元王女が操りし二つのサイコロ(俺) 〜俺を振ると、出た目に応じたモンスター娘が現れる〜 作:人間 計
「さて、それじゃあ、帰ろう」
俺はその言葉と共に脳内で、(ありがとう、アラネ)と告げ、アラネも(うふふふふ、どういたしまして)と返答した。そしてアラネの茨を操る能力にて一角猪を街まで持っていき、それを道具屋で売ることで、5,000ゼニーを手にした。
「へへへへ、おっさんこいつは大きな一角猪だろ? ちょっと高く買い取ってくれよ」
「無理だな~、こっちも慈善事業じゃないんだ」
「へっ、しけたこった」
俺のなんの意味もないそんなやり取りを横目に、正規の値段である5,000ゼニーをもらったシズクであった。
「ふふふふふふ、これで、何か食べましょう」
シズクは結構な大金により、にやけ面になっている。
「ああ、いいな」
俺も同意し、料理屋に向かった俺とシズク。
その道中に、会話する。
「そういや、この街の中で正義の国の人間に狙われるってことは、ないのか?」
俺はシズクがお尋ね者だという事実を思い出し、付近をきょろきょろした。
「ここでは大丈夫ですよ。ここは一応、どこの国にも属さない、中立の街なんです。その中立の街の中での争いは、原則ご法度なんです」
なるほどねぇ。だからいかつい頭三人衆もツターラも、この街の外で襲ってきたのか。
なら、この街の中では一応、心穏やかに過ごせるということだ。
俺とシズクは、料理屋に行った。”炭酸芋と一角猪の肉じゃが”という料理を注文し、それを食する俺達。その炭酸芋とやらは、名前の通り炭酸感のある芋で、それが口に入った瞬間、しゅわしゅわする。
(結構炭酸強いな)
俺は、そう思った。シズクは腹が減っていたのか、その料理をかきこむ。
朝にもシズクは、サンドイッチを多量に食べていた。普段あまり食べていないから、腹が減っていたのだと俺は思っていた。
だが今、朝サンドイッチ二人分食べたくせに、肉じゃがにがっついているシズクである。
つまりシズクは単純に、食い意地がはっているレディなのだと推測される。
(華奢な身体なのに、結構入るんだな)
シズクはその大盛りの料理を、リスみたいに頬張りながら、口に入れていた。
(それはちょっと、悪手じゃねぇか)
俺は内心そう思いながら、シズクの方を観察する。
「ごふっ!!」
シズクは炭酸芋を一気に口に入れたことで、そのしゅわしゅわ感により、むせてしまった。
「はい、お茶」
「ありがとうございますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
シズクが困った顔で、お礼を言ってきた。
「ふふ」
華奢で幸薄そうな感じなのに、とても感情豊かなシズクに対して俺は、面白くなった。
そしてそれから俺達は、買い物をする。まずは、シズクの服を買うのだ。シズクは今布切れをまとっているが、その布切れで旅をするのは、難しいだろう。だからこそシズクは、服屋に向かった。そして、服を選ぶ。
「動きやすい服をください」
シズクがそう言い、店員がとある服を提案してきた。それは、真っ黒な短パン及び膝上10cmくらいから足先に向かうという、ニーソックス。上の服も動きやすそうな真っ黒Tシャツ及び肘位から手の甲くらいまでの腕当てという、黒ずくめの服装。その靴も、真っ黒な革靴だ。
「全身真っ黒だけど、いいの?」
俺は、尋ねる。
「私は、命を狙われておりますからね。あまり目立たないほうが良いのです」
そしてシズクは、同じく黒色のマントを買い、それをまとった。
「確かにその格好だったら、目立たないかもね」
白い肌、真っ赤な唇、大きな黒目、黒色ショートカットというシズクの綺麗な顔に、その服はとても似合っているように感じる俺だった。
(まあ、美人は何着ても絵になるのよね。人相の悪い俺とは違って)
ジャージとスウェットくらいしか似合う服のない俺はシズクのことを、羨ましく感じる。
そしてさらにシズクは、別の店に行く。
"武器屋"と書かれている看板のお店に到達した、俺とシズクである。
「ここで、何を買いたいんだ?」
俺は、尋ねる。
「長い剣を買いたかったんです。私もちょっとでも、戦いの役に立てるように」
「なるほど」
俺は納得し、シズクは長い剣を買った。日本刀というよりは中世ヨーロッパ的な剣だ。鞘付きのそれを買って、腰にかけるというシズク。
「よし、次のお店に行きましょう」
シズクはそう告げ、次の場所を目指す俺達。そして到達したのは、お花屋さんだった。
「花が好きなのか?」
「はい、お花は美しいですから」
シズクは薔薇の花を、一輪買った。
「はいどうぞ、サイさん」
その花を俺に渡してきたというシズク。
「ん? どういうこと?」
俺は、首を傾げた。
「サイさんには今まで、たくさん助けていただきましたから」
どうやら、俺に対するお礼の気持ちであるらしい。俺は、素直にそれを受け取った。
「ちなみに、一輪の薔薇の花言葉って知ってるかい?」
異世界に花言葉があるのかは知らないが、俺は意地悪な顔で、シズクに対してそう問うた。