……
「「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
「すげぇぞ、チャレンジャー!! 今までで最高だ!!!」
「写真撮っとけ!!」
カミツレが感嘆のため息を吐いて、一言。
「もう……あなたったら、予想以上に素敵なトレーナー。惚れ惚れしちゃうファイトスタイルに、なんだか感激したわ。これを……!!」
「ジムバッジ……!! あと賞金も、ありがとうございます!!」
「それと、これは私の好きな技。良ければあなたも使って」
ボルトチェンジのわざマシンをもらって、コウキが一礼し……ジムを出ようとすると、カミツレがやってきた。
「待って!! 是非、私達と……」
「はい、もちろん」
「コウキ、かっこいいぞー!!」
歓声を浴びながら、コウキはカミツレ達と共にランウェイを歩いていく。
「コウキー!! 最高だったぞ!!」
「素敵ー!!」
「ブラボー!!」
そして、出口に辿り着いた時……カミツレがコウキに言った。
「トレーナーとしての輝き、それを備えているあなたなら、きっと全てのジムバッジを集め、ポケモンリーグに行けるはず!! その時、あなたとポケモンは、さらに眩しく輝く……!!」
「はい、ありがとうございました!!」
「コウキ、PWTにも出ろよー!!」
そう言われながら、コウキはジムを出る。するとそこには、サレナが立っていた。
「……勝ったのね、カミツレに」
「サレナさん。えぇ、勝たせてもらいました」
「言っておくけど、調子に乗らないことね。私はあなたの上を行く。あなたなんかに負けていられないの」
そう言ってサレナは、ジムに入っていった。
「相変わらずクールな人だな……あっ、そうだ。『彼女』の落とし物を拾っていこう」
コウキはそう呟いて、噴水近くを念入りに探す。すると……ライブキャスターが落ちていた。
「これを拾えば……あ、鳴ってる。もしもし?」
『あの、もしもし……これを拾ってくれた方ですか?』
「はい。落とし主の方ですか?」
コウキがそう言うと、肯定が返ってきた。
「あっ、はい。そうです、私そのライブキャスターの持ち主なんです……今は古いライブキャスターから連絡しているので、音声だけでごめんなさい。拾っていただいてありがとうございます」
「いえいえ。それで、あなたは今どこに?」
「それが……すぐにでも、受け取りに行きたいんですけど、私仕事をしていまして……今、受け取りに行くことができない状態なんです。よろしければそのライブキャスターを、しばらくの間預かってもらえないでしょうか?」
コウキは彼女が何者なのか知っている。だから現代ではとても怪しい提案も、快く受け入れた。
「はい、もちろん。大丈夫ですよ」
「えっ、いいんですか? ありがとうございます、私はル……いえ、ルリっていいます。あなたは?」
コウキは名前を聞かれて、名乗る。
「僕の名前はコウキ、ポケモントレーナーです」
「はい、コウキさんですね。仕事が落ち着いたら受け取りに行きますので、しばらくの間よろしくお願いします」
「わかりました、お任せ下さい」
それから、ルリは続けて言う。
「あと……受け渡しが終わるまで、こちらの状況が分からないと心配ですよね。なので、こまめにコウキさんのライブキャスターへ、連絡させていただきますね」
「わかりました」
「それでは、失礼します」
ライブキャスターが切れた。コウキは、それを見て呟く。
「ルリちゃん……可愛いんだよな。彼女とも仲良くなれるといいなぁ……」
コウキはそう言いながら、暗くなった街を歩いて……今日宿泊する場所へ向かった。
一方その頃。神は、コウキとヒロインとの関わりをずっと見ていた。
「ホミカちゃん完全攻略、他の子とも着々と関係を深めている……いいね、期待以上だ。これからも頑張ってくれよ?」
『何をやっているのです』
「あぁん? 誰……って、アルセウス!?」
なんと、そこにいたのはポケモン世界の神アルセウスだった。神もまさかいるとは思わず、たじろいでしまう。ポケモンではなく、光の塊のような姿だ。
『約束が違います。本人に許可を得て、体を転移させる約束だったはずですよ』
「だって、それだと女の子と関わらせにくくて……」
『そんな理由で、人の子を殺したのか』
アルセウスから、恐ろしい威圧感が放たれる。神はその威圧に後退りしてしまう。
「お、おいおい、そんな怒るなって、たかが一人だろ?」
『私との約束を破り、人の子を殺害した。挙句、自分の汚らわしい欲望のために、人の子を利用するとはな。万死に値する』
「は!? おいやめろ、早まるな!? おいっ!!!」
神は必死に説得しようとしたが、もう遅い。光の塊から、凄まじい量の光の奔流が放たれる。『さばきのつぶて』だ。
『絶えろォォォォォ!!!』
──ブァァァァァァッ!!!
「ギャアァァァァァァ!?!?」
『……永遠に懺悔せよ』
こうして、神は死んだ。その日は世界中で流星群が見えたという。
「おいみんな見てみろ、綺麗だぞ?」
「ルリィィ!!」
「ハハリッ!!」
「エンブゥ!!」
「ボラァァ!!」
コウキ達は、その中に神の死体が混じっているとは知る由もなく、それを見つめていた。
次回、ホドモエに行きます。