サンタバーバラを離れ。
第一艦隊とアメリカ避難船団は、ハワイへ向かっていた。
戦闘から離れれば。
太平洋は驚くほど静かだった。
中心にいるのは。
避難民を満載したアメリカ船舶。
客船。
貨物船。
輸送船。
軍艦。
さらに。
日本艦にも。
サンタバーバラで収容したアメリカ市民が乗っている。
子供の泣き声。
負傷者の呻き声。
甲板で毛布に包まれて眠る老人。
それらを見ながら。
第一艦隊旗艦、山城。
高橋三吉は。
暗い顔をしていた。
米内光政が横に立つ。
「高橋さん」
「……」
「先ほどから海図が穴でも開きそうですな」
高橋が顔を上げる。
「米内」
「はい」
「エイリアン相手に」
少し間を置いた。
「どう戦う?」
米内の表情が変わる。
「既存のやり方では」
高橋は続ける。
「難しいでしょうな」
米内も海図へ目を落とした。
「相手は空」
「そうだ」
「我々が出会った敵は少数」
「……」
「しかも逐次投入でした」
サンタバーバラで遭遇した敵。
偵察機を襲った小型船。
黒岩隊が七機と引き換えに撃墜した一隻。
大型生命体。
擬態個体。
全て。
一度に押し寄せてきたわけではない。
「一体来たから一体を相手にできた」
米内が言う。
「ええ」
「なら」
高橋は空を見る。
「十体来たら?」
米内は答えなかった。
「二十なら?」
「……」
「五十なら?」
高橋が呟く。
「制空権」
その言葉が。
重かった。
「航空隊の大幅増強が必須になる」
米内が頷く。
「空母も必要でしょう」
「飛行機だけではない」
「操縦員」
「対空火器」
「射撃指揮」
高橋は山城を見渡した。
「今の艦隊は」
「空から殴られることを主役にして作られていない」
米内が小さく息を吐く。
「それを本国に分からせるのが難しいですな」
「そこだ」
高橋は眉を寄せる。
「大型生命体撃破」
「敵飛行船一隻撃墜」
「避難民救出成功」
指を折る。
「そんな戦果だけ持ち帰れば」
米内が続きを察する。
「勝てる、と」
「そうだ」
高橋の顔が険しくなる。
「そして」
「アメリカが弱っているなら」
「ハワイに権益を」
「フィリピンに権益を」
「太平洋に権益を」
吐き捨てる。
「そんな話を始める馬鹿が出る」
米内が苦笑する。
「否定できませんな」
「どうやって分からせる」
高橋が言った。
「アメリカの土地を奪っている場合ではない」
「……」
「このままなら」
高橋が日本のある西を見た。
「次は日本かもしれんと」
その時だった。
「上空に機影!」
艦橋。
全員が反応した。
高橋が振り返る。
「方位!」
「東北東!」
見張員が双眼鏡を構える。
「高度――」
止まった。
「何だ!」
「速い!」
別の見張員。
「複数!」
「数!」
「確認中!」
一。
二。
三。
黒い点。
増える。
「六!」
さらに。
「八!」
そして。
「十!」
艦橋。
沈黙。
米内が。
高橋を見る。
高橋は。
もう迷わなかった。
「総員戦闘配置!」
警報。
第一艦隊全体に。
けたたましい音が響く。
「敵小型航空船、十!」
「対空戦闘用意!」
水兵が走る。
高角砲。
機銃。
弾薬。
各配置。
そして。
高橋が叫ぶ。
「空母へ!」
通信員が構える。
「残存航空機を」
一瞬。
「全機発艦させろ!」
*
航空母艦。
飛行甲板。
「急げ!」
「発動機始動!」
「敵接近!」
整備員。
搭乗員。
甲板員。
全員が走る。
航空機が。
次々と発艦位置へ。
発動機。
始動。
プロペラ。
回転。
一番機。
滑走。
離艦。
二番機。
続く。
三番。
その時。
空。
黒い影。
「敵機!」
速い。
日本機とは。
比較にならない。
一隻。
急降下。
「来るぞ!」
航空母艦の対空火器が火を噴く。
砲弾。
機銃弾。
敵の周囲。
水柱。
炸裂。
だが。
当たらない。
敵船が。
光る。
一筋。
飛行甲板。
爆発。
発艦しようとしていた一機が。
炎に包まれる。
「消火!」
別の機。
なんとか離艦。
だが。
まだ。
速度が出ていない。
敵船。
後方から。
簡単に追いつく。
「逃げろ!」
光。
直撃。
空中で。
航空機が砕ける。
さらに。
別の敵船。
発艦直後の一機。
狙う。
光。
墜落。
高橋は。
山城艦橋から。
その全てを見ていた。
「……まずい」
米内も。
双眼鏡を下ろせない。
航空機は。
空母から飛び立った瞬間。
すぐには戦闘速度へ入れない。
敵は。
そこを狙っている。
一機。
また一機。
飛び立つ。
一機。
撃墜。
別の一機。
どうにか高度を取る。
「航空隊に速度を取らせろ!」
高橋が叫ぶ。
「対空砲で敵を離せ!」
第一艦隊。
高角砲。
機銃。
一斉射撃。
空が。
砲煙に包まれる。
敵船。
一隻。
突っ込んでくる。
「撃て!」
高角砲弾。
炸裂。
外れ。
次。
至近。
さらに。
一発。
「命中!」
敵船外板。
爆発。
機体が。
大きく揺れる。
だが。
落ちない。
「もう一発!」
敵船は。
すぐ加速。
射界外。
高橋が。
歯を食いしばる。
「当たらん」
敵が速すぎる。
「いや」
米内が言う。
「当たれば効いている」
「当てられんのだ」
また。
敵船。
突入。
光。
今度は。
駆逐艦。
船体中央。
爆発。
「被弾!」
別の敵。
巡洋艦へ。
光線。
上部構造物。
炎。
「火災!」
「消火急げ!」
「速力を落とすな!」
高橋が。
拳を握る。
「対空砲が」
また。
光。
爆発。
「貧弱すぎる」
米内が見る。
高橋は。
目の前で傷ついていく艦隊を見る。
「これでは」
低く。
「全滅する」
*
その頃。
上空。
なんとか発艦できた航空隊が。
敵船と戦っていた。
その中に。
黒岩利雄。
第一次制空隊。
生き残った黒岩隊も。
再び空へ上がっていた。
「散開!」
日本機。
旋回。
敵船。
通過。
「追うな!」
黒岩が叫ぶ。
「前と同じだ!」
敵は速い。
圧倒的に。
だが。
旋回半径が大きい。
「格闘戦へ引き込め!」
九五式艦戦。
急旋回。
敵船が。
追う。
追い越す。
その後ろ。
別の日本機。
七・七ミリ機銃。
発砲。
火花。
「駄目だ!」
やはり。
外板は抜けない。
「操縦席を狙え!」
黒岩。
旋回。
敵船。
戻る。
射撃。
光。
日本機。
一機。
爆発。
黒岩が。
振り返る。
「……!」
さらに。
下を見る。
艦隊。
炎。
空母。
煙。
駆逐艦。
損傷。
そして。
その先。
アメリカ避難船団。
遅い。
あれでは。
追いつかれる。
黒岩が。
敵を見る。
十隻。
いや。
何隻かは艦隊へ。
何隻かは航空隊へ。
なら。
「……こっちを見ろ」
黒岩が。
操縦桿を倒す。
敵船の前。
横切る。
機銃。
発砲。
火花。
敵船。
反応。
黒岩へ向く。
「そうだ」
黒岩が笑う。
「来い」
通信。
「隊長?」
「全機!」
黒岩が叫ぶ。
「敵を引き付けろ!」
「どうするんです!」
「逃げる!」
「逃げる!?」
「そうだ!」
黒岩は。
機首を下げた。
海。
一直線。
「隊長!」
「ついて来い!」
日本機。
急降下。
敵船。
追う。
速力差。
猛烈。
あっという間に。
距離が縮まる。
「追いつかれます!」
「まだだ!」
高度。
五百。
三百。
二百。
海面。
迫る。
「隊長!」
「まだ!」
百。
敵船。
さらに。
速い。
黒岩の後ろ。
「まだだ!」
五十。
海面。
波。
見える。
二十。
黒岩が叫んだ。
「起こせ!」
操縦桿。
引く。
九五式艦戦。
機首。
上がる。
海面。
すれすれ。
数メートル。
水平飛行。
波頭。
すぐ下。
僚機。
一斉に。
同じ。
「低い!」
「上げるな!」
黒岩が叫ぶ。
「そのまま走れ!」
後ろ。
敵船。
猛烈な速度。
日本機を追って。
急降下。
そして。
海面。
目前。
敵船が。
機首を上げようとする。
だが。
速すぎる。
旋回半径。
大きすぎる。
一隻。
海面へ。
激突。
巨大な水柱。
「一隻!」
さらに。
二隻目。
回避。
間に合わない。
海面。
激突。
水柱。
「二隻!」
三隻目。
今度は。
僅かに機首が上がる。
だが。
下部が。
海面を叩く。
姿勢。
崩れる。
回転。
そして。
海へ。
「三隻!」
日本機。
海面すれすれ。
飛び続ける。
黒岩が。
後ろを見る。
残り。
敵船。
もう。
追ってこない。
高度を取っている。
学習した。
「……畜生」
黒岩が呟く。
「一度だけか」
だが。
十分だった。
三隻。
砲弾ではない。
機銃でもない。
敵自身の速度を。
敵へ使った。
*
「敵三隻墜落!」
山城。
歓声。
高橋が。
双眼鏡を上げる。
海上。
三本の水柱。
そして。
海面すれすれを飛ぶ日本機。
「黒岩か」
米内が。
僅かに笑う。
「やってくれましたな」
「馬鹿者め」
高橋も。
僅かに笑った。
「よくやった」
しかし。
残る敵船は。
まだいる。
一隻。
高角砲。
直撃。
外装。
破損。
別の艦から。
さらに射撃。
ついに。
墜落。
だが。
その間にも。
日本艦。
被弾。
アメリカ艦。
被弾。
空母。
損傷。
駆逐艦。
一隻。
航行不能。
黒煙。
炎。
海には。
救命艇。
人。
残った敵船。
やがて。
攻撃を止めた。
高度。
上げる。
そして。
高速で。
東へ。
離脱。
誰も。
追わなかった。
追えない。
戦闘終了。
静寂。
だが。
それは。
勝利の静寂ではなかった。
高橋が。
艦隊を見る。
損傷。
あまりにも多い。
航空隊。
さらに減った。
艦艇。
複数被害。
避難船団。
幸い。
大半。
健在。
高橋が。
静かに言った。
「撤退する」
米内が見る。
「ハワイへ?」
「ああ」
「敵が戻る可能性は」
「高い」
高橋は。
空を見る。
「次が十隻とは限らん」
米内が。
黙る。
「二十なら」
高橋が言う。
「今度こそ終わる」
通信員へ。
「全艦」
「ハワイへ最大可能速力」
「損傷艦を曳航」
「救助可能な漂流者を収容」
そして。
「急げ」
命令。
艦隊が。
再び動き始める。
その時。
見張員。
「敵影!」
高橋が。
空を見る。
遠い。
東。
点。
また。
見える。
戻ってきた。
いや。
増えている。
「数は」
「確認できません!」
高橋の表情が。
変わらない。
「そうか」
米内が言う。
「船団を急がせましょう」
「ああ」
高橋は。
避難船団を見る。
遅い。
損傷艦もいる。
このまま。
全艦で走れば。
また追いつかれる。
「米内」
「はい」
「山城を残す」
米内が。
一瞬。
意味を理解できなかった。
「……何を」
「山城で時間を稼ぐ」
「待ってください」
「第一艦隊は」
高橋が。
米内を見る。
「お前が連れて帰れ」
「断ります」
「命令だ」
「高橋さん!」
「聞け」
高橋の声が。
強くなる。
「空母を帰せ」
「残った航空機も」
「巡洋艦も」
「駆逐艦も」
「一隻でも多く」
「ハワイへ持って帰れ」
「山城だって同じです!」
「ああ」
高橋が。
静かに頷いた。
「だから使う」
「……」
「戦艦だ」
山城。
巨大な船体。
厚い装甲。
多数の砲。
「盾としては」
高橋が笑う。
「これ以上ない」
米内は。
何も言えない。
高橋が続ける。
「それに」
「……」
「ちょうどいい」
「何がです」
高橋の目が。
鋭くなる。
「本国だ」
米内が。
息を止める。
「連中は」
高橋が言う。
「この報告を読んでも」
「アメリカが弱った」
「好機だ」
「権益を取れる」
「そう考える奴がいる」
「……」
「大型生命体を撃破した」
「小型船も撃墜した」
「それだけを見て」
拳を握る。
「勝てると思う」
米内が言う。
「だからって」
「第一艦隊司令長官が」
高橋は。
自分を指す。
「敵航空戦力との戦闘で」
山城の甲板を踏む。
「戦艦と共に沈めば」
米内が。
睨む。
「……」
「少しは」
高橋が。
笑う。
「目が覚めるだろう」
「ふざけないでください!」
米内が怒鳴った。
艦橋が。
静まり返る。
「そのために死ぬ人間がありますか!」
「ここにいる」
「高橋さん!」
「それだけじゃない」
高橋が。
遠ざかろうとしている船団を見る。
「奴らを逃がす時間がいる」
「……」
「なら」
米内を見る。
「俺の死にも」
「山城の沈没にも」
「ちゃんと意味がある」
米内は。
歯を食いしばった。
「あなたが帰って言えばいい」
「俺が死んだからといって」
「……」
「お前まで死ぬ必要はない」
高橋が。
米内の肩へ手を置く。
「お前は帰れ」
「そして」
「見たままを言え」
米内は。
動かなかった。
高橋が。
最後に。
穏やかな声で言う。
「米内」
「これは命令だ」
*
山城から。
必要のない人員が移乗する。
負傷者。
航空関係者。
幕僚。
米内。
それでも。
艦を動かすために必要な者。
戦うために必要な者。
そして。
自ら残ることを選んだ者。
山城は。
艦隊から。
ゆっくり離れていった。
一隻。
東へ。
艦隊は。
西へ。
米内は。
移乗した艦の甲板から。
山城を見ていた。
「高橋さん……」
誰も。
何も言わない。
山城。
回頭。
艦首を。
敵へ。
*
山城艦橋。
見張員。
「敵影接近!」
高橋が。
双眼鏡を構える。
「何隻だ」
「七!」
「先ほどの残存敵と思われます!」
高橋が。
小さく笑った。
「来たか」
艦長が尋ねる。
「司令」
「何だ」
「最後までお付き合いします」
高橋が。
横を見る。
「勝手に最後にするな」
艦長が。
一瞬。
呆気に取られる。
高橋は。
敵を見る。
「できれば」
「……」
「生きて帰るぞ」
艦長が。
笑った。
「はっ!」
「ただし」
高橋は。
西。
もう。
小さくなった味方艦隊を見る。
「連中が逃げ切るまでは」
敵船。
接近。
「一歩も退かん」
警報。
対空砲。
旋回。
機銃。
弾薬。
水兵たちが。
配置につく。
高橋三吉が。
最後の命令を下す。
「対空戦闘用意」
敵船。
急降下。
「撃て!」
山城。
一隻。
発砲。
空。
砲弾。
炸裂。
敵船。
回避。
光。
山城。
被弾。
爆発。
「右舷被弾!」
「構うな!」
また。
光。
上部構造物。
炎。
「消火!」
高角砲。
射撃。
一発。
至近。
敵船。
揺れる。
「撃ち続けろ!」
山城は。
逃げない。
むしろ。
敵へ向かう。
七隻。
その全ての注意が。
一隻の戦艦へ向く。
光。
爆発。
光。
爆発。
甲板。
炎。
艦橋。
破片。
人間。
倒れる。
高橋の額。
血。
それでも。
立っている。
「まだだ!」
西。
艦隊。
見えなくなり始める。
「もう少しだ!」
敵船。
一隻。
低空。
接近。
高橋が叫ぶ。
「右舷!」
機銃。
一斉射。
火花。
敵船。
そのまま通過。
また。
大回り。
高橋が。
笑う。
「黒岩ほど」
咳。
血。
「上手くはやれんな」
また。
光。
今度は。
艦橋下。
轟音。
高橋が。
床へ叩きつけられる。
「司令!」
身体を起こす。
「損害!」
「浸水!」
「速力低下!」
「前部高角砲、一部射撃不能!」
「後部は!」
「生きています!」
「なら」
立つ。
「撃て」
山城。
まだ。
撃つ。
一発。
二発。
敵船を。
空へ追い続ける。
そして。
西。
もう。
味方艦隊は。
見えない。
高橋は。
それを確認した。
「……行ったか」
誰かが。
答える。
「はい」
高橋が。
小さく息を吐く。
「そうか」
もう。
十分だった。
アメリカ避難船団。
日本第一艦隊。
米内。
黒岩。
生き残った者たち。
全て。
逃げた。
高橋は。
燃える艦橋から。
空を見る。
敵船。
まだ。
いる。
「これで」
小さく。
「分かるだろう」
日本。
海軍省。
軍令部。
政府。
陸軍。
アメリカが弱ったから。
権益を。
領土を。
利権を。
そんなことを言っている者たちへ。
「第一艦隊司令長官が」
光。
「戦艦ごと」
さらに。
光。
「空から沈められたんだ」
高橋が。
笑った。
「これでも」
敵船。
真正面。
白く光る。
「分からんなら」
高橋は。
最後まで。
立っていた。
「本物の馬鹿だ」
閃光。
山城艦橋。
直撃。
轟音。
遥か西。
米内が。
振り返った。
水平線。
小さな。
黒煙。
そして。
一瞬。
赤い光。
山城がいた場所。
それだけだった。
通信員が。
米内へ近づく。
何も言わない。
言う必要もなかった。
米内が。
帽子を取る。
周囲の将兵も。
一人ずつ。
帽子を取った。
スプルーアンスも。
遠くから。
同じ方向を見ていた。
日本語は分からない。
だが。
何が起きたかは。
分かっている。
一隻の戦艦が。
自分たちを逃がすために。
反対方向へ進んだ。
米内が。
長い間。
水平線を見ていた。
やがて。
帽子を被る。
「通信」
「はっ」
「ハワイへ」
通信員が構える。
「第一艦隊」
米内は。
一度だけ。
目を閉じる。
そして。
開く。
「敵航空兵力十機と交戦」
「航空隊及び各艦」
「重大なる損害」
「敵機複数撃墜」
「残存艦隊及び米国避難船団」
「ハワイへ撤退中」
通信員が。
書き取る。
米内は続けた。
「旗艦山城」
止まる。
「敵航空部隊阻止のため」
「単艦にて殿戦を実施」
さらに。
一呼吸。
「第一艦隊司令長官」
「高橋三吉大将」
「戦死と判断す」
通信員の手が。
僅かに震えた。
米内は。
最後に付け加える。
「追記」
「敵航空兵力」
「我が既存艦隊戦術に対し」
「圧倒的優位を有す」
「制空権なき艦隊行動」
高橋の言葉を。
そのまま。
日本へ届ける。
「極めて困難なり」
そして。
「航空兵力」
「防空能力」
「至急」
一瞬。
沈んだ山城を見る。
「抜本的再検討を要す」
通信員が。
送信する。
電波が。
ハワイへ。
そこから。
日本へ向かう。
高橋三吉が。
山城と。
自分自身を使って。
日本へ送りつけた。
最後の報告だった。