「おはようございまーす!」
「おはよう、ございます」
「就労体験だから印鑑を押すだけ押しといて」
零羅と彩理がオカルト課に就労体験に来て2日目、昨日は色々とあって言っていなかったが一応は就労体験なので出勤した証である印鑑を押してくれと黄坂さんが言った。本来ならばIDカードを読み込ませて勤怠の記録を付ける事になるのだが、就労体験なので印鑑だけで済ませている。
「あの子、誰?……物凄く、強い」
「いや〜それがさ、お前等帰った後にアポ無しで来てさ。なんか色々と訳アリみたいだから課長が部屋に泊まってけって泊めたんだ」
彩理が昨日やって来た中学生ぐらいの男の子について気付いたので聞いた。
スーさんがザックリと説明をしてくれたのだが……実のところ、俺達も困っている。具体的にはなにしに来たかまだなにも聞いていない。
「まぁ、オカルト課に駆け込んだって事はパターン、緑だと思うのだけれど……」
「パターン、緑?」
「レジェンド大戦後に作られたネオ六法全書に記された法律とかそういうので対処は出来る事件のことだ」
黄坂さんがオカルト課に駆け込んだのならばパターン、緑だと予測する。
オカルト課のパターンに関して知らない零羅に俺は緑のパターンについてざっくりと説明する。緑のパターンはオカルト関係の司法がアレだった為にレジェンド大戦以降に作られたネオ六法全書に記されている法律や行政の対応をすれば事件が解決するというパターンである。
「パターン、緑は……厄介。ロクな、話、じゃない」
「そうなの?」
「う、ん……私、パターン、緑で終わった……けど、物凄くうるさいのが、多かった」
「まぁ、緑はな……俺もパターン、緑で世話になった身だから痛感してるけどもホントにロクでもない事件が多いんだよな」
彩理はパターン、緑について知っているのかロクでもないと言った。
スーさんもパターン、緑はロクでもないとなにかを思い出したりしている。
「そんなにロクでもない事件が多いんですか?」
「パターン、緑の事件は昔ならば許されたが今の時代じゃ法に触れるとかがあってだな……今までがなぁなぁで許されていただけで、実際のところはアウトな事をアウトとか言ったりしているだけなんだが、それを受け入れるかとか色々と言ってくるのが多いらしい」
過去に見たパターン、緑の事件。
大体はネオ六法全書のもとで新しく作られた法律や規制に引っ掛かっていて、今まではよかったじゃないか!と言ってくる者が多い。今まではよかったかもしれないが、これからはアウトだと言っているのに場合によっては暴動を起こすレベルだ。
「はい、周りは殆ど成人したおっさん達だけど自己紹介、身分証明書は?」
「あ、はい。学生証でいいですか?」
オカルト課に駆け込んできた案件なので対応をしないといけない。
場合によっては他の現場で動いている人達やここに居る俺達で対応をすることになり、いったいなんなんだと思いながらも龍一課長が話をする……勝手に来た中学生ぐらいの子供はホントに中学生ぐらいの子供で、身分証明書の1つも確認していなかったっていいのか?
「福島県東会津中学……印鑑はあるから偽造じゃないな」
渡した身分証明書である学校の手帳をカメラでパシャリと撮影をする黒代さん。
早速スマホを取り出して中学の名前を検索するのだが見事にヒットし、その上で印鑑が押されているから偽造じゃないと分かった。
「改めて自己紹介を俺は
中学生もとい凪人が言ったのは父親との親子の縁を切りたいと言う結構どころかかなり物騒な話だった。
親子の縁を切りたいとはまた物騒な話だなと思っていると零羅が凪人に聞いた。
「行くところ、間違ってない?ここってオカルト関係の事件を処理する場所で親子の縁を切りたいなら、それこそ児童相談所じゃないの?」
「すみません……もしかしたらそうなのかもしれませんが、父親に無責任保護者罪が適用するんじゃないのかと思ってオカルト課に……オカルト関係の弁護士とかそういうのって何処に行けば会えるのかが分からなくてここしかないと思って来たんです。どう、説明したらいいんですかね……」
オカルト関係に強い弁護士!なんて全くと言って耳にしない。
何処に行けば会えるのかが分からず皆目見当がつかなかったのでオカルト課にやって来た……が……
「無責任保護者罪か……課長が出来そうなの少ないな」
「だろうな。だって、そういうのをする奴と縁を切る為に作られた法律だからな」
龍一課長は直ぐに自分じゃ上手く解決する事が出来ないと見抜いた。黒代さんも龍一課長じゃどうすることも出来ないと頷いた。
「無責任保護者罪って……名前からして保護者が無責任な事が罪に問われる感じだからますます児童相談所案件じゃないですか!?」
「そう思うだろう。だが、そう上手くいかないのが世の中だ」
無責任保護者罪に凪人の父親が該当するかもしれない。
名前的にもスゴく分かりやすい罪状で、保護者が無責任であり色々と問題を抱えており、それに対して色々と被害を受けた人達が摘発する事が多く、パターン、緑の事件でこの人は無責任保護者罪に適応するんじゃないんか!!と言うところからスタートするのが多いのが過去の報告書から分かる。
「取りあえず1から10まで嘘を交えずに教えてくれ……もし少しでも嘘が入ったり話を盛ったりしたら場合によっちゃ虚偽申告で裁判とかで不利になるからな」
「はい……俺は
「……また有名なのが出てきたな」
「うわぁ、これ多分同じタイプだわ」
凪人が拳藤頑強と言う人の息子と言われれば龍一課長は更に話がややこしくなったと困った。
スーさんは名前を出しただけでどういう感じなのか大凡の全貌を掴むことが出来たのだが俺や零羅達は分からない。黒代さんはパソコンを操作し何処かのサイトにアクセスをした。
「福島県辺りで流行っていた古武術の達人、特級武術家でレジェンド大戦にも出ていた」
「なんですか?この世界武術連盟って?」
拳藤頑強と思わしき人物の顔写真と少し細かなプロフィールが載っている謎のサイト。
世界武術連盟というなんともまぁ、色々と怪しげなサイトであった。思わず俺はツッコミを入れる。
「何処になにが出来る人物が居るという情報を今までガッタガタだったから整備したんだ。武術家だって今の時代そういう場所に登録しとかないとまともに活動する事が出来ねえ時代なんだよ」
「因みにだけど武術連盟以外にも武道連盟もあったりするわ……この2つは仲悪いわよ」
黒代さんが今はちゃんと色々と登録しとかないとダメな時代になったと言い、ついでにと黄坂さんは補足してくれる。
なんと言うか……逆に気になるな。法律規制されていなかった所謂あの頃的な時代が。
「それでお前は拳藤頑強の息子というわけで……まぁ、無責任保護者罪が適応する云々の話を聞いてくるからには色々とあるんだな?」
俺の質問が終わったので龍一課長は話を再開する。
「はい……オレ、物心ついた時から既に武術が当たり前だったんです。周りはサッカーとか野球とか塾とか行ってて……それで小学6年生の頃に進路はどうするのかって話になって今までどの進路を歩むか考えていなかったんですよ」
「進路を歩むかって、父親が物凄い武術家なら息子の貴方も物凄い武術家になるんじゃないの?」
「……零羅。後でちゃんと謝罪はしろ」
この案件がどういうのかは俺もなんとなくで読めた。
オカルト課の研修を受けていなければ零羅と同じ発言をしたと思う自分は大分、オカルト課に馴染んできたのかと思いながらも零羅に後で凪人に謝罪をする様には言っておいた。
「ふざけないでください!!誰が武術家なんてロクでもない仕事に就くんですか!少しは現実を見て言ってくださいよ!」
「な、なんでそこまで怒るの?」
「……零羅、が、悪い……」
「なんで!?」
今までは周りが大人だからと緊張していた凪人だったがここで大きく怒った。
怒られる事を言ったつもりじゃないのだが、かなり怒られる事を言ったのを彩理は直ぐに理解し零羅が悪いと言ったのだが零羅は理解が出来なかった。
「落ち着け。謝罪に関しても話は最後まで聞いてからだ……それで、将来の夢とかがどうとかでどうなんだ?」
「はい。自分で色々と考えたり友達とかはなにを目指してるのかを聞きました。野球選手とか動画配信者とか普通のサラリーマンとか……皆それぞれ夢に向かってて勉強したり努力したりしてるなって。それで俺もなにかないかなって考えたら、俺、魚が好きだって気付いたんです」
「それは食べる方で?コレクション要素として?」
「両方です」
零羅のリアクションを止めて龍一課長は話を再開させる。
将来の夢について考えた。その結果自分は魚が好きだと判明した。黒代さんが食べる方か研究者としてなのかを聞けば凪人は迷いなく両方と答えた。
「それで中学生になって将来の進路とか考え出して……まだ1年生ですけど、いい高校に入ろうとしてる奴はそこ目指して受験勉強をはじめてて。じゃあ、俺も将来に向けて魚関係の仕事に就きたいってなって色々と考えて外国に対して魚介類系飲食関係の仕事に就きたいなって少しずつ見えてきて。それで海洋系高校の食品加工科に進学したいなって……でも、父さんが大反対をしたんです。飲食関係はロクでもない世界だって」
「それ言い出すと大抵の業界はロクでもない世界だぞ」
「まぁ、そこは隣の芝が青く見えると思って割り切ったんですけど……でも俺、このままじゃダメなんだって、父さんみたいな武術家の道を歩むのは嫌だなって最近思いはじめて。そしたら段々と父さんが嫌な駄目人間に見えて来て、自分なりに調べたらあんまり保護者として良くない人でもしかしたらネオ六法全書に記されてる無責任保護者罪に該当するんじゃないのかなって……」
「……コレやっぱり児童相談所案件じゃないんですか?」
「いえ、コレは無責任保護者罪に該当する可能性が高いわね」
子供のやりたいことが見つかって将来の進路とか進学先を既に見据えている。
話を聞いた限りでは零羅は児童相談所に話を持ち込んでお互いに気持ちをぶつけ合って落ち着く様にしたらいいんじゃないのかなというもっともらしい考えを持ったのだが黄坂さんが無責任保護者罪に該当する可能性が高いと言う可能性があることを見抜いた。
「今のところ、親子喧嘩をしてるだけなんですけど」
「あのね、零羅……武術家ってさ……どうやってお金稼いでると思う?」
話を聞いた限りではお互いにすれ違っている親子関係!と言うなんとも言えない感じの話だ。
しかしこの業界に関して色々と足を踏み入れている者達ならば色々と裏に隠されているややこしい事情を知っている。
「武術家ってさ、格闘家と違って全然儲からないのよ。なんだったら武道家の方が儲かってるわ」
「……武術家と武道家と格闘家ってどう違うんです?」
「武道家は武術を学び心身共に鍛え上げて人生をエンジョイしようぜ!な考えを持ってる人達、その武道家達の中でMMAとかオリンピックとかプロレスとか総合格闘技とかに出てるのが格闘家。ここは枝分かれしているがスポーツとしての武芸を学んでいると思えばいい」
全然儲からないという生々しい話をすればそもそもで武道家、武術家、格闘家の違いが分からない零羅。
武道家と格闘家について語れば、問題はこの後だと俺は言っていいのかと考えたが言わなければ話が進まないので言うことにした。
「武術家はその名の通り武術を極めた人達の事を指しており、総合格闘技の世界で禁止だったりする技が当たり前の様に覚えている。スポーツとしてや健康の為の武芸でなく人を殺める正真正銘の本物の武術を極めている。戦闘能力で言えば武術家、武道家、格闘家であり武術家と格闘家の間には中々に越えられない壁が存在している……故に社会不適合者が多い」
「……どういうこと?」
「零羅、純粋な身体能力のみで岩や鉄骨を破壊する事は出来るか?」
「いやいや、無理!無理です!」
「そう、無理なんだ。だが、武術家達にとってそんなのは一発芸にもならない世界の話だ」
爆弾を使わなきゃ破壊出来ない様な大岩を正拳突き1つで破壊する。巨大な鉄骨をテコの原理なんかを利用せず純粋な力で、くの字に曲げる。武術家達はそれを当たり前の如くこなすことが出来る世界の住人だ。
「スポーツとして成立した格闘技でなく人を如何にして倒すのかを突き詰めた武術を極めた人達、普段は何をしているかと言えば修行よ」
「え?」
「朝の5時ぐらいに起きては走り込んだりしてハードな修行を行う……もう1度聞くけれども、武術家ってどういう風に生計を立ててると思う?」
「武術を使って生計を……あ、でも今は新選組みたいな集団は聞いたことが無いし。なにをしてるんです?」
「答えだけ言えば殺し屋と殺し屋のターゲットになった要人の護衛、割合的に言えば殺し屋が8、要人の護衛が2ね」
「殺し屋、多い……」
黄坂さんは零羅に改めて武術家はどういう風に生計を立てているのかを聞いた。
武術を用いてお金を稼いでいるのかと考えたが、一応はこの業界に足を踏み入れているのでそれこそ幕末最強の剣客集団である新選組の様な最強の戦闘集団の様な話を聞いた覚えはなかった。黄坂さんは答えをハッキリと言った。
「武術はあくまでも人を殺す為の技術を如何にして追求したかのもの。勿論、活人拳と言う考えもある……でも、それでお金は稼げないのよ!」
「こう、違法賭博の地下格闘技とかそういうのは?」
「その辺は探せば実在はしているけど壁を越えた武術家達は基本的には出入禁止!で、最終的に行き着くところが殺し屋かボディガードの2つよ」
武術家達は朝から晩まで汗水を流して修行をしている。
それはとても努力をしていると言えるのだが肝心の発揮をする場所が殺し屋かボディガードの二択であり、殺し屋業界の方が需要がありまくる。
「父さんは殺人拳じゃなくて活人拳の方なのですが、なにせ日本なので大抵の武術が出来て大抵の武術の特級武術家が居るので武術飽和状態でして……相手側が雇った殺し屋が特級武術家とか国家に携わる話じゃないと仕事が来ないんですよ。因みにコレが去年の父さんの年収です」
「コレで子育ては洒落にならん!」
凪人が持ってきた拳藤頑強の去年の年収が書かれた税金とかの申請の紙をコピーした物を置いた。
経理担当の黒代さんはその数字を見て一瞬で子育ては洒落にならないと、出来る経済事情じゃないと見抜いた。
「そもそもで俺が魚好きになった理由も、食費を1円でも浮かす為に魚を釣っていたからで……」
「あの、武術家達ってこんな低所得が当たり前なんですか?」
「大体は一緒だ。酷いとこだともっと酷い」
「政府の偉い人の護衛とかならもっと儲からないんですか!?」
「それが……この国ってさ、アレが居るからさ……そっちの方に依頼した方が確実で足元見られやすい」
「アレってなんですか!?」
「忍者」
あまりの低所得に驚く零羅。
政府の偉い人の護衛とかならもっとお金を貰ってもおかしくないと考える。その考えは間違いじゃないが、スーさんが別の奴等に客が取られてるから無理という厳しい現実を突きつける。
「忍者って居るんだ……」
忍者は既に絶滅したものだと思っていたのか驚く零羅。
伊賀とかに行けば忍者っぽいことをしている奴等は居るが諜報活動員としての忍者は早々に見かけない……まぁ、某漫画のせいで忍者に対するイメージがおかしくはなっているが。
「戦闘能力だけを見れば武術家の方が遥かに上だ。でも、忍者は他の技能も会得している。現代に合わせて常にバージョンアップをしている。今じゃコンビニのレジ打ちからクレーン車の操縦方法まで色々な技能を持っている。色々な事件に万能に対応出来る忍者の方が需要があって……まぁ、結論だけを言えば、武術家って物凄く儲からなくてその上で親が武術家の場合、親として子供を育てる為のお金を積極的に稼がずに子供にマンツーマンで自分が会得した武術を伝授させようとする親として立派なのかそれとも毒親なのか怪しいラインのところにあるわけよ…………」
凪人は将来の進路とか夢とかを見据えている。
頑強さんは武術家としては一流なのかもしれないがお父さんとして親として下手したら大失格なところに立っている。
色々と厳しい話だと語ったスーさんは遠い目をしている。
「父さんの収入とか普段なにをしているとか、そういうのを色々と記録してまして……無責任保護者罪は適応しますか?」
「ごめん。この一件、課長の出番は殆ど無いわ。八兎くんとか猿七とかが動くタイプの仕事……そもそもで無責任保護者罪ってこういう時に使うものじゃないから」
無責任保護者罪が主に適応されるのは人間と人間以外が結婚し親になった時とかだ。
ゲームとか創作でよくある異種族同士の禁断の愛とかそういうのを貫いた結果生まれた子供は親は生まれてきたことに祝福しても世間は一切祝福してくれない。こういうことを言えば多方面に喧嘩を売ることになるが子供を育ててもいい、産んでも問題無い生活環境を整えてからじゃないと子供は作ってはいけない。性行為が楽しいとかそういうのを思うのは別に構わないが、子供を作るとなれば話はまた別になる。
人として立派なのか武術家として立派なのか親として立派なのかはまた色々と話が異なり、大抵は親としてロクでなしなので養育費を毟り取り顔合わせをしない裁判が巻き起こる。
「中学生になってもスマホを持たせてないとかお小遣いを渡していないとか普段は武術の修行に励んで就職活動も国家資格の勉強もしてない、自分は趣味の物を購入している、道場を開いて門下生を募ることをしてないとかで証拠は色々と揃ってはいるし本人も色々と悩んだ末に自分の父親を無責任保護者罪でなんとか裁いてくれないかって頼みに来てるから……上原、末広、黄坂、零羅、彩理。お前達がこの事件を担当しろ」
「了解です」
龍一課長は凪人の父親を無責任保護者罪で裁いて欲しいと言う願いを聞いた。
この仕事を俺達5人に任せると言う……後は裁判を起こせば終わりに見えるがパターン、緑の事件はここからがやっと本番になる。