元王女が操りし二つのサイコロ(俺) 〜俺を振ると、出た目に応じたモンスター娘が現れる〜   作:人間 計

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第十二話:正義

「あの~~」

 

 シズクが恐縮そうな顔で、俺を見る。

 

「サイコロのことを知らないのですか? この世界の人はみんな、知っているものだと思っていたのですが」

 

「俺は、転生者なんだ」

 

 俺はドヤ顔で、そう告げる。

 

「え?」

 

 シズクは恐縮そうな顔を、不思議そうなものに変えた。

 

「転生者なのですか? 確かに転生者はたまにおられますが、だいたいみんな、普通の人間になっておりますね」

 

 はい、そうなのです。

 

 俺は、頷く。それは俺にとっても、悲しいところなのです。

 

「女神を怒らせたら、サイコロに転生させられちまったんだ」

 

 俺は、悲しい顔をする。

 

 シズクも、”あちゃ~~"という声が聞こえてきそうな、顔をした。

 

「そんな悲しいことがあったんですね」

 

 シズクは、そう告げる。その表情より、心から俺の境遇を哀れんでくれているのが伝わる。

 

「シズクって、いい子だよね」

 

 俺の言葉に対してシズクは、首を横にぶんぶんと振った。

 

「そそそそそそそそ、そんなことはないですよ」

 

 褒められて照れているのか、もじもじとしているシズクであった。

 

「でも転生者だったから、この世界のことをあんまりご存知なかったんですね」

 

 照れ隠しなのか話題を戻したシズクの言葉に対して、俺は頷く。

 

「ああ、そうだね。いきなりサイコロに転生させられたから、このサイコロのことも、あんまり分かってないんだ」

 

 シズクがコーヒーをちびりと飲んでから、説明をしてくれる。

 

「世界にある様々なサイコロのどれもが、とても貴重なものです。もし売れば、数世代にわたって遊ぶことができるほどの価値を有する代物です。そんな貴重なサイコロの中でサイさんが転生した虹色のサイコロは唯一、人々から畏怖されているものです」

 

 まぁ、そうだろうなぁ。さすがに振ったら殺される可能性のあるサイコロは、畏怖されてしまうだろうなぁ。

 

 俺は、シズクの目を見る。

 

「安心してくれ。どんな魔物が現れたとしても、君に危害は加えさせないから」

 

 俺の言葉により、シズクが微笑んだ。

 

「ありがとうございます。とても心強いです」

 

 そして俺は、考える。

 

「それで、これからどうしようか?」

 

「私は、自らの国の復興を目指します。でも、それを邪魔する者がいるのです」

 

 シズクは悔しそうな顔で、そう告げる。

 

「その邪魔する者とは?」

 

「"正義の国ギルマータ"の王である、ギレンです」

 

「正義の国ねぇ」

 

 俺はその言葉に対して、嫌な気持ちになった。

 

「知ってるのですか?」

 

「いいや、知らん。だけど、自らで自らを"正義"だと名乗る輩にろくなもんはいないって、相場が決まってるのさ」

 

「すごい、国の名前を聞いただけで、分かるのですね」

 

 俺は頷く。

 

「君より、永いこと生きてるからね。正義の名を自分で語る奴なんて、自らが正義だと信じ込んでる馬鹿か、自らを正義というポジションに置くことで利益を得る邪悪な輩かの、二種類しかいないよ」

 

 シズクは考える。

 

「それで言うと、ギレンは後者ですね。奴は、正義の名をかざすことで周りの国を滅ぼしながら、自らの国の領土を拡大しているという、邪悪な存在です」

 

 シズクが悔しそうな顔で、その手をプルプルと震わせている。

 

「そいつに、私の国も……」

 

「なら、そいつを倒そう」

 

 俺のそんな言葉に対して、シズクは凛々しい目で声を発する。

 

「はい!!!!」

 

(いい眼だ)

 

 俺は、そう思った。

 

「なら、そうと決まれば、その正義の国とやらに行こうぜ」

 

 俺は立ち上がる。善は急げだ。

 

「ところでその正義の国ってのは、どこにあるんだ?」

 

「この大陸のど真ん中にあります。距離にして、数千kmってところですかね」

 

「よし、なら行こうぜ」

 

 俺は軽々しく、そう告げる。

 

「はい、行きましょう」

 

 シズクも軽々しく、そう告げた。

 

 まぁ、軽々しくくらいの感じでいいだろう。これから俺達がやろうとしているのは、言ってしまえば戦争である。滅んだ国の王女が、正義の国の王を倒そうとしているのだ。そしてどう考えても、こちらの分が悪い。こちらは少女とおっさんの二人なのに対して敵は、無限と言って差し支えないほどに多いだろう。

 

 だが俺は、シズクの目が無謀だからといって諦めるような生半可な覚悟のそれではないことを察したからこそ、軽々しくそう告げたのだ。

 

 やらないといけないことが明確なのだから、それを全うするだけだ。無駄に深刻になる必要はない。

 

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