戦姫絶唱シンフォギア feat.ワイルドアームズ   作:ルシエド

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 シンフォギア一期の監督が
「インフルエンザは、シンフォギア最大の敵です」
 とtwitterで発言し、ファンが
「シンフォギアは風邪ひいて声がでなくなったらどうするんですか?」
と問うた所、
「当然、死あるのみです」
と答えたそうです


第十三話:灼光の剣帝×小さな花×心気絶招

 シンフォギアは未完成品だ。

 ならば、何がネックなのだろうか?

 これがパソコンならば、純粋にスペックやプログラムが足りていない、となる。

 しかしシンフォギアには、シンフォギア特有の問題というものがあった。

 

 

「……自動調整機能?」

 

「そーなのよー、あたしこれが苦手でね」

 

 

 特に、『歌の波形と聖遺物の波形を共鳴させる』『素肌の上に纏う』『負荷を軽減させる』

 といった、纏う人間に関わる部分が特に。

 了子はそういうシンフォギアの側面を、ゼファーにちゃんと教えておくべきだと考えていた。

 

 

「声変わりって知ってる?」

 

「いえ、初めて聞きました」

 

「男の子の方が顕著だけど、人は成長期に声質が変わるのよ。

 背も伸びるし、体格も変わりやすいのよね、思春期の子供って……」

 

「……声? あ」

 

「声の波長が変わったら、すぐにシンフォギアなんて扱えなくなっちゃうと思わない?」

 

 

 『適合者』の定義は、自らの歌……いわば声で聖遺物を活性化させ励起状態にし、一度エネルギーレベルまで聖遺物を分解した後、自らの身に鎧として纏える者であることだ。

 システムの補助を前提として、これが行えない者は適合者ではない。

 薬剤で後天的にこれらの能力を会得した者や、聖遺物と肉体が物理的に融合しているという定義を持つ融合症例も、厳密には適合者ではないのである。

 シンフォギアは、使い手の肉体的な適性という壁をどうしても無視できない。

 

 そして声は、人間である以上必ず変わってしまうものだ。

 男性は思春期に一気に、女性は一生をかけて徐々に声が変わって行く。

 だから子供と老人の声は性別の違いが分かりづらいが、思春期直後の男女の声は違いがとても分かりやすいのである。

 もしかしたら適合者が少女しか見付かっていないのも、その辺りに理由があるのかもしれない。

 

 身長が伸びる、体格が変わる、声質が変わる、体質が変わる。

 思春期の子供にならどれも十分にありうることだ。

 そしてシンフォギアが声を媒介に発動し、人の身に纏われる以上、それらの微妙な変化はある程度オートでシンフォギア側が調整してくれなければ困る。

 例えば出血多量でバイタルが変化してシンフォギアが纏えません、なんてギャグみたいな洒落にならない出来事が起こってしまうことだって、十分に考えられるのだから。

 今は研究班が週一で調整しているが、それでは同時運用できるシンフォギアの数もたかが知れてしまうのである。

 

 

「適合系数も体調で左右されちゃうのよねえ……

 知ってる? 翼ちゃん、最近誤差の範囲だけど調息だけで系数上下できるようになったのよ」

 

「適合者が皆ツバサみたいな子ってわけでもないでしょう……たぶん」

 

 

 そして適合者のシンフォギアへの適性を示すものに、適合係数というものがある。

 これは純粋にシンフォギアとの相性の良さ、特にシンフォギアからのバックファイアを低減できる度合いを示している。

 そしてこれまた、装者の体調によって微妙に上下するのだ。

 シンフォギアからの反動は、最悪装者を死に至らしめる。

 適合係数の変動に対応し、シンフォギアがオートで出力を変えられるように調整できるようにしておかなければ、最悪の事態は十分にありえるのである。

 

 翼が調息で適合係数を気まぐれに上下させるのに合わせ、シンフォギアの方が形を変えてくれるくらいの完成度がなければ、シンフォギアは完成とは言えないだろう。

 

 まあ、そう考えてみるとよく分かる。

 体型、体質が変動しやすい思春期の成長の変化を判別し自動で調整。

 装者の体調の変化をリアルタイムで感知して調整。

 小さな変化も見逃さず、長期・短期どちらの変化にも自動で対応できるシステム作り。

 ……こんなシステムが出来れば、医者が不要になりかねない。

 それでも、その完成形を彼女らは目指しているのだが。

 

 

「それで、他の研究者の方の論文も読んでたりするんですか」

 

「そゆこと。ありがとね~、ゼファー君」

 

 

 ゼファーは自分の隣の荷台に乗せていた、プリントアウトした論文の束を机の上に置く。

 それもドスン、と音が鳴る量だ。

 公開論文の中から参考になりそうなキーワードを片っ端から検索にかけ、引っかかったものを適度にゼファーが選り分け、ひたすらプリントアウトしたものだ。

 研究は何が役に立つか分からない。

 周囲から『天才』の呼び名を欲しいままにする櫻井了子も、たまには他人の論文を見て外部からの刺激を得ようとしているのだろうと、そうゼファーは推測する。

 

 そんなこんなで、能力でなく労力が必要な単調作業のお手伝いをこなしたゼファーは、論文を机の上に置いたのだが、その際に了子のパソコンの画面が目に入る。

 画面内のメールは受信したものであるのに、宛先の名が『櫻井了子』ではなかったのだ。

 

 

「アイオーン……?」

 

「私のペンネームみたいなものよん。

 そのメールは、アメリカの生化学の専門家と意見交換をしてたやつかしら」

 

 

 メールの内容はパスを入れないと見れないようにロックがかかっているという徹底ぶり。

 中身は結構ヤバゲなものが入ってるかも、なんてゼファーは思った。

 そして「生化学」というフレーズを聞き、ゼファーはウェルのことを想起する。

 直感が何故かいきなり唐突に想起させたそれに、彼は少し懐かしい気持ちになった。

 

 

「シンフォギアの性能の方はまだ難関多いけどねぇ。

 適合者の新規調達に関しては目処が付いてきたわよ」

 

「え、ホントですか? この前まで数千万人に一人しか居ねえ! って愚痴ってたのに……」

 

「私、天才だから。うふっ」

 

 

 了子は何故か小指でクイッとメガネを押し上げる。

 そんな彼女を、ゼファーは心底頼りになると尊敬していた。

 二課設立も、シンフォギアの作成も、彼女の才覚と尽力によるところが大きい。

 と言うか、彼女が居ないと何も始まらないレベルだ。

 了子、翼、弦十郎の三人が横並びに換えが効かない、と言っていいくらいに。

 

 ゼファーがここに来た頃から、彼女はずっと気にかけてくれていた。

 彼が来る前は大人に囲まれて縮こまっていた、翼の話し相手にもなっていたという。

 能力的にも、人格的にも、ゼファーは彼女を尊敬している。

 ちゃらんぽらんな所が玉に瑕だが、『気のいい姉』のようにゼファーは思っているのだろう。

 その印象を口に出したことは、一度もないのだが。

 

 

「了とは終わりを意味する漢字一文字!

 私の名は櫻井了子! 終わりの名を持つ者よ!」

 

「なんでまた唐突にテンション上がってるんですか!?」

 

 

 傍目には、まあなんだかんだで歳の離れた姉弟に見えるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十三話:灼光の剣帝×小さな花×心気絶招

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冬が終わり、春になって少々の時間が経っても、彼と彼女は変わらない。

 風鳴道場には今日もぶつかり合う音が響く。

 ただしそれは、肉と肉がぶつかり合う音ではない。

 ゼファーは金属製のエアガン。翼は木刀。

 互いが互いの獲物を狙い、真摯に打ち込み合う音であった。

 

 

「……」

「……」

 

 

 ゼファーが手にしている二丁の銃は現物以上に頑強に作られたエアガン。

 発射されるBB弾の軽さもあり、弾速は実弾に及ばずとも相当なものだ。

 対する翼が手にしている木刀も、修学旅行で男子が買うような粗製濫造品ではない。

 素材からして格の違う、木刀界の大業物とでも言うべき名作だ。

 

 翼がゼファーの右脇に打ち込む。

 ゼファーが二丁銃を至近に揃えて受け止める。

 ギリギリと鍔迫り合いが始まるが、銃も木刀も破損した様子は見せていない。

 二人の戦闘について来れるだけの品であることは、確かだった。

 

 

「ッ!」

「っ!」

 

 

 鍔迫り合いが解かれ、互いに一歩距離を取る。

 次に先手を取りに行ったのは、ゼファーではなく翼であった。

 翼の早撃ち、神速の初太刀が袈裟懸けに迫る。

 

 ゼファーはそれを、銃を添えて受け流しつつ、斜め前に身を屈めながら踏み込んだ。

 袈裟懸けを受け流しつつ、ゼファーは銃を撃つ。

 BB弾とはいえ、その弾速は弾の小ささもあってほとんど目に見えない。

 遠距離から撃つだけでなく、距離を詰めつつ撃つこともあるというのが、実戦慣れしたゼファーらしい戦い方だ。

 

 しかし、翼は腰を捻って一発をかわし、頭を振ってもう一発をかわす。

 剣が届く距離ですらこれだ。彼は遠距離からも何度か撃ったが、一発も当たりはしなかった。

 彼女はゼファーの指の動きと銃口の先を見て、引き金が引き絞られる音を聞いている。

 目か耳のどちらかがあれば、彼女は容易にかわせるのだろう。

 それも当然だ。翼のこの回避術は、そもそも実弾を想定した風鳴の技なのだから。

 

 早撃ちを受け流しつつのゼファーの攻撃はかわされた。

 ならば、翼の返しの二の太刀がすぐに来る。

 

 

(来るか、風鳴の四剣……!?)

 

 

 何度か試合を繰り返す内、ゼファーは『早撃ち』が単独で完成された剣ではないことを知った。

 翼が剣を用いて繰り出す、四種一体の剣技の内の一つであったのだ。

 厳密に言えば、早撃ちに足りないものを補うための三種が後付けされただけなのだが、ゼファーがそんな細かい経緯を知る由もない。

 

 稲光より疾き最速の剣、風。

 零時間抜刀、瞬間剣閃を目指した早撃ちという奥義。

 無の境地より放たれる、林。

 風鳴の剣の無数の型の集合体、翼が考えるよりも先に放たれる無意識の剣。

 ただ威力だけを求めた、火。

 シンプルに一閃の威力だけを求めた剣。

 静かに動かぬ防御の剣、山。

 直前の剣の隙を消し、残心を重視した、攻撃を防御として成立させる技。

 

 そして恐ろしいことに、これの四剣は連撃として組み立てられることが多い。

 なんでそんな属性過多な奥義が一杯あるんだよ!一つで十分だろ! とゼファーが内心で思っているのも仕方のない事だろう。

 風林火山、逆羅刹のような奥義が他に幾つもあるというのだから、常人は卒倒ものである。

 

 早撃ちの風は受け流した。

 ならば、次はどれが来るか?

 そんな思考をする暇もなく、返しの二の太刀、火の一撃が迫る。

 

 

「―――!」

 

 

 それをゼファーは、二丁の銃をクロスして受け止めた。

 不思議に思わなかっただろうか?

 以前は見えてもいなかった早撃ちを、受け流しているゼファーに。

 ある程度とはいえ、翼と真正面から打ち合えているゼファーに。

 翼は銃口、指の動き、引き金が動く音を参考に実弾ですらも処理し切る。

 そしてゼファーも、似たような感知と対応をしているのだ。

 

 ゼファーの直感は先日の戦いの中で更に鋭敏になった。

 本当になんとなく、目の前の人間の意識の流れや筋肉の予兆動作が感じ取れるくらいに。

 進化した直感を用いることで、ゼファーは単発の早撃ちならば防げるようになった。

 以前の再戦の時のように隠し球のオンパレードを披露せずとも、頑張れば翼相手に食い下がれるくらいには強くなれたのだ。

 

 

(……重、いッ……!)

 

 

 しかし、それでもなんとか食い下がれる程度。

 両者の間にはまだまだ明確な実力差が存在していた。

 ゼファーはクロスした銃で受け止めた翼の木刀を、力を込めて押し返そうとする。

 翼の体勢を僅かでも崩そう、という魂胆なのだろう。

 しかし動かない。ピクリとも動かない。

 まるでゴリラと腕相撲をしているかのようだ。

 

 対し翼は、力だけでなく技も織り交ぜる。剛柔自在こそが彼女の真骨頂。

 ゼファーが木刀を押して来たのを木刀越しに感じ取ると、唐突にすっと木刀を引いた。

 力一杯押しても動かなかった木刀が、不意に動かされたことでゼファーは体勢が前に流れ、体勢を崩そうとして逆に崩された形になった。

 木刀を引くと同時に一歩引いた翼は構えに移り、ゼファーは転びかけている。

 力も技も、翼はゼファーの上を行っていた。

 

 ゼファーはかなり無茶をしないと翼の体勢を崩せないが、翼は一歩動くだけ、木刀を少し引くだけでゼファーの体勢を崩せる、その証明でもあった。

 ゼファーの体勢が僅かに崩れた一瞬の隙に、一歩引いただけの翼の待ち構えていた一撃が叩き込まれ、終わり。戦いは、その一撃で幕を閉じる。

 かに、見えた。

 

 

「ッ!?」

 

 

 性格が所以か、技能が所以かは定かではない。

 ゼファーは、視点の広さという点において、翼の上を行く。

 銃から撃っていたBB弾。翼はこれを銃口から出る飛び道具としか認識していなかったが、ゼファーは違う。彼は過去に、薬莢を踏んで転んでピンチになったことがあった。

 経験は、過去は、その人間に何かを学ばせる。

 ゼファーは自分が放った十数個のBB弾の位置を、全て把握していた。

 

 そして、『踏ませた』。

 翼は道場内ということもあって素足だ。鍛えているとはいえ、少女の足裏である。

 そんなかかとで、翼は思い切りBB弾を踏んだ。

 否。踏ませられたのだ。相応の痛みと同時に、足を滑らされる。

 木刀を引く所までは正着だったが、そこから追撃に一歩足を引いたことが仇になった。

 

 ゼファーお得意の、即興奇襲の小細工だ。

 

 

(畳み掛けるッ!)

 

 

 追撃を仕掛けるゼファー、転びかけている翼、立場が一瞬で逆転する。

 ゼファーは木刀を引かれて体が前傾したことを利用し、体勢を立て直しながら跳躍。

 前方宙返りの踵落としを繰り出した。これが当たれば翼とて沈むだろう。

 自壊寸前でボロボロだったとはいえ、中型ノイズを一撃で沈めた威力は伊達ではない。

 だが、翼が体勢が崩れているとはいえ、この攻撃に何の手も打てないのか?

 否。断じて否だ。

 彼女の持つ技術は、血脈は、積み上げてきた修業の日々は、そんな軽いものではない。

 

 

「―――!?」

 

 

 ゼファーは回転する視界の中で、信じられないものを見た。

 翼が木刀を使い、棒高跳びのように、木刀一本で自分の身を跳ね上げたのだ。

 想像してみればいい。座って木刀を振り下ろし、床を叩いた反動で跳べる人間が居るものか?

 だが、そんな常識的な考え方はこの一族には通用しない。

 翼は飛び抜けた技量と鍛えた筋力により、この馬鹿げた現象を引き起こしたのだ。

 

 そしてそのまま、もう一度床を木刀で一突き。

 反動で壁に向かって跳び、壁を足場にして足で再度跳躍。

 踵落としが空振ったゼファーの頭上を、羽でも生えているかのように軽やかに、翼が飛ぶ。

 鮮やかに彼の頭上を取ったと同時に、彼女は足の指で木刀の先を強く挟み掴んだ。

 片手と片足による、足の指を鞘の代わりとした、抜刀術の右手撃ち。

 

 

「飛沫と果てなさい」

 

 

 見る者の背を凍りつかせる、断破の一閃。

 ゼファーがかわせるはずもなく、綺麗に直撃。

 今日の勝負は、これにて決着と相成った。

 

 

「あだ、あだだだだ……これで俺の199敗1分けか」

 

「1勝199敗でしょ?」

 

「頑固な奴め……」

 

「そっちこそ」

 

「おうお前ら、今日も早いな」

 

「あ、ゲンさん! おはようございます! 今日もご指導ご鞭撻よろしくお願いします!」

 

「おう、任せておけ! しかし日に日に難しい言葉を覚えていくな、ゼファー」

 

「ふふっ、私が教えました」

 

「お、おう。そうなのか」

 

 

 そうして今日も、早朝の特訓が始まる。

 あの日の再戦からゼファーは翼に一度も勝ててはいなかったものの、確かに強くなっていた。

 翼が対等の仲間と見ているくらいには、その差は縮まっていた。

 それでもまだまだ、一勝までの壁は遠く果てしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 子供は成長するものだ。

 それは事実でもあるし、義務でもある。

 いつまでも成長せず、子供のままで居ることは誰にだって許されない。

 そして子供を成長させる、成長するまでの間面倒を見る、それが大人の義務だ。

 幼少期の家庭や学校なんてその最たるものだろう。

 教え、教えられる。育て、育てられる。この構図はとても分かりやすい。

 

 

「それじゃ、今日も始めましょうか」

 

 

 こと、聖遺物に関して教えられる教師なんて、世界中見渡しても両手で数えられるほどだろう。

 それでも二課の一員として生きていくのなら、聖遺物の知識は必須なわけで。

 了子によるゼファーの授業は、今日は翼も生徒に加え、聖遺物講義へと変わっていた。

 

 

「「よろしくお願いします」」

 

 

 風鳴家で頭の下げ方を習ったのか、二人揃って似たような姿勢で頭を下げる。

 ニッコリと了子は笑い、二人に向けて口を開いた。

 

 

「今日は聖遺物の一種、『ゴーレム』の講義をします」

 

 

 了子はそう言いつつ、ホワイトボードにマジックで絵を描いていく。

 何故か妙に上手い。しかも早い。

 数秒の後に、ホワイトボードにはずんぐりむっくりの土人形が描かれていた。

 

 

「聖遺物は破片で発見されるけど、それは武器の欠片であることが多いわ。

 けれど聖遺物は全てが武器というわけじゃない。

 先史文明が残したものなら、それが電子レンジでも、冷蔵庫でも、エッチい本でも。

 使われている技術水準は私達よりも遥かに高い、聖遺物となりえるの。

 武器ばっかりが残ってるのは、先史文明も最後は争いで滅びたからなのだと推察できるわ」

 

 

 了子の手にした教鞭が、ホワイトボードをペチンと叩く。

 

 

「その中でも、限りなく人型に近いロボット群。

 更にその中でも完全聖遺物として形が残っているものを、『ゴーレム』と呼ぶの。

 現存する可能性があるものは最大八種と判明しているわ。

 アースガルズを発掘した遺跡に色々記されてて助かったわ、ホントに~」

 

 

 了子はずんぐりむっくりの土人形の下に、幾らかの文字列を書き加える。

 

 

「氷の女王『リリティア』。

 真銀の騎士『ベリアル』。

 深淵を統べる王『セト』。

 神々の砦『アースガルズ』。

 灼光の剣帝『ルシファア』。

 真紅の暴風『ディアブロ』。

 魔弾の射手『バルバトス』。

 海を征く者『リヴァイアサン』」

 

 

 文字列は八。

 今この世界に存在する可能性があるゴーレムはこの八種のみ。

 その中の真銀の騎士と神々の砦と書かれた部分は、ゼファーが無視できない部分だ。

 名前の羅列を見るだけで、胸の内のどこかに黒い気持ちが浮き上がってくる。

 

 

「とーぜんだけど、完全聖遺物だけあってパワーは絶大よ。

 自律AIもあって人間に負けず劣らずの知能も持ってるの。

 聖遺物の欠片を使ってるだけのシンフォギアじゃ、太刀打ちできる相手じゃないかもね」

 

「そういえば、了子さんは当時アースガルズの解析もしていましたね」

 

「そーなのよー、あれ盗られたの私も悔しくて悔しくてもうね!

 ま、アースガルズの大雑把な出力のデータなんかの推定値は残ったんだけども。

 翼ちゃんが五年くらい修行して、シンフォギアが完成して、その四倍くらいの強さかしら」

 

「何ですかそのモンスター!?」

 

 

 アースガルズが盗まれる前、まだ二課にあった頃に取ったデータから推測した天才・櫻井了子の戦闘力概算に、ゼファーは思わずびっくり仰天。

 悪人の手に渡った場合など、想像もしたくない。

 それを聞いて、彼もほんの少しだけ風鳴家が問われた責任の重さを理解できた気がした。

 理解はできても、納得はできないが。

 

 

「経年劣化で全部残ってるとは限らないけどね。

 それじゃ、はたまたまたまた授業を再開するわよぅー」

 

 

 おちゃらけた話し方も混じえる了子の話し方は、少人数相手では非常に効率がいい。

 そうしてこうして、ゼファーや翼に聖遺物の基本知識が叩き込まれていく。

 休日返上で二人にこうして熱心に教えてくれるあたり、櫻井了子はコモンセンスで言うところの『いい女』というやつなのだろう。

 ゼファーや翼が慕っている理由が、よく分かる。

 授業開始からきっちり一時間半後、了子は両手を叩いて鳴らした。

 

 

「はい、それじゃあここまで。二人とも、お疲れ様でした」

 

「「ありがとうございました!」」

 

 

 二人が了子にキチンと礼をして、今日の授業は終了する。

 了子はそのまま研究室に直行。

 ゼファーと翼はぶらぶらとしつつ、訓練室に向かっていた。

 

 

「訓練する?」

 

「ツバサがするなら、付き合うよ」

 

「ありがとう」

 

 

 時間が出来たから訓練するという少女も、友達付き合いでそれに付きあおうとするゼファーも、この年頃の子供としては……という点に目を瞑れば、まあ健全なのかもしれない。

 

 

「そういえば、その手袋ってどうしたの?」

 

「これ? 友達にプレゼントで貰った」

 

「……」

 

 

 某日の、ゼファーが一課と二課と共に戦ったあの日の翌日。

 ゼファーは未来との約束を果たした。

 大事件が起こったせいで子供達が家に押し込められるということもなく、ゼファーが死ぬなんてこともなく、彼は友達と遊びに行くという日常の中に帰って来れた。

 平和な日常が、そこに戻るという意志が、戦場で彼の背中を押していたことは疑いようがない。

 それを守るという意志、そこに帰るという意思は、古今東西兵士に力を与えるものだ。

 

 その日、響と未来はゼファーと子供らしい遊び方をしていたが、その最中に何故か時折考え込み始め、やがてゼファーを引っ張って近くのファッションショップに連れ込んだ。

 何事かと、ゼファーは問う。

 その手が目立ってるよと、響は言った。

 日本に来てから数ヶ月が経ち、ようやくゼファーは自分の手が周りからどう見えるかを察した。

 

 ゼファーの両手は、元々銃痕や切傷の痕が数え切れないほどあった。

 その両腕が、F.I.S.での最後の戦いで醜く焼け爛れている。

 薄手の長袖だからか今はさほど目立っていないが、それでもすれ違う人の何人かはそれが目に付いたようで、視界に入る度に珍しいものを見る目でゼファーを見ている。

 ゼファーが外国人という物珍しさも相まっているのだろう。

 彼はいわゆる、悪目立ちをしていた。

 

 気にしない、とゼファーは言った。

 友達がああいう目で見られるのは私達が嫌なの、と未来は返した。

 そう返されると、ゼファーは何も言えなくなる。完敗だった。

 響と未来は、ゼファーと一緒に居る自分達が変な目で見られることなど気にもせずに、ゼファーが周囲からどう見られているか、それだけを気にしていた。

 友情に厚い、本当に気のいい娘達だ。

 

 

「付け心地もいい感じ」

 

 

 手袋自体は大して高くもない、黒い手袋だ。

 ただ響がうーんと悩んで決めてくれたからか、デザイン自体はかっこいい。

 革のような高いものではない代わりに、現代の合成素材特有の付け心地の良さ、洗いやすさ、通気性、機能性などの優れた部分がある手袋であった。

 何より、友達から貰ったというのが大きかった。

 それだけで、ゼファーにとってのこの手袋の価値は倍増しているのだろう。

 

 彼に自覚はないのだろうが、戦いの中で傷付き焼け爛れた両腕を、平和な世界に生きる友から貰った手袋で覆い隠すという行動は、彼の人生の転換点を象徴するようなものだ。

 

 翼もそういう、どことなくこの国の雰囲気に馴染み切れていなかったゼファーが馴染んでいく過程に色んな感情を覚えていたが、黙り込んだのはそれが理由ではない。

 ゼファーが彼女の知らない友人と仲良くしてると聞いてもにょったのだ。

 友達の少ない子供が、自分の一番の親友が自分の知らない奴らと楽しそうに話していて、なんとも言えない舌打ちしたくなる気持ちになるのと同じようなものだろう。

 自分だけが餌を上げていると思っていた野良猫が、他所の家でも媚びた声を出して餌を貰って可愛がられていた、と気付いたような複雑怪奇な感情。

 

 けれどそれに文句を言うのは筋違いだというのも分かっている。

 彼は怒られるようなことはしていない、むしろ彼の友人の好意も含めて祝福してあげるべきことだ、不満を抱く道理が自分にあるわけがない、と理性的に考えている。

 それでも感情的になってしまっているから、だから彼女は黙っている。

 今の翼はそういう状態だ。

 つまり、もにょっている。

 

 なんとも思春期らしい。

 色っぽさはないが、悩み事が増え始めているのが年頃といった感じである。

 

 

「ん? おーいそこの少年少女こっち来い、チョコやるぞ」

 

「? あ、天戸さん。怪我はもう大丈夫なんですか?」

 

「お前ほどじゃないがな」

 

 

 廊下を歩いて行く二人の前方から、二人を呼び止める声が響いた。

 声をかけたのは天戸。その横で袋を漁る土場と甲斐名の姿も見える。

 先日の戦いで骨折した天戸は、今でも腕に包帯を巻いている。

 骨折が数秒で治るゼファーくんと一緒にしてはいけません。

 

 

「で、今日はお三方は何を……」

 

「ん? ゼファー君達か。なに、私達は休憩にお菓子を摘んでいるのだよ」

 

「お菓子?」

 

「そ。僕らが買って来たやつじゃなくて、事務の人が買って来たやつだけどね」

 

 

 天戸に続いてゼファーと翼に気付いた、土場と甲斐名がゼファーの疑問に応える。

 ドンキ○ーテと書かれた白い袋の中身を漁る二人の手は止まらない。

 廊下の一部となっている休憩所のテーブルの上のバスケットの中に、ぽいぽいとお菓子が次々と投げ込まれていく。

 メジャーなお菓子は、全て揃っていそうなくらいの勢いだった。

 

 

「好きなの取っていいぞ」

 

「好きなの、と言われましても……」

 

 

 どれも同じじゃないか、とその時ゼファーが口にしなかったのは、大正解だった。

 

 ゼファーの隣から無言で頭を下げる、翼の手がすっと伸びる。

 その手は迷いなく、ポッキーへと伸びていった。

 気付けば少年の目の前の男達三人も、お菓子に伸ばす手は全く迷いがない。

 天戸はキットカットに手を伸ばしていた。

 土場はきのこの山に手を伸ばしていた。

 甲斐名はブラックサンダーに手を伸ばしていた。

 

 何故か空気が、緊張しているようでしてなくてやっぱりしていた。

 ゼファーの直感ですら、どちらなのか分からない、曖昧な緊張。

 微妙に、四人から何かを探られているような気すらする。

 

 

「ポッキー食べてみる?」

 

「あ、ああ、ありがとう。ツバサ」

 

 

 翼に勧められるままに、ゼファーはポッキーを口にする。

 甘くて美味しいと、ゼファーの脳内にお菓子全般に感じる感想が浮かぶ。

 

 

「俺のも食べてみるか?」

「私のも食べてみるかい?」

「僕のも少し分けてあげるよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 何故だろうか?

 善意で分けてもらったはずなのに、ゼファーは何か善意以外のものを感じ取っていた。

 それは彼の知覚でなければ、気付くことも出来やしない無言の圧力。

 探るような意識の流れ。

 陣取りゲームで互いを警戒するかのような空気、その場で四人がそれぞれの領土、それぞれの領域を主張し、互いに牽制しあっているかのような雰囲気。

 視線が時折交錯しているように見えるのは、本当に気のせいなのか。

 

 ゼファーは勧められた三人のお菓子を口にする。

 どれも同じように美味しい。固定客がつくのも納得の味だ。

 まあ、ゼファーはその味を他人ほどに分かってはいないのだが。

 そうして四人に勧められるままに、次々とお菓子に手を付けさせられていく。

 ゼファー本人の意志ではなく、絶妙にその意思が誘導されるという形で。

 かくして少年は、そこにあったお菓子を全て一口づつ食べ終わっていた。

 

 

「で、どれがゼファー君は一番美味しかったかな?」

 

(え? あれ? 本題これ?)

 

 

 かくして本題。その問いが土場によって口にされることで、場の空気がまた変わった。

 息苦しいというより、視線を感じる居心地の悪い空気だ。

 周囲四人からの、新卒を見極めようとする面接官のような、新しい自分達の仲間を見出そうとする試験官のような、ドラフト指名中継を見るかのような視線。

 そこには悪意も敵意も好奇心も究明心もなく、ただ事実を食もうとする意思のみがある。

 

 ゼファーは、ここでどう答えても敵はできないと分かっていた。直感である。

 ただし仲間が『できてしまう』とも分かっていた。

 悪意もなく敵意もない、喧嘩も戦いもない生ぬるい派閥闘争に巻き込まれるという、確信に近い予感があった。

 

 しかし、それも薄氷の上。

 たけのこの里に手を伸ばしかけた時、ゼファーは土場の瞳の奥に一瞬途方も無い闇を見た。

 選択を間違える訳にはいかない。

 なまじ「これが一番美味しかったよな?」という意思だけが伝わってきて、それ以外のお菓子の美味さを否定する意志が伝わってこないことが、恐ろしさに拍車をかける。

 

 

(なんでお菓子選ぶだけでこんなに緊張しなくちゃならないんだろうか)

 

 

 考えるのに疲れ、ゼファーはもう全ての思考を放棄。

 一番気に入っていたお菓子におもむろに手を伸ばし、その袋を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで後日。

 少年1、少女2の三人組が買い物袋を手に道を歩いている。

 

 

「そんなこんなでお菓子をこんなにたくさん買って来たと」

 

「手袋のお礼どうしよかって悩んでたんだけどさ、結局これにした」

 

「うへへー、お菓子がいっぱいですなー」

 

「響、食べ過ぎたらお夕飯入らなくなるんだから一つにしておきなさい」

 

「はーい」

 

「お前ら本当に姉妹みたいだな……」

 

 

 ゼファーは手袋のお礼に、お店の棚のお菓子を片っ端から1つづつ買っていった。

 大きなものはないとはいえ、響と未来に10~20個づつはありそうだ。

 礼を言って受け取ったはいいものの、未来は「太る」という言葉が頭の中にちらついて、少しだけ素直に喜べない。

 けれど響は素直に喜んで、小枝を食べていた。

 そんな響につられるように、未来もアルフォートを口にする。

 そしてゼファーも、コアラのマーチを口にした。

 

 

「やっぱバラけるんだな、お菓子の好みって」

 

「好きなものは人によって違うもの。皆違うのが普通でしょ」

 

「私はこの袋の中のお菓子全部好きだよ?」

 

「ヒビキは誰とも喧嘩しなそうだな。俺はそういうとこ素敵だと思うよ」

 

「そっかな? えへへ」

 

 

 結局ゼファーの選択は、どこの派閥にも組さないことであった。

 袋を開けて一つ摘むたび、新しい絵が目に入るのがたまらなく楽しいのだと彼は言う。

 翼がポッキー派で、天戸がキットカット派で、土場がきのこの山派で、甲斐名がブラックサンダー派で、響が全部好き派寄りの小枝派で、未来がアルフォート派であるように。

 ゼファーは全部好き派寄りの、強いて言うならコアラのマーチ派であった。

 

 食べ物の好き嫌いの数は人の好き嫌いの数に比例するという。

 何でも美味しいと食べるゼファーは、イコールで大抵の人間を好きになれるということもでもある。しかしコアラのマーチを選んだように、『特に好きな人間』というのも、確かに居て。

 『友達』なんていうものは、その中でも特に好きな部類に入っている。

 

 けれど、全て好き、という前提には変わりない。

 美味しいと凄く美味しい、好きと大好きしかないのであれば。

 好きな人を助けようと当たり前のように思う気持ちは、とても幅広く作用する。

 

 

「あ」

 

 

 未来が道路の途中で、買い物袋が破けて中身がこぼれてしまった老婆を見つける。

 必死に拾い集めるも、近くを通る人はこぼれてしまったものを踏まないようにするだけで、さっさと通り過ぎて行ってしまう。

 しかし、いつの間に移動したのか。

 未来がその老婆を目にしたその時には、ゼファーは既に拾うのを手伝っていた。

 

 相変わらず行動が早いというか、反応が早い。

 未来は親しい友達二人のどちらかと一緒に居ると、いつもこんな光景を見ている。

 困っている誰かと、手を差し伸べる誰かがそこに居る、そんな光景を見る。

 何故ならば。

 そういった意味で少しだけ、ゼファーと響は似た者同士だからだ。

 

 

「ありがとね、お坊っちゃん、お嬢ちゃん」

 

「いえ、困ってたみたいだったので」

「元気有り余ってますから!」

 

 

 ゼファーほど早くはなかったが、響も老婆を見つけた途端走っていった。

 老婆を見付けても「すぐに助けないと」とは考えない、ごく普通の常識的な範囲で優しい小日向未来は、置いて行かれたような気持ちになる。

 小日向未来は、他人より『人を見る目』というものがある。

 それは異能というほどではないが、この年齢の子で備えている者は多くない。

 だからか、老婆が落としてしまったものを拾い集める二人の背中に、決定的な違いを見出していた。

 

 普通の人にとって、人助けは良心だ。

 自分に余裕がある時にやるかやらないかを気分で決める、決して義務ではない何か。

 人が良心で行う人助けは、警察官が仕事でするそれとは違うのだ。

 それは絶対に、義務などではない。

 

 立花響にとって、人助けは『趣味』だ。

 毎日のようにしてるわけではないし、それをすることで彼女は達成感や満足感を感じているように見える。彼女はしたいからしているのであって、その過程の苦労を苦としない。

 むしろどんなに疲れても、「ありがとう」の一言で元を取っているのだと分かるくらいに喜ぶ。

 彼女はやりたいようにやり、誰かを助ける。

 やりたくないと思うなら、流石にそこで手を差し伸べようとはしない。

 「人助けは一番響らしいことだ」と未来が言うくらいに、彼女は生来のお人好しだった。

 

 

(でも、違う)

 

 

 最初は勘違いかと思った。

 けれど日々を共に過ごす内に、未来は響が見えていない深いところまで、ゼファーの心中を覗いていた。そして確信を持つ。

 今では彼に対し、漠然とした不安と心配まで抱いている。

 

 響にとって、人助けは趣味だ。

 だが、ゼファーにとっての人助けは『呼吸』であるように見える。

 そこまで来ると逆に不安になってくるのが、当然の人の心というものだろう。

 趣味はしなくても死なないが、呼吸はしなければ死んでしまうのだから。

 だからこそその根本は、善性でもない。良心でもない。

 善いことでもなく、良いことでもなく、彼にとってそれはきっと生きること。

 生き苦しさ、息苦しさを感じても、きっと生きている限りやめないこと。

 

 気が向くかどうかで、やるやらないを決めるものでもなく。

 それは悪いことだ、と周囲の全ての人間に言われて止めるものでもなく。

 彼の中で生きるということと、人を助けることはイコールなのだ。

 生きたいという気持ちと、生かしたいという気持ちが同一であるということは、そういうこと。

 

 彼を見ていると、未来は比較で確信できるのだ。

 響はまだ、まともの範囲の中に居ると。

 ゼファーはもう、まともの範囲の外に居ると。

 二人の間に横たわる境界線は、どちらの側にもその気になれば踏み越えられるものなのだと。

 

 

(……ゼっくんだけ、こっちの側に戻って来てくれれば、それが一番なんだろうけどな……)

 

 

 平和な日々が続くなら、ゼファーが助けなければならない人がほとんど居ないような日々が続くなら、きっとそんな日も来るだろう。

 衝撃的な事件で人が変わることもあれば、流れる時間が人を変えることもある。

 ゼファーもいつか、未来が望むように、まともの範囲の中に戻って来るかもしれない。

 そんな日が来れば、その時ようやく未来は友達を心配しなくてもよくなるのだろう。

 誰も戦わなくていい世界こそが、小日向未来の望むものに違いない。

 

 ずっと平和が続いてくれるなら、何事も起こらないなら、それが一番。

 二人に対して心配することなんて何もない。

 そう、自分に言い聞かせるように、小日向未来は平和が続くようにと祈る。

 

 心中で神様に向かってそう祈りながら、未来は二人と老婆に手を貸すために、駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、その祈りは通じなかった。

 この日から数日後、またしても平穏は破られる。

 

 『それ』は、光の翼を広げてやって来た。

 光の刃を生む剣の柄を携え、光の銃を腰に吊り。

 光と共に、光の速さでやって来た。

 彼の者のの異名は『灼光の剣帝』。

 

 灼光の剣帝"ルシファア"は、その日、何の予兆もなく彼の前に現れる。

 

 その後背に、少なくないノイズを引き連れて。

 




・灼光の剣帝『ルシファア』
 だいたいウルトラマンぐらいの強さを想定

 トータルバランスを重視したハイエンド型として開発された最強のゴーレム
 攻撃、移動、稼働の全てに光を用いる
 つまり光速の異名を持ち反物質を自在に操る高貴なる人形騎士
 原作では星を一撃でぶっ壊す奴よりもはるかに高い攻撃力を持つと言われた(バランス型なのに)
 地球は壊せる、宇宙でも戦闘可能なフリーザみたいな奴

 武器の剣の名前が『ビームフェンサー』
 あっ

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