元王女が操りし二つのサイコロ(俺) 〜俺を振ると、出た目に応じたモンスター娘が現れる〜 作:人間 計
「うおおおおおおおおおお」
宿屋から街に出た俺は、否応なくテンションが上がる。
「これは、すげぇぇぇぇぇぇぇぇ」
昨日はシズクが倒れており、あまり見る余裕もなかったその街。だが今日は、存分に観察できる。
「本当に、ロールプレイングゲームの世界に入ったみたいだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺は騒ぐ。こりゃあ、男ならテンションがあがってしまうというものだろう。
洋風の家が立ち並ぶその街。カジノ、武器屋、防具屋、宿屋等、過去やったゲームの中の世界に入り込んだような気持になって、嬉しい俺だった。
「さて、まずは何をしようか?」
俺は、シズクに問う。
「服を買いたいのです」
シズクは、そう告げる。確かにシズクは布切れを服としているが、それは正直、みすぼらしくある。
「なら、服を買おうぜ」
俺は、悪意なくそう告げる。シズクは、もじもじとしている。
「どうしたの?」
問う俺。上目使いで俺を見るシズク。その顔は、いじらしいものであった。
「お金、ないんです」
「ほう」
俺は頷く。
「俺も、金はねぇ」
俺の、そんな言葉。
「稼ぎましょう」
シズクが、そう提案した。確かにシズクの服は、本来服ではなく、布切れだ。その布切れでこれから冒険をするのは、難儀だろう。さらにシズクは今、ご飯を食べる金すらないようだ。
(だから朝に、ああもサンドイッチをがっついてたのね)
俺は、合点がいった。シズクは普通に、お腹が減っていたのだ。
リスのようにもぐもぐと食べていたシズクの顔を思い出した、俺だった。
「ずっとご飯食べてなかったの?」
俺の問いに対してシズクは、困ったような顔で頷く。
「はい……」
端麗なその顔のまま、目を糸のように細め、なんとも言えない表情を作ったシズク。
「まぁ、お金を稼ごう」
「どうやって稼ぎましょうか?」
シズクは、考える。15歳くらいに見えるシズクである。バイトのようなことをしようにも、そのシズクを雇ってくれる店があるだろうか?
俺が働けたらいいのだがあいにく霊体であり、他人とコミュニケーションをとることができない。
「なら、狩りに行きましょう」
シズクはそう口にして、とある道具屋を見る。
"一角猪の肉、5000ゼニーで買い取ります"
そんな内容が書かれている張り紙が存在している道具屋を見る、俺達。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ、ロールプレイングゲームっぽいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
テンションの上がる俺。シズクが、顔をしかめる。
「先ほどからおっしゃっているロールプレイングゲームって、なんですか?」
「ロールプレイングゲームはなぁ…………」
俺は考える。だが、ゲームという概念を異世界の人間に説明するのは難しいだろう。
だからこそ俺は、考える。めちゃくちゃ考える。そして、言葉を絞り出した。
「すごく、楽しいものだよ」
そんな、俺のセリフ。大人になると、諦めるということを覚えてしまっていけねぇ。
「すごく楽しいものですか。きっと、凧揚げのようなものなのですね」
シズクが目をキラキラさせる。俺には色々と、思うことがある。まずこの世界には、凧揚げという概念があるということが分かる。まぁ、風と紙と糸さえありゃあできるその遊びだ。あってもおかしくない。
そしてシズクの発言のなかで、特段気になった文言がある。
「凧揚げって、すごく楽しいものなの?」
俺のそんな問いに、シズクが頷く。
「はい!!!!!!」
幸薄そうな、色白ショートカットな見た目のシズク。あんまり感情の起伏がないのかと思っていたが実は、そうでもないのだ。
この子実は、めちゃくちゃ感情の起伏があるのだ。
「うふふふふふふふふふふふ」
そんなシズクが凧揚げのことを思い出し、恍惚とした表情を見せている。
(凧揚げか。子供の頃以来、やってないな)
俺は、そう思った。そして改めて、思う。
(べつにもう、やらなくてもいいな)
そんな、俺の感想。そんなこんなで俺達は、一角猪を倒しに行く。
そのために街を出て、外の森に向かった。歩きながら俺は、思う。
「でもさ、一角猪が凶暴だったら、どうしよう?」
虹色のサイコロを先程振っても、なんの効果も発動しなかった。つまりシズクは一角猪と、一対一で戦わないとならない可能性があるということだ。
「まずいな」
俺は、そう思う。
そして、一角猪が現れた。俺の不安の通りそやつは目を血走らせ、とても狂暴そうである。その大きさはシズクの数倍あり、俺は顔をしかめる。