スピリットモンスターズの世界一を決めるWSRG、【無限の暴食魔人ソウルイーター】の使い手である謎の男が世界一になった。
当然この事に関しては抗議があった。あんなゲームバランスを度外視したカードを使うなや彼もまたトーナメントに出ていないといけないなど。しかしスピリットモンスターズ協会はそれを跳ね除けた。
謎のバトラーが世界最強のスピリットバトラー。それに関しては多くの者達が異議を唱えたが、覆ることはない。
世界規模の大会で優勝者が居ないのはカッコがつかないのか、それともなにか別の思惑があるのか?それは誰にも分からない。
「フッフッフッ……ジャンジャジャジャーン!」
大会期間中である夏休みを終えて9月、始業式の日だ。
学校を終えた折節猛火や夕凪若葉はスピリットモンスターズ専門のカードショップ、娯楽舎にやってきた。
「私、A級に昇格しました!」
自慢げに若葉はスピリットモンスターズ公認のライセンスを掲げる。
B級バトラーだった若葉は今回の一件でランクの見直しがされた。その結果日本のA級バトラーとして認められた。B級からC級にランクアップするバトラーは数多く居るがA級にランクアップする者は限られている。
若葉はA級バトラーのライセンスを取得する事が出来たのだと猛火に語れば猛火は1枚のライセンスカードを取り出した。
「あ、猛火も……嘘!?S級なの!?」
世界大会で準優勝を決めた猛火も当然、ランクの見直しがされた。
一般教養が残念だったりしてB級以上に昇格することが出来なかった猛火だが、今回の一件で猛火はオフィシャルS級の中で上澄みも上澄みな存在だと認定されてオフィシャルS級バトラーとして昇格を果たした。
C級からいきなりのオフィシャルS級バトラーに昇格等、前例が無い。
オフィシャルS級バトラーと言えば誰からも憧れる尊敬されるカードバトラーとして誇り高い名誉だ……だが、猛火の表情は暗かった。
「どうしたのよ、浮かない顔をして」
「……オレにスピリットモンスターズをやる資格があるのか……」
猛火はWSRGの決勝戦で上原が扮した謎のバトラーに敗れた。
3本勝負で1本目は上原の勝ち、2本目は猛火がデッキに入っていないカードを使ったことによる反則負けだ。心技体を鍛えてカードと共に歩めば未来は切り開かれると信じた結果、猛火は世界大会の決勝戦で反則負けをするというあまりにも情けない醜態を晒した。
「なに言ってるのよ!悪いのは相手よ!あんなインチキカードを使うだなんてどうかしてるわ!」
反則行為はしない、そんなものとは縁遠いと思っていたが結果的にしてしまった。
自分はスピリットモンスターズをするに相応しくない人間だと悩んでしまっているが若葉は相手がインチキカードを使ってきたから悪いと言った。しかし、謎のバトラーは悪くない。公式大会で存在しないカードを使った猛火も悪いと言う意見が各所から多発している。
「猛火、貴方が悩んでるなら答えは1つよ!スピリットモンスターズの借りはスピリットモンスターズで返しなさい!あの男を今度はギャフンと言わせるのよ!」
「若葉……そうだな……次こそ勝つんだ」
落ち込んでいた気持ちを引き締め直す猛火は両手で頬をパンパンと叩いた。
次こそ勝つと前向きになった。
「いや〜猛火くんが世界大会行ってくれたおかげでホントに助かったわ」
「互楽さん」
一方上機嫌だった者が1人、
猛火が娯楽舎の公認のショップ大会から勝ち進んだことで猛火と言うスピリットバトラーを育成した優秀な店だと判断されてスピリットモンスターズから支援金や新作のパック等が入ったりした。
「猛火くんが遂にオフィシャルS級バトラーか……なんか感慨深いわ……だけども、それだけで終わりじゃないからな」
「はい……」
「互楽店長、新しいパックが入ったりしたんでしょ?売ってくださいよ!」
「おう……と、その前にや。なんやスピリットモンスターズの公式からの動画配信があるらしい」
新しいパック等が入ったりしているので売って欲しいと若葉が言えば公式の動画配信があることを伝える。
公式大会を行っているもしくは行う事が出来るショップは可能であるならば出来る限りスピリットモンスターズ協会の公式からの動画配信を見てくださいとの通達があった。
「世界大会があんな感じで幕引いたり
「そうなんだ……世界大会のやり直しとかならいいんだけどね」
「いや、無理やと思うで。あれ裏で何百億って金が動いてたらしいから……っと、そろそろや」
スピリットモンスターズ協会からの公式の通達が始まる。
店のパソコンを使い公式からの全世界に向けての生配信を見る。
「あ、冬夏社長だ」
スピリットモンスターズ協会の重鎮とかが出てくるかと思えばスピリットモンスターズの生みの親である冬夏春秋が映し出される。
なにか重大な発表があるのだろうから取り敢えずはと3人は見守ることにした。
『はじめまして、皆さん。スピリットモンスターズを創った冬夏春秋です……皆さん、世界大会お疲れ様でした。文字通りの世界最強を決める大会、どの試合がベストバウトだったのかと言われれば悩みます。ですが、逆にどの試合が最悪だったのかと聞かれれば1つです』
1人1人に人間ドラマが生まれたWSRG。
世界最強を決める大会は凄まじかったがその中で汚点と言えるバトルが存在している。全世界でこの生配信を見ている人達は直ぐになにか分かった。そう、決勝戦だ。
『謎のバトラーが使ったカード達及び折節猛火くんが使った【熱きスピリットバトラー】の様な公式が作った覚えの無いカード達、それらを今後公式大会において使用を禁止にします』
「まぁ……あんなカードが流通したりしたら終わりやから当然と言えば当然やな」
『しかし今回、調べた結果折節猛火くん以外にも公式が作った覚えの無いカードが幾つか判明しました。そこで本日より禁止カード、制限カードの改定を行います。具体的に言えば使用していいカード、と言う枠組みを作ります。この使用していいカードと言う枠組みに入っているカードのみスピリットモンスターズで使用可能です』
公式が認知してないカードが一気に多発した。
カードゲームの運営としてそれはまずいとなったので逆の発想、使ってはいけないカードを発表するのでなく使っていいカードの発表をする。詳しい詳細、どのカードが使用可能なのかはスピリットモンスターズの公式サイトにアクセスすれば載っているので確認してくださいとの通達がある。
『そして次に皆さんが気になっていること、WSRGの優勝者の願いについてです……既にそれは実行されており、全世界で活動しています。この件に関してはどんな願いでも叶える約束であった為に無効には出来ません。これからもスピリットモンスターズをお楽しみください』
公式大会で使っていいカードを定めたのと謎のバトラーが叶えた願いについて。
その2つの説明が終わればスピリットモンスターズ協会からの公式の生配信が終わった。
『あの男は、スピリットモンスターズの解放を目論んでいたが……スピリットモンスターズの解放とはなんなのだ?』
公式が認知してないカードが多すぎたので公式が認知したカードのみしか今後使えない。
これに関しては飲み込める。問題は優勝した謎のバトラーが叶えた願いであり、猛火の相棒である【盾籠り龍王 ドラグナー】がなにを意味していたのかを気にする。
「スピリットモンスターズの解放は……」
カードを独占するわけでもなければ悪事に利用することもしていない。
猛火はなにを意味するのかがわからないでいれば互楽がスピリットモンスターズの公式サイトにアクセスをし、大会で使っていいカードのリストを確認する。当然A級バトラーの若葉やオフィシャルS級バトラーの猛火はなにかに引っかかるようなカードを1枚も持っていない。
「さぁ、大会をはじめるで!」
確認を終えたのでショップ大会が行われる。
オフィシャルS級バトラーになった猛火や日本のA級バトラーになった若葉も当然大会に参加をする。
「いくぞ!俺のターン!俺は魔法カード【剣舞】を発動!」
「…………は?」
先攻後攻を決めるジャンケンをした。その結果猛火が負けて後攻になった。
自分の手札と向き合いつつもどういう風にデッキを回すのかを考察し相手の出方を確認したその時だった。ありえないカードが出た。
そのカードが出たことにより猛火は固まった。それは何故か?
「【剣舞聖帝 タイガ】もしくはそのカードが記されたカードを1枚手札に加える!俺は【剣舞聖帝 タイガ】を手札に加える!」
対戦相手の使っているカードは猛火のライバルである才賀の持つカード【剣舞聖帝 タイガ】かそれをサポートするカードをサーチする効果を持っているカードだった。
『バカな!?何故それをお前が持っている!?』
「嘘、なんで!?なんで貴方が【色欲の賢者 リリス】を持ってるの!?」
【盾籠り龍王 ドラグナー】がライバルである【剣舞聖帝 タイガ】のサポートカードを持っていることについて叫べば別のところで対戦をしている若葉が叫んだ。叫んだ内容からして黒の7つのエースモンスターである【色欲の賢者 リリス】を若葉の対戦相手が使ってきた。
「んな…………なんじゃこりゃああああ!?」
「互楽さん、どうしました!?」
驚きを隠せない、なにが起こっているのかが分からない中で互楽が叫んだ。
今度はなんなんだと思う。スピリットバトラーとしての本能が言っている。今、とてつもなく危険な状態に陥っているのを。
「【剣舞聖帝 タイガ】と【盾籠り龍王 ドラグナー】が一緒に入ってた!」
「……は?」
才賀しか持っていない筈の【剣舞聖帝 タイガ】、そして猛火しか持っていない筈の【盾籠り龍王 ドラグナー】
新しく入ったパックを一足早くに開封をすればその2枚が同時に出てきたことで互楽が腰を抜かしていた。そして猛火も固まった。
なにがいったい?どうなっているんだ?
と。
「ちょっとバトルを続けてよ」
「あ、ああ……」
さて、ここで上原もとい謎のバトラーが願った願いについて教えよう。
それはスピリットモンスターズの独占からの解放である……折節猛火や四季咲才賀を始めとするスピリットモンスターズに選ばれし者はそれに相応しいカードを持っている。そしてそのカードは世界に1枚もしくはデッキ上限である4枚までしか存在していない。
上原の願いはこれを今すぐに無しにすることだ。
世界で1枚しか無いカードパワーバランスが明らかにおかしいカードを使う、公式も運営もそれに関してなにも疑問に思わなかった。だからこそそれを逆手に取った。
「嘘やろ、十二使徒と7つの黒が揃った」
カードゲームアニメにありがちなカードパワーバランスを度外視しているカード達。
そっち側がその気ならばと上原達オカルト課が使った手段としては至ってシンプル、カードのインフレとデフレを無くすことだ。
世界で1枚しか無いカード達を刷る。特定の奴等が独占しているカードを刷る。レアカードとしての価値を一気に地の底へと落とした。互楽は一足早くに開封したパックから十二使徒のカードと黒の7つのエースモンスターが出てきて揃ったので引きつった笑みを浮かべる。
「アヒャヒャ……なるほどねぇ……面白い、いや、それはありだろう」
娯楽舎の大会に出ずにストレージでカードを探していた1人の男は笑った。
今、なにが起きているのかというのを直ぐに理解した。
「ホビーアニメにおいて厄介なインフレとデフレを取っ払う。高校生がアルバイトしたお金で世界大会に出場することが出来るレベルにまでカードの価値を暴落させる。そうすることでそのカードが起こす玩具常識改変力が大幅に弱体化する……この店には折節猛火しかスピリットモンスターズに選ばれた人間は居ない。スピリットモンスターズに選ばれてない人間が当たり前の如く選ばれた人間にしか使えないカードを使いまくる……恐ろしいね」
男は今回の騒動を終息するやり方を即座に分析した。
手に持っていたカードをストレージに戻せば娯楽舎から出てスマホを取り出した。
「WSRGの決勝戦、スピリットモンスターズの神の逆鱗に触れた事でスピリットモンスターズの神が降臨した。あの団体はそれらを封じ込めた……でも、出てきたのはスピリットモンスターズの神様だ。私が探しているものじゃない」
末広達が【原初の神 パンゲア】を逮捕している姿が映像として残っている。
謎の男が撮影したものであり、謎の男……いや、ナナシノゴンベエが探し求めているものじゃなかった。
「これで世界はおかしくならずに済んだ……だけど、私が望むものが出てこなかった……私が望む能力を持っている者、私が今すぐにでも会って殺したい者、どちらも居なかった……だがまぁ、これにて平穏を得られるのならばそれでいいだろう。平和はいいことだからね」