「株価が大暴落ですね」
オカルト課のパソコンでスピリットモンスターズ関係の事業に手を出している会社に株を見て俺は恵比寿様にそう言って。
「そらまぁ、儂らが本気で運気を下げたんやからな」
「でも、スピリットモンスターズに宿ってる不思議なパワーそのものは除去出来ていないのにどうしてスピリットモンスターズの力を落とせるんですか?」
スピリットモンスターズを1つのカードゲームと認識した。
世界の命運、会社の命運、そんな物を託す代理戦争で使われている道具でなく皆が金を出してでも遊びたいと思える普通のカードゲームになった。だが、スピリットモンスターズ自体に不思議な力が宿っている。恵比寿様達はそれの無力化は出来ないとは言っていた。
「なに、簡単や……皆がいい方向に向かおうとするから力が自然と弱まるんや」
「?」
「例えば朝のニュース番組の占いコーナーで水瓶座の人のラッキーアイテムが青いバンダナやとするやろ?極端な話で日本人の12分の1が水瓶座や。水瓶座の人全員が青いバンダナを持ったら全員が幸福になるわけやない。誰かの幸運は誰かの不幸によって成り立っとる。今回、世界に1枚しか無いカードを大量に刷ったおかげでカードに宿る不思議なパワーが分散された。玩具常識改変力は世界に1枚とか1つとかそういうののおかげで成り立っとる」
「なるほど……じゃあ、玩具常識改変罪の案件はもう終わりと思ってもいいのですね」
「いいとは思うで」
俺がWSRGの優勝賞品として願ったのはカードのインフレとデフレを無くすことだ。
WSRGは現在遊学社が認知しているカード、作った覚えの無いカード、スピリットバトラーによって創造されたカード等のデータを採取する為に行った部分もある。
「と言うか【原初の神 パンゲア】とか言うのはどういう風に裁かれるんや?」
「裁かれるというよりは封印されて冥界に沈められるとは聞いています……冬夏春秋さんはスピリットモンスターズの闇のバトルで起きた殺害事件等の事件簿データを渡したりしてメンタルカウンセリングを受けてもらっています。
【原初の神 パンゲア】を倒したところで殺したところで、スピリットモンスターズは既に完成されている。
スピリットモンスターズ関係で色々と被害を受けた人達の怨念が籠った呪術で精神汚染の拷問をするとかは聞いているが、内容が内容だけにあまり耳に入ってこない。
「明確に見える分かりやすい、コイツさえ倒せばいい悪人がおらんのはしんどいな」
「【原初の神 パンゲア】が諸悪の根源だったかと言われれば怪しいですからね……恵比寿様個人としては世界がホビーアニメみたいな世界になったらどうしてました?」
「ハッハッハ……まぁ、ふざけるなやな」
「ふざけるなですか、それはどうして」
「幕末と呼ばれる時代や第二次世界大戦とか色々と見てきたわ。そんでもってやっと平和が訪れた。確かに不景気続きで国同士の間ではギスギスしとる面はあるけど、平和になった時代に内戦ならともかく外部から揉め事を持ってくるなっちゅう話や」
やっとの思いで訪れた平和な時代をぶち壊す可能性をスピリットモンスターズは秘めている。
平和を望む恵比寿様にとってスピリットモンスターズは争いの火種になる存在だと認識していた。
「大体、ホビーアニメみたいな事になったら国がなんにも出来へん……オカルト課が手に入れた情報だけでも100件越えるのにそれ以上にスピリットモンスターズで悪行してたりする奴等が居る。ホビーアニメみたいな世界になったらなったで国もその辺を隠すんやなくてなんとかせなアカンで普通は」
まぁ、確かに世界の命運を掛けたりするタイプのホビーアニメは国がその玩具に対する司法とかそう言うのを整備せずに秘匿にしているのは多い。その玩具に纏わる秘伝の一族が情報を独占していたりは勿論のこと悪行を行った事についてなぁなぁで許されているところが多い。
「仮にそれが出来たとしても、スピリットモンスターズに選ばれた人間やないとどうにも出来へん。それは普通にアウトや。選ばれた者が世界を変える時代はもう終わった。選ばれてない人間でも考えて工夫して努力することでどうにかなるのが今の時代や」
「ホビーアニメ全否定ですか」
「と言うか世界で1枚しかないカードとかデッキに入ってない存在しないカードを使ってカードゲームやってて楽しいん?国の威信を賭ける為とか軍事目的なら専用機とか与えるのは分かるけれども、そうじゃないならゲームの意味があらへんやろ」
「また身も蓋もない話を……でも、そうですね。やる側なら楽しいですけどやられる側はクソゲーですよ」
世界で1枚しかないカードを使って最強だ!と威張るのは楽しいかと言われれば楽しい。
でも、ホントに楽しいのはその手のカードが大量に刷られたりして皆が当たり前の様に持っている修羅の国の様な環境がいい。
「某携帯獣対戦ゲームも伝説のモンスターを皆が当たり前の様に持っている。そういう修羅の国の環境だからこそ出来る面白いバトルとかの方が儂は面白いとは思うで。ストーリーモードのバトルよりも通信対戦の対人戦が本番やから」
言いたいことはわかる……コレに関しては理屈とかよりも感情論の方を優先しないといけない。
恵比寿様は缶コーヒーをプシュッと開けながらオカルト課のテレビを付けた。
『政府は高校の専門学科にスピリットモンスターズ科の創設について検討中でしたが、創設自体を白紙に戻すとのこと』
「お、噂をすればなんとやらや」
テレビではニュース速報が入っており、この前話題になったスピリットモンスターズ科の創設の話を無かったことにした。
恵比寿様はそれを聞けば無事に今回の玩具常識改変罪に関する事件が終息していっているなと笑みを浮かべた。
「ただいま戻りました……っと、恵比寿さまか……今回の玩具常識改変罪に協力していただきありがとうございます」
「なんや急に畏まって。別にええんや……それよか黒代、事件はもう終わりでええんやな?」
「後で詳細について書かれている報告書を……上原、どれぐらいだ?」
「今日中には仕上げれます」
コンビニに買い出しに行っていた黒代さんが戻ってきた。
スピリットモンスターズ科の創設の話自体が無くなったのを見たので黒代さんは恵比寿様に頭を下げ、恵比寿様は今回の事件はこれで終わりかの確認を取る。報告書は俺が書くことになっているので、さっき見たスピリットモンスターズ科の創設の話が無くなった事と既に起きたスピリットモンスターズに関する事件を今後どういう風に裁いて終わらせるのかを纏めれば報告書は完成する。
「そういや、末広はどうしたんや?」
「スーさんは有給休暇消費中です。残りの仕事内容的に俺に任せても問題は無いと判断して……このままだと労基的に色々と五月蝿いものでして」
この場には居ないスーさんを気にする恵比寿様。
スーさんは仕事が一段落したからと前から言っていた溜め込んでいる有給休暇の消費をしている。もう少し待ってくれないかと少しだけ思ったがこのままだと労働基準法とかが色々五月蝿くなるので龍一課長がさっさと使ってくれと有給休暇を取らせた。
「労基は守らなアカンからしゃあないわ」
「末広からなんか届い…………えぇ…………」
休みは取らないとダメ!と恵比寿様がうんうんと頷いていれば黒代さんのスマホのバイブ音が鳴り響いた。
スーさんからなにか送られてきたようで、内容を確認した黒代さんは困惑していた。
「どしたん?」
「末広の奴、仕事を増やしやがった……」
「えっ!?」
恵比寿様が黒代さんになにが困っているのかを聞けばスーさんが仕事を増やした事について呟いた。
いったいなにをしでかしたんだ!?と思えばスーさんと水着爆乳美女3人が写っている写真が送られてきており【これからエロく真面目な交際を始めたいと思います!】とメッセージも送られてきた……はて、この3人の美女、何処かで見たことがあるな。何処だったか?
「五鹿の奴が何処からどう見てもエッチなお姉さんなモンスターの研究をこっそりしてて、末広の奴が手を出しやがった……」
「あ、【豊穣の女神 デメテル】と【神を唸らす料理人 アンナ】と【異星の姫君 輝夜】の3枚……いや、3人?」
何処かで見たことがあると思えばオカルト課が確保していた霊が宿るカードのイラストの女性だ。
スピリットモンスターズの研究の過程でエッチなお姉さんの見た目をしているモンスターの研究もしている。
正確に言えばスピリットモンスターズに選ばれていない人間でもスピリットモンスターズに干渉する事が出来る研究であり、スーさんはその研究成果を利用して3人の女に手を出した。
「戸籍とか用意するにしても、まためんどうな……末広が帰ってきたら末広にやらせるか」
と言うか3股ですよね?
スーさんが増やした仕事はスーさんに解決させる……黒代さんは出来る限り早くに今回の一件に関する報告書を纏めろと言うので纏める事にしていくのだが途中で手が止まった。
「どうした?」
「今回の一件、過去に起きた玩具常識改変罪の対処法を真似て対処をしましたが……過去に起きた玩具常識改変罪を対処した人はスゴいですね」
「ああ、零時ね」
今回の一件は過去に起きた玩具常識改変罪の対処法を真似た。
過去に起きた玩具常識改変罪の対処をした人はなにを思ってインフレとデフレを無くせば玩具常識改変力や世界の変革が起きないと思ったのか……スゴいとしか言いようが無い。
「零時はスゴいって言うか、唯一の成功例だからな……他が出来損ないとも言えるけれども」
過去に起きた玩具常識改変罪を解決した人はスゴい。
素直にそう思えば龍一課長がなにかを思い出すかの様な顔をしている……龍一課長と黒代さん以外はオカルト課にちゃんと所属している人達にまともに会っていない。なんだったらスーさんがオカルト課の同僚で最初に会った人だったりする。
「その零時さんに今回の一件任せた方が良かったんじゃないんですか?」
「「…………」」
「俺に経験を積ませる為ですか?」
餅は餅屋に任せろと言うか、零時と言う人はオカルト課で色々な事件を解決している。
今回はスーさんが居てくれたから事件を解決することが出来たが零時さんの協力があればもっと効率の良い事件を解決する事が出来る……かもしれない。
その事について言えば黒代さんと龍一課長が黙った。
「零時はな……」
「なにかやらかしたんですか?」
「いや、やらかしたって言うよりはな……居なくなったんだ」
龍一課長が零時さんについてどういう風に応えればいいのかと悩んでいた。
なにか大きな事件でも巻き起こしたのか?と思ったが、そういうわけでもなく居なくなったと龍一課長は言った。
「オカルト課がブラックだから辞めたんですか」
「いや、そうじゃなくてホントにある日突然に居なくなったんだ……この件に関しては色々と調べてたりするけども不透明と言うかブラックボックスなところが多くてね」
「大凡の原因は読めてるんだがな」
居なくなった零時さんについて詳細が分かっていない。
龍一課長は調査中だと言葉を濁すが黒代さんは答えはなんとなくで読めている……なんだろうと気にはなったが仕事を放棄するわけにはいかない。報告書を纏めた。
「あ、もしもし鯨六……うん、うん……え、それって中学でやるんじゃないの?……いやまぁ、そうだけどさ……分かったよ。うん」
「課長、どうした?」
「来月に職場体験でオカルト課に鯨六のとこから2名の生徒が来る」
「おいおい、オカルト課はトライやる・ウィークする場所じゃねえだろ?」
報告書に不備が無いのかを確認していると龍一課長のスマホが鳴った。
鯨六さんからの電話でなにごとかと黒代さんが聞けばオカルト課に天之岩戸学園から2名の生徒が来ると言う話であり、黒代さんは呆れていた。
「トライやる・ウィーク?」
「兵庫県名物の中学生が職場体験すること……課長、断れねえんすか?……零時の一件で天之岩戸学園推薦枠無しにしよう!って鯨六は決めた筈だろう?」
「鯨六が押されまくってOK出したりしたらしいよ……向こうも色々と訳アリみたいだし……まぁ、鯨六のことだからクソみたいなのは送ってこないだろう」
来月に職場体験として天之岩戸学園から2名の学生が来ることが決まった。
また仕事が増えたなとは思いつつも報告書の不備は無いのか確認をした後に提出をした。
はい、と言うことでお前を玩具常識改変罪で逮捕する!は終わりです。
この後にスピリットモンスターズ協会は弱体化しスピリットモンスターズは世界中で流行ってるだけのカードゲームにランクダウンし、カードゲームで世界の命運を決めることなんかが起きなくなります。
次回のシリーズは
お前を無責任保護者罪で逮捕する!
です。