元王女が操りし二つのサイコロ(俺) 〜俺を振ると、出た目に応じたモンスター娘が現れる〜   作:人間 計

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第十話:朝ごはん

「……私も、行く……」

 

 ブリドラが、そう告げる。

 

「おう、一緒に行こう」

 

 俺とブリドラは俺の部屋から出て、薄暗い廊下に出た。

 

 そして俺達は、昨日外に出るために通った"外"と書かれている表札のついた扉の前に立った。

 

「相変わらず光ってるな」

 

「……え……?」

 

 ブリドラは、首を傾げた。

 

「……光ってないよ……?」

 

「むむむ?」

 

 どう見ても俺の目には光っているように見えている。子供の頃親に隠れて布団の中でやった携帯型ゲーム機の画面くらい、光っている。だがブリドラも、冗談を言っているような雰囲気でもない。

 

「てことは、俺だけしか外に出れないってことかもしれないな」

 

 俺は、そのように推測した。

 

「……んあーー、私も一緒に行きたい……」

 

 ブリドラが、地団太を踏む。

 

 氷のドラゴニュートであるブリドラはクールな性格なのかと思っていたが、案外そうでもなかったらしい。

 

 今ブリドラはその頬を膨らませて、リスみたいな顔になっている。

 

「まぁ、行ってくるよ」

 

 俺はブリドラの頭をポンポンとし、光っている扉の先に進んだ。

 

「……待ってるから、帰ってきたらまた、遊ぼうね……」

 

 頬を膨らませ続けているブリドラが、不服そうな感じで手を振った。

 

「ああ、待っててくれ」

 

 俺はそう言って、扉の先に進んだ。

 

 扉を進む俺は振り返り、ブリドラが部屋に戻っていく様を目撃した。

 

 ブリドラは自らの部屋ではなく、俺の部屋に戻って行っていた。

 

 

 

 

 

 そして俺は、サイコロの外に現れた。宿屋の部屋の中、とある女性がもしゃもしゃと、ご飯を食べている。

 

「よっす」

 

 寝ぼけ眼で寝ぐせが付いているその女性は、澄んだ目で、俺の方を見た。

 

「あああ、昨日は、ありがとうございましたぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 シズクがご飯を食べている手を止め、俺の方に向かって頭を下げた。

 

「わはははははははは、いいってことよいいってことよ」

 

 俺はシズクに向けて、そう告げる。シズクは恐縮そうな顔をしている。

 

 俺は霊体の状態で、シズクがご飯を食べていた席の対面に座った。

 

 霊体で物には触れられない今の状態の俺だが、椅子には座れるらしい。

 

「改めて、昨日はありがとうございました」

 

 丁寧にお礼を言ってくる、シズク。

 

「勝手に君を、ここまで連れて来させてもらったよ」

 

「はい、とても助かりました」

 

 シズクは相変わらず穴の開いた布切れを身体にまとうことで、服としている。

 

 そして俺の相手をしているため宿屋から提供された朝食であるらしいサンドイッチを食べれず、お預けのような感じで、ちらちらとそれと俺を見比べている。

 

(お腹、減ってるんだろうなぁ)

 

 俺はシズクに向けて、言葉を発する。

 

「食べなよ、それ」

 

「いただきます!!」

 

 シズクは運ばれてきたサンドイッチを一人分全て、爆速で食べた。

 

 さらにシズクは、とあるものを見ている。

 

 もう一人分の、サンドイッチだ。

 

 ここには名目上は俺とシズクの二人で泊まっており、俺分の朝食も運ばれているらしい。

 

 そしてそれが自らの物ではないということは理解できている、シズクである。

 

「それも食べていいよ」

 

 俺は、そう告げる。

 

「いいんですか!!?」

 

「ああ、霊体の俺は食べれないしな」

 

 俺は、そう告げた。

 

「ありがとうございます!!!!」

 

 シズクは嬉しそうに、それを口に入れた。

 

 そして満面の笑み、本当にとてつもなく幸せな顔で、それを食した。俺は過去に、そんな幸せな顔をしたことがあるだろうか? 自分に問いかけてみる。たぶんないなぁ。

 

 それほどにシズクのご飯を食べるその顔は、嬉しそうだった。

 

「ごちそうさまでした」

 

 シズクは付近に存在している布巾で、自らの口を拭いた。その所作はお上品であり、昨日あのいかつい頭三人衆が口にしていた、"シズクは元王女"という言葉が、信憑性を増してくる。

 

「さて、ご挨拶が遅れましたね。私、シズクっていいます」

 

 シズクが、頭を下げた。

 

「俺は、神谷 祭だ。サイって呼んでくれ」

 

 俺はそう告げ、「サイさんですね」と、シズクが微笑んだ。

 

「元王女なんだってね」

 

 俺の言葉に対してシズクは、その端正な顔つきを少し困ったようなものに変えた。その眉毛が、八の字になっている。

 

「はい、そうです」

 

 シズクは言いにくそうに、そう告げた。

 

「私がふがいないせいで滅んでしまった国の、ですが」

 

 シズクの目が、ウルウルし始めた。今にも泣き出しそうな様相の、シズクであった。

 

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