転生軍師の戦国記~お転婆姫と大うつけの天下統一記~   作:松平まこと

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悟りました。
書き溜めてから投稿しようとしても全然進まないことを。
出来る限り毎週書いて毎週投稿するスタイルに戻します。
なおこの小説ではややこしいので官職とか仮名とかは省略しています。
登場人物の名前変わりまくるのはね……。


燈鷲統一記
地味すぎる初任務


「どうしてこうなった……」

 

 私はじりじりと照りつける太陽(この世界も太陽は一つだ)の下を歩いていた。

 左右には水が張られた水田が広がり、遠くには龍族が住まう(らしい)天神山脈が見えた。

 水田の水は随分少なくないように見えた。最近晴れが続いているからかもしれない。

 

 隣にはノンデリ鷹大うつけこと佐登(さと)清継(きよつぐ)が軽装……刀を刺しただけの旅装で歩いている。

 その後ろには私とそう年が変わらない少年。清継と似たような恰好をしている。

 後ろと前にはお供が合計5人。その中には鷹狩りの時にいた槍男もいる。今日も元気に槍を担いでいる。

 これが今回のパーティだ。

 

 といっても別に魔王を倒しに行くわけでも、ダンジョン攻略しに行くわけでもない。

 知る限り魔王もダンジョンもないし。

 

 今回のミッションはなんと……領内見回りだ。

 税を取り立てる代官や臣従している小領主、家臣たちがしっかり領地を治めているか、不正をしていないかを見回ることとついでに対古土家を想定した地形確認が目的だ。

 

 はい地味ー。地味過ぎでしょ。マジ。

 なんで初仕事がこんな地味仕事なの……。

 

 なんでこんなことをする羽目になったかというと……。

 

 

 

 私は生まれ育った屋敷から半ば拉致されるようにして、清継の居城がある上牧(かんまき)に連れていかれた。

 

 私が乗せられた駕籠はそのまま本丸まで止まることはなかった。

 御簾越しに何度か橋を渡るのが見えたから、堀があることはわかった。

 城なんだからそりゃそうなんだけど、それぐらいしかわからなかったってこと。

 

 漸く降りることができたとき、腰は痛いし、体は固まっているしで、思わず大きく伸びをした。

 その仕草に、周囲の家臣たちの呆れた視線が突き刺さる。

 少し恥ずかしくなったが、周りを見回すことで耐えることにした。

 

 本丸には、こじんまりとした天守閣……というより大きめの見張り台?といくつかの屋敷があるようだった。

 少なくとも前世で見聞きした城郭と比べるとしょぼい。こう……立派さ?威厳?が足りない。武骨さはあるけども。

 

天宮(あまのみや)に初めて来たお上りかお前は」

 声に振り返ると清継が苦笑しながらすぐ近くに立っていた。

「しょうがないじゃないですか。お城なんて初めてなんですから」

 今生では、だけど。

 といっても日本の城はほぼ天守閣、あっても内堀の中しかない観光名所なわけだから、『本物の城』ははじめてなのはウソじゃない。

 

 ちなみに清継が言った天宮は、この龍州列島の国家、天照(てんしょう)の首都のこと。

 帝がおわす御所があったり、幕府の将軍がいたり、朝廷があったりするこの国の政治的・文化的中心だ。行ったことはないんだけど。

 

「こっちだ」

 そう言うと清継は私を引っ張る様にして屋敷の中に入っていく。

 他には誰もついてこなかった。

 

 庭に面した廊下を渡り、何度か角を曲がったあと清継は立ち止まり、襖を開け放った。

 

 その部屋は15畳ぐらいだろうか、それなりに広い部屋だ。

 中には中年の、40代ぐらいの男の人が座ってお茶を飲んでいた。

 

「親父」

 清継は、男性にそう声をかけた。

 のしのしとそのまま部屋に入っていく。

 

 男性……清継の父、佐登家当主、川瀬家守護代、そして燈鷲(とうしゅう)の国で最も実際的な権力を持つ男、佐登清正(きよまさ)は、息子のほうへと顔を向けた。

 

「どこをほっつき歩いていた莫迦息子。また菓子でも漁りに行っていたか?」

 

「今日は違うさ」

 そう言いながら清継は父親の前にどっかと腰を下ろした。胡坐をかく。

 そして私の方を見ながら、自身のすぐ隣の畳を叩いた。

 そこに座れ、ということらしい。

 清正氏のほうを伺うが特に私を気にした様子はなかった。

 静々と清継の隣──清継が示した場所よりはやや距離を開けて──座った。

 

「嫁でも紹介する気か?」

 

 HAHAHA。御冗談を。まったくおもしろくないです御父様。

 

「郎党よ。嫁にするにはちょっと足らん」

 清継は苦笑気味にそう言った。

 

 私に何が足りないと?胸の大きさですか?ああ?

 いや別になりたくもないけど?なりたくないけど?

 

「女子まで郎党にするのかお前は」

 呆れと感心が混じった声だった。ちなみに呆れが8で感心が2ぐらい。

 

 清継が軽く私をつつく。

 自己紹介しろとのことらしい。

 

「琴平結衣と申します。この度は縁あって清継様にお仕えすることになりました」

 そう言って頭を下げる。

 

「琴平……ああ、汐坂との国境近くの。猪俣の件は苦労だったな」

 清正は私を見定めるようにじっくりと眺めた。

「なるほど、琴平のお転婆ならお前と馬が合うのかもしれんな」

 

 ……それ守護代も知ってるぐらい有名なんですか?

 どこから広まってるの?

 

「ま、お前の家臣だ。好きにするといい」

 

 清正の言葉にノンデリ鷹大うつけは当然といった顔をしている。

 なんで得意げなの。ちょっとムカつくんだけど。

 

「わざわざ連れて来たということは、この娘に聞かせておきたいのか?」

「軍師ですので」

 清継の言葉に清正は、へーそーふーん、といった表情を浮かべた(居た堪れないからやめてほしい)あと咳払いをした。

 

「では佐登家の現状を共有してやる」

 

 そこの可愛らしい軍師殿は初めて聞くだろうからな、と言って清正は話し始めた。

 

「まず燈鷲は、守護であり、我らの主君である川瀬(かわせ)家が治めている」

 守護は要はお殿様のことだ。現代に例えるなら県知事が一番近いかもしれない。

 一国(県に相当する)を朝廷(帝)から丸々任されて税収を収めている、いやいた。

 今の守護は朝廷から実権をほぼ奪い取った幕府(武士)が朝廷に任命させた武家だ。

 内乱で幕府の指導力が弱まったからほぼ独立勢力になっちゃってるんだけど。

 

「とはいえ、川瀬家はほぼ政務を行っていない。我々守護代が代わりにお役目を行っている」

 守護代は、守護の家臣だ。

 幕府がまだ力を持っていた時期は守護はほとんど天宮にいた。そうでないと首都での政治に関われない。インターネットどころか電信もない時代なので、距離があると情報が届くのに時間がかかってしまう。

 その間、領地の運営を任されているのが守護代だ。

 そうなると守護本人よりも領地の実情に詳しいので、世情が荒れたので戻ってきても守護代の方が実際に物事を動かしやすくなるんだよね。

 

「守護代は二人。私と、兄の兼清《かねきよ》だ。佐登としてはうちが分家で兄が本家となる。といっても本家に跡継ぎがいないから兄が継いだんだが」

「しかし清正様のほうが重要なお仕事をされていると伺っていますが……?」

 主家より分家が上に立つなんてことはまず滅多にないはずだ。

 だがそれが起こっているということは……。

 

「そこが親父殿の怖い所よな」

「妙な言い方はよせ。私は川瀬家のことを思えばこそ津を抑えたのだ」

 津とは、港の船着き場のことだ。つまり燈鷲湾に面した商業港の権益を抑えたってことになる。

 車がないこの時代、主要な大量輸送手段は船だ。港の権益を抑えるということは物流を支配することと同じになる。

 つまり燈鷲のおカネとモノを抑えているわけだ。

 これほどわかりやすい権威もない。

 ちなみにこの権益だけで並の大名に伍するお金が入って来るそうだ。

 

「そんなわけで、兼清叔父は、親父を恨んでいるのだ」

 恨みは怖い。損得ではないからな、と清継は言った。

 

「問題は、内と外のどちらから片付けるか、ですか」

 私はそうまとめた。

 内をまとめるには外からの影響を排してまとめるだけの時間を稼がなければならない。

 外を片付けるには、内がまとまっていないと対抗できない。

 つまり、どちらを先にしても問題はあるのだ。

 ならあとはリーダーの、この親子の決断次第だ。

 

「清継、お前はどう見る」

「内がまとまらないようにしているのは古土だ」

 清継はそう言った。内憂外患の根っこは同じだと言いたいらしい。

「なら纏めようとしたら介入してくる。纏めなかったら連中が来た時に、兼清叔父が後ろから突いてくる」

「では、どうする」

 

 清継はにやりと笑うった。

 

このパターンは……嫌な予感がする……。

 

「由衣」

 私に振った。

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