戦姫絶唱シンフォギア feat.ワイルドアームズ 作:ルシエド
これで今年の投下は終了です
独立してるので時系列はあまり関係ないです
暁切歌が筆頭だが、F.I.S.の子供には言語が怪しい者が多い。
話している内に慣れてくる者も多いが、世界中の子供達がここに集まっていることで使用言語が増え、複数の言語がごっちゃになってしまうことも多い。
特定の言語のクセが付いてしまうこともザラだ。
そこでナスターシャは個人個人の言語を矯正するために、次年度用の新規カリキュラムを作成し試験運用を開始。テストケースとしてゼファーを選定した。
ゼファーは考えた末に友人を何人か選び、ナスターシャから出された『前提条件』付きでただ駄弁り続けるだけの課題への協力を要請する。
ゼファーの友人達は何の代価も求めずに快く了承。まさしく友情だ。
かくしてゼファーと友人達の暇潰しのような遊びのような奮闘が始まった。
ゼファーと調の場合。
「明日天気になぁれ」
「いい日になぁれ、じゃないのか?」
「うん、これはそういう詩らしいから。人聞きだけど」
「えっと、ここに来る前に聞いたってことでいいのか?」
「幼い時は私もきりちゃんも日本に居たから、その時に聞いたんだと思う」
「簡単には忘れないよな、そういう単純なリズムの歌って」
「聞いたら忘れないってわけでもないけどね」
「口ずさみたくなるようなのだと忘れなさそうだ。セレナのりんごの歌とか」
「結構耳に残るよね。りんごはおっこちたー」
「この前も思ったが皆歌上手いよな……調もなんというか、声が綺麗だし」
「流石に照れる」
「調は歌とか歌わないのか? マリアさんとかが練習してるのは見た事あるけど」
「少し、ね。趣味で歌ってるわけじゃないけど」
「? セレナといい、歌に関することは何か曖昧だなお前ら……」
「そういう女の子の秘密は詮索しちゃいけません」
「確かに。それもそうだな」
「ちょっとづつ知っていきましょう。仲良くもないのにボディタッチとか論外」
「つかそれウェル博士……」
「手遅れになるよ。恋人とか出来ないよ。あんなになっちゃうと」
「とんでもなく嫌われてるなぁ、本当に……」
「……仲良くできてるゼファーが変だよ」
「人間、悪い所だけで出来てる人なんて居ないって。良い所もどっかにあるもんだよ」
「糠に釘って聞いたことある?」
「ねえな、またKOTOWAZAの一つ?」
「の、一つ。まさにあのドクターに関わるなって言ってるのに聞かないこの現状のこと」
「博士の助力は必須だし、なんというか、そこまで悪い人にも見えないというか……」
「ひどいことされてないの?」
「不思議とそこまでは」
「へー」
「本当だって。信じてないな、その眼は」
「ままならないこともあるなぁって、そう思っただけ」
「みんなみんな、そこそこにままならないことってのはあるもんだ。ところでその発言に他意は」
「無自覚に寛容って一番心配。その内メカゼファーになりそう」
「メカゼファー!?」
「もっともっとと要求されていく内に、ゼファーは身体を改造されて……」
「やめろよ、何かなんとなく可能性否定できないだろ!」
「ゆっくり体の中から機械部品に変えられて……」
「よし分かった、最近そういう本読んだなシラベ」
「ライダー1号っていうのをちょっと」
「理性的なくせに夢見がちな奴とかお前くらいだよ、本当にもう」
「ルンバを反射的に踏み壊した暴力的に世間知らずな人がなんか言ってる」
「冷静さが足りてないのはもう痛いくらい身に沁みてるから、その件はもう忘れてくれ!」
「ロボは何でも壊す人って言われてたね、ふふっ」
「分かってくれてるくせに、そうやって素敵な笑顔浮かべてるお前は本当にいい性格になったよ」
ゼファーと切歌の場合。
「ああ、そういえば思ってたんだけど。キリカはよく受けてくれたな、これ」
「課題と名が付いてれば何だって嫌がる女だと思われてたんデスかー、心外デス」
「ついつい思っちゃってな、ごめん。でも勉強は好きじゃないんだろ?」
「嫌いデス。まあそれでも、友達の頼みと来たらやるデスよー」
「キリカはそういう所が美点だよな。俺も真似したい所だ」
「良点見付けるのが好きデスよねゼファー。ちょっと過大なくらいに」
「過大か? 目に付いたから言ってるだけなんだが、他人から見るとそうでもないのか」
「ついつい言ってるってのは分かるデスよ。ただあたしはそういうの照れくさいデス」
「口に出してるのが何か恥ずかしくなってくるな、なんかよく考えてみると」
「よく考えなくても普通のヤツはそーデス」
「未来の俺はそういうの治ってると信じよう。……信じよう」
「調もあたしも、一生直らないだろうって予測してたりするデス」
「ライトなジョークだよな? な?」
「別に直さなくてもいいんじゃないデスかね?」
「まあ、なんというか、改めて言われると気恥ずかしくも感じるわけでさ」
「良好な関係に一役買ってるんだから別にいいんじゃないデスか? バカっぽいのはともかく」
「ああ、キリカにバカって言われてしまった……」
「せいっ! バカって言った方がバカなんデスキック!」
「連想させただけで言ってはいなあいたっ、というかその理屈だとお前もバカじゃ」
「なんという不毛な議論、八割ふざけてるとはいえあたしもこれには驚愕デス……」
「アホだよな。他の人がこれ何も知らずに見てたら絶対にそう思うわ」
「かといってあたし達、知的に見られる振る舞いとか無理デスよ」
「つまびらかにシラベとかマリアさんとかの振る舞いを真似てみるとか」
「昨日今日思ったことじゃないデスけど、よくそこまでマリアをリスペクトできますね……」
「キリッとしてカッコ良い人じゃないか」
「凛としてカッコ良い所もあるんデスけどねぇ」
「カッコ悪い所は、そりゃまあほぼ話したこと無いから俺も知らないけど、そこまでなのか?」
「積み木崩すようなもんデスからあたしの口からはとても」
「口に出せないレベル!? 何か怖くなってきたぞ……」
「要するにお母さんなんデスよ、マリアは。別にカッコ良さが魅力じゃないんデス」
「魅力はそこじゃない、か。流石に付き合い長いと分かってるって感じがするな」
「しょーもないとこも素敵なとこもあっての人間。ってのはゼファーが言ってたことデスね」
「『らしく』居てくれればそれが一番素敵なんだ、ってのはキリカが言ってたことだな」
「ベターでしょ、そういう毎日が」
「毎日皆が楽しく、欠点も長所も認め合って過ごしてく日々か……いいな、すごくいい」
「リアリティあんまないデスけどね」
「あんまない、なら頑張って『ある』にすればいいだろ? よし、気合入ってきたな」
「世界が滅びても、ゼファーはずっとそんな感じな気がするデスね」
「例に挙げたって、世界はきっと滅びないさ。世界に生きてる全員が諦めない限り、きっと」
「……なーんかホント、ゼファーはいつまで経ってもゼファーで居てくれそうデス」
ゼファーとセレナの場合。
「あー、なんか疲れてきた……」
「罰ゲームとか無いんだから、ゆっくりやればいいのに」
「チャレンジ精神でついつい皆ペース上げちゃってさ。キリカとかもゲーム感覚でやってたし」
「だいぶ疲れてるみたいだし、無理しちゃ元も子もないよ」
「えっらい縛りがキツかった。考えながら話すのがこんなに頭を使うとは」
「フィルターを一回通してるようなものだからね」
「ギリギリ会話が成り立ってたけど、何回かヒヤリとしたよ」
「ひょっとして、時々真面目な話の流れになってたのってそれ?」
「イエス。何も考えないでぐだぐだ馬鹿話してるとどうしても詰まっちゃってさ」
「十分自然に話せてたと思うんだけどなあ」
「語り合ってる当人からすると『あ、今の無理があったな』って感じること多いんだよ」
「リスナーには分からない感覚なんだね」
「まさに今実感してるだろ?」
「なんとなくだけどね。一度も詰まってなかった調ちゃんの凄さが分かるなぁ」
「大仰に言うまでもなく、たぶんあの子俺の知る限り一番頭いいやつだよ」
「パッとは浮かばないよね、調ちゃんより頭のいい子って。姉さんくらいかな」
「Qを投げたら大抵のことにはA返って来るしな。というかあの人もやっぱり頭良いのか」
「楽をしようとしないのが姉さんだから。根が真面目で優しいからね」
「正直キリカやシラベが時々漏らすあの人の欠点とか想像できん……どういうことなんだ……」
「ちょ、ちょっと抜けてる所もあるってだけだから」
「うん、まあ、まずは距離取られてる現状をどうにかしてからだな」
「微妙に距離取ってるのは姉さんも考えあってのことだろうから、ほどほどにね」
「分かってるよ。だからもう何ヶ月もこの微妙な距離感が続いてるわけで……」
「クリスマスを目標に関係改善を目指す……ってゼファーくんが言ってからもう結構経つね」
「やなこと思い出させてくれるな、セレナ……」
「ずっとこのままなのもどうかって思うからね。姉さんだって、変わらないわけじゃないし」
「明日やろう明日やろう、って感じに先延ばしにしないようにしてるのにこれじゃあなあ」
「別に悪いことじゃないけど、ゼファーくん拒まれたら無理に距離を詰めようとしないからね」
「……チャンスってあったと思うか?」
「どうしようもなかったんじゃないかな、と妹としては思います」
「ええい、明日から頑張ろう! 昨日までチャンスがなかったことは置いといて!」
「不撓不屈。うんうん、それでこそゼファーくん」
「頑張るとして、何すりゃいいんだろうか」
「人を頼るのを躊躇わないのも平常運転だね。なんか安心してくるなぁ」
「いい考えがさっと浮かばない、こういう時はセレナを頼れば名案を出してくれるはずだ」
「ジョークで誤魔化しちゃダメ?」
「希望が絶たれた……いやまあ、最初から無理だと分かってて無茶振りした俺が悪いんだけど」
「良手は私も実は思い付かないの。ごめんね」
「無理に考えなくてもいいって。セレナの責じゃなくて、俺がどうにかすべき問題なんだ」
「何か私にできることがあったら、何でも言ってね?」
「おう、頼りにしてる」
「ピンチの時は私が助けてあげるから」
「救援はありがたいけど、俺が危なくなるような所に来て欲しくないな。気持ちは嬉しいけど」
「利他を理由にゼファーくんが誰かを助けに行く時、危険を省みるの?」
「そりゃ、俺だって自分が生きることが一番大事だから、その辺は……」
「確かにゼファーくんは生きたい生きたいって感じだけど、本当にそう?」
「うん? そりゃどういう意味でだ?」
「番付けで私の命とゼファーくんの命、どっちが大事?」
「……、……、………………………分からない」
「ざっくばらんに言ったけど、この言い方はちょっと卑怯だったかな。ごめんね」
「要点は伝わった。平気だから大丈夫だ。……どうなんだろう、どっちが大事なんだ……」
「じっくり天秤にかけられるとそれはそれで私が恥ずかしいなぁ……」
調は一番楽そうに、切歌は以外にもゲーム感覚で、セレナは会話の流れをゆっくりにすることを心がけ、ゼファーは会話の流れを調整することでこなしていたようだ。
他にもゼファーの友人である名も無き子供達も参加していたが、この四人ほどにはすらすらとこなせていなかったようだ。
頭脳も求められるが、相手との親しさが「次に何を言われるか」の予測に変わる以上、言葉を交わす相手との親密度も求められる課題であった。
そしてこなせばこなすほど、確かに日本語は上手くなるという効果は見込めそうではあった。
まあそれでも、ゼファーの報告レポートには「難易度が高過ぎる」との一文が付け加えられていた、というオチが付くのだが。
ゼファー達がしていた会話の縛りプレイとは何か?
ではみなさん、よいお年を