転生軍師の戦国記~お転婆姫と大うつけの天下統一記~   作:松平まこと

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孤軍奮闘

 琴平家家臣一同が頼りにならないとわかった以上、自分の将来は自分で何とかするしかない。

 ウスイタカイ本展開は厭だ。そういうのは二次創作だけでいい。

 

 まず何をするか、を考えたけど敵味方の戦力的な概略は昨夜才蔵が言ったとおり(調べたのは爺だけど)だから改めて調べる必要はあまりない。

 琴平は雑兵が200、武士が20に対して、猪俣は雑兵が500、武士が30。

 

 武士を雑兵と分けて考えるのは、装備や訓練の面で武士……士卒身分(ナ-ロッパ風に言うと貴族)が雑兵と隔絶しているから、だけではない。この世界の武士は、身体強化の魔法(バフ)を使用する魔法戦士(マジックウォーリア)だからだ。

 身体強化を使った武士は、常人では及びつかない筋力(パワー)耐久力(タフネス)を持つ。

 イメージとしてはSF的なパワードスーツを着た歩兵だろうか。

 甲冑を着て文字通り跳び回ることができるのだ。

 

 この魔法を使う魔力と感覚は、特殊な事例を除けば遺伝である程度決まる。

 つまり武士とは、肉体的特権階級(フィジカルエリート)なのだ。

 ちなみに魔法戦士と言っても火炎魔法やら光魔法やらの攻撃魔法を撃ち合うことは基本的にない。

 この世界の魔法は自身の肉体に働きかけるものが主で、世界に働きかける魔法は魔導具と呼ばれる器具を用いなければいけないし、その能力は限られているのだ。

(例外は龍族と言われている。彼らは蛇のような細長い躰で自由に空を飛び回る……らしい。見たことないけど)

 

 一方、雑兵は農村から徴用されたただの農民か金で集まった傭兵かになる。こちらは本当にただの武装した人だ。装備もまちまちで、大名家によっては支給されるところもあるが自弁の場合もある。琴平家(というより豪族程度)の場合、自弁だ。

 また契約して常時雇われている雑兵のことを足軽ということもある。大名家の直率する軍勢などでは区別せずにひっくるめて、足軽・雑兵と呼んだりするのでこのあたりは文脈次第だが、とりあえずは身体強化を使えない戦力のことだ。

 

 

 ともかく、敵味方の戦力がわかっていて、敵と味方の行動が明確(豪族の財政と増員力では一度の合戦で雌雄を決するしかない)なら、次は具体的な策を考えるべきだ。

 だけど、それは戦場となる場所の地勢を把握しなければ始まらない。

 

 琴平・猪俣の領地境で数百人の軍勢が展開できる場所は、領境にある街道沿いの河原に限られていると昨日の軍議で話していたのを聞いた。だけど、そこがどのような地形なのかを私はわかっていない。

 詳細な地図があれば別だったけど、屋敷にある地図は大雑把すぎる。令和基準では子供の落書きと大差ないものだ。

 

 だから実際に見に行く必要がある。

 幸い、私にとってはそれほど遠くない。

 

 

 朝食を食べるとすぐに私は義父の居室を訪ねた。

 5畳程度のあまり広くない部屋で、義父は文机の前に座り、背筋を伸ばした姿勢でなにか書き物をしていた。

 私をちらりと見た義父がお付きの人に軽く手を振ると、彼は頭を下げてから退室した。

 人払いを済ませた義父は私に向き直ると、「で、どうするんだ」とどこか面白そうに言った。他人事みたいな態度取らないんでほしいんですけど!

 

「どうもこうもありません。場所を見ないと」

「物見を出せばよかろう」

 

 物見とはこの時代での偵察部隊のことだ。つまり義父は人をやって報告を受ければいいだろうと言っている。これだからナチュラルボーン上位身分(豪族だから言うほど上位じゃないんだけど)は。

 

「直に見るのと人の話を聞くのでは、山を登ることと眺めてみることぐらいには違います」

 

 ふん、と義父は鼻を鳴らした。

「お前は目立つ。精々裏道を行け」

 

 それだけ言うと義父は再び体を文机に向けた。

 私は頭を下げると部屋を退出した。

 私は納得した。

 つまり人目に付くなってことね。

 

 

 屋敷を出ると、正門ではなく屋敷の周りにある林の中に分け入る。

 獣道を小走りで駆けながら身体、特に脚に力が循環するイメージを意識する。

 地面を蹴る足の力が強まる。加速した。

 肉体強化(バフ)が完成したのだった。

 

 これが両親からもらった恩恵。父母のどちらかは武士の家系だったらしく、私は肉体強化が使える。といっても男女の肉体差もあるのか単に私が鍛えていないのか、武士ほどの出力は無いけど。

 速度はだいたい自転車ぐらいだろうか。

 

 思ったより速度が稼げない。表道ならもっと速度を出せただろうに。

 私はやや苛立った。

 物見だけでなく策を考えるのまで日中に済ませないといけないと考えるとあまり時間に余裕はない。

 ないので、あまり使いたくないとっておきを使う。

 

 私は懐から【速】と書かれた札を取り出すと、脚……両太ももに札を貼り付ける。

 これが私の得意技、簡易魔導器である御札の作成だ。

 魔石(高価)を溶かした墨で紙に、前世の世界の文字(多くは漢字)を書くことで、一回こっきりの使い捨て魔導器として使用できる。

 といっても効果はないよりマシ程度。

 【火】の文字を書いた『御札』単体ではライター程度だ。

 つまり費用対効果はめちゃくちゃ悪い。くすん。

 

 御札の効果で加速。跳躍。

 飛び出している木の根を飛び越え、さらに走る。

 そうして数kmを走ったところで、急に開けた場所に出た。

 

 

 

 その瞬間、いろいろなものが視界に飛び込んできた。

 

 進行方向には、鶴だろうか、脚と嘴が長く白い鳥。こちらを見た。翼を広げる。

 

 右前方に農民風の恰好をした男の人。鶴の方を見ている。こちらには気付いていない。

 

 異常な状況なことを察知。急制動。私の身体は減速し始める。足に小さな痛み。

 

 左前方。馬。騎乗している人が藁束?を振っている。こちらに気付いた。大きく口を開けて、吃驚した顔をしている。

 

 馬の影に人。腕のシルエットが奇妙。なにかがいる。

 

 馬の影から飛び出した人が腕を振るう。前方の鶴が飛び立った。

 私は鶴と入れ替わったように、もともと鶴がいた位置でなんとか停止。

 そこに馬の影に隠れていた人の腕から飛んだ何かが私に向かってきた。

 

 影のように見えたものは翼を広げ──つまり鳥なわけで──漸くそれが鷹と気が付いた時には鷹は私の頭に飛び掛かっていた。

 

「クワーッ!!!」

「いたたたたた!?」

 

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