戦姫絶唱シンフォギア feat.ワイルドアームズ   作:ルシエド

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 本編で街中にノイズが出現した時、そのちょっと前入院明けに勝手にシンフォギアで無双していた翼さんを「メディカルチェックが終わってないから出撃はさせない」と断言した弦十郎の旦那は男の中の男

 シンフォギア本家一話の事件の被害は、ノイズに4000人近く殺されて、ノイズから逃げる人達が将棋倒しや我先にと他人を傷付けたせいで最終的に死者行方不明者12874人だったそうです
 死傷者総数、じゃないのが恐ろしい
 『殺しにくる災害』の被害って想像以上に恐ろしいものだと思いますよ


第十八話:そして罪人は英雄に至る

「信じて下さい。そうとしか言えません。

 ……俺を、ゼファー・ウィンチェスターを信じて下さい」

 

 西風の中、少年はビルの上の更に上、落下防止の手すりの上に立つ。

 

「力そのものに善悪はない。きっとこの力にも善悪はない。

 善悪は使う者次第で……力があるから正しいってことも、間違ってるってこともない。

 持ってるだけで正しくなれる力はない。悪者になる力もない。

 力は力。ただそれだけ。俺は力に善悪はないって信じてます。

 力を得たなら、それを正しく使わないといけないと思うんです。少なくとも」

 

 戦いが目の前に迫っている。

 彼は知る由もないが、運命の分岐点もすぐそこまで迫っている。

 

「命を助けられるのに助けないのは、間違ってる」

 

 後に、日本の歴史の1ページとして刻まれる大事件。

 

「俺には駆け付けられる足がある。差し伸べられる手がある。なら、できることをしたいんです」

 

 役者は揃った。世界を震撼させる大舞台の、幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十八話:そして罪人は英雄に至る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼファーがノイズの出現時に、五指に入るほど警戒していることがある。

 『増援』である。

 正確には一次出現から時間差で出現する、ノイズの二次出現のことだ。

 彼はさんざん、この二次出現による奇襲に悩まされて来た。

 直感がある分他の人間よりずっと安全ではあるものの、触れれば人を殺せるノイズが戦闘中にどこからともなく現れるというのは、笑えないくらいに心臓に悪い。

 

 ゼファーはこれを、交通事故に近い不運と割り切ってきた。

 が、彼が人生で見てきた多くの二次出現の話を聞き、オペレレーター陣の頭のいい者達はそうは思わなかったらしい。

 二課は研究班が特に頭のいい面々だと認識されがちだが、データを集め整理し統計を組み上げる、二課オペレーター陣も一人一人が他部署ならばエース級の優秀な人材の集まりである。

 土場を中心としたオペレーターの一集団が、ゼファーの言をヒントに情報収集。

 そうして辿り着いた、一つの推論があった。

 

「二次出現の間隔予測?」

 

「そう、ノイズが連続で現れる二次出現。

 もしも二次出現が発生したら、という仮定で一次と二次の間隔を予測できるようになったのよ」

 

 甲斐名が問い、了子が答える。

 風鳴弦十郎、緒川慎次、櫻井了子、友里あおい。

 そこに土場、甲斐名、天戸を加えた、二課の各セクションの中核人物達が一同に介している。

 その目的はついさっきまで会議室で弦十郎らが話し合っていた内容を、甲斐名と天戸に伝え、心の準備をさせることであった。

 いい案がないか聞くためではない。

 心の準備をさせるためであり、それ以上でもそれ以下でもなかった。

 

「土場君」

 

「ああ、やはり自分にお鉢が回りますか」

 

「この法則性の発見者の貴方が話さなくて、誰が話すのよ」

 

 了子が話を振ると、土場が神妙な面持ちで一歩進み出る。

 普段は甲斐名や天戸と男特有のぶっちゃけた話をしていることが多い土場だが、今日二人に話す内容は常のものよりもずっと、真面目なもののようだ。

 

「まず勘違いしないで欲しいのは、これは統計の結果見つかったものだ。

 異端技術によるものでも、理解が難しいものでもない。

 一時出現と二次出現の間隔は、ノイズの出現数に比例するというだけのことなのさ」

 

「出現数……数が多いほど、時間差が長くなるってことか?」

 

「その通り」

 

 土場はやたら長い髪をかきあげ、ニヒルに笑う。

 そして手元のファイルから出した紙をテーブルの上に並べ、甲斐名と天戸に見せつけた。

 

「今回、過去のデータを総ざらいしてみた。その結果、面白いことが分かった。

 シンフォギアの初実戦投入の時の、数百体出現時には30分ほどの間隔があったが……」

 

 そこに記されている、各ノイズの出現数と、一次出現から二次出現までの時間差の相互関係を示すグラフの絵図と共に。

 

「ノイズが数体出現した時にも、実は二次出現があった。

 数百体の1/100、つまり30分の1/100、18秒の間隔での二次出現。

 他の二次出現データとも照合した結果、出現総数と出現間隔の比例関係が見つかった。

 こうやってデータを見直す機会がなければ、いつまでも一次出現扱いのままだったろうな」

 

 出現時間の十数秒の差など、これまで認識すらされて居なかった。

 ゼファーの言というきっかけがなければ、ただの誤差程度にしか思われていなかっただろう。

 データを徹底して吟味し、誤差の範囲も含めて余すところなく検討しつくし、こうして明確な法則性を見つけ出したオペレーター陣は流石としか言いようがない。

 

 ノイズが特異災害認定を受けてからまだ十年も経っていない。

 こうしてノイズのデータの統計を取って研究するということ自体、まだまだ挑戦している人間が少ないというのが現状だ。

 まだまだノイズというものは、研究が足りていない対象なのである。

 ゆえに、この統計結果もいつかどこかで必ず解明されるはずのものだったのだろう。

 時間が情報を積み重ねれば、天才でなくともいつか辿り着く結論なのだから。

 されど、それが今日この時に得られた成果の価値を否定することにはならない。

 

 彼らはつまり、真っ先にコロンブスの卵を立てた人間なのだ。

 誰よりも早く答えを見つけ、常人には不可能であった『早い』という価値をここにもたらした。

 風鳴弦十郎が集めた特異災害対策機動部二課というチームに、凡人は居ない。

 

「知っての通り、ノイズは『別の世界』からやってくると推察されている。

 複数の世界に跨る位相差障壁こそがその証左だ。

 なればこそ、ノイズが通って来る世界と世界の壁の"ゆらぎ"が存在すると仮定されている。

 このゆらぎの大きさはノイズが通って来る穴の大きさと言えよう。

 二次出現とはこのゆらぎの"ゆり返し"であり、同じ規模のゆらぎとも言える。つまり……」

 

「一次と二次のノイズの規模は同数、あるいは一次より少し少ない数……ってことかい?」

 

「そう考えてくれて構わない」

 

 ここまでくれば、甲斐名も天戸も土場が言わんとするところを察する。

 

「今回の数万体出現は、シンフォギアの初実戦の時のちょうど百倍の数のノイズだった。

 つまり一次と二次の間隔は30分の百倍、3000分……つまり50時間だ。

 あと40時間ほどで、数万体のノイズが再度出現する見込みとなっている。おそらく、都内に」

 

「な……!?」

「おいおい、冗談じゃないぜ」

 

 その被害は、どれほどのものとなるだろうか。

 

「都内に、しかも40時間後って言ったら平日の真昼間だ!

 人口密度も考えれば、二次災害を含めた死傷者数が数十万と出てもおかしくない……!」

 

「俺が前に被災した阪神淡路が6000人死んで4万人くらい怪我したんだっけか?

 おいおい、ノイズ数万体って相当にやべえんじゃねえのか、これ」

 

「二次出現は必ず起こる現象というわけではない。

 ……が、今回は規格外の規模等を初めとして起こる可能性を示す材料が多すぎる。

 詳しいところは省くが……まあ、私は八割起こると思っている」

 

 計算して脅威を叩き出す甲斐名と、経験から危険度を測る天戸。

 両者の思考は、"とてつもなくヤバい"ということで一致している。

 そこに土場が"必ず起こるわけではない"二次出現が、"必ず起こる"と確信できるだけの観測データを持って来たことで、二人の心中の警戒は最大限まで高まっていった。

 

「……いや、でも今の二課なら。

 シンフォギアと今のゼファーなら、僕らでサポートすればそのくらい――」

 

「そこから先は、俺が話そう」

 

 そこで割って入る弦十郎。

 自分が話すべきことを全て話した土場は、空気を読んで一歩下がる。

 発言を遮られた甲斐名は、視線を弦十郎へと向け直した。

 

「結論から言えば、シンフォギアは出せん。ゼファーのあの黒騎士もだ」

 

「!? 風鳴司令、どういうことですか!」

 

「シンフォギアは言うまでもない。

 初の実戦で見つかった欠陥を全て直してる最中だからだ。

 先の数万体出現の時にも出せなかったってのに、50時間で間に合わせられるはずがない」

 

 土場達はこれ以上なく最高のタイミングでノイズの襲撃を察知してみせた。

 しかし、二課にはそれを決定的に打ち崩す手札がない。

 

「甲斐名、天戸さん。前回の戦いの直後、ゼファーの腕がどうなっていたか聞いたか?」

 

「いえ、僕は聞いてないですね」

「俺も聞いてねえな」

 

「骨が見えるほど『ドロドロ』だったそうだ。

 それを見たゼファーの友達の女の子が、大泣きしてしまうほどの有り様だったらしい」

 

「……!」

「ああ、なるほど。弦坊はあの騎士の力を安全に運用できるようになるまで、使わせたくないと」

 

「ええ。少なくとも、俺はゼファーのあの力はまだ使っていいものではないと思えるんです」

 

 弦十郎としても、悩んだ末の決断なのだろう。

 市民の命、ゼファーの命を天秤にかけるような思考。

 判断材料は多すぎて、不確定要素も多すぎる。

 風鳴弦十郎は迷いながら、何が正しいのか考えながら、彼なりの答えを導き出していた。

 

 前回の戦闘でノイズがゼファーを殺すために合体しなければ、千から二千の敵が残っていた。

 了子の取ったデータから、それはほぼ確実なことであったと推測されている。

 数万という数は、今のナイトブレイザーの力でも10分以内に殺しきれる数ではないのだ。

 

 確率が高いとはいえ、ノイズが必ずしも都内に現れるという保証もない。

 ゼファーが暴走して市民を殺すという最悪だってあり得る。

 焔を制御しきれず人を傷付けてしまう可能性までもが提示されている。

 時間切れでノイズのまっただ中にゼファーが放り出される可能性。

 広範囲に散ったノイズの多くを時間切れで倒せずに終わる可能性。

 バニシングバスターが地面に誤射される可能性。

 あの騎士の力を持つゼファーが、まだ未熟な内に殺されてしまう可能性。

 

 そして、予測される出現場所が街中という最悪の状況。

 変身前もしくは変身解除後のゼファーの姿と、変身後のナイトブレイザーの姿を一般市民に見られる、もしくは撮影される可能性。

 ノイズを平然と蹴散らす力を持った個人が、この情報化社会の中に投げ出されるということのリスクを、風鳴弦十郎はよく知っていた。

 『人類最強と呼ばれる男』は、それがどれだけ無責任な他人に多くの無責任なものを押し付けられる立ち位置にあるのかを、本当によく知っていった。

 

「今は、まだ。俺は特異災害対策機動部二課の司令官として信じたい。

 個人の突出した力じゃなく、俺を支えてくれる仲間達の集団としての強さを」

 

「……へへっ、そう言われちゃ僕らも手を抜けないね」

 

「おう、任せろ弦坊。俺らは今回専用のマニュアルを組んで現場待機ってとこか?

 実働部隊を予測できる範囲にバラっと散らして、できるかぎり広範囲をカバー。

 ノイズ出現と同時にそこに全部隊を急行させる……まあ、基本はこんなもんか。

 一課にも話通しておけよ。できれば警察にも話を通しておいたほうがスムーズだがな」

 

「ええ、そっちも抜かりはありませんよ、天戸さん。

 広木防衛大臣を通して話は通してあります。

 当日のカバーストーリーは

 『連続殺人犯が付近をうろついています、この付近には近寄らないように』です。

 それを使ってパトロール強化の名目で警察官を動かし、私服自衛隊員を配備させます。

 あくまで避難誘導を目的として、警察と自衛隊に死者は出させないようにする方針で」

 

「ほう、この10時間でよくやるもんだ。見直したぜ」

 

 大人達は子供が悪巧みをするような顔で、それとは全く正反対の相談をする。

 例えばヒーローが居たとして、ヒーローでなければ勝てない怪物が居たとして、ヒーローが出撃できない事情があるとして。

 そこで「もうダメだ」と思うような人間に大人を名乗る資格はない。

 「ここが踏ん張りどころだ」と吠えるような人間にこそ、その称号はふさわしい。

 やれることをやる、というのはそういうことなのだ。

 彼らはまごうことなく大人であり、子供に全てのリスクと責任を丸投げすることをよしとせず、時に……社会のための最善より、子供のための最善を優先することもある。

 社会のために子供を使い潰すことが最善であったとしても、そうしようとしないこともある、そんな者達である。

 

「なにがあろうと、俺達は俺達の全力を尽くし、責務を果たす。いいな、皆ッ!」

 

「「「 はいッ! 」」」

 

 緒川が、了子が、あおいが、土場が、甲斐名が、天戸が、弦十郎の声に思い思いに応える。

 運命に選ばれた人間でなくとも、聖遺物に選ばれた人間でなくとも。

 他人に丸投げしようとせず、責任を背負い続けようと心に決めて進む限り、彼らの頑張りは無駄にも無価値にもならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼファーは街を歩いていた。

 大事を取って数日休め、と弦十郎から言いつけられたからである。

 そこで部屋でゆっくりするのではなく、人と触れ合うことをゼファーは選んだ。

 

「おや、こんな時間に珍しいね」

 

「こんにちは、おじいさん」

 

 街を歩けば、朝走るたびに顔を合わせる老人と鉢合わせ。

 

「どれ、この饅頭をあげよう。遠慮することはない」

 

「え? あ、ありがとうございます」

 

 静かに笑って、老人は饅頭を差し出してきた。

 戸惑いつつも受け取るゼファーは、老人が貰い物の菓子をやたら若者にあげようとする謎の習性を今日のこの日初めて知るのだった。

 饅頭をかじりつつ、ゼファーは平和な街の中を歩く。何時間も、何時間もかけて。

 

「おや、今日は学校はないの?」

 

「あ、こんにちは。そもそも俺、学校行ってるわけじゃないですよ」

 

「え? そうなのかい?」

 

 通りすがったお好み焼き屋のおばちゃんに、挨拶をしつつ足を止めるゼファー。

 リディアンに近く、おばちゃんの女性らしい気遣いで常に小奇麗でこじゃれた雰囲気のあるこの店は、普通のお好み焼き屋が持つ男性の支持層だけではなく、若い女性にも支持を受けている隠れた名店である。

 店主のおばちゃんと話したことはあっても、お好み焼きを購入したことはないというのがいかにもゼファーらしかったが。

 

「昼御飯はもう食べた?」

 

「いえ、まだです」

 

「ちょうどよかった。さっき私が昼食用に作り過ぎてね。

 人助けと思って、貰ってくれないかい?」

 

「そうなんですか? ……人助けというなら、喜んで頂きます」

 

 実際は作り過ぎてなどいないのだが、"作り過ぎたからおすそ分け"という常套句を知らないゼファーには、違和感は感じられてもいまいちピンと来ない。

 小食なゼファーはお好み焼き二切れもあれば十分満腹だ。

 ゆえにか、さっと食べてさっと感想を言って、十分と経たずに食事は終了する。

 

「美味しいです、すごく。というか本当に美味しいですね」

 

「あら、ありがとう。これだけが売りのお店だから、そう言ってくれると嬉しいねえ」

 

 不味いと言わないゼファーは、食事の感想で誰かを不快にさせることはめったにない。

 そしてこの店のお好み焼きは、全人類屈指の無価値な舌を持つゼファーであっても「他の食事より美味い」と思わされるほどに、実に美味たるお好み焼き屋であった。

 

「あそこの学校で働いてるんだろう? またおいで」

 

「また来ます、必ず。今度は……友達も連れて」

 

 何気ない未来の約束を、何故か噛み締めるように宣誓するように言うゼファー。

 そこに少し変なものを感じつつも、お好み焼き屋のおばちゃんはカラカラと笑って受け入れる。

 口の端のソースを親指で拭い、舐めた少年はまた踏み出していく。

 陽だまりの中、先日のノイズ出現を話に出しつつ、自分達の平穏が揺らぐことを微塵も疑っていない人達の街の中を行く。

 

「む、走ってないのか……」

 

「パパー、なんでそんなにがっかりした顔してるの?」

 

 知った人に手を振って、挨拶をして、ゼファーは人の間の道を行く。

 今度は足を止めずに、行くあてもなく真っ直ぐに。

 

「ん? いよう、ゼファー」

 

「あれ、カナデさん? と……」

 

「よかった。怪我のこと心配してたけど、元気みたいね」

 

「ツバサ。まあ俺は大丈夫というか、なんか逆に……」

 

 そこでゲームセンターから出てきた奏と翼にばったり出会い、彼は目を白黒させた。

 奏だけならばまあいい。ゼファーも納得しただろう。

 しかしながら"ゲームセンターから翼が出てきた"ということが、ゼファーにその目を疑わせた。

 

「ゲームセンターからツバサが出て来たことが……

 悪いものでも食べたのかな、って心配になるというか」

 

「どういう意味よ!」

 

 そのくらい、風鳴翼は堅物でクソ真面目で娯楽と無縁な少女であった。

 

「あっはっはっは! ひぃーひぃー、笑いすぎて呼吸困難になる!」

 

「奏ぇ!」

 

「あー、笑った笑った。悪い悪い、今のはあたしが0.1%くらい悪かった。

 ゼファー、翼を連れてきたのはあたしだ。どうせ放課後暇なんだろって誘ったんだよ」

 

「どうせって……私には日々の鍛錬の時間が」

 

「暇じゃねーか。暇っつーんだよ、そういうのは」

 

「暇じゃないの!」

 

 二人も随分仲良くなったものだ。

 最初は二人の仲立ちをしていたゼファーも、今ではもうそんなことをする必要もない。

 奏が翼を引っ張って、翼が奏が行き過ぎそうになったら引き止める。

 手を繋いで歩いて行くような関係が、二人の間には構築されていた。

 そして、それはゼファーとの間にも構築されている。

 

「そうだゼファー! 見たぞ、あのかっけえ鎧!」

 

「わぷっ」

 

「奏!?」

 

 奏のヘッドロックがゼファーを捉え、柔らかな窒息がゼファーを襲う。

 奏のこういう性差を余り感じさせない奔放な行動にぎょっとする翼が正常なのであって、微塵も動じていないゼファーは性機能障害を疑われてもしょうがないだろう。

 河原でエロ本を拾っていて当然の年頃の少年の反応には見えない。

 

「へへっ、どうやらまだあたしら三人のチームは続きそうだな。

 あたしが血反吐を吐いて手に入れたギアのもどきを気軽に手に入れやがって、こいつめ!」

 

「そ、その辺は俺もちと申し訳ないかなーと」

 

「嘘こけ! 変身解除後のお前の身体の惨状、弦十郎の旦那が愚痴ってたぞ!」

 

「どう答えればいんだよ!」

 

 この三人が揃うと、先頭を行くのは常に奏である。

 奏に振り回されるゼファーと翼の構図が基本、と言い換えてもいい。

 ゼファーが奏に振り回されている時は翼はオロオロしているし、翼が奏に振り回されている時はゼファーが暖かい目で見守っている。

 なので、奏が満足するまで止まらない。

 

「頼りにしてんぜ、ゼファー。あたし一人じゃ翼のお守りはきつそうだ」

 

「奏!」

 

「ツバサをもうちょい頼ってやれよ……頼りになるからさ。

 って、なんか、カナデさんに頼りにされるのは意外な感じだな」

 

「嫌われてると思ってた、か?」

 

「うん、まあ」

 

「お前時々、そういうとこズレッズレだよな。

 アホみたいな思い込みして意味なく自分を追い込んでくっつーか」

 

「奏は時々、凄い辛辣よね……特にゼファーに対して」

 

 奏は基本的に他人に気兼ねしないあっけらかんとした性格であり、翼に対してはそれ以上に気兼ねしないが、そんな翼と比べてもゼファーに対して遠慮がない。

 初対面の頃の関係性がまだ影響しているのだろうか。

 いや、それもあるだろうが、"互いに許し合える許容値の高い良い友人関係"というのが一番大きいのだろう。

 

ノイズ(あいつら)をぶっ殺す時に、背中を任せるならお前だ。

 お前はあたしの復讐を、綺麗事で取り繕って止めなさそうなヤツ筆頭だからな。

 そんで一回はあたしを負かしてる……誰がなんと言おうと、お前は強いさ」

 

 なにせこの三人は、本音を全て打ち明けながらぶつかり合ったことのある三人である。

 奏と翼はすっかり親友。

 翼とゼファーは厳密には同門武技の姉弟弟子関係。

 そしてゼファーと奏は、互いが互いの復讐心を否定することのない同類項。

 仲が良いのも当然で。

 こうして奏が萎えることのない復讐心をじわりと滲ませるたび、翼は眉を顰めるが、ゼファーは少しの悲しみと多大な共感を抱くのみである。

 

「頼りにしてんぜ? あたしと一緒にあいつらを徹底的にぶち殺してくれ」

 

「言われなくても」

 

 分からない。分からないのだ。

 とても"いい子"で、復讐は悪いことだと教わってきた翼には分からない。

 『目の前で一番大切な人が死んだことがない』彼女には分からない。

 時折奏とゼファーが見せる、翼が立ち入ることのできない雰囲気、昏い共感に満たされた視線の交錯に理解が及ばない。

 けれど、友達に仲間外れにされるのだけは嫌だから。

 分からないまま、復讐を悪いものだと知りつつ辞めさせることもできず、ずるずると今の友人関係を続けつつ、翼は割って入っていく。

 それが、この二人の昏い共感を少しづつ和らげているという自覚を持たないままに。

 

「ちょっと、私を仲間外れにしないでよ」

 

「お、すねてんのか? かっわいーねー、翼」

 

「からかわないで!」

 

「俺はツバサを頼りにしてるし、絶対に一人にはしないぞ」

 

「知ってるわよ! もう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翼と奏を見た時点で、放課後の時間帯であることは分かっていた。

 まあ、だからといって何かしようとするわけでもなく、ゼファーはブラブラと街を行く。

 誰もが仲良くしたり、喧嘩したり、幸せになったり、不幸になったり、人に優しくしたり、人に厳しくしたりすることを許された、そんな平和な街を。

 人の自由と平和が守られている日常の中を、ゼファーは歩く。

 

「あ、居た! おーい!」

 

「ヒビキ?」

 

 夕暮れ時に、ゼファーに声をかけつつ駆け寄ってくる一人の少女。

 笑顔は天真爛漫で、嬉しそうに寄ってくる姿は子犬を思わせる。

 それが立花響という少女であった。

 彼女は何かを抱えて、ゼファーに体当たりでもするのではと思わせるくらいに一直線かつ全力で彼に向かって走って行き、その眼前で急停止した。

 

「ごきげんうるわしゅー、ゼっくん」

 

「おう、こんにちは、ヒビキ。ご機嫌麗しゅうって漢字で書けない感がプンプンするな」

 

「え? ごきげんうるわしゅーって漢字あるの?」

 

「……まあ俺も、漢字があるの知ってるだけで書けはしないから同じことか」

 

 自然と笑みが浮かんでいる自分を自覚するゼファー。

 立花響は、他人を笑顔にする天才である。

 それが事実であるかどうかは別として、彼はそうだと思っていた。

 彼女の周りには、いつだって本物の笑顔が溢れている。

 

「未来が『背中押したの不味かったかなぁ』って呟きながらベッドで転がってたんだけど……

 ゼっくん何かした? ああ、じゃないか、ゼっくん未来に何か言われた?」

 

「言われたといえば言われたが……こう、ほら、進路相談のアドバイス的な」

 

「なんと! 意外な方向ですごいことやってた!」

 

(やっぱ俺の腕とかいうグロを見たの気にしてたのか、あの子……)

 

 未来は結局のところ、ゼファーの決意と覚悟を聞いても戦うことを応援はしなかった。

 したいならすればいい、とも言わなかった。

 ただ、"何が何でも危ないことはやめさせる"から"彼が戦いをやめて日常に帰って来るのを待つ"というスタンスに変わっただけ。

 ゼファーが迷っているように、未来もまた友達に対しどういうスタンスを取るべきなのか、迷っているということなのだろう。自分に戦う力があれば、とすら思っているかもしれない。

 

「それで、ヒビキがその手に持ってるのは何だ?」

 

「あ、これねー。これ見せたかったんだよ、私」

 

 にへへ、と笑って響は手に持ったものを目の高さまで持ち上げる。

 それは小さな植木鉢と、そこに植えられた小さな花だった。

 

「ゼっくんが綺麗にしてくれた庭で、お母さんが園芸始めたんだ。

 で、なんか『響も女の子らしくしなさい』って花を一つ渡されて……

 頑張って育ててたら、今度は『それを誰か大切な人にプレゼントしてきなさい』だよ?

 なんかひどくない? ちょっと愛着湧いてきたのに! 理不尽じゃない!?」

 

「まあ、花を育てるのは最初は四苦八苦するよな」

 

「でしょ? それで、前に花を育ててるって話をしたゼっくんを思い出したわけですよ。

 ゼっくんなら、お母さんがくれて私が育てたこのお花、大切にしてくれるかなって思って」

 

 親は子供を健全に育てるため、花を育てさせたりペットの世話をさせたりする。

 "自分より弱い命の面倒を見る"ということが、人の心を健全に育てるからだ。

 もっとも、響の母はおてんばな娘を女の子らしく育てるために用いたようだが。

 花は人に贈ってこそ、という立花母の教育方針が見えてくるようだ。

 

「このお花、私の誕生花なんだって。名前は……」

 

「リンドウ、だな」

 

「おお、流石ゼっくん。知ってたんだぁ」

 

 自分なりに職務を果たすため、地道に学んでいた彼はその花のことを知っている。

 竜胆(リンドウ)

 9月13日の誕生花であり、古くは贈る人が長く生きることを祈る花だった。

 纏めて咲かず、一輪で凛と立って咲く竜胆の花に、昔の人は多くの意味を見い出したという。

 花言葉は『誠実』、『寛容』、『正義』。

 そして、『悲しみに暮れるあなたを愛する』。

 

 響は花言葉なんて小洒落たものは知らない。それはゼファーにも分かっていることだ。

 それでも少し、思うところはある。

 誠実、寛容、正義、悲しみに暮れるあなたを愛する。

 それらの言葉はゼファーに対し、かなり深い所まで刺さる言葉の羅列だったから。

 

「はい、どーぞ」

 

「ありがとう、ヒビキ」

 

 他の誰でもない『立花響』から、ゼファーはそれを受け取った。

 

「俺の部屋で世話しとくからさ、気になったらまた来いよ。お菓子も用意しておくから」

 

「ほんとっ!? よっし、私毎日行くよ!」

 

「毎日は俺が居ないと思うぞ、うん」

 

 夕暮れ時に、夕焼けの赤に照らされる響の笑顔。

 それはとても会話らしくて、彼女の人柄も相まって、ゼファーの中に強く気持ちを呼び起こす。

 『守りたい』と。

 優しい笑顔で彼女を見つめるゼファーの手には、信じ手渡された正しさと義の花の植木鉢。

 それがまるで、誰かの正義を握り締めているかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝起きて、少年は真っ先に窓際の花を視界に入れた。

 窓際に置かれた植木鉢が最初に目に入ったのは完全に偶然だったが、結果的には少しだけ寝覚めが良くなった……かも、しれない。

 少年は冷蔵庫の中のラップをかけたご飯をレンジで暖め直し、その間に卵を割ってかき混ぜ、醤油を投入、暖め終わったご飯の上に卵と醤油を混ぜたものを投入。

 日本の伝統料理、卵かけご飯(T K G)だ。

 卵かけご飯には千を超える食べ方の流派があると言われているが、ゼファーは風鳴流、すなわち最初に別容器の中で卵と醤油を混ぜておくタイプである。

 ……醤油の入れ過ぎで卵が真っ黒になっているが、ゼファーは気にしない。

 何故なら舌がクソだからだ。

 醤油の味がしないくらい真っ黄色な卵かけご飯でも、普通の人が食べれないくらい味が濃い真っ黒な卵かけご飯でも、自分が作って自分が食う分には彼は気にしない。

 

 朝食を終え、食器を洗い、着替えるゼファー。

 歯を磨き、白シャツ、青めのジーパン、茶のジャケットを身に纏って外に出る。

 そして機能をオミットして安価に仕上げた間に合わせの代車、シンフォギア支援機T2T-002『ジャベリンMrk-2』に跨がり、彼は風を切って駆け出した。

 

 向かう先はとあるビル。

 二課がノイズ探知用の大型レーダーを取り付ける予定のそのビルは、ゼファーが携帯端末で身分証明をすればすんなりと入ることが出来た。

 いずれ一般の人が多くのテナントを入れるであろう、まだ完成しきっていないビル。

 その屋上に、ゼファーは立つ。

 西からの風が吹き、心地よく彼の頬を撫でた。

 

 ゼファーは何かを知っていたわけではない。

 だが、情報の断片を与えてしまえば、不穏な動きを見せてしまえば、勘がいい彼はすぐに真実に辿り着いてしまう。それだけの能力を持っている。

 弦十郎がナイトブレイザーの独断使用を禁止し、使用許可を申請制にしていたあたりから、ゼファーはなんとなくの違和感を覚え始め、それを推測と憶測で補完していた。

 それも、限りなく正解に近い解答を。

 

「正義、誠実、寛容」

 

 ゼファーは部屋に飾られたリンドウを思い出し、苦笑し呟く。

 

「……何も考えなくても、そう生きられたら楽なのにな」

 

 ビルの上、落下防止の手すりの上にゼファーは立った。

 そこで懐の携帯端末が鳴り響く。デフォルトの着信音だ。

 ゼファーはそれを手にし、かけて来たのが誰かを確認した上で、電話に出る。

 

「もしもし、ゲンさん」

 

『ゼファー、お前今どこに居る? 会議があるから二課に居ろと俺が昨日――』

 

「そういうのいいですよ、ゲンさん。今、俺はノイズがこれから出現しそうな場所に居ます」

 

『――!?』

 

「なんで分かったか? って言われたら勘です、としか言えません。

 今回は数が多いからか……前よりずっと早く、時間に余裕がある段階で察知できました」

 

 ゼファーには、ノイズの出現を直前に察知する直感がある。

 以前は数分前に察知するのが限界だったが、出現するノイズの途方も無い規模、及び直感の成長によりかなり早めに察知できていたようだ。

 ゼファーが報告したノイズの出現規模、出現するであろう場所の情報が二課へと送られ、ゼファーと話している弦十郎の周囲でオペレーター陣が人を動かしていく。

 

 弦十郎も彼のその能力の存在は知っていた。

 で、あるからこそ、ゼファーを聖遺物の制御ができていない現段階で出撃させないために、かつその直感の力を借りるために、二課に閉じ込めておく計画を立てていたのだ。

 その計画は了子の知恵も借り立てられたものであり、完璧と言っていいシロモノだった。

 "ゼファーに勘付かれていた"という一点を、除けばの話だが。

 

『……変身と戦闘は許可しない。本部に戻って来い』

 

「処罰はあとでいくらでも受けます。……ごめんなさい」

 

『ゼファーッ!』

 

 携帯端末の向こうから、端末のマイクやスピーカーを破損させかねないとさえ思わせる大声が届き、ゼファーは音漏れを気にして携帯端末とジャックで繋いだインカムを身に付ける。

 

『今は再生しているが、変身解除直後のお前の姿はひどいものだった!

 次があれば、心臓まで融解していてもおかしくはない! これ以上――』

 

「大丈夫ですよ。腕がああなってたのは、暴走してたからです。俺はもう大丈夫ですから」

 

『暴走しない保証がどこにある! それも人の居る街中でだぞ!』

 

「信じて下さい。そうとしか言えません。

 ……俺を、ゼファー・ウィンチェスターを信じて下さい」

 

 ゼファーの身を案じるからこそ怒鳴りつける弦十郎。

 しかしゼファーは聞く耳持たない。既に腹は決まっている様子だ。

 普段弦十郎の言うことに従順で、理由が分からなくても「何か考えがあるはずだ」と信じて従うゼファーには珍しく、弦十郎の言に真っ向から逆らっている。

 

 それはまともな人間に戻り始めたゼファーが迎えた、彼の人生において初めての、かつほんのささやかな『反抗期』だったのかもしれない。

 大人の過保護を跳ね除ける、大人の仲間入りをするための第一歩だったのかもしれない。

 決意、覚悟、信念。

 それらに僅かに混ざる、大人に従順な子供としてではなく、人々を守るために己が人生を己で決めることができる、一人の男としての反抗。

 

「力そのものに善悪はない。きっとこの力にも善悪はない。

 善悪は使う者次第で……力があるから正しいってことも、間違ってるってこともない。

 持ってるだけで正しくなれる力はない。悪者になる力もない。

 力は力。ただそれだけ。俺は力に善悪はないって信じてます。

 力を得たなら、それを正しく使わないといけないと思うんです。少なくとも」

 

 『力』を得たゼファーは、彼がこれまでの人生で出会った中で"力を持つ者"の中で最も強く、そして最も正しくその『力』を振るっていた男に語りかける。

 それは、力を正しく使うという誓い。

 

「命を助けられるのに助けないのは、間違ってる」

 

『―――』

 

 風鳴弦十郎の思う正しさではなく。

 ゼファー・ウィンチェスターの思う正しさのために、力を使うという誓い。

 弦十郎の"子供を守る"という正しさに従うのではなく、己の"命を守る"という正しさのために、ゼファーはその力を使おうとしている。

 他の誰でもない。

 彼に人には人それぞれの正しさがあると教えてくれたのは、風鳴弦十郎その人なのだ。

 

「俺には駆け付けられる足がある。差し伸べられる手がある。なら、できることをしたいんです」

 

 ゼファーは腕が取れても、足が取れても、命を守るための戦いを止めはしない。

 切歌と調を守った時も、未来を守った時もそうだった。彼の人生はずっとそうだった。

 己が手足より、人の命の方がずっと価値があると、彼は信じているから。

 

『死ぬ気か』

 

「死にません」

 

 ゼファー・ウィンチェスターは戦いの場に駆けつける。

 戦いが嫌いでも、痛いのが好きじゃなくても、苦しいことを避けたくとも。

 そこに守りたいものがある限り、助けを求める祈りを聞き届ける限り。

 

「俺が死にたくないように、皆も死にたくないと思ってるはずです。

 だから俺、行きます。

 今、俺に力が足りないなら、力がある俺に変わります。

 代償ならいくらでも支払っていい。誰かの命より重い代償なんて――」

 

 彼はこの星の誰よりも、生きたいという願いを叶えようとする少年だから。

 

「――あるわけないって、信じてるからッ!」

 

 人を想えば、この街に住まう『守るべき命』が目に浮かぶ。

 ゼファーは右手を拳に、左手を掌底に。

 純白の光が両の手に宿り、今か今かと煌めき輝く。

 そんな両の手を左右に広げ、胸の前で叩きつけるように打ち合わせた。

 

「アクセスッ!!」

 

 炸裂する光は弾け、合間より噴き出す焔と混ざってゼファーの全身を包んでいく。

 変わる。

 弱い自分から、強い自分に。

 今とは違う自分に、昨日とは違う自分に。

 大切な人を守れないゼファーから、大切な人を守れるナイトブレイザーに。

 『変身』する。

 

 所要時間100万分の1秒(マイクロセカンド)

 光が、焔が、吹き散らされるように消えた後には、少年の姿はどこにもない。

 そこに在ったのは、悠然と立つ焔の黒騎士。

 ゼファーは胸に手を当て、この鎧の深層に秘められた力を引き出さんとする。

 求めるのは力。

 

(もっと、もっと速く。

 誰も犠牲にせずにいられる、駆けつける速さを。

 誰かの危機に間に合える、手遅れにさせない速さを。

 今のままじゃ届かない場所に手を届かせる、遠くに行く速さを。

 俺がまだ引き出せていない、この鎧が秘めている力を、全開に―――!)

 

 たとえ幾千万、幾千億の敵が来たとしても、自分一人で倒す『絶対たる力』を。

 

「アクセラ―――レイタァーッ!!」

 

 彼は求め、叫び、発し、纏い。

 乗っていた手すりを跳躍の衝撃でひしゃげさせ、弾丸のように跳び出した。

 

 

 




『英雄』

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