「ふーっ……終わった」
「終わりましたね」
龍一課長と西宮神社で別れた後にオカルト課に戻った。
早速、スピリットモンスターズによる玩具常識改変罪に対して対応をする……のではなく、事務仕事を片付けた。割と直ぐに終わらせないといけない仕事が多く、黒代さんと一緒に処理を終えた。
「これでやっとスピリットモンスターズによる玩具常識改変罪について」
「課長、ただいま戻りました。有給申請していいですか?」
玩具常識改変罪の事件の解決に動き出すことが出来るのだと思っていれば事務仕事をするオカルト課の一室の扉が開いた。
二十歳後半を思わせる顔はクール系のイケメンだが髪をカチューシャで留めている。
「
「そうなんですか……あ、オカルト課の新入りの上原純平だろ?俺は
「えっと……よろしくお願いします、スーさん」
「気軽で良いっての……で、なにすりゃいいわけ?」
見たことが無い人はオカルト課の職員、藤末広さん。
スーさんと呼んでいいのでスーさんと呼ぶことにしたが本人的にはもう少し緩くしてほしいみたいだ。スーさんは黒代さんになにをすればいいのかを聞いた。
「スピリットモンスターズは知っているか?」
「なんか高校の専門学科にスピリットモンスターズが入るって言ってたな。最近、eスポーツとかが出来る学校とか増えてるけど遂に専門学科に認められたんだなって」
「……黒代さん、コレは?」
「いや、多分気付いてないだけで言われれば目を覚ます……末広、スピリットモンスターズは玩具常識改変罪に該当する玩具だ」
「うっそ、マジ!?」
「マジだ。上原と一緒に早急にこの事件を処理しろ、業務命令だから断れない」
「でも、黒代さん。俺、溜め込んでる有給そろそろ使いたいんだけど?法律的に取らないと上から文句言われるよ?」
「この事件終えたら溜め込んだ有給とは別に10日間有給賞与で強制的に取らせる……アラスカ辺りでオーロラでも見てこい」
「何時事件が終わるか分かんないから飛行機とかホテルとかツアーの予約出来ないって…………課長はなんて言ってた?」
「スピリットモンスターズに影響された人間の捕獲及び保護、スピリットモンスターズをオワコンにしろと命じられました」
溜まっている有給を消費したいスーさんだったが玩具常識改変罪の事件を終えるまでは無理と仄めかす黒代さん。
玩具常識改変罪に適応する出来事が起きているのでスーさんは有給や休みを寄越せと文句は言わなかった。
「さてと、じゃあ休みもらうために仕事すっか……現時点で集まっている情報は?」
「ここに纏めております」
なにかの拍子でハッキングをされたら困るので紙媒体として現時点で集まっている情報を見せる。
現時点で集まったスピリットモンスターズの情報は幾つかあるがその情報が使えるか使えないかは分からない。
スピリットモンスターズのカードの中には魂が宿るカードがある。宿っている魂の正体は異世界の住人で、なんだかんだあってカードに生まれ変わった魂だ。
スピリットモンスターズには7つの黒のカードと7つの黒のカードに対抗する12のカードが存在していること。
魂が宿っている7枚の黒のカードは世間一般で言う悪のカード、持っているだけで悪意等を増幅させるのは勿論のこと宿っている魂そのものが悪人だ。他の色は色々と個性があるが……正確に言えばピンクと赤と紫のスピリットについての特徴は分かったがそれが今のところなにかの役に立つかは分からない。
「う〜ん、ホビーアニメあるあるだな」
「俺達は何処から手を付ければいいのでしょうか?」
「…………スピリットモンスターズ科の設立云々をニュースで言ってたよな……仮に決まった場合は、何処の学校がその学科を作る?」
集まっている情報はホビーアニメにあるあるなものばかりだった。
正直な話、俺はどの辺りから手を付けて問題を処理すればいいのかが分からない。
「スピリットモンスターズを作っている会社、
「遊学社に乗り込みますか?」
「……玩具常識改変罪に携わる玩具は自然と同じ存在を集める、集めやすいとも言える。7つの黒のカードとそのカードの持ち主とそれに対抗する十二使徒と言われる12枚カードとそれの持ち主は?」
「一部は判明しています」
スピリットモンスターズ科の学校が何処に生まれるかを聞いたので黒代さんが答える。
そもそもでこのカードゲームを作っている運営元に乗り込めばいいのでは?と思ったがスーさんはそれはまだだとし、重要そうなカードとそれの持ち主について聞いた。一部だけだが判明はしている。
「十二使徒と呼ばれるカードは【剣舞聖帝 タイガ】【不可思議な計算機 ラータ】【
「黒のカードは?」
「黒のカード7枚のカード【無限の暴食魔人 ソウルイーター】の持ち主は自分こと上原純平です。他は【色欲の賢者 リリス】【強欲の詐欺師 ジャック・オー・ランタン】【怠惰な怪異 山本五郎左衛門】【傲慢なる神の使い ルキフェル】【憤怒の審判者 デスハー】【嫉妬の観測者 アルゴス】……持ち主に関しては不明ですがスピリットモンスターズを操る国際テロ組織、
「……スゲえホビーアニメだな」
「黒代さん、それ言っちゃおしまいよ……あんたがこの手の事に関してツッコミを入れたい事を知覚する能力とかあるって知ってるけど」
十二使徒と呼ばれる12枚のカードと黒の7枚のカードについて現段階で分かっている事等をスーさんに報告する。
話を一応は聞いている黒代さんがスゴくホビーアニメな世界観になっていることをボヤけばスーさんがそれを言わないお約束だとツッコミを入れる。
「黒の7枚のカードは七つの大罪で、なんか聞いたことがある名前、モチーフか……ハデス様、かわいそうに」
「……デスハーがハデスですが何故にかわいそうになんですか」
「ファンタジーでギリシャとか関係したりすると高確率で冥府の神様ことハデス様が悪者にされる。まぁ、ロクでもない存在なのは確かなんだがそれよりもゼウスとかポセイドンの方がもっとクソ野郎なのになんかそっちは良い存在ってカウントされるんだ」
確かに冥府の神様であるハデスが関係している作品はハデスが悪者扱いとして扱われているな。
スーさんはかわいそうだなと憐れみながらもオカルト課が纏めている情報を確認して頭に入れている。
「
「そこは分かんないから今はいいや……問題はこっからどうするかだ。スピリットモンスターズを終わらせるのとスピリットモンスターズに影響された人間の捕獲や保護……やっべ、どっから手を付けたらいいんだか」
スピリットモンスターズを終わらせるのと被害者及び加害者の確保。
具体的にどういう風に終わらせればいいのか、スーさんがどの辺から動けばいいのかが分からない。
「黒代さん、確か過去に1回だけ玩具常識改変罪ってあったよね?その時の報告書とかは?」
「あるにはあるが、その時はカードゲームによる玩具常識改変じゃなかった。同じ手を使えるとは限らないぞ?」
「前例がそれしかないからそれを参考にするしかないっしょ」
色々と悩んだ末にスーさんは過去に1回だけ起きた玩具常識改変罪に該当する事件の記録を確認する。
「世界大会で蹂躙する。アンティルールで玩具の独占し破壊するか」
過去に起きた玩具常識改変罪の解決方法は至ってシンプルだった。
優勝商品が1億円と激レアのパーツな世界大会を開催する。その世界大会に出る為に必要な世界各国の予選でアンティルール、相手に勝ったらその玩具を自分の物にすることが出来る。自分の物にした玩具と最初から自分の物である玩具のパーツを交換し、より強力な機体になる。
そして大会運営の特権としてオカルト課関係者がシード枠で世界大会に出場し、世界大会の場で力を持っている玩具の破壊やその玩具に選ばれた人間の捕獲を行い、最終的にその玩具を作っている会社にその玩具を二度と作らない事やその玩具専用のスタジアムや国連主体による国際競技化等を阻止した。
「どんな願いでも叶う。欲しいカードを絶対に用意する。プロ契約を行う。シンプルに1億円を用意する。世界最強の座を手にする、色々とあるけど甘い商品をぶら下げて世界規模の大きな大会を開いてアンティルールで相手の持っている不思議な力を宿す玩具を奪って破壊する、か…………」
「魂が宿っているカードを手に入れる手段としてはそれがベストでしょう。封印及び破壊云々をどうするかは置いておいて、もう1つの問題、スピリットモンスターズをオワコンにすること……これに関して考えないといけません」
「あ、それなら1個閃いたから多分どうにかなると思うわ」
スピリットモンスターズをオワコンにする方法が思い浮かばないのだがスーさんは既に思い浮かんでいる。
それの詳細については後で聞くとして……問題は世界規模の大会を開かなければならない事だろう。
「賞金とかどんな願いでも叶えるとか欲しいカードを確実に用意するとかそういうのを用意するだけじゃなくて、公式な大会として世界大会を開催しないといけない。その為にはスピリットモンスターズ協会の首を縦に振らせないといけないです」
「ん〜……十二使徒のカードの持ち主って何人かは判明してるよな?家柄とかなんかがスゴいの居るか?」
「スピリットモンスターズ協会公認のオフィシャルS級バトラーで【剣舞聖帝 タイガ】のカードの使い手、
「そいつ、超有名?」
「公式戦無敗とのデータがあり、全国大会で優勝していて現在玩具常識改変が起こっているので徐々に徐々に知名度は上がるでしょう…………どうします?」
「簡単だ。そいつを広告塔として利用して世界大会を開く。
スピリットモンスターズの世界大会か、そこまで話が大きくなればもう完全に国防省がどうにかこうにかすることが出来る範囲を越しているのだが。
「話が壮大になりましたね……問題点は幾つか。
「安心しろ、俺なんてルールすら知らない。勝負云々に関しては闇のバトルをすればいい」
「闇のバトル、ですか。流石に殺し合いはダメでしょうし、戦術云々がそもそもで無いって話ですよ?」
「魂が宿ってるカードを持ったプレイヤーが負けて、そのカードが移った場合カード側からなにかをするっていうデータが無いのと纏められてるデータ的に闇のバトルって命を賭けたゲームをするだけじゃなくて勝ったら負けた相手に言うことを聞かせる事が出来ると思うんだ」
「…………なにするんですか?カードを捨てろとか言うのですか?」
「十二使徒を始めとするスピリットモンスターズの魂が宿ったカードを持ったスピリットモンスターズに選ばれた人間に勝つのは多分、無理だろう。選ばれてない人間である以上は選ばれた人間との間にはそれこそ、無双ゲームの雑魚キャラとプレイアブルキャラぐらいの絶望的なまでの差がある。それは努力では埋められない世界だ……それをどうにかする方法は1つ」
スーさんは既に自分は勝てないのだと認めている。
スピリットモンスターズに選ばれ自分に適合した魂が宿るカードを持ったプレイヤーと戦っても勝てない、おそらくは死ぬ気で努力してもほんの少し手傷を負わせる程度が限界なのが見えている。
「スピリットモンスターズの中でも特にレアな7枚の黒のカードの1枚に選ばれた俺に全てを託されても困ります。流石にその大会が開幕するまでにみっちりとスピリットモンスターズ生活を送るのは、俺にも生活はあるのですよ?」
「いや、1回だけでいい。本当に1回だけ闇のバトルをし勝利する。そうすることで相手に絶対に逆らうことが出来ない命令をくだすことが出来る……それが出来るかどうかが鍵を握る。とりあえず、純ちゃんはその【無限の暴食魔人 ソウルイーター】で出来る最強のデッキを作るんだ」
「黒代さん、カード購入代金は経費で落ちますか」
【無限の暴食魔人 ソウルイーター】を使ったデッキを作れと言われても、そもそもでカードが無い。
この手のものでありがちなカードの値段のインフレ・デフレが恐ろしいことになっており【無限の暴食魔人 ソウルイーター】に合わせたデッキとなればそれこそ恐ろしく金が掛かる。経理云々もしている事務員の黒代さんに経費で落ちるかを聞けば黒代さんが渋い顔をする。
「魔法少女勧誘罪とか異世界日本人拉致罪とか強制開祖洗脳脅迫罪とか超常現象賭博罪とかは色々と事例があるから普通はこんなのが経費は落ちないだろうと思えるものでも経費として落ちる。玩具常識改変罪を解決する為にその玩具に関係する物を経費として落とせるには落とせるんだけどよ……玩具常識改変罪ってさ、過去に1回しか起こってねえんだよ」
「?」
「前にこの玩具常識改変罪の事件で、その玩具関係のあれこれを経費として落としたんだ。最終的にその事件を解決したのはいいんだが、その事件の解決=その玩具が世界の物事の主体にならなかった、だからそんな玩具に国防省の金を使うな!って批判の声がスゲえ出てきてな。経費として落とせるんだが、最終的に政治家とかが税金を偉い人の接待云々じゃなくて完全な私利私欲の為にキャバクラで気に入ったホステスに貢ぐのに使うお金と同じ扱いとして見られる……」
「え、そんな風にカウントされんの!?」
「カードショップでカードを買ってそれを国の経費、税金で落としてるからな……経費としてはある程度は落とす。だが、事件が全て終わった後に小言とか嫌味を言われるのを覚悟しておけ」
なんか普通に嫌だな。
世界の常識を改変されない為に日本の税金でカードゲームのカードを購入するって。