戦姫絶唱シンフォギア feat.ワイルドアームズ   作:ルシエド

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フィーネさんはこの作品におけるノーブルレッドポジ

お気に入り、評価、感想等ありがとうございます。モチベーションの上昇に書く時間がおっつかないくらいです
指摘がありましたので長ったらしいあらすじを変更、各話誤字は気付き次第修正していきます


とある女性の記憶

【リインカーネイションシステム起動】

 

【対象:生存 受容体候補反応:確認 システムフルスキャン開始】

 

【転写機能:エラーなし 波形反応:エラーなし 定期バックアップデータ:精査中】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 番外:一万年の孤独

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉さん」

 

 

 あの子が、私の名を呼んでくれている。

 家族としての愛を込めて。

 それが何よりも嬉しかった。

 

 

「どうしたの、ロディ?」

 

「姉さんがこんないい景色を見ないでボーッとしてるから、怒ってるんだよ?」

 

「あらあら、ごめんなさいね」

 

 

 雲一つ無い空、地平線まで見渡せる景色、自然と調和する素朴な町並み。

 この丘から見渡せるこの街の景色はとても美しく、遠く大陸の向こうからも観光客が年中絶えないほどに、多くの人に愛されている。

 ここに生まれ、ここを故郷と愛せる私は、きっと幸せものだ。

 

 

「姉さんはどっか抜けてるんだよなー」

 

「ふふ、こんなしっかりとした弟が居てくれるから、頼っちゃうのよ」

 

「……あーもう、早めだけど昼御飯食べちゃおっか」

 

(照れてるのかしら)

 

 

 父が他界してしまった時、これからどうなるのか未来が不安になった。

 あまり好きではない父だったから、悲しみより不安の方が大きかった。

 母が再婚すると聞いた時、どんな人が相手なんだろうと思った。

 私が母の再婚の邪魔になっていることは、知っていたから。

 相手側にも連れ子が居ると聞いて、期待と不安で胸がはちきれそうになった。

 これからお姉ちゃんになるんだから頑張らないと、嫌われたらどうしよう、そんな半々。

 

 だけど、その子はとてもいい子だった。

 私達が家族になれたのは、この子……ロディのおかげだ。

 私と母を進んで受け入れ、手を繋いでくれた。

 一つになれるかどうかも分からなかった家族を繋いでくれた、自慢の弟だ。

 

 

「明日、頑張ってね」

 

「頑張るもの何も、私は巫女になる洗礼を受けるだけよ?

 決まりきった儀礼をこなすだけなんだから、失敗なんてするはずないわ」

 

「そういう人に限って失敗するんだよ。姉さん、肝心なトコで失敗するタイプだから」

 

「大丈夫よ、こうやってエールを送ってくれる弟が居るんだから。

 姉さん、期待してくれる人には応えられるできる女で居るつもりよ?」

 

「できる女……?」

 

「そこに疑問符を付けないで頂戴」

 

 

 明日、私は神と交信する光の巫女となる洗礼を受ける。

 巫女は代々世俗との繋がりを形式上は断ち切るということで、かつての姓を捨て、巫女が代々継いできた姓を受け継がなくてはならない。

 明日から私の姓は輝く鉱石(ラグナイト)ではなく、光の巫女(ルン・ヴァレリア)だ。

 

 

「そんな不安な顔しなくても大丈夫だよ。姓が変わったって、僕はずっと姉さんの弟だ」

 

「……ありがとう。私も、何があっても貴方を愛する姉で居続けるわ」

 

 

 神様に会えるなら、この胸の響きを伝えられるなら。

 この愛する弟の行く先に幸いがあること、それを何よりも先に願いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 白亜の神殿の奥で、私は洗礼を受けている。

 絢爛さは清楚さを損ない、やがて神聖さを失わせてしまう。

 そんな考えから、徹底して清貧の中に見出す美しさだけを追求した神殿。

 

 顔を伏せる私の目と鼻の先には、重厚な礼服を着こなした法王様。

 ここは万物の創造主『カストディアン』を祀る神殿。

 彼はかの天上の神々を称える教えを伝える教団の、最も高い地位におわせられる方だ。

 本来、私が言葉を交わせるはずもないくらいに偉い人。

 法皇様だけではなく、この儀式に参加している人達は皆私からすれば天上人だ。

 偶然選ばれ、ここに居る私とは違う。

 

 

『―――』

 

 

 そんな、恐れ多い人達に囲まれていた私の耳に。

 

 

『―――』

 

 

 神聖過ぎる、魂まで浄化されてしまいそうな、そんな神々しい声が届いた。

 

 

「……ぁ」

 

 

 魂を、心を、グッと掴まれる。

 芸術家が世紀の絵画を見たように。

 科学者が真理の一端を垣間見たように。

 剣士が稀代の名剣を手にした時のように。

 運命の人に一目惚れするように。

 生まれた時から共に在った命が、全身全霊を魅了されていた。

 私の存在の全てが、その声に魅せられていた。

 

 

『―――よ』

 

 

 この日私は、生まれて初めての、生涯最後の、愛を超えた恋をした。

 

 

『人の子よ、心せよ』

 

 

 この声を発するお方に、会いたい。近付きたい。

 あなたに恋をしているんですと、この胸の響きを何よりも先に伝えたい。

 

 

『滅びが迫っている。全ての終わりが。焔の災厄を打倒せよ』

 

 

 まずはこの神託を皆に伝えて、それからだ。

 だけど今は、かのお方の声を耳に刻みつけよう。

 

 

『世界の終わりが迫っている』

 

 

 恋をするとこんなにも浮かれた気持ちになれるなんて、こんなにも嬉しいなんて、こんなにも未来への不安が無くなるなんて、私知らなかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 何故私は、恋に浮かれてあんなにも現実を見ていなかったのか。

 あの時私があのお方の言葉を伝えた時の周りの人達の慌てぶりから何か察するべきだった。

 ……きっと、私にも何かできることはあったはずだったのに。

 あのお方が私達に警告すること自体が初めてだったのだと、私は知りもしなかった。

 

 地球人口の六割の殺害。

 七色の大陸と言われた七大大陸の一つの蒸発。

 計測された絶滅種の数の爆発的な増加。

 

 地球の温暖化とか、そういったゆっくりとした滅びじゃなくて。

 地球が爆発するとか、そういう唐突な滅びじゃなくて。

 地球に生きる全ての命が生きる事を許さない『絶対者』が現れるという、そういう滅び。

 

 それが自分達と同じ命であることを認められなくて。

 その無差別さが命ではなく現象であるとしか思えなくて。

 私達は目を逸らすように、それは特異な災害であると、二つ名を付けた。

 

 『焔の災厄』、と。

 

 人類は滅びる。この星もろともに。

 いつでもこの星を砕けるであろうあの魔神が未だこの星を砕かないでいるのは、単に人類という玩具で遊んでいるからだ。

 エマ博士の、あの仮説が正しいのなら。

 私達を恐れさせ、痛めつけ、追い詰め、絶望させることであの魔神は力を増す。

 負の感情こそがあの焔の糧なのだ。

 

 あのお方がバベルを砕いた時、ただ何故と嘆くだけだった私が恥ずかしい。

 人類は、一つになってはならなかったのだ。

 人類が一つになることで、あの魔神に対する恐れも共有してしまう。

 人が一丸となって魔神を恐れれば、本当の意味で勝利は失われてしまっていたのだ。

 混乱(バラル)こそが唯一の希望とは、笑える話だ。

 

 エマ博士の理論を実証するには、きっと負の感情の正反対と言っていい力が必要になる。

 

 だけど、どうやって……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 あのお方が、お隠れになった。

 

 ああ、そうか。

 

 これが、絶望か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ロディに別れを告げて、もう半月が経っただろうか。

 おそらく、人類はもう半年も保たないだろうと私は推測している。

 生きる土地がない。賄える食料がない。

 何より、これ以上人口が減ればまず人類は生殖自体が成り立たなくなる。

 決戦を挑み、勝利しなければ、人類に勝利はない。

 

 私が守る世界の未来には、ロディに生きて欲しかった。

 私が望む未来の世界には、あの魔神を生かしておきたくなかった。

 あのお方を殺した魔神を、私は絶対に許さない。

 守りたいという気持ちと、復讐を遂げたいという気持ち。

 どちらが大きいのだろうか?

 ……いや、きっとどちらでもいい。

 ロードブレイザーを討たねば叶わない願いだという点で、どちらも同じだ。

 

 残りカスのような人類の戦力だけど、私達にも勝ち目はある。

 あのお方がロードブレイザーに殺されたあの日、空から落ちてきた希望。

 天より堕ちたる巨人『ネフィリム』。

 カストディアン達の住まう天上から落ちてきた、最後の切り札。

 この生きた増殖炉に今ある人類の全てのエネルギーを食わせる。

 理論上の最終形態、『ラギュ・オ・ラギュラ』に至れば、あるいは。

 最悪、あのお方がバラルの呪詛と共に月に残した仕掛けを用いれば時間は稼げる。

 

 後の時代に何も技術が残らないかもしれないが、構わない。

 人が残れば、文明の欠片が残れば、それで十分のはずだ。

 バビロニアの宝物庫に辿り着くものが現れれば、全てを取り戻せる可能性もある。

 もう人類に、新たな兵器を生み出す力は残っていない。

 先月最後の一振りの剣を作って、技術も資材も打ち止めとなってしまった。

 

 ……その最後の一振りを、私は愛する義弟に渡して来てしまった。

 私情と笑われてもいい。

 覚悟を決めていないと言われてもいい。

 それでも私は、あのお方を奪った魔神への復讐から始める戦乱から、自分の命を守るだけの力をあの子にあげたかったのだ。

 人類が滅びるほどの災厄の余波から、大切な人を守る小さな力をあげたかったのだ。

 せめて、あの子だけは。

 

 この戦いの後に、世界に残るものであって欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「面をあげよロディ。しがない王が、英雄である貴様に威張れる道理など無いのだから」

 

「し、しかしギルガメッシュ様。人類全ての王たる貴方の前では、自分も萎縮してしまいます」

 

「ふむ、今度共に酒でも飲むか? 堅苦しくていかん」

 

「あ、あはは……」

 

 

 私は正しい選択をしたのか、どこかで間違ったのか。

 これは良い今なのか、悪い今なのか。

 分からない。私には分からない。

 

 義弟に渡した最後の一振り……『アガートラーム』が、あんな力を発するなんて。

 所有者の想いを力に変え、半永久的に持ち主を守る。それだけの剣のはずだった。

 ロディはその剣に自分の想い、仲間の想い、人々の想いを乗せて振るった。

 その結果、人類はその歴史で初めてとなるロードブレイザーの撃退を成した。

 

 皆が弟を英雄と呼び、私を英雄の姉にして光の巫女と呼ぶ。

 王が直接会ってその労を労っているというのだから、相当なことだ。

 だが、当然のことだとも思う。

 ロディはこの世界に久方ぶりの希望をもたらし、そして救うかもしれない『英雄』なのだ。

 絵物語の一幕のような展開に、私の心の臓も自然と高鳴ってしまう。

 

 

「姉さん、僕上手くやれてるかな?」

 

「ええ。貴方は今も昔も、私の誇りの弟よ」

 

「へへっ」

 

 

 一抹の不安がよぎったが、意図して無視する。

 上げて落とす。あのお方の声を初めて聞いた時と同じ。

 浮かれた後に来る絶望と終わり。

 そんなわけがないと、幸福の中にある意味もない不安を切り捨てる。

 

 

「世界とかよく分かんないからさ、姉さんのために頑張ったんだ。

 姉さんずっと暗い顔とか怖い顔とかしててさ、僕に何かできることはないかって思ってたんだ」

 

 

 こんな優しい子が、幸せになれないはずがないのに。

 

 

「姉さんが苦しむ事も何かを背負うこともなくて、ただ笑っていられたら。

 そんな未来が欲しいから、俺は明日もアガートラームを振るうよ」

 

 

 私の恋慕の果ての破滅にこの子が巻き込まれなかった幸運だけが、私の救いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 英雄は、生贄。

 私はそんなことにすら気付いていなかった。

 

 皆がロディの死を望んだ。

 英雄となり、魔神を討ち、世界から消えることを望んでいた。

 

 考えてみれば当然だった。

 英雄なんて平和を乱す者を、平和を求める人々が許容するわけがない。

 彼らが望んだのは、魔王が討たれ、勇者が消え、強すぎる者が全て消えた後の世界。

 

 もっとも美しい形は、ゼロだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 あのお方がお隠れになり。

 ロディが命がけで魔神を封印して、救われたこの世界。

 

 何故私の見下ろす先で、あの人間達は殺し合っている?

 

 お前達が散らす命、奪う命、その価値を分かっているのか?

 

 その命が誰の犠牲で繋がれたものなのか、本当に分かっているのか?

 

 なんで、そんなにくだらないことで争い、命を使い捨てられる?

 

 違う。

 違う。

 違う。

 

 ロディが命を懸けて守りたかったのは、こんな世界じゃない。こんな愚か者たちじゃない。

 ロディが命を懸けて守りたかったものが、こんな未来であるはずがない。

 友としてロディの意思を貫くため散っていった、ヴァージニアが、ザババが、ディーンが。

 勝ち目のない戦いと分かっていながら、未来を守るため散っていった戦士達が。

 ただ生きたいと願い、それすら叶わなかった者達が。

 死後の世界で、この世界の現状を見たら、どう思うのだろうか?

 生き残った私達は、醜態を晒す私達は、どの面を下げて死んでいった人達に胸を張れるのか?

 

 あのお方は塔を壊し呪詛を撒き、人が繋がることを認めなかった。

 バラルの呪詛で統一言語を無くした人類は、いともたやすく互いに殺し合った。

 ロディは、私に人と人を繋げる輝きとその美しさを見せてくれた。

 それは呪詛を撒かれた後の世界でも、人が繋がれることを示していた。

 そして人を繋げる個人が消えれば、こんなにも人が醜くなれるのだという事も教えてくれた。

 

 分からない。私には分からないのだ。

 分からないから、人を繋ぐ唯一の正当、呪詛の解除だけを求め走る。

 ロディ達が守った有象無象を、遺してくれた世界を守る。

 あのお方の仇を取るため、憎い憎いかの魔神を討つ。

 

 このままでいいはずがない。

 死んで行った者達の無念と願いを引き継ぐのは、生き残った者の義務。

 でなければ、彼らの死の価値が無くなってしまう。

 良き未来を信じた者達が死に、忘れられ、何も知らぬ者達が争い合う未来。

 そんな未来だけは、受け入れる訳にはいかない。

 今現在、その未来が来る可能性が一番大きいのだから。

 

 その未来にあるものは、ロードブレイザーによる破滅だけだ。

 

 ロディはロードブレイザーを倒し切れなかった。

 ありとあらゆる人間の精神に存在する内的宇宙と外的宇宙の境界線、事象の地平面へと繋がる穴を自身を媒体として生成し、そこに魔神を放り込んで蓋をしたのだ。

 封印は今もこの大地のどこかにあり、何かのきっかけで魔神は復活するだろう。

 その日、人類は滅亡する。

 

 私が消える訳にはいかない。

 叶うなら、人類に対し呪いの言葉を残せるだけ残してからこの命を断ってしまいたい。

 背負ったものが大きすぎて、重すぎて、私には分不相応すぎる。

 ただ偶然選ばれただけの私が凡人でしか無いことなど、私が一番よく知っている。

 だがまだ死ねない。まだ消えるわけには行かないのだ。

 私が消えれば人類は全ての罪を忘れ、あの災厄に焼き尽くされる。

 

 あの魔神を殺さねばならない。

 この反吐が出そうなほどに醜い人類も、守らねばならない。

 でなければ。

 でなければ。

 

 私の恋慕の果ての破滅に付きあわせてしまったロディは、いったい何のために―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【定期バックアップデータ:精査終了】

 

【メインプロセス終了 全プロセス終了まで残り3秒】

 

【リインカーネイションシステム、スリープモードに移行します】




何千年も頑張り続けてあれだけやる気満々なフィーネさんは鋼鉄メンタルの鑑
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