元王女が操りし二つのサイコロ(俺) 〜俺を振ると、出た目に応じたモンスター娘が現れる〜 作:人間 計
「うふふふふふふふふふ、ようこそ、私のお部屋へ」
俺の目の前に立つのは、麗しい女性。180cmくらいの長身で、白く艶めいた髪をボブと呼ばれる髪型にしている。キリリとした凛々しい目、高い鼻、真っ赤で少し薄いその唇という、かわいい系と言うよりは美人系であるその女性。
だが目につくのは美しい顔よりも、その胴体だ。服ではなく茨が、大きな胸の下半分が隠れるくらいの位置から脚の付け根の10cm下あたりまで巻き付いていることで、ドレスのようになっている。そして素足で茨を踏むという、その女性。
(痛くないのかな?)
俺は、そう思った。
「君は?」
「うふふふふふ、私は、アルウラネという種族のアラネって言います」
「神谷 祭だ。サイって呼んでくれ」
俺は、ぺこりと頭を下げた。"アルウラネ"という種族がどんなものだったのかを、日本にいた頃の記憶頼りに思い出す俺。確か、植物人間のようなイメージの魔物だったはずだ。
そのアルウラネであるアラネはブリドラとは違って、部屋に入った直後であっても、友好的であった。
「なぁ、俺に力を貸してくれないか?」
友好的なアラネなら承諾してくれるだろうと思った俺は、そう問うた。
「うふふふふふふ、いいわよ」
アラネは、楽しそうに笑う。そしてその言葉が発せられたと同時に、付近に存在している茨が天に向かうように伸び、うねうねとうねり始めた。
その茨は楽しそうなアラネとは対極的に、攻撃的に蠢いているように感じる。
「あの、アラネさん?」
俺は、付近でうねうねとしているその茨に対して、恐怖を感じる。
「いいわよ? 手伝ってあげる。私を楽しませてくれたらね」
アラネは嬉しそうに、そう告げる。
(ああ~、こいつもめんどくさいタイプかぁぁぁぁ)
俺は、そう思った。そして俺の方に向かい始めたその茨に対して、手をかざす。
そして俺の手により、その茨は捕らえられた。
「わはははははははは、このサイコロの中での俺は、最強だぁぁぁぁぁぁ」
俺は、そう騒ぐ。
「うふふふふふふふ、面白いわねぇ」
アラネは、そう告げる。このサイコロの中でだけは圧倒的な力が溢れる俺だ。その俺の方に、改めて茨が向かう。俺はそれを、高速で避ける。
(アラネの目的は、なんなんだろう?)
俺は考える。今アラネは、いたずらに遊んでいるだけのような気がする。俺に危害を与えようとする意思が感じられないまま、茨を俺の方に向かわしている気がするのだ。
(まるで、俺をためしているかのようだな)
そんなことを思う俺の脳内に、アラネの過去の境遇が流れ込んできた。ブリドラの時と同じような感じである。そして俺は、そのアラネの過去の境遇を見てみた。
アラネは、"アルウラネの森"という名の森に、たった一人で存在していた。
「退屈ねぇ」
アラネはその森の中で、そう告げる。
アルウラネという種族の魔物であるアラネは、そこを拠点としている。というよりも、植物人間であるアラネの目に見えぬ根がその森一帯に張り巡らされており、森から外には出れないのだ。
だかこそアラネは、その森の中でのみ生きる。
そんなアラネが森の中を歩いていると、血だらけの青年が倒れているのを発見した。
「あらあら」
アラネは森に存在している薬草を摘み、青年の傷口に擦り込む。
水も泉からくみ、食べ物も木の実を獲って、その青年に食べさせた。
そしてその看病の甲斐あって、数日後、青年は元気になった。
「ありがとうございました!!!!」
森の奥にてアラネにお礼を言うという、その青年。
「うふふふふふふ、いいのよ。助けたお礼をしてってわけじゃないけど、あなたのことを教えてくれる?」
「僕は、オランって言います。"夜明け村"っていう村の出身です」
その青年は元気よく、そう口にした。
「それで、どうしてその夜明け村の住人が、この森に来たのかしら? この森にはとっても恐いアルウラネという種族の魔物がいて、人間だけじゃなく魔物すらも寄り付かないはずだけど?」
オランは首を、横に振った。
「僕もここには狂暴な魔物が存在してるって聞いてました。でもここにいたのは、とっても優しくて美しい女性でした」
オランはアラネに対して、笑みを見せる。
「うふふふふ、嬉しいことを言ってくれるわね」
アラネも、微笑む。
「僕の村は、正義の国に滅ぼされたんです。僕も攻撃され傷を負いましたが、なんとか逃げ、この森に辿り着いたんです」
オランは、アラネの少し前の問いに対して改めて答える形で、そう告げた。
「あらそう、ひどい国があるのねぇ」
アラネは、そう告げた。だがアラネは、人間社会のいざこざにはあまり興味がなかった。そんなアラネとオランであった。
そしてそれからアラネとオランは、色々なことを喋った。他人と会話する機会のないアラネにとってオランと喋るのはとても新鮮でかつ、楽しかった。そんな日々を数日続けた際に、オランが言葉を発した。
「僕、そろそろ人間社会に戻ります」
オランがそう告げた瞬間、付近に茨がうねうねと蠢き始めた。
「あ、あの、この茨は?」
オランは、茨を不可思議そうに見る。
「うふふふふふ、気にしないでいいわよ」
アラネはそう告げるが、オランは気になって仕方がなかった。