元王女が操りし二つのサイコロ(俺) 〜俺を振ると、出た目に応じたモンスター娘が現れる〜 作:人間 計
「ひひひひひひ、茨を操る能力ですか」
ツターラは、その場に現れた俺の繰り出すアラネの能力を、推測してきた。俺は、首をぽきぽきと鳴らす。俺が何かをしているわけではない。アラネの力を使っているだけだから。だが、アラネの力を借りてではあるが強敵と戦うというのは、男としてテンションが上がってしまう。
(俺って、戦闘狂的な一面を持ってたのか?)
自らの知らない一面を知ることができた、異世界である。
「先ほどなぜその力を使わなかったのかは疑問に思いますが、少なくともあなたは、強敵と言うくくりには入るでしょうね」
ツターラは強敵である俺に対して、ひるまない。
ツターラの発現させた蔦が消え、その手に茶色のサイコロが二つ、握られている。
「そのサイコロは、頻繁に振れるんだな」
俺の言葉の通り、先ほどからツターラは、何度もそのサイコロを振りなおしているのだ。
対する俺こと虹色のサイコロは、一度振ると数時間程は振り直しができないようだ。つまりサイコロによって、振り直せる時間というのが決まっているようだ。
「ひひひひひ」
ツターラは、サイコロを振った。そのサイコロは、1と1の計2の目を出した。つまりそれは、最強の出目である。その最強の出目によりツターラのサイコロが、膨大な量の蔦となって、世界に繁茂する。
まるで龍のように天に伸びるその蔦に対して、アラネの茨が伸びる。だが、量はツターラの蔦の方がはるかに多い。だからこそツターラの蔦が、茨を覆いつくした。それでもなお、自由になっているツターラの蔦が無数にある。
その蔦が、俺の方に向かってきた。
「終わりです」
ツターラが、そう宣言した。
「やべぇよ、ねぇさん」
俺は脳内でアラネに対して、そう告げる。
(あら、何がやばいのかしら?)
そんな言葉が、俺の脳内に届く。
「あいつの蔦の方が、はるかに量がある。茨を操る能力じゃ、勝てない」
(あら、勘違いしているようね)
「何を勘違いしてるんだ?」
(うふふふふふふ)
アラネと脳内で話をしている俺に、あと少しで蔦が当たる。
そんな俺に対して、言葉が発せられる。
(うふふふふ、私の力は、茨を操るだけのものではないわよ? 私の力は、植物全てを意のままに操る力なの)
アラネの、そんな言葉であった。
「むむむ、てことは?」
俺は、自らに当たりそうな蔦に対して、手をかざした。そしてその手に、蔦が触れた。
その蔦は俺の手に当たるが、俺を傷つけなかった。
その蔦は俺の手に当たった瞬間、動きを止めたのだ。
「何?」
ツターラが今までの余裕そうな顔ではなく、訝し気な表情を作った。
「わははははははは」
俺は、高笑いする。そして、地面に手をついた。地面から植物のツルが生え、ツターラの方に向かう。
そしてその足に、絡みついた。
ツターラの蔦も今、俺の支配下に置かれている。全ての植物を手中にできるという、アラネのおそろいしい力である。
「すごい……」
シズクが、感嘆の声を上げる。
そして俺は、ツターラの方に向かう。
ツターラが、狼狽している。サイコロの最高値である合計2の攻撃すらも無効化されたツターラは今、できることがなくなったのだ。
「どうやら、完全に負けたようですねぇ」
ツターラのそんな言葉に対して、俺は頷く。
「ああ、そうだな。もはやお前に、勝ち目はない」
そんな、俺の断言。
アラネの力により現れたツルが、ツターラの体に巻きついている。それによりツターラは、俺から逃げることもできなくなっている。
「さて、シズクの命を狙っていたお前が、自らの命を奪われないとは思ってないよな?」
俺は不敵な笑みで、そう告げる。
「ひひひひひ、軍人として生きてきた僕です。この命なんて、いつでも失う覚悟ができてますよ」
ツターラの断言。いい覚悟だ。
「よっしゃぁぁぁぁぁぁ、歯を食いしばれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
俺は、そう叫んだ。そして自らの拳を固め、ツターラの顔を思い切り殴った。
ツターラは吹っ飛び、その意識を失った。
「ふぅ」
俺は、大きく息を吐いた。
「命までは奪わないぞ?」
俺はシズクに対してそう告げ、シズクも頷く。
「はい、これで数日は起きてこないでしょう。その隙に私達は、先に進みましょう」
俺達は別に、人殺しがしたいわけではないのだ。降りかかる火の粉は、振り払うがな。