「…………美味いな」
『良い紅茶の様だな』
日本のとある飲食店、それは政治家等の偉い人達が主に密談をする為にする超が付くほど高級な料亭だ。
そこに呼び出されたのはスピリットモンスターズ協会公認のオフィシャルS級バトラー、四季咲才賀。日本でもかなりの名家である四季咲家のご子息だ。父親に頼まれ、料亭に足を運べば紅茶を出されたのでそれを飲むが絶品だった。
「今更オレを利用か……」
『そう膨れるな。自慢の息子になったのだから』
四季咲才賀の父、四季咲熱斗は四季咲才賀とあまり交流を取らない。
よくある父親とキャッチボールとか一緒に勉強した事は勿論のこと父親参観や運動会等の保護者関係の行事にすら一切足を運ばない。そのくせに学業では一番をと色々と押し付けるなんとも言えないダメ親父である。
才賀は父である熱斗に対して一時期は頑張れば褒めてもらえる、自慢の息子だと振り向いてくれる!そう思い死ぬ気で努力をしたのだが親子のコミュニケーションが上手く行かなかった。
才賀は既に父親に今更父親としてああだこうだ言われても嬉しくもなんとも思わない。今回、四季咲家の人間でなくスピリットモンスターズ協会公認のオフィシャルS級バトラーとしてこの料亭に向かってくれと頼まれたが今更どの面下げてである。
「……今更だ」
『……ホントに欲しい時に欲しい言葉が出んかったからな』
才賀は先ほどから一人言を呟いている、様に見えるが十二使徒と呼ばれるスピリットモンスターズの中でも破格のカードの1つ、【剣舞聖帝 タイガ】のカードに宿る剣舞聖帝 タイガと会話をしている。
【剣舞聖帝 タイガ】も嘗ては人の父ではあったものの、親子のコミュニケーションと言う物を上手く理解することが出来なかった。その末にスピリットモンスターズ界が滅びカードとして生まれ変わり才賀と出会ったので思うところは色々とある。
「失礼しまーす」
「……」
「あ、そんな警戒心を強めないでよ……って言っても無理か……」
自分に会いたいと言っている人がやって来た。
中学生の自分と比べれば大人、既にスーツを着ていて普通の人から見てもこの人は二十歳過ぎている大人だと分かる人だ。
「はじめまして……スピリットモンスターズ協会公認のオフィシャルS級バトラーの四季咲才賀です」
「どうも、俺は藤末広。藤末、広じゃなくて藤、末広だ」
男もとい藤末広を見てなんだコイツは?と才賀は疑問を抱いた。
自分に胡麻擂りをする人間が出てくるのだと思っていたのだがなんか変なのが出てきたなと感じた。
「それでわざわざこの様な場所にまで呼び出した用事は?」
「そうだね。まずはコレを読んでくれ」
少しだけ嫌味っぽく言ってみたものの末広は特に気にせずにファイルを取り出した。
なんだと思いながらもファイルを開き、才賀は内容を確認すれば固まった。
「コレは!!」
「そう、スピリットモンスターズに関係する事件だよ」
ファイルに書かれていたのはスピリットモンスターズに関係する事件だった。
スピリットモンスターズに関係する事件に過去に何度か遭遇している才賀はファイルの資料を1枚、また1枚と捲っていく。事件の種類は多種多様だったものの全てスピリットモンスターズに関係する事件だった。
「貴方は……何者ですか?」
「俺は国防省の人間だよ……才賀くん、でいいかな?君に頼みたいことがあるんだ」
「これらの事件の全貌を」
「いや、違う」
スピリットモンスターズに関係する事件を解決してほしいと頼みに来たのだと予想する才賀。
それならば自分は力を貸そう!とスピリットモンスターズを愛する1人のバトラーとして挑むつもりだったが末広に否定される。
「スピリットモンスターズに関係する事件を調べていたりすると、魂が宿るカードや
「流石のオレも
「……君一人に無茶な事をさせない……今回君に頼みたいことは炙り出しをしてほしいんだ」
「炙り出し……なにかの事件のおとり捜査ですか?」
一瞬だけ末広がなにかを考える間があったが、頼みたいことを言われたのでなにかのおとり捜査か?尋ねた。
「スピリットモンスターズは世界各国で盛り上がっている最高のゲームだ……しかし、しかーし!色々と分かっていない事もある。例えばエースモンスターが存在しないと言われている黒のスピリット、そのスピリットには実は7枚だけ物凄く強いエースモンスターが居ると!」
「黒のスピリットの7つのエースモンスターについてはオレも詳細は知りませんが、幾つかは
「その黒のカードの様に詳細が分からないカードが他にもあると言えば?」
「あるのですか!?」
「答えだけ言えば、それは確かにあったんだよ。魂が宿るカードであり黒のスピリットの7つのエースモンスターと同じでカードコレクターですらまともに名前も知らないカードが」
『む……確かにスピリットモンスターズの世界に居た住人達の中でまだカードになったと聞いていない者達も居るな』
「……そのカードの回収、でもないのですよね?オレにどうしろと?」
【剣舞聖帝 タイガ】がスピリットモンスターズの世界に居たがまだカードとして表に出ていない者達が居ると言われたので信憑性が増した。しかし、さっきから妙に本題に入らないなと違和感を感じた才賀は結局のところ自分にどうしろと言うのだと聞いた。
「スピリットモンスターズの公式大会には幾つか過程を挟まなければならない。スピリットモンスターズ協会がランクを認定し、そのランクを上げなければ大きな大会には出れない。日本一を決める大会やアジアリーグもだ。だけどスピリットモンスターズ協会認定の公式大会じゃない大会ならばその規制は無い。街のショップ大会から優勝賞品が莫大な金のみの大会、誰が優勝するのか予測する賭博場の裏の大会等がある」
「それを炙り出せと?」
「そうだ。才賀くんみたいにスピリットモンスターズ協会認定のオフィシャルS級やその下のオフィシャルA級のバトラー達と同格だが様々な事情で表の大会に出てこようとはしない者達がこの世には何人も居るんだ。色々と謎が多い
「……それは、つまり……」
「君の様な表のトップ、手続きがめんどくさいからしていないが実力はS級のC級バトラー、裏の世界の賞金稼ぎとして生きている猛者、
表と裏の全てを含めた最強を決める世界大会を開催したいと才賀からスピリットモンスターズ協会に言ってほしい。
そして才賀には表と裏にスピリットモンスターズを愛する1人のバトラーとして我こそは最強だと実力を示せ!と言ってほしい。
「
「スピリットモンスターズで全てを蹴散らせと?」
「ああ……そしてその世界大会はアンティルールを採用する。黒のスピリットの7つのエースモンスターを始めとする危険なカードを出来れば封じ込めたり悪事に加担した者を逮捕したい。これ以上、スピリットモンスターズで悪事を起こさせたくない」
「なるほど……そういう話でしたら喜んでお引き受けいたしましょう!」
「ありがとう!才賀くん!……ああ、詳しいルールの調整云々とか大会の開催日程とか会場のセッティングとかはこっちがするから。才賀くんも1人のバトラーとして出る以上は、運営に携わってはいけない。別の誰かが公平にルールを仕切らなければならないからな」
「協会に任せないのですか?」
「才賀くん……協会の人達だってスピリットモンスターズ界の中でも有数の実力者達だよ?普段はスピリットモンスターズ協会の人間として中立に立たないといけないけれども、今回は文字通りの最強を決める大会だ。こういうのはなんだけども君のことを見下してたり自分がその気になればお前を倒せるぜ!と思っている者達が居る。だからどうせ出ても予選も予選の街のショップ大会の2回戦ぐらいで敗退する俺みたいなのに運営を任せれば良いんだ」
少しだけなにか違和感を感じながらも才賀はスピリットモンスターズの裏も表も合わせた世界大会をする!と決めた。
この後に美味しい会食をと思ったが才賀は直ぐにでも大会の宣言等をしたいので食事は無しにしスピリットモンスターズ協会に裏も表も合わせた文字通り世界最強を決める大会の開幕の宣言、そして全国どころか世界中継の番組でスピリットモンスターズの世界一を決める大会、優勝すればどんな願いでも叶える大会を行うとした。
「行動早すぎんだろ……ま、そっちの方がありがてえけど」
僅か1日で裏と表どころかなんでもありの世界大会を宣言した。
会場のセッティング云々を一切していないのに1日で大会を実際に開催する事そのものの許可を頂いた。あまりにも早すぎる、コレはハッキリと言えばおかしい。カードゲームの重鎮が世界大会をしたいと言ったから世界一を決める世界大会を僅か1日で開催を決定させる、コレが玩具常識改変罪により世界の常識が切り替わろうとするところである。
「鹿さん、どうすか?」
「スピリットモンスターズの研究自体はそこそこだけど……あんたコレ、理に干渉するタイプのもんでしょう?」
世界大会開幕の宣言云々をしている裏で末広は動く。
オカルト課研究所の所長である吉木五鹿はスピリットモンスターズの研究をしていたのだが、末広にとある物を作ってくれと頼まれていた。上から作れと言われた以上は作るのが研究所の仕事だが五鹿はコレが理に干渉するタイプの危険な物だとボヤく。
「そんなん言い出したらスピリットモンスターズなんて玩具常識改変罪に適応される玩具だよ?向こうが色々と反則的な技を使うならばこっちもそれに合わせてそれ相応の手段を使わねえと」
「まぁ、言いたいことは分かるんですけどね……前に起きた玩具常識改変罪の事件、あの時も結構外道な事をしましたし」
「ワンランク上の大人向けのホビーアニメを見た
「怪しいとしか言えないですね……なにせそれについて誰も違和感を感じず疑問に思わないのですから。出来る限りは効果に期待をしたいのですが……サンプルがね……」
五鹿は注文された物の効果についてあまり期待通りの効果が発揮出来るかどうか怪しいと考える。
注文された物が効果を発揮する場面が早々に訪れないのでサンプルが中々に取れない。末広はそりゃそうだと言う顔をしている。
「その状況が起きる時は闇のバトルとかの時だ……後、魂が宿るカードとそのカードに適合した操り手が居ないといけない。そうじゃないとそれは発揮しない」
「ええ、まぁ……そう言われればそうなんですけどね……色々と手順を踏まないと玩具常識改変罪は終わらないから仕方ないッスけどめんどくさい」
「それ言っちゃおしまいだって」
玩具常識改変罪のパターンは茶色、既存の技術等で既に敵を倒す方法が見つかっているが一般社会にまで影響を及ぼしている。
既存の技術等で既に敵を倒す方法についてはシンプルにスピリットモンスターズで相手を倒せばいい、倒すだけで大体の事は解決する。だが厄介なのは玩具による常識改変だ。洗脳されている事自体に気付かない洗脳をされている人達をもとに戻すには幾つかの手順を踏まなければならず、オカルト課研究所に注文した頼んだ物はそれを解決する物の1つだ。
「モンスターの声を聞ける様にするとか、モンスターを見れるようにするとかはしなくていいんすよね?」
「その過程で魂が宿るカードとスピリットモンスターズに選ばれた操り手をそこそこの数を集めないといけないから無理でしょ。魂が宿るカードは何処にあるか分からないし、あっても会得難易度が高い。選ばれた操り手に関しては誰がどういう風に選ばれるかの法則性は0らしいし」
「一応、カードだけなら3枚ありますけど?」
「え?マジで?」
「マジッス……しかも、美女ッスよ」
五鹿は3枚のカードを取り出した。
【豊穣の女神 デメテル】と【神を唸らす料理人 アンナ】と【異星の姫君 輝夜】の3枚のカード、どれも見た目はボンキュッボンなエッチな服装をしている女性の見た目なカードイラストである。
「カードとしての性能はアレですけども、ファンアートとか多くてシコリティ要素が物凄いんですよ……このカードに選ばれた人は知らないですけども……どうします?一般人でも干渉する事が出来る技術作っときます?」
「……メインの研究を疎かにしたらアウトだからサブで」
「了解ッス」
エッチな見た目のカードに対してスケベな心を抱かない人は居ない。
カードゲームとかのコレは何処からどう見てもエッチな格好をしているモンスターとかは多くの少年達を精通させ性癖を歪ませる物である。五鹿に一般人でも魂が宿るカードの魂を見たり触れたりする技術の開発を末広は許可した。心做しか末広は嬉しそうにしている。
「それで、闇のバトルとかは?」
「ああ、ちゃんと判明したッスよ……勝ったら相手の命を奪うんじゃなくて問答無用で相手に言うことを聞かせる闇のバトルは可能です」
エッチなモンスター研究はさておいて、闇のバトルに関する研究成果を聞いた。
勝ったら相手の命を奪うのでなく相手に問答無用で言うことを聞かせる事が出来ると成果を報告
「スピリットモンスターズの世界大会の優勝賞品はどんな願いでも叶えるに設定したしルール整備も出来た……だけど、一番の要素が足りない」
「……純粋にスピリットモンスターズで相手を倒せる操り手、スか?上原さんが7つの黒のカードに適合したから上原さんに任せちゃダメなんスか?」
「いや、それだけじゃダメっしょ。世界大会に出てくる連中はスピリットモンスターズの世界で上澄みも上澄みな連中、十二使徒と黒のスピリットの7つのエースモンスター以外の魂が宿るカードを持っていたりそれに適合する操り手だったりするわけ。好きなタイミングで好きなカードをドローする、手札事故の概念は一切無い奴等だよ?……十二使徒と言う同格の存在とそのカードに適合する操り手が居る以上は何処かの段階で負ける可能性が非常に高い」
裏と表の全ての住人が一堂に集う世界大会で玩具常識改変罪を終わらせる。
その為には絶対にスピリットモンスターズで負けてはいけない。黒のスピリットの7つのエースカードに選ばれたバトラーですら普通に負ける可能性を秘めている。この大会を開催したい!と宣言させたスピリットモンスターズ協会公認のオフィシャルS級バトラーである四季咲才賀ですらその可能性を高い割合で秘めている。
「じゃあ、どうするんスか?スピリットモンスターズによる玩具常識改変罪を解決するには何処かの段階でスピリットモンスターズで勝負しないといけないッスよ?」
「……鹿さん、カードゲームにおいて勝つ為に大事なものってなにか分かります?」
「運とか?……いや、魂が宿るカードと呼吸を合わせれば好きなカードをドローしやすくなるし……なんスか?」
「運も大事だがそれ以外にも色々と必要なんですって。どんな事にも動じない揺るがない精神力、笑顔を忘れず楽しむ気持ち、たゆまぬ努力で身につけた知識、そしてどうしてこんな効果にしたと思うようなカード!が重要」
「…………身も蓋もない話ッスね」
しかし、真理である。