お前を無責任保護者罪で逮捕する!   作:アルピ交通事務局

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殺っている実感が無い

 

「では、授業を終わります」

 

 色々とあったものの、今のところは激しい非日常が……あるのかないのかが分からない。

 黒原カジツは丸坊主になった。リンクも水堂輪駆と言う人間の姿の時は丸坊主の頭になっている……噂好きの女子中学生がなにを言い出すのかが分かったものではない。しかしそれらの噂の火消しは一切しない……まだデキていると言う関係性の噂だけでマシだろう。

 

「上原さん……今後はどうすればいいのでしょうか?」

 

「……現在、お前達の力を解析中だ。俺は技術者ではないからなんとも言えないが1日や2日でどうにかなるものではない、そう上からは言われている。既存の技術でアル大臣やコールを倒せない」

 

「そのっ……色々と」

 

「焦るな、勘違いをするな」

 

「え?」

 

 生徒会室で未来月が今後どの様に動けばいいのかを考えているのだが、ハッキリと言って焦っている。そして勘違いをしている。

 おそらくは自分で戦うという決意を自分の本心として思っている……だが、それは焦りの証拠と勘違いの証だろう。

 

「自らの意思でなく、そういう状況に陥って追い詰められているからだ……お前にはもっとやりたいことがあるだろう?」

 

「それは……あります」

 

「危機的状況に追い詰められ危機的状況を脱する特別な力を持っている。だからその力を行使しよう、それは力に溺れるでなく力を勘違いする人間の典型的な一例だ……下手したら1年単位で戦争をしないといけない。この受験勉強の追い込みをしている季節にそれを強要する程に愚かな大人ではない……と言いたいんだがな……」

 

 俺自身の固有の能力がなんなのかが分からない。

 龍一課長の様な恐ろしい能力が発現するかと2週間の研修で色々と模索していたのだが結果が出なかった。原種の日本人、いや、人間の原型(アーキタイプ)ではよくあることの様でなにかしらのキッカケが無ければ発動しない事も多々ある。

 もしかするとその能力が敵を倒すのに使える可能性を秘めているかもしれないが、なにも発動しない。

 

「私や黒原さんが倒さないといけない、ですか?」

 

「出来ればそれを避けたい。黒原は既に狂っているが、お前はまだ狂っていない」

 

「だったら、当初の予定通り伝説のミックスジュースを作る乙女探しを続けませんか?……今のところ、アル大臣を倒すことが出来る手段はそれだけです」

 

「……その事についてだが、一応は考えていた事だ」

 

 俺達オカルト課の人間がアル大臣を倒すのは所謂裏口、正規の手段ではない。

 伝説のミックスジュースを作ることが出来る乙女達の力で伝説のミックスジュースを作る、そしてその伝説のミックスジュースをソフト王国の王族が飲むことで奇跡を起こす力を得ることが出来る。

 水堂輪駆は奇跡を起こす力を得るために伝説のミックスジュースを作る事が出来る伝説のミックスジュースの原材料を生み出す乙女達を探している……改めて思うがホントにニチアサキッズタイムみたいな状況だな。

 

「でしたら」

 

「だが、出来ればそれはしたくはない……それは場合によっては開祖強要罪と言う罪に当たる」

 

「開祖強要罪?」

 

「魔法使いや呪術師の才能を持っているがそういう家系では無い、もしくは何処かの段階で途絶えた家系がある。この業界は常に人手不足だ。だから才能がある人間を追い詰めてそれっぽい状況や甘い言葉を使い才能を無理矢理開花させてこの業界に無理矢理押し込む……それが開祖強要罪だ」

 

「聞いたことがない法律ですね」

 

「この手の法律は新山八兎(にいやまやと)と言う法務部の人間が色々と審議し、作っているらしい」

 

 俺は弁護士ではないので法律がどういうものなのかを理解するぐらいだが、十勇士の1人が法律を作っている。開祖強要罪は割とこの業界では見られる事案らしく、昨年22人ぐらいこの罪で逮捕されていて今は黄泉比良坂にある刑務所に投獄されていて……普通の人間になる様にさせられている。

 

「伝説のミックスジュースを作る乙女探しは続行だ……ただし、作るだけで戦うことをさせるな」

 

「……分かった……」

 

「……はい……」

 

 丸坊主にされた黒原カジツと水堂輪駆を呼び出した。

 当人の本来の目的である伝説のミックスジュースを作ることに関して許可を出した。許可が貰えた事を喜ぶ、と思ったが苦々しい顔でこちらを見つめる。お前達さえ居なければもっと簡単にもっと早くに見つけることが出来ていた、こんな目に遭わなくて済んでいた……外患誘致罪と言う立派な犯罪行為なのになにを恨むのか。

 

「伝説のミックスジュースを作るのに必要な乙女は4人。夢が宿る果実、コレはカジツ。叡智のミルク、コレは未来月……残りは慈愛の蜜ともう1つ…………4つ目が謎なんだ」

 

「ミックスジュースを作るのだからそこから連想すればいいだけの話だ……果物(くだもの)、牛乳、蜂蜜……」

 

 伝説のミックスジュースを作るのに必要な乙女は4人。

 4人目の情報について輪駆は知らない……知らないのにそれに賭けると言うのはなんというか計画性が無い。ミックスジュースを作るのに必要な物から連想すべきだと考える。果物、牛乳、蜂蜜……基本的にはミックスジュースを作る上でこの3つだろう。

 他になにがあるのかが分かったものではない……しいて言うのならば香辛料だろうか?

 

「じゃあ、まずは慈愛の蜜を探しましょう!」

 

「慈愛の蜜……慈愛……愛か……保健委員会の羽仁滴(はにしずく)とかかしら?」

 

 4人目が誰かが分からないが3人目の条件は分かっている。

 慈愛を持った人と言われ、未来月が真っ先に浮かんだのは1年A組の保健委員会の羽仁未森だった。

 

「何故、そいつが?」

 

「誰よりも優しく将来は動物福祉に関する仕事をしたいと種族に関係無く接する心を持っています」

 

「…………他が思い浮かばないのならば、先ずは行ってみるか」

 

 生徒会室を後にし、羽仁滴が居る保健室に向かった。

 

「あ、上原さん。輪駆さん。未来月会長、黒原さん……どうなさいましたか?」

 

「…………何処から話せばいいのか……」

 

 保健室で絆創膏等の道具を整理している滴が居た。

 どうしてここに来たのか?と聞いてくるので、何処から話せばいいのかを考えた……異世界から来た人間や魔法や神様はホントに存在していると言って信じたものか?……そう思えば例の上司がいきなりの明日から来なくていい発言も納得はいかないが理解も出来る。

 

「色々と考えても意味は無いです……ミキサーブレンド」

 

「ふぇ!?」

 

 どういう風に説明すべきかを考えていれば、唐突に変身をする未来月。

 急に未来月が輝き出したので滴が驚いているのだがそんな滴を無視して変身を終了し名乗りを上げる。

 

「叡智のミルク!ラテ!」

 

「わ〜スゴい!……会長、プリ◯ュアだったんですね!」

 

「……飲み込みが早いな……」

 

「私、そういうのを信じてるタイプなんです!SF大好きなんです!!なんでしたらお小遣いを使って大人向けの変身ベルトとか購入してるんです!」

 

 ラテに変身した未来月を見て拍手を送る滴。

 ◯リキュアと言われるとどうにも気が抜けてしまうのだが、飲み込みが早いならば早いでそれはありがたい。

 大人向けの変身ベルトを購入しているとは結構なガチ勢だなと思いながらも伝説のミックスジュースを作る乙女を探していると色々と掻い摘んで説明をする。プリ◯◯アで通じるから大凡は理解してくれており、何処からともなくブレスレットが出現し、滴の左腕に装備された…………展開が早いがメンバーが揃うまでは一瞬だったりするからそれはそれでベタなのだろう。

 

「ミキサーブレンド!」

 

 ブレスレットを掲げてそう叫ぶ滴。

 カジツのコーク、未来月のラテ、それに似ている姿に変身をし名乗りを上げる。

 

「慈愛の蜜!ルミエル!」

 

 コーク、ラテ、ルミエル……伝説のミックスジュースを作るのに必要なのは後1人だ。

 最後に必要な物を持っている人間が誰なのかが分からないが、少なくとも3人が揃った。

 

「ものは試しに命の盃にミックスジュースを作ってみたらどうだ?」

 

 蜜に果物にミルク、ミックスジュースを作る上で必要な3つの素材は揃っている。

 命の盃にミックスジュースを作ったら案外、伝説のミックスジュースとは異なるがそれはそれで力を持っている物が出来るかもしれない。

 

「伝説のミックスジュースは4人が居ないと作れない!後、材料が1つ必要なんだ!」

 

「その最後の材料ってなんですか?」

 

「それは……分からない……」

 

「じゃあ、試しに作ってみましょう!私達なら出来るから」

 

 最後の材料が無ければ伝説のミックスジュースを作ることが出来ないと主張する輪駆。

 最後の材料がなんなのかを聞けば輪駆はわからないと俯いたのでカジツが試しにと言った……伝説通りに作り上げなければおそらくは伝説のミックスジュースは出来ない……しかし、今の段階でミックスジュースを作るのに必要な材料は全てではないが揃っている。

 あまり乗り気ではないが、輪駆は命の盃と思わしき盃を取り出しマスコットの様な見た目になり盃を掲げた。

 

「皆のそれぞれの思いを1つに纏めるんだ!そうすればミックスジュースが作れる」

 

 コーク、ラテ、ルミエルの3人に盃に向かって手を翳させる。

 ミックスジュースに必要である果汁と果肉をコーク、ミルクをラテ、蜜がルミエルが作り出した……命の盃は渦を発生させる。

 3つの液体と果肉が混じり合う……そしてありえないだろうと虹色の液体が生まれた。

 

「せ、成功したの!?」

 

 ものは試しでやってみようと試みた結果、なんだかそれっぽいのが生まれた。コークはその事を驚いた。

 伝説では4人の乙女達の力を借りなければ作ることが出来ないミックスジュースだが

 

「うっ!?」

 

「ど、どう?」

 

 輪駆が飲めば顔を青くした。

 虹色に輝くドリンクなんてカラフルな着色料を使っているアメリカでも早々に見ない。輪駆は飲み込んだが首を横に振ってプルプルと震えている。どういうことかとコークがミックスジュースを口にした……が、直ぐに嫌そうな顔をした。

 

「なにこれ、めっちゃ甘ったるい……なんなの?ミックスジュースって甘いのは分かるけど、こんなに甘いもの?」

 

「……乳酸菌飲料の原液みたいね……」

 

 コークは出来たミックスジュースの感想を述べる。試しにラテもミックスジュースを飲んでみるのだが、乳酸菌飲料の原液を飲んでいて胸焼けしそうだった。ルミエルも飲んでみようと飲むのだが直ぐに気持ち悪そうな顔をしており自前の水筒に入っている飲み物を飲んだ。

 

「な、なんで?なんでこんなに甘いの?」

 

「伝説のミックスジュースに必要な材料が欠けているからだよ!……最後の1つ、それさえ分かれば………っ!!」

 

 ルミエルも甘ったるくて嫌になると思い、疑問を抱けば輪駆が伝説のミックスジュースに必要な材料が欠けているからと原因を語る。

 やはり伝説のミックスジュースを作るのに必要な材料はしっかりと揃えなければならないのかと考えていれば輪駆は反応した。何事かと思えば保健室のドアを開いた……保健室の外は上履きがある下駄箱がある……筈だったがなにも無かった。俺達がここに入る前とは明らかに別の場所に出た。

 

「コールだ!コールが命の盃を奪いにやってきたんだ!」

 

「え、コールが?……ヴァッティングはオカルト課が捕まえたんじゃないの?」

 

 アル大臣から送り込まれた刺客、コールが学校の空間を弄くった。

 コールが命の盃を奪いに来た事を大声で叫ぶ輪駆だが、コールの刺客を送り込んでくるヴァッティングはオカルト課が捕まえており、現在は研究所で実験をしている……どうすればアル大臣達を殺すことが出来るのかの人体実験を。再生とかして蘇らない様に魂レベルで消すのに必死なのだが上手く行かず、今のところは逆さ吊りにして2分間顔を水の中に沈める拷問をしてアル大臣がこの国の何処に潜んでいるのか白状した。司法取引?……アル大臣が完全にこの世界に関与しないと言ってくるのならばしているだろう。

 

「龍一課長に連絡……は、出来ないか」

 

 通信霊術を使ってみるが龍一課長に反応は無い。

 龍一課長が眠っているなんて事はありえない、あの人はこういう時に現れて戦って勝利するのが仕事だ。

 なにか手段はないのかと考えるのだが、コークが勝手に歩き出す。

 

「おい、なにをしている」

 

「保健室に引きこもってもしょうがないわ!リンクが感じたならコールはホントに来ている……コールはリンクから命の盃を奪おうとする。だから倒さないと!」

 

「…………」

 

 この女、変身後の姿もまた丸坊主になっているのにそんな事を言えるのは反省らしい反省をしていないからか?

 文字通り痛い目に遭わなければ反省しなかったり、自分達が正義の味方か何かだと勘違いしている……両者だろう。

 

「上原さん、コークは」

 

「……おそらくは実感が無いのだろう」

 

 命を奪っているだなんだと言われたのにも関わらず前向きになっている。

 ラテがなんにも考えていない感じがしており、その事を俺に聞いてくるので色々と考え……実感が湧いていない、実感が無い、それがコークの身に起きている悲劇だろう。

 

「実感が無いってどういうこと?」

 

「例えば蚊やゴキブリが居たとして、そいつを居るだけで殺す……それはこの国の人間ならば最低でも1回は通る道だ。そしてその事に関して罪悪感らしい罪悪感を抱かない。それに似ている……自分が倒すという都合の良い言葉と流血しない相手だったせいで余計にコークの中の倫理観を狂わせている」

 

「あ〜そういう感じ」

 

 ルミエルが実感が無いという事について聞いてくるので分かりやすい例えが浮かんだので答える。

 それを一瞬で理解するルミエルはSFに対して物凄く強いなと思いながらもどういう風に動くのかを考えた……本来であればコークを見捨てるのが一番だろうが今のところはアル大臣を倒すことが出来るのは伝説のミックスジュースを飲んだソフト王国の王族だけだ。

 それ以外の方法を模索しているところだが見つからない以上はそれに縋るしかない……

 

「仕方がない、行くぞ」

 

 俺がそう言い全員が保健室を出た。保健室のドアを閉めると……保健室のドアが消えて保健室が消えた。

 どうやらコール側はこちらを逃がすことをしない。命の盃を奪う為に本気になっている。

 

「こう、強敵が現れそうな雰囲気!スゴくいい!」

 

「ルミエル、コレはプ◯キュアじゃなくて現実よ?」

 

「でも、プリキュ◯みたいな事が起きているからスゴいよね!」

 

 ここから物凄い強敵が現れるとワクワクをしているルミエル。

 ラテが現実であることを指摘するが、それでも面白いことが起きようとしていると目をキラキラと輝かせている。

 慈愛の蜜だから慈愛が深い女の子かと思ったが、フィクションに対して強い憧れを抱いている……研修でこの業界について話を聞いたがあまり良いものでなくロクでナシの方が多い業界……多分それを聞いてもテンプレ!と言うのだろうな。

 

「うっ……なんか……ゾワッとするわね……」

 

「……そうか?」

 

「ええ、ゾワッとします」

 

「上原さん、感じないの?」

 

 奥に進み明らかに学校の敷地よりも広い所に出たのだがコーク達が顔色を悪くする。

 なにか嫌なものを感じ取っているみたいだが、俺はなんにも感じない。ラテもルミエルも感じている。輪駆も感じている。

 

「上原は普通の人間だからコレは感じないよ」

 

「……」

 

 輪駆がなにも感じないのは当然と言ってくるが、いったいなにを感じているのだろうか?

 呪力、霊力、魔力、氣、この4つの力を使って探知しても全くと言って探知することが出来ない……コーク達が使っている力は文字通り異世界の力で概念が違うから感知そのものが不可能なのだろう。

 

「現れたわね……って、なんか部外者が居るじゃない?」

 

「……誰だ?」

 

「……誰、なんだろう……あんな子、見たことがないよ」

 

 なにも感じないまま奥に辿り着けばコーク達と同じ年頃の女の子が居た。

 コールの刺客を送ってくる幹部のヴァッティングをオカルト課は捕まえているから新しいコールの刺客、怪人を送り込んでくる者だろう。

 

「私の名はグラス……ヴァッティングを倒したのは中々だけれど、貴女達の野望は潰えたわ!!」

 

「それはどういう意味だ!!」

 

「決まってるじゃない……私が伝説のミックスジュースを作る最後の材料を生み出す乙女だからよ!!」

 

「なっ!?なんだって!?」

 

「成る程……確かにそれならば無理か」

 

 伝説のミックスジュースを作るのに必要な伝説の乙女、後1人が分からないままだったが4人目が現れた……敵としてだ。

 4人居る伝説のミックスジュースを作るのに必要な乙女の内の1人でも支配下に置いておけば絶対に作ることが出来ない。意外と考えられているな。

 

「そんなバカな!」

 

「バカじゃないわよ、アル大臣はソフト王国の一割を私にくれるって言ったわ!」

 

「伝説の乙女が金や権力に屈するのか!そんな筈は」

 

「はぁ…………何もかもに恵まれた人はこれだから嫌なのよ」

 

 伝説の乙女はソフト王国の王族に力を貸してもアル大臣に力を貸さない。金や権力に負けるわけがない。

 そういう風に否定をしようとする輪駆だったがグラスは冷たい目で蔑む様に見つめてため息を吐いた。

 

「愛だ優しさだなんだと言っているけれど、そんなものよりお金でしょ?」

 

「お金よりも大事な事があるのを君は知らないのか!?」

 

「そんなことを言えるのは金のある奴だけ……よく言うじゃない、金で幸福は買えないって……じゃあ、幸福はなにで買えるの?愛?……愛を育むのにも、貴女達の様に立派な学校に通うのにもお金が必要なのよ!幸福はお金を使えば作れる!」

 

「そんなの偽りよ!」

 

「いや、事実だ」

 

 金に目が眩んでアル大臣に加担しているグラス。

 金より大事な物があると言いたい輪駆やそんな幸せは偽りなのを主張するコーク。しかしそれは間違いだと俺は否定せずに頷いた。

 

「あら、意外と話が分かるじゃない」

 

「上原さん、なんで……」

 

「ならば聞くが、お金はなんの為にある?」

 

 普通は金以上の物が存在している等の精神論で行くだろうが俺は否定せずに頷いた。

 輪駆がなんでそんな事を言えるのかと聞いてくるが逆に聞き返す。お金はなんの為にあるのかを。

 

「人にとってはただの古い壺でも見る人によっては最高級の壺に見える……物の価値を決める為にお金はあるんだ。お金が無ければ世の中は動かない……それこそお前の国はアンパ◯マンの様にお金の概念が無い世界か?」

 

「そ、それは……」

 

「お金で幸せは買えるし幸せな時間を作れる……ただしイケメンに限ると同じでただしお金を持っている、金を持っているが前提だ……お前は経済的な面で苦労したことが無いから綺麗事をほざける」

 

「……上原さんはあるんですか?」

 

「慶應義塾大学に通う為の奨学金の借金を180万円ほど残している」

 

 オカルト課に1年も居れば借金は消せるらしいがそれでも慶應義塾大学に通う為に借りていた180万の奨学金の借金が残っている。

 それを聞いてなにも言えなくなる……俺の経歴も金で成り立っている。だから金に対してああだこうだ言ってはいけない。

 

「貴方もお金で困ってるのならば融通してあげようかしら?……アル大臣、太っ腹でさぁ!」

 

「残念だが、ちゃんと返せる様に働いている……オカルト課は給料の面だけは確かだ」

 

 俺はそう言うと拳銃を取り出した。

 アル大臣の勧誘は嬉しいが、国を裏切るわけにはいかないし、給料の面だけはしっかりとしている。

 

「アハハハハ!!そんな物で私を倒そうっての?無理無理」

 

「……それはどうかな?」

 

 俺は拳銃の引き金を引いた。

 バン!と言う音はしたが拳銃から弾丸は飛び出なかった……が、グラスの肩から真っ赤な血が流れた。

 

「ッグアアアアア!?痛い!痛い!痛い!痛い!なんで!?なんでなの!?」

 

「お前はアル大臣から送り込まれた刺客であって、ソフト王国側の住人ではない。多少の改造を受けたとしても、こちらの世界の住人だ……こちらの世界の住人ならばこちらの世界のルールでどうにか出来る」

 

「弾は飛んでないじゃない!」

 

「コレは破邪の弓矢を銃に改造した物だ……今のお前は邪気を退ける浄化の力を持つ弾に撃ち抜かれた……邪悪な存在だ……」

 

 俺はそう言いながらも1発、2発と破邪の浄弾を撃ち込む。

 ポタポタと流血をし叫ぶグラス……普通であれば、この破邪の弾丸は人間には通じない。普通ならばだ。

 何かしらの形で呪力が良くない邪な方向に流れていき、所謂怨霊に近い存在になりかけている人間ならばダメージはある……グラスは人間に見えているだろうが人間ではないなにかになりかけている。

 

「あ、ああ、あの、上原さん、もう、もういいです」

 

「安心しろ、殺しはしない……コイツはコイツで被害者だし…………コレで遠慮無くアル大臣を殺す理由が生まれた」

 

 ニチアサキッズタイムみたいな状況だ!と喜んでいたルミエルですら顔を青くしている。

 実際に流血する姿を見たのならば現実を見るだろう。だが、俺は殺しはしない。グラスはこちらの世界の人間なので俺の独断では裁けないし、話を聞く限りでは経済的な面で支援する等の甘い言葉を使ってアル大臣が誘惑した。アル大臣は外患誘致罪だけでなく経済脅迫罪も適用される。アル大臣を殺す理由をしっかりと作ることが出来た。

 

「グラス、この異空間を解除しろ……」

 

「っひ、ひぃ!?」

 

「解除しろと言っている」

 

「は、はい」

 

 異空間を解除しろと命じれば異空間を元に戻した。

 元の空間に戻ったのだから拳銃はまずいなと即座に懐のホルスターに戻して手錠を取り出した。

 

「グラス、お前を経済脅迫罪の被害者及び加害者として逮捕する」

 

 グラスに対して手錠を付けた。

 直ぐに龍一課長に連絡を入れて迎えに来るように頼み迎えに来てもらうまでの間に回復魔術を使いグラスの傷を治した。

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