戦姫絶唱シンフォギア feat.ワイルドアームズ   作:ルシエド

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後書き、雑記、設定、余談

 余分な話を書いていきます。

 読まなくても全然構わない系の話です。

 全話読んだ前提の話ですので、『小説は後書きから読む』タイプの方はネタバレ注意報!

 

 

 

 

 

■ゼファー・ウィンチェスター

 一番最初に決めた要素は『Mr.ワイルドアームズ』でした。

 つまりシンフォギア要素を極力残しつつ、ワイルドアームズの人間の生き方、ワイルドアームズで示された正しさ、ワイルドアームズの名言などを言ってくれるキャラにしたかったのです。

 

 アガートラームでウィンチェスターなアシュレー、「絶対に絶対」のセシリア、作られた命のロディ、英雄になった後の男であるブラッド、生け贄としてのティム、生きたいという意志と世界を守りたいという板挟みのアナスタシア、最悪の滅びを見たがためにこの世界に光があると信じたいと思い美しいものを探したラクウェル、"民衆の求めるものを突き付けられた男"としてのラムダ、ジャベリンを駆るクルースニク、ハウザーやウェルナーといった"かつて生きた人間の残滓"、不器用ながらもやるべきことをやるフィアース、ジュードやレヴィンなどの発展途上の少年感、道具として扱われた人間を人間と呼び意志のある人間を尊重したログナー、希望の守護獣ゼファー……などなど。

 他にも色々あるのですが、ワイルドアームズ要素を一つ一つパーツに見立てて、一人の人間を組み上げる形でゼファー・ウィンチェスターという人間は作られました。

 ちなみに、彼に使われなかった分は外伝の方の主人公に流し込まれていたりします。

 

 強さ描写の根幹はしぶとさ。

 直感、再生、反応速度、鎧の頑丈さなどなど、しぶとさをとことん詰め込みました。

 結果、戦闘開始と同時にガンガン攻めて圧倒して蹂躙することができず、敵にボコボコにされて敵の強さを引き立てながら、粘りに粘って最後に勝つタイプのキャラが出来上がりました。

 プロレスラーみたいだぁ……(他人事)

 自分は例えば二つの作品をクロスさせて作品を書く時、弱い方の世界の方が輝かせやすいと思います。個人的にそう思う、というだけの話ですが。

 諦めないキャラの心の強さ、劣勢からの逆転、弱者の機転による勝利……と物語を彩れる絵の具がとても多くて、弱さが逆に武器になってるんですね。

 

 ゼファー君を地球全ての人間に託される英雄とすることを決めた時点で、ちょっと悩ましい事柄がありました。

 そんな人間どう描写すりゃええねん、という話です。

 設定だけ見せて『こんな人間なら世界中の人間に託されるな』と思われるような人間が居るわけありません。そんな設定が作れる人が居るなら、すぐにでもプロになっているでしょう。

 必要なのは納得です。

 読者さんに「この主人公であれば世界の命運を託されてもおかしくない」と納得してもらえる、そんな主人公です。

 

 なので成長型の主人公にしました。

 心が弱く、勇気も希望も愛も欲望もない、力もないのがスタートラインです。

 ここから少しづつ成長させて、読者の皆様に『こんな人間なら世界中の人間に託されるな』と自然に思ってもらえる、そんな人間に育てました。

 最初から心が強いという設定を持っている人間ではなく、心が強くなっていく過程を書いて、皆様に気付かれないよう『納得力』みたいなものを仕込んでいったのです。

 「何こいつ偉そうに世界の代表者気取りかよ」という反応が最悪で、「頑張れ! 世界を救え!」という反応が理想でした。

 皆様の良心が伝わってくるようで、想像以上に良い結果になったと思っています。

 

 ゼファー君は都合のいい英雄です。

 求めれば頑張ってくれます。願えば応えてくれます。祈れば聞き届けてくれます。

 そして人々が彼に無制限に求めると、必ず魔神との戦いに負けるようになっています。

 そういう意味では、世界中の人の在り方の反映みたいなものなのかもしれませんね。

 

 

 

■立花響

 原作主人公。

 扱いを悪くしたくないと思うと、中々に苦心するタイプの子でした。

 原作でクリスちゃんの死に暴走したり、翼さんの死に絶望して思考停止したり、未来さんの喪失に泣いていた部分を少し拡大した、自殺衝動の無いビッキーさんです。

 原作と比較した場合、おそらく装者の中で一番人間的に変化した子であると思います。

 能力は原作の力を解釈した、共存させ、共に在り、受け入れ、自分の力とするもの。プロットで予定していた部分をGXで出た設定が上手く補完してくれました。

 特にきりしら絶唱への対処、70億の絶唱に加え、キャロルの力を受け止めて吸収・仲間に配分するという技はとても参考になりました。

 

 響が武器を持たないのは、人と手を繋ぐため、そしてその手の武器で誰かを傷付けることを恐れているため。ならば手を繋がなくとも他者に干渉する、他者の力を自分の中に受け入れるあの力はどこから来たのでしょうか?

 自分はそれを、他人を受け入れる響の精神性の発露と解釈しました。

 その結果があのガングニール+アガートラームです。

 ライブ会場の惨劇の後の日々でほぼ歪まず、むしろ自分の中に生来あった強さを育んだ……そんな感じの立花響さんでした。

 

 

 

■風鳴翼

 ゼファー君に必ず勝つ人。

 ゼファー君絶対倒すマン。

 ゼファー君にアバラ折られても負けを認めず立ち向かい、叩きのめす人です。

 翼さんは原作生存組の装者の中では、一番強いと思ってます。自分が。

 マリアさんも翼さんもギア戦闘・生身戦闘どちらも頭一つ抜けて強いですが、両者とも戦い以外の場所で面倒くさい精神的動揺要素を拾ってきて、ちょっと弱体化してしまうイメージです。

 そしてマリアさんは年齢の分、翼さんよりちょっとだけ精神的に動揺しづらく、翼さんは鍛錬量でマリアさんを上回っている、なので適合係数を考慮しなくとも翼さんの方がちょっとだけ強い……みたいなイメージで書いていました。

 

 未熟な頃にリリティアやディアブロとタイマンで戦い、封印はされても負けはしなかったりと、実は明確な負けが異様に少ないキャラだったりします。

 ウェル博士がアンチリンカーを撒いてリリティアをぶつけてきた時も、響&クリスが倒される中一人だけ立っていたりと、基礎がしっかりしているために負けにくいという基礎イズ最強理論を体現しているようなキャラです。

 

 『奏の死後に彼女を支え立ち直らせる誰かが居たら』というもしもを念頭に置き、書いたりもしました。

 奏さんとの出会い、仲良くなっていく過程、そして死。

 その辺もちゃんと書けたかな、と今は思う次第です。

 翼さんとビッキーの精神的な問題を解決してから二人を会わせ、原作にある『最初は仲が悪かったけどぶつかり合って相互に理解した響と翼』という要素を再現するのに、胸の傷など色々と仕込みをしていたのが今でも記憶に残っています。

 

 

 

■雪音クリス

 クリスちゃんの環境、過去、その辺ガッツリ書きたかったのです。

 明確に『こうだ』という夢を持ち、けれどその夢が微妙にふわっとしていて、何をもってして夢が叶ったとすべきか分からないクリスちゃんの夢。

 この作品では叶いました。一度皆の想いが一つになって、バラルの呪詛が世界から消えて、クリスちゃんの歌が平和を掴んだのです。

 

 確かGXのホームページクリスちゃんページという、とてもいい設定材料が出て来る前に、クリスちゃんのアームドギアが銃ばっかりな理由にバルベルデを使う予定があった気がします。

 GX放映後にそこに「翼が炎を使うのは『時に静かに燃える炎にも喩えられる』と言われる父を尊敬し、憧れ、愛しているがゆえに」みたいな文を追加して、ビッキーの拳や切歌の鎌など、アームドギアや使用技から読み取れる装者の性格分析みたいなのを書きたいと思っていた気がします。

 まあ、やらなかったんですけどね!

 

 本編でやらなかったことと言えば、剣を構え自分の影を縫って敵の大威力技を防ぐ翼さんに、そうして弾いた敵の周りにクリスちゃんが煙幕弾を撃ち、球状に展開した煙の中の敵の顔面に閃光弾を叩き込むというコンビネーションとか。

 煙幕で閃光は遮られる! 敵の目だけが潰れる! みたいな!

 これに限りませんが、自分は結構翼&クリスというコンビが好きなようです。機会があったらもっとこの二人をセットで動かしてみたいですね。

 

 

 

■天羽奏&セレナ・カデンツァヴナ・イヴ

 原作で死んでいた子達。

 「原作で死んでた子達だけどこの作品では生き残るかな」からの「ああ、やっぱダメか」を引き起こし、「復活!?」というオチに持って行く二人の少女です。

 人の死は主人公に一定の精神的ダメージが見込める上、そのダメージ量はそのまま成長量に比例します。しかしオリキャラはともかく、原作キャラを死なせるのはどうなのよ、という越えちゃいけないラインが自分の中にありました。

 読者の皆様の中にもそういうのはあると思います。

 

 なので、原作で死んでいたキャラと主人公をとても仲良くしてから死んでいただきました。死んでない? そこは見逃して下さい。

 

「原作では死んでたけど主人公の活躍で助かるかも」

 

 と読者の皆様には思っていただいてから、死亡シーンに繋げました。

 ゼファー君には誰よりも大事な半身、あるいは初恋の相手など、「絶対に死なせたくない」と思ってもらってから死亡シーンに繋げました。

 とはいえ何度も繰り返すパターンでもないので、回数を絞って成長に繋がる死亡を組み込んだ形になります。

 

 死は劇薬です。

 衝撃は大きいですが、根本的に体に悪いものです。

 効果も大きいですが、大きな効果が悪影響になることも多々あります。

 何より、誰かが死んでも読者の皆様が何も思わなくなってしまったら、その時点でその作品が終わります。これは気を付けていてもそうなることが時折あります。

 劇薬が体に慣れたら終わりということですね。

 

 奏&セレナは、そういう意味でハラハラしながら使っていた駒でした。

 

 

 

■マリア・カデンツァヴナ・イヴ

 装者の中で唯一ゼファー君とべたつく距離感に居ない人。

 ゼファー君はマリアさんの長所ばかりを見る。

 マリアさんはゼファー君の弱さを見る。

 ゼファーが英雄になるのを否定しつつ、必要ならば自分がそのポジションに就くことも躊躇わない、けれど結構迷うというポジションです。

 マムとマリアさんは責任が大きく、悪を成すと決めているのに、情を捨てきれないという一面が似ていますね。

 

 『マリアがセレナに否定されたらどうなる?』

 『それでもマリアが自分の想いを貫いたらどうなる?』

 『力で倒さなければ心を動かせなくなったマリアは、どうなる?』

 というのが七章の流れ。

 グラムザンバー持ちのマリアさんは、装者同士の戦闘ならまず誰にも負けず、装者チームが足止めもできなかったネフィリム・ディザスターを一撃で粉砕し、ルシファアやロードブレイザーにも大なり小なり警戒されていましたね。

 

 マリアさんはセレナと対照にしつつ、二章でゼファーとマリアさんが少し似ているという話をしてから、七章でゼファーとマリアさんを改めて対比にしました。

 聖剣、魔槍。フィーネの心の継承、フィーネの力の継承。

 マリアさんは何が正しいのか迷い、先頭に立って皆にうろたえない背中を見せて導くべきポジションで、けれども毅然とした姿を見せられず、結局犠牲を増やす道を選べませんでした。

 ゼファー君は死にかけの自分の状態を隠し、皆に毅然した姿を見せ、皆を絶望の中で励ましながら前に進み続けました。結果、一人だけ加速度的に死んでいきました。

 そしてその果てに、マリアさん達が示した力に世界は従い、ゼファー達がその被害を最小限に抑え、世界は一時的に紛争がほぼ無くなった状態で魔神の襲撃を迎え撃てました。

 ナスターシャ先生マジ策士。

 米国トップアーティストのマリアさんの求心力、彼女が割りきれず犠牲を許容しきれなかったこと、それらがいい方向に噛み合いました。

 

 一見ブレやすいように見えても、何が正しいのか常に考え続けるマリアさんは、その優しさゆえにいつか必ず正しい答えに至ってくれる人なのです。

 

 

 

■暁切歌

 ゼファー君を殺す要員。

 初登場時からずっと、切歌ちゃんにゼファー君を殺させるための仕込みをさせていました。

 切歌ちゃんの過去話、ゼファー君と切歌ちゃんが仲良くなる描写、ゼファー君の影響で切歌ちゃんの生まれた変化、切歌ちゃんの可愛い描写。

 切歌ちゃんがゼファー君を殺す時に映えるだろうなあ、と思いながら書いていました。

 

 切歌ちゃんがゼファー君を殺して絶望、号泣、そして立ち直れば、これらは殺害のスパイスのためのものから微笑ましい友情要素に変わります。

 友情要素にもなる殺害のスパイスなのか。

 殺害のスパイスにもなる友情要素なのか。

 まあどっちだっていいのです。

 明るくて陽気で可愛い切歌ちゃんだからこそ、出せる味みたいなものはありますからね。

 

 調ちゃんの武器が円(=日輪)、切歌ちゃんの武器が鎌(=三日月)というのは自分以外にも思いついてる人はいるんだろうなあ、と思いつつ他のシンフォギア二次を読んでまで確認していないので、実際のところよく分ってなかったりします。

 どこかとネタかぶりはしていないだろうか……

 

 切歌ちゃんは技の名前がメルヘン、かつ魔法少女っぽいギア服デザインであるのに、死神を思わせる鎌や歌詞が中々印象的でした。

 その辺りを妄想して色々構築した覚えがあります。

 

 

 

■月読調

 けっこうヒロイン。

 フィーネと憑依合体したシャーマンにして、オーバーソウル・フィーネでラストの戦いを切り抜けたシャーマンキング(クイーンに非ず)。

 なんだかんだ美少女ロリバスカーというポジションの子です。

 ルシファアを弱体化させたり、フィーネの知識を借りて裏で色々動いていたり、ロードブレイザーの中あったかいナリィ(激熱)(ネガティブフレア)して、聖剣を引っこ抜いたりと、装者の中での貢献度はかなり高い子です。

 

 徹底して「頭の回転はいい子」「好きなことばかり学ぶ子」「才能や力は無い子」として書いていたような気がします。

 適合係数も実際未来さんの次に低いわけですしね。

 調ちゃんは特別な力でもなく、適合係数の高さでもなく、固有の才能でもなく、オンリーワンの技でもなく、ひたすら前準備・裏事情の把握・思考力・ド根性のみで成果を掴んでいました。

 イグナイト時のポニテは本当に可愛いです。

 

 一度中編を書いた途端、感想に調速スピナーを期待する感想が増えてしまったのは、正直風評被害すまなかったと思っています! すまない調ちゃん!

 

 調ちゃんのα式やΔ式などの技分類を分析し、本編内に載せる予定もあったのですが、そうこうしてる内に買ったスタッフ本に載ってたので「もういいや!」って思ってしまったり。

 気になる人はスタッフ本、買おう!

 ザババロボ・パーフェクトバージョンみたいなイラストもあるぞ!

 

 

 

■小日向未来

 けっこうヒロイン。

 この二人がヒロイン力ある的な感想を頂いたり、二人のポジションにどこか似たものをなんとなく感じていたのですが、その謎は自分の中ではなく、原作者金子先生の頭の中にこそありました。

 

「小日向未来と月読調のモチーフの知人は一緒」

「モチーフが同じということを伝えてなかったのに、キャラデザは同じ髪の色にしていた」

「髪の色の指定などはしていなかったのに」

「キャラデザの人に小日向未来は喪服が似合う少女とは指定した」

「お気に入りのキャラには後ろ暗い影を背負わせたくなる」

 

 とのこと。これを見て、作者である自分でも分かっていなかった自分の作品の構成要素に気付けました。なるほどなるほど……

 それと未来さんはゼファー君の鏡、といった感じの文でその性質を表現していました。

 ゼファー君が勝利すれば喜び、嘘をついても見抜き、ゼファー君が気付いていない自分自身すら映し出し、彼が無茶をするとそれ相応の怒りを返す、そんな鏡です。

 磨けば光る。

 時々曇る。

 主人公に自分を省みさせる。

 まさに鏡です。そんな感じにあれこれやっていたら、またしても原作者金子先生のツイッター発言が助けてくれました。

 

「神獣鏡は歪んだ鏡じゃないんです。大切な人の「歪み」だって映す鏡なんですよ」

 

 自分が書く未来さんはなんとなく原作者様からのサブリミナルパワーの影響を感じます。

 こう、金子先生の作品を通して、自分の脳内が先生のそれに近いものに変貌させられた感じが。

 つまりこのfeat.ワイルドアームズを読んだ方も、脳内が次第に金子化していくのです。

 私も金子。

 あなたも金子。

 人類総金子。皆がシンフォギアやワイルドアームズのノリで作品を書き、消費者もまた適合者。

 一見ユートピアに見えるディストピアですね!

 深淵を覗いて皆深遠に至る的な!

 

 例えばゼファー君の人生を一億回くらいシミュレートしてみた場合、なんだかんだで一番ゼファー君の伴侶になっている可能性が高いのはこの子だと思われます。

 ウェイザードリィステルスの伏線でストーキングの才能を見せたりもしましたが、基本的にぐうの音も出ない良い子ですしね。

 

 ですが可能性は無限大です。

 未来さんとゼファー君はいい友人で終わるパターンも多いでしょう。

 

 

 

■OTONA

 大人達。ゼファー君に成長の機会と目標を与えてくれる人達です。

 装者達よりもゼファー君に成長を促す機会が多い、人生の先人達でございます。

 弦十郎、緒川、藤尭と原作キャラだけで分類しても個性があり、それぞれが個別の影響をゼファー君に与える、という形で話を組み立てていました。

 

 その分、後半はゼファー君が大人になるにつれ、役割が変動していきます。

 ゼファー君が"守られる子供"のポジションから、"肩を並べる同僚"のポジションに徐々に移行していくわけですね。

 ゼファー君の言葉が大人の心境に決定的な変化を与えたり、ゼファー君の身長が大人の身長を越えたり、ゼファー君が司令と同格の二課の柱になる、などの描写がその辺りを表しています。

 

 一例を出してみましょうか。

 本編ではあまり綿密に描写しませんでしたが、バーソロミュー爺さんとの関係性も、ゼファーの変化により変わっていました。

 本編描写だけだとゼファー君がバーソロミュー爺さんを謝らせ、クリスに頭を下げさせる程度の話に終わりましたが、あの時点で精神的な関係性は結構変わっていたのです。

 大人になりきれないまま、ちゃんとした父親にもなれないまま、歳を重ねてしまったバーソロミュー。ちゃんとした大人になりかけていた、エピローグでは大人になっていたゼファー。

 おそらくゼファー君が結婚して子供が生まれたならば、その時点で『バーソロミューよりゼファー君の方が精神的に大人になります』。

 そうなれば、その瞬間バーソロミューは全ての心残りを無くすでしょう。

 そのままぽっくり逝く可能性が高いです。

 これが、大人になっていくゼファー君による、関係性の変化というやつです。

 

 あまり関係が変わらないのは藤尭朔也氏(童貞)くらいのものでしょうね。

 しかしそれも、ゼファー君が童貞を卒業した辺りで少し変わってしまいます。

 

「俺は恋人が欲しいんだ!

 誰かに愛を囁いて欲しいんだ!

 もう明日はクリスマスじゃないか……! 助けてくれたっていいじゃないか……!」

 

 と藤尭朔也氏は叫びます。

 そこでゼファー君のマジレスカウンター。

 

「あの、私見を言わせていただくのなら……

 『君が好きだ』で揺らぐ人は居ても、『誰でもいいから誰か』で揺らぐ人は居ないのでは?」

 

「―――ッ!?」

 

「『あの子が欲しい』と『恋人が欲しい』はぜんぜん違うのでは……?」

 

 ゼファーの言葉の聖剣(アガートラームジヒ)が煌めき、正論の剣閃(悪インパルス)が突き刺さる。

 

「というか、朔也さん恋人が欲しいんですか?

 クリスマスに恋人と過ごしたって事実が欲しいんですか?

 なんというか、俺には後者に見えるんですが……」

 

「―――な、に……?」

 

 最強の剣士は、物理的に剣を振るわずとも、相も変わらず最強無敵絶対不敗であった。

 たまには負けてもいいのに。

 

 

 

■民衆

 完全に良い人も居ない。

 完全に悪い人も居ない。

 そんな塩梅で書きました。

 普通の人に聖人で居ろというのは酷です。

 周りに流されず、常に人道的な選択をし、選択肢を間違えるな、というのも酷です。

 罪を犯したら幸せになるなというのも酷です。

 できる限り仲良くすべきですが、英雄の手助けなしに皆仲良くしろというのも酷です。

 

 そして全員が生きています。

 評価される人間も、その対極となる「死んだ方がいい」と言われる人間も居ます。

 それぞれの人間にそれぞれの価値があるでしょう。

 ですが、命は命です。死ねば、ゼファー君は悲しみます。

 

 ならば、その全てを救うにはどうすればいいのか。

 自分を殺されても許せるような人間が必要になります。

 その全てに相互理解を行き渡らせるにはどうすればいいのか。

 全ての人間と分かり合おうとする、分かり合わせようとする、そんな人間が必要になります。

 

 人類全体に及ぶ相互理解なんて偉業を成し遂げるには、それ相応な人間が必要なわけです。

 

 

 

■世界情勢

 ロードブレイザーは消えました。

 ノイズも消えました。

 ゴーレムは全損、聖遺物はまだあるかもしれませんが、振るうべき敵はもう居ません。

 国同士の戦いももうすぐになくなるでしょう。

 あと数十年は怖い人(えいゆう)が目を光らせているからです。

 

 人は地球の外に目を向け、やがて地球人以外の知的生命体を発見することとなります。

 

 その知的生命体が生きる星は、きっと『ファルガイア』と呼ばれていることでしょう。

 

 

 

■ディーンハイム

 ジュード君とキャロルの間には三男四女が生まれたという。お盛んですね……

 

 

 

■作品の方向性問題

 この作品は原作を知らない人にシンフォギアとワイルドアームズを布教するため、原作を知っている方達には不要な説明も省かず、そのせいかかなり文字数が膨らんでいました。

 中々に疲れる仕様でしたが、今となってはこれが良かったのだと思えます。

 

 二次創作の強みは、『神様転生』、あるいは『なろうテンプレ』、『異世界ファンタジーのお約束』といったものと同じく、"読者の脳内情報を利用できること"だと思います。

 これが娯楽分野ではたいそう強いのです。

 何せキャラの容姿にそれなりに文字数を割かないといけないオリジナルと違い、二次創作はキャラの名前を書けばそれでいいわけですからね。

 現代社会を舞台にした作品では"コンビニ"の一言で済む店内描写が、ガチガチの異世界ものでは店内の描写にそこそこの文字数を割かなければなりません。こういうものが、読者の脳内情報を利用できるということです。

 2chと専ブラの関係に近いかもしれません。

 

 小説において『説明を省く』というのはとても重要です。

 何せ読むのが凄い楽になりますからね。その分、そういうことが出来るジャンルは「またこのタイプの作品か」と辟易されるリスクも有りますが、娯楽作品としては非常に良いのです。

 自分はこの作品を書くにあたり、説明を省くことを極力避けました。

 その分読みづらかったり、文章にちょっと重さを感じてしまったこともあると思います。

 原作設定を語る部分などは、カットしてしまったほうが読みやすくなるわけですしね。

 

 なので原作ファンの方、原作を知らなくても読んでくださっていた方、どちらにも受け入れてもらえてとても嬉しく思っています。

 "読者の脳内情報を利用する"ことは塩梅を間違えると大変なことにもなってしまうので、ホッとしている自分がここに居たりします。

 

 

 

■プロット

 本編執筆開始からプロットを大幅に変更したのは一回、GXの設定が出てきた時のみ。後は話の進み具合を考慮して、スリム化・スピードアップのためのエピソードカット、話の順序の入れ替えなどをちょくちょくしました。

 GX放映前のプロットで一番変わったのは七章ですね。

 活動報告でも書いた気がしますが、六章でアガートラーム+ガングニールのビッキーがフィーネさんの力をあれこれしてエクスドライブ、みたいな流れはGX放映前から予定にありました。

 七章は装者達のシンフォギアの欠片を取り込んだゼファー君が、その欠片を柄の形に固めて発生させた剣が『ゼファーのナイトフェンサー』である、みたいな話をする予定があったり。

 リリティアVSゼファーきりしら、バルバトスVSゼファー翼クリス、リヴァイアサンVSゼファー響マリア、セトVSゼファーセレナ奏、といったカードで戦わせつつ、ゴーレム達の強さ描写をして、戦いの中で日本各地に隠されていた遺跡を発見し、守護獣の謎に迫る……みたいなシナリオがあったり。

 アースガルズモジュール、ガングニールモジュールで戦闘力差が埋まった後、三対三で二課装者をF.I.S.組がコンビネーションでなんとか追い詰め、ゼファー君が参戦して一気に戦力の天秤が傾くみたいな話もありました。

 でも最終的には、今の形で良かったと思います。

 満足の行く作品になりました。

 

 

 




もしかしたら何人分か後々こっそり追加したりするかもしれません

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