元王女が操りし二つのサイコロ(俺) 〜俺を振ると、出た目に応じたモンスター娘が現れる〜   作:人間 計

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第十七話:命の薔薇

 オランは付近の茨を見て、不穏さを感じる。

 

「うふふふふふ、戻らなくていいじゃない、人間社会になんて」

 

 アラネが妖艶な様相で、オランに対してそう告げる。そして茨がオランの背後を塞ぐかのように、うねうねとする。

 

「貴方の村は滅んだんでしょ? なら、戻っても戻らなくても、どちらでもいいじゃない。正義の国に復讐するつもりなんでしょうけど、あなた一人でそれをするのは、無謀ってものよ。そんな無謀な挑戦をするよりも、ここで私と共に暮らしましょう。たくさんの果実が存在しているここにいれば、ご飯にも事欠かない。それにここは私が管理している森だから、私達に害成す者達は入ってこない」

 

 アラネは自信満々に、そう口にする。アラネの手には、みずみずしい果実が握られていた。

 

「だから、ここで一緒に暮らしましょう。私も退屈だから、お話しできるお友達が欲しいのよ」

 

 アラネは妖艶な笑みを見せるが、オランは首を横に振った。

 

「ごめんなさい。アラネさんには、とってもお世話になりました。命を救ってもらった恩もあります。でも僕は、行かなきゃならないんです。正義の国に、僕の家族を含む仲間達を殺されました。だから僕は、その仇討ちをしないとならないんです」

 

 オランの目は、凛としている。それが自らのやるべきこととして一縷も疑っていないかのような目でオランは、アラネに対してそう告げる。

 

「うふふふふふ、でもね、貴方はこの森から出られないの。私がいる以上ね」

 

 アラネは微笑む。その顔には、恐ろしさが見え隠れしていた。

 

「お願いします!! ここを通してください!!」

 

 オランが、頭を下げた。その顔は、とても真剣なものである。

 

「ふぅ」

 

 アラネは、ため息をついた。

 

 そしてうねうねと蠢いていた茨が、地面に戻って行った。

 

「馬鹿ねぇ」

 

 アラネは、そう告げる。

 

「ここにいたら、苦しみなく生きていけるのに。人間社会に戻って正義の国と戦うなんて、とても愚かなことなのに。本当に、馬鹿ねぇ」

 

 アラネは、可哀そうなものを見るような顔で、そう告げる。

 

「でも、その愚かさを持つのが、人間っていう生物なのよね。貴方の顔を見たら分かるわ。貴方は私がどう止めようが、きっと人間社会に戻ってしまう。だから、行きなさい」

 

 アラネは、諦めた表情を見せた。オランは、凛々しい顔のまま。

 

 そのオランの心臓部に、アラネが触れた。アラネの手が光った後、そこに一輪のバラが握られていた。

 

「それは?」

 

 オランが問うた。

 

「うふふふふふ、これは貴方の命の化身よ。貴方の命が亡くなった時、この薔薇の花は落ちる。つまりこの薔薇が元気であれば、貴方の命は失われてないってこと。これで私は、貴方の命を監視おくわ。そして……」

 

 アラネが少しだけ、間を開けた。

 

「必ず、ここに戻ってきて。私は人間が嫌いじゃないの、面白いから。だから人間社会でやるべきことを全うしたらここに戻ってきて、私の話し相手になってちょうだいね」

 

 アラネのそんな要望に対してオランは、頷く。

 

「うん、必ず戻ってきます」

 

 そう宣言してオランは、アラネの支配する森から出た。

 

 アラネは去って行くオランの姿を、ただただ見ていた。

 

 そしてそれから数日後アラネは、オランの命の化身である薔薇の花が落ちたのを、見た。

 

「ほんと、馬鹿ね」

 

 アラネはそう告げそして、再び一人になった。

 

「まったく、また退屈な日々になっちゃたわね」

 

 アラネは残念そうな顔で、そう告げる。凛としているアラネは、泣くことがない。だが、泣きそうな感覚に陥った。

 

「くふふふふふふ」

 

 アラネの元に、そんな笑い声が聞こえてきた。

 

「あら、これはこれは、ご高名な方がいらっしゃったわね」

 

 アラネはその存在を見て、そう告げる。アラネの前に現れたのは、ブリドラを虹色のサイコロの中にいざなった、フード付きのコートをまとった女性である。

 

 そいつは相変わらず不思議な笑い方をしながら、アラネの前に立った。

 

「残念だったね、オラン君のことは」

 

 その女性は全てを把握しているかのように、アラネに対してそう告げた。

 

「うふふふふふ、そうねぇ、貴方も彼の死を悲しんでくれるかしら? シャマラ」

 

 アラネはそのローブの女性のことを、シャマラと呼んだ。

 

「くふふふふふふ、そうだね。オラン君の死だけじゃなく君の孤独も悲しんであげよう。このままだと君は、永劫とも思える時間、退屈な時を過ごさざるを得ないからね」

 

 シャマラは、そう断言する。

 

「うふふふ、まぁ、そうでしょうね」

 

 アラネも、そのことを理解している。アラネが支配しているこの森の中に入ってくる存在は、ほとんどいない。アルウラネというのはかなり希少な魔物であるが、気分屋で何をしでかすか分からないかつ圧倒的な実力を持っていることが知れ渡っているため、この森は畏怖されているのだ。

 

 

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