元王女が操りし二つのサイコロ(俺) 〜俺を振ると、出た目に応じたモンスター娘が現れる〜   作:人間 計

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第十四話:シズクの戦い

「これが、一角猪か」

 

 その一角猪とやらは鼻息荒く、シズクを見る。

 

「待て!!!! とまれ!!!!」

 

 俺はその一角猪の前で、両手を広げた。

 

「ここは、通さねぇ」

 

 俺は、ぎりりとした目で、一角猪を睨んだ。一角猪は、俺の方に突進してくる。

 

「うおおおおおおおおおお」

 

 俺は、叫ぶ。そしてその俺の身体を、一角猪はすり抜けた。

 

「霊体ですよ、サイさんは」

 

 俺はシズクの言葉により、その事実を思い出してしまった。

 

 つまり今一角猪には俺が見えておらず、その目に映るのはシズクのみである。つまりその一角猪の突進は、シズクの方に向かっているのだ。

 

 シズクは大樹を背にして、一角猪と向き合う。

 

 そしてその状態で、静止した。

 

 あともう少しで一角猪の角が、シズクを串刺しにする。

 

「逃げろ!!!!」

 

 俺はシズクに対して、そう叫んだ。

 

「はい、逃げます」

 

 シズクはとても素直に、俺の言葉を受け入れた。

 

 そしてシズクはヒョイって擬音が聞こえてきそうな感じで、とっさに動いた。

 

 そのことにより、ゴツンという音が響いた。その角で大樹を串刺しにしながら、頭をぶつけた一角猪であった。そして一角猪は、その場でのびた。

 

「いぇーい」

 

 シズクは俺の方に向かって、ピースサインを作った。

 

「や、やるじゃねぇか」

 

 何もしてない俺は、シズクに対してそう告げる。

 

「昔、まだ王女だった頃、お父様に稽古をつけてもらってたのです。王女には武術のたしなみが必要だってことで」

 

 シズクの先程の身のこなしは、とても素晴らしかった。さらに、その頭も相当きれるようで、森の中という環境を活かすことで、一角猪を倒した。

 

 シズクはその一角猪を見て、笑う。

 

「これで、服が買えます」

 

 シズクは、嬉しそう。だが、笑っていられる状況でもないかもしれない。

 

 俺は、とある存在に気づいた。

 

「おい、シズク」

 

 俺はシズクに向けて、言葉を発する。

 

「この木に怪しい奴がいて、君を見てる」

 

 俺の言葉の通りだ。

 

 その木の枝の上に立つ存在が、シズクを見ている。

 

 シズク一人ではそやつに気づかなかったかもしれない。だが今、俺もいる。そしてその木の枝の上で葉に隠れて、シズクの方からは死角になっているであろうそ奴は、ニヤニヤとシズクを見ているのだ。

 

 シズクの顔に、緊張が走る。

 

「気づいてないような挙動で、この場から逃げよう」

 

 俺の、そんな提案。俺が木の上のそいつを監視しながら、シズクに距離を取らせる。

 

「んー、こんなに大きい猪を、一人では持って帰れませんね。いったん街に帰って、人を呼んできませんとね」

 

 シズクはわざとらしく、そう告げる。

 

 その木の枝の上に存在している怪しい男は、相変わらずニヤニヤ顔を作っている。

 

(ほんと、絵に描いたように怪しいやつだなぁ)

 

 俺はそいつを見ながら、そう思う。

 

 そもそも少女を木の葉の中から盗み見ているという時点で、怪しいのだ。その奇怪な行動にプラスして、その服装は、綺麗なのだ。真っ白な、軍服のようなものを着ている。かなりピカピカのその服を着ているそ奴が木の葉の中から少女を見るというのは、異様としか言いようがない

 

 軍服にあまり似合っているとは言えない、黒い長髪。さらに丸眼鏡をかけたそ奴。

 

 そ奴はその手に、茶色のサイコロを二つ握っている。

 

「サイコロ使いだ、こいつ!! 茶色のサイコロを二つ握ってる!!」

 

 俺は、そう叫んだ。その声は茶色のサイコロ使いには聞こえないが、シズクには届いており、シズクは一層その逃げる足を進めた。

 

 俺も、シズクの方についていく。というより、身体が引っ張られる。虹色のサイコロである俺は、その本体である虹色のサイコロから離れられないのだ。

 

 そして茶色のサイコロの所有者が、その二つのサイコロを、シズクの方に向けて投げた。

 

「気を付けろ、サイコロが投げられたぞ!!」

 

 俺はシズクに対してそう告げながら、転がるそのサイコロを凝視した。そのサイコロはコロコロと転がり、2と5の計7の目を出した。

 

 サイコロのルール的にその7という出目は、強くはないのだろう。だが、丸腰であるシズクに対してそのサイコロが向かうというのは、由々しき事態であった。

 

 そのサイコロは出目が確定した瞬間、姿を変えた。

 

 そして蔦が、うねうねと生える。その蔦が、シズクに絡みついた。

 

「くっ!!!!」

 

 シズクは身動きが取れなくなり、ジタバタしている。

 

「ひひひひひひひひひひひひひひ」

 

 なにやら陰気そうな笑い声を出しながらそいつは地面に降り、シズクの方に向かって歩いた。

 

「ひぃっ」

 

 その男が歩く様を見るシズクが、怯えた表情を見せた。

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