「カード、いや、【無限の暴食魔人 ソウルイーター】が余計な事が出来ないようにはした」
【無限の暴食魔人 ソウルイーター】を龍一課長は力技で抑えつけてなにも出来ない様にした。
事務仕事は苦手なものの、こういう暴力関係ではホントに頼りになる人である。余計な事が出来ないと言っているので余計な事はホントに出来ないのだろう。
「さて、今回の一件は玩具常識改変罪だ。その罪状について言ってみろ」
「玩具常識改変罪、一言で言えば世界がホビーアニメの世界に成り代わろうとしている。主にカードゲームで世界の命運を賭けたり戦争を仕掛けたりする世界になろうとしている。で、合っていますよね?」
「そう、大体そんな感じ」
「……具体的にコレのなにが悪いのですか?」
黒代さんに玩具常識改変罪について聞かれたので答えた。
龍一課長が【無限の暴食魔人 ソウルイーター】のカードを鍵付きの箱に入れながらそんな感じで合っていると頷かれた。
ここで俺が疑問に思ったのは何故にコレが罪になるのかだ。
「ギャンブル漫画等では過剰に持ち上げられていますが、麻雀の代打ちの様な職業は嘗て存在していたと聞きます。麻雀の代わりにカードゲームで
「言いたいことは分かる。この玩具常識改変罪と言う罪状を作る際に、別にホビーアニメみたいな世界になっても問題無いんじゃないの?と言う意見はあった……が!が!……世界、いや、社会がホビーアニメな世界に切り替わるのは色々と大変なんだ」
麻雀の代打ちとかそういうのをカードゲーム等でやっている、そういう風に認識すれば良いだけだと考える。
黒代さんは俺の言いたいことや考えていることがなんとなくで分かっているがそれでもコレは罪状に当て嵌められると認識しており、世界ではなく社会的に厄介だと認識をしている。
「甲子園は知っているよな?」
「当然です。なんならここから電車で行ける距離にあります」
「甲子園と言えば野球の聖地だ。プロ野球選手はそこで試合するし高校球児達はそこを目指しそこで日本一の称号を手に入れる為に死ぬ気で頑張っている」
「ええ、夏の風物詩ですね」
「もし、この世界がホビーアニメの世界みたいになれば当然日本一や世界一を決める大会はある……さて、問題です。それは何処で行われるでしょうか?」
「…………幕張メッセか東京ビックサイト辺り?」
「正解は、新しくその大会専用のスタジアムを国が作り上げるだ」
その玩具の日本一や世界一を決める大会を何処で行うかと聞かれた。そっち系のイベントが起こる場所と言えば幕張メッセや東京ビックサイトとかそういうイメージがあるので答えれば黒代さんはその大会専用のスタジアムで大会を行いその大会専用スタジアムを国が作り上げると言うサラリととんでもない事を言う。
「ただでさえ不景気でスポーツの会場1つ建設で金銭関係のトラブル起きているのに、そんなお金が何処にあるんですか!?」
「金の出どころなんざ知るか。とにかく、その大会を行う為だけのスタジアムが作られる……そして各国にその玩具協会や国連の1つの団体にその玩具の組織が生まれる」
「ホビーアニメあるあるだよね……あ、倉庫に置いてくるから。ついでにハリセン取ってくるから」
龍一課長はカードを完全に箱に入れて鍵のロックを終えたのでオカルト課の倉庫に箱を持っていく。
ついでにハリセンを持ってくるとはどういうことだろう?と一瞬だけ考えたがそれよりもこの玩具常識改変罪について黒代さんから説明を受ける。
「玩具常識改変罪は無視すれば世界全体がホビーアニメのお約束が守られた世界に成り代わる……例えばカードが目当てでカードショップに強盗に押し入るとか」
「それ何年か前にニュースになってませんでしたか?」
「アレは純粋なカードバブルが原因だ。他にもモンスターを立体映像で映し出す機械とかが作られたりする」
「それは科学技術の進歩で良いことでは?」
ホビーアニメあるあるな展開が起きると言われるので例題を上げる黒代さん。
今のところはなんにも問題が無い。今のところイカれていると思ったのはカードゲームの大会を行う為だけのスタジアムを国営費で賄うだ。
「カードインフレが恐ろしい事になり、世界に1枚しかないカードから1億枚以上刷られているカードがあり、神戸の隣町こと金持ち街の芦屋の一等地や東京銀座の一等地のマンション1つと同じ値段のカードが生まれ、それが購入される」
「……今の段階でも大卒のサラリーマンの初任給と同じ金額のカードはありますが?」
「カードを作ったり大会運営をしている会社や協会が全くと言って認知していないどころか作った覚えの無い明らかにゲームバランスを度外視したカードが存在し、それが何故か公式大会で普通に使える」
「それは……アウトですね」
玩具常識改変罪で巻き起こる事を色々と言ってくれる黒代さん。
既に幾つかは玩具常識改変罪が適用されていない今の段階でも巻き起こっているのだが普通にアウトだと言う。
「ダルマ落としとか将棋とかトランプとかのホントに何処の会社が作っても特に問題は無い玩具以外、今回ならばスピリットモンスターズの様な対戦系のモンスターを使役して云々のゲームを作っている大手の玩具会社、今回ならばスピリットモンスターズ関係を全く取り扱っていない大手の雑誌会社、今回ならばスピリットモンスターズ関係を取り扱っていない大手の劇団等が一気に倒産か大赤字を叩き出す」
「それは…………物を売る会社だから売れる物を作れなかった会社が悪い、だけでは済まないのですね?」
「ああ。仮に雑誌会社が生き残ったとしても漫画や小説は全てスピリットモンスターズ関係になる。演劇も全てスピリットモンスターズ関係になる。スピリットモンスターズを基準に色々と社会が変わる。しかもそれらが異常事態と認識されずにだ」
「なるほど……」
「だがまぁ、ここまでならばまだいい。オレ個人の主観ではここまでならば許せる」
「え、いいのですか」
世界の常識云々の改変をしているのを聞いていれば割と危険だったり変な風にぶっ飛んでいるなと思っていれば黒代さん基準ではここまではセーフだった。
「コンビニで特定の商品何個か買い上げたらおまけでなんかアニメとかゲームのクリアファイルとかお箸が貰えるとかがあるだろ?あれのおかげで売上が上がったってデータはしっかりとある。それと同じだと認識すればギリッギリ、オレは飲み込める。問題はここから」
「……………ホビーアニメあるあるのその玩具を用いてなにか悪いことをするや国際テロ組織になるとかですか」
「そう。その玩具を用いて世界征服を企む、国際テロ組織になる。敵さえ現れなければ……このクソ長い人類の歴史の中で唯一誰も成し遂げることが出来ていない世界征服と言う偉業がホントに出来る。世界征服を企む組織はそれなりに居るから厄介なのは世界征服を企む事じゃない。その玩具で世界征服が出来ることだ」
「……?」
世界征服を企むことでなくその玩具で世界征服が出来るという事を黒代さんが危険視する。
具体的にはどういう意味なのかがわからないのだが黒代さんは直ぐに説明をしてくれる。
「お前は【無限の暴食魔人 ソウルイーター】の操り手に選ばれた。多分、やろうと思えば【無限の暴食魔人 ソウルイーター】で神戸を支配下に置くことが出来る。そしてそれに対して対抗する存在が現れる」
「【無限の暴食魔人 ソウルイーター】が言っていた十二使徒に選ばれた操り手?」
「それもあるが、極端な話をすればスピリットモンスターズをしているプレイヤー全員だ。全員が危険なんだ。ホビーアニメでよくあるだろ?負けた方が文字通り死ぬ闇のバトルが。自分のライフにダメージが入ったら痛みが感じるのを。そういうのが出来るのはおそらくだがスピリットモンスターズに選ばれし者。だが、スピリットモンスターズに関する研究をしっかりとすれば誰にでも闇のバトルが出来る様になる。それの言い方を変えたり考え方を変えれば、その辺の街中を歩いている一般人が人を殺せる銃を当たり前の様に持っている。国や社会はその事に関して何の疑問も抱かずに普通だと思っている状況を作れる」
「っ!!」
「その玩具が戦争の道具になり、命の奪い合いになる物だと世界は一切の規制しない。その事に関してなんの疑問も抱かないどころかそれはプライドや信念をかけた戦いだと言い切る。プライドとか信念を乗せてとかそこはまだいいが、命の奪い合いが出来る道具を大量に作られそれで遊ぶだなんてハッキリと言ってイカれてる。ゲームとしてのゲームでなく、殺し合いの道具になる」
「……成る程……イカれていますね……」
玩具常識改変罪が具体的にどういう風にイカれているのかが黒代さんが教えてくれた。
玩具常識改変罪、世界がホビーアニメの世界になろうとしているのでそれを起こさせない様にしなければならない。
「いや〜……しかし、どうしようかね。玩具常識改変罪って、扱うのスゴく難しい事件だからね」
ハリセンを片手に龍一課長がオカルト課の倉庫から戻ってきた。
玩具常識改変罪についてどうしたものかと非常に困った顔をしている。
「さっきチラリと【無限の暴食魔人 ソウルイーター】が総理大臣やアメリカの大統領がデッキを持っていると言ってたからさぁ、政府の力を使ってスピリットモンスターズを禁止にするとかそういうの出来ないんだよね。そもそもコレって誰を罪人にして縛り上げればいいのかが分からないから」
「カードゲームを作った人ではないのですか?」
「いや、製作者が死んでもカードゲームそのものが既に作り終えていて社会に馴染んでいるからその人以外のイラストレーターとか会社の後を継いだ人とかがカードを作れるから意味が無い。それにその人はそのゲームを作っただけだからその人が悪いんじゃない。その人を裁けば終わりというわけじゃないんだよ。玩具常識改変罪と言うが、実際に逮捕云々はその玩具で悪いことをした人達だけで製作者達は裁く事は早々に無いんだ」
龍一課長は玩具常識改変罪が非常にややこしいことを説明してくれた。
「カードゲームを作った人を裁いても意味は無い。政府の力を用いて法律等で禁止にする事も出来ない……」
既に高校の専門学科の1つに加えられるかどうかの検討をするレベルにまでスピリットモンスターズは社会に浸透している。
スピリットモンスターズに合わせて社会は変化していくのでそれを俺達はどうするのか?スピリットモンスターズのあれこれに対応する部署の立ち上げを早急にするしかないのではないのか?
「過去に1回、玩具常識改変罪の事件が起きた時があったからその時のレポートを後で見といて。それに近しい方法で解決策があるかもしれないから……上原。とりあえず、西宮に行くよ」
「西宮にですか?」
「なにするかは後で言うから……黒代、シフト確認して呼び出せる奴を探して」
「了解です」
龍一課長が西宮に行くと言い出した。なにか考えがあるのだと黒代さんをオカルト課に残した。正確に言えば別の仕事を頼んだ。
「流石に上原だけじゃ処理出来ない事件だから、他の人にも手伝って貰う形になる。その人と協力してこの玩具常識改変罪を解決してほしい」
「ほしいって……課長も動いてくださいよ」
「課長も動くには動くけれど、今回の一件は課長と相性悪いんよ……課長は暴力関係でならば大体はどうにかすることが出来る、その能力だけでオカルト課の課長になった。この前の魔法少女勧誘罪は敵を殺せばそれで全てが終わる。でも、今回の玩具常識改変罪は一般社会にまで影響を及ぼしていて何処かの過程で意見が対立したり倒さないといけない相手が居る場合はその玩具で戦わないといけない。暴力とは違うタイプの戦いならば他の人を呼ばないといけない。暴力以外の戦いでは課長は普通に負ける。実際、オカルト課の忘年会の飯を焼肉にするかすき焼きにするかの麻雀勝負で他の人達にボコボコにされてるから。その上で暴力以外の方法で事件解決しないといけないからさ」
魔法少女勧誘罪では物凄く頼りになった龍一課長だったが今回の一件はあまり頼りにならないと言っている。
暴力で物事を解決する時に龍一課長は役立つ、逆を言えば今回の一件はあまり役立たない……が、龍一課長も問題には向き合う。
「これはこれは、オカルト課の龍一様ではありませんか。本日はどの様な要件で?」
「恵比寿様に会わせてくれ。急ぎの用事だ」
龍一課長が今回はあまり頼りにならないのだと判明し、辿り着いたのは西宮神社。
西宮神社と言えば恵比寿様を祀る神社として有名であり、毎年福男を決めるレースをしている。神社の神主が龍一課長の来訪に気付けば龍一課長は恵比寿様に会わせてくれと頼む。神主は急ぎの用事ならば直ぐに呼ぶと言うのだが2,3分で呼び出せる程に都合の良いものではないので少し待ってくれと言われた。
「……既にかなりの侵攻を受けてるみたいだな」
待っている間に神社に参拝しに来た人達が購入した絵馬を飾る部分に俺は足を運んだ。
普通ならばここで宝くじが当たれ!等の願いが書かれているのだが、飾られている絵馬の殆どがスピリットモンスターズのカードが当たれと言う願いが書かれている。
「おぉ、久々やな。どないしたん?元気してた?」
異常な事が起きていると感じている中で恵比寿様が現れた。
最近は顔を合わせていなかったので恵比寿様は元気にしていたのかを聞いてくるのだが龍一課長はオカルト課の倉庫から持ってきたハリセンでパシンと恵比寿様を叩いた。
「…………っ!?……どないなっとるんや!?」
「恵比寿様、玩具常識改変罪が起こってる」
「ホンマや……アカン、飲み込まれてもうたわ。すまんの、龍一」
ハリセンで叩かれた恵比寿様はなにかに気付いた、いや、目を覚ましたかの様なリアクションを取る。
龍一課長に玩具常識改変罪が起きているという事を聞かされれば手で目元を覆い、龍一課長にお礼と謝罪の言葉を言った。
「ワシでコレやから他の奴等もか」
「既に日本の総理大臣とアメリカの大統領はやられてる」
「かなりの重傷やな」
「あの、何をしたのですか?」
「玩具常識改変罪の一番厄介な事、常識を改変されること。それに対してなにも疑問を思わないこと……このハリセンは叩いた者の精神を一般的な状態に戻す力がある。恵比寿様はホビーアニメの世界の住人になりかけていたから一般的な住人に戻した」
なにをしたのかを聞けば龍一課長がハリセンについて説明をしてくれた。
一般的な住人に戻ったから恵比寿様は異常事態である事に気付いた。
「あくまでもこれは応急処置だ、玩具常識改変力は精神をじわじわと蝕んでくる……叩けば治るが何時かは限界が迎える時が来る。この玩具常識改変罪の事件で出来る課長の仕事は常識改変されてる権力持ってる奴の意識を一時的に戻すことだ」
「成る程……しかし、それならば何故恵比寿様に、総理大臣の方が」
「玩具常識改変罪の事件を終わらせるのにワシの力が必要なんや」
便利なハリセンだが、それを使うのならば総理大臣とかに使うべきではないのかと考えれば恵比寿様が答える。
「ええか、玩具常識改変罪の事件解決方法は至ってシンプルや。その玩具を売れなくすればええんや。法律で危険とかそういうのやなくてホンマにシンプルにその玩具を売れない状態にする。売れない玩具に価値は無い。会社として作る理由を無くし売らなくなる。ワシは商売繁盛の神様や、繁盛する様に加護を与えれるしその逆、衰退もいける」
「なるほど……」
確かにその玩具が売れなければ次を作れない。
売れない玩具には価値が無いのだと次の新しい玩具に手を出すのは玩具会社として極々普通の事だ。恵比寿様は商売繁盛の神様、繁盛させるのでなく衰退させることでその玩具の価値を無くす。
「今から龍一と一緒に関聖帝君とかの商売関係の神様のとこ行ってくる。ハリセンで一時的に目を覚まさせてスピリットモンスターズ関係の商売に繁盛やのうて衰退の加護を与える……せやけど、それだけじゃ足りひん」
「神様から直接的に不幸を与えられる時点で充分な気もしますが」
「足りひん言うよりは玩具常識改変罪に関わってる玩具自体になんや不思議なパワーが宿っとる。ワシ等がやるんはあくまでもその玩具に関係する商売を経営不振にすることだけ。玩具に宿っとる不思議なパワーそのものを無効化には出来ひん。玩具に宿っとる不思議なパワーに魅了される奴は魅了される。多分、その玩具を使って悪いことを企んどる奴がおる」
「上原の仕事はスピリットモンスターズに影響されてる奴等の捕縛や討伐とこのスピリットモンスターズを終わらせる、オワコンにすることだ」
オワコンって……いや、まぁ、確かにそうか。
龍一課長はこれから恵比寿様と一緒に商売繁盛関係の神様や各国の政府の偉い人達の意識を一時的に目を覚ましに向かった。