雪音クリスは衛宮士郎に拾われる   作:バースデー

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乙女コースター

「大天使の加護を与え給え――これこそは、音に聞こえし絶世剣! 毀れることなきデュランダル!」

 

光が爆ぜた。

シンフォギアを纏うよりも早く、立花響を潰すために全力を解き放つ。

卑怯とは言うまい。もし言葉にしたのなら、それがそいつの敗因となるだろう。

 

――Balwisyal Nescell gungnir tron!

 

反射で、響の全身が駆動する。

ここで潰されるわけにはいかない――その決意が、肉体を無理やり押し動かした。

 

横一文字の閃光が迫る。

光刃が逃げ場を塞ぎ、容赦なく振り下ろされる。

 

「このッ!!」

 

響の膝が限界まで折れ、身体はほとんど寝かせるように沈み込む。

つま先だけで床を滑る――強引すぎる即興のリンボーダンス。

 

刹那。

横薙ぎの剣閃は、響の鼻先わずか三センチを掠め、風だけを残して通り過ぎた。

 

同時に、響の身体はバネのように弾き起こされる。

手もつかず、力任せに――ただ、生存本能だけで。

 

背後から轟く破壊音に、眩暈が走る。

建物が軋み、崩れ落ちる音は、遥か遠方にまで響いていく。

――これが完全聖遺物の力。

その恐ろしさを、嫌でも骨の髄まで思い知らされる。

 

(了子さん……避難要請、ちゃんと通ってるのかな?)

 

心の片隅でそう祈る。だが、気を抜いている暇などなかった。

 

――Killter ichaibal tron。

 

歌声が空気を震わせ、鎧のごとき光が少女の身を包む。

 

「オイオイ……よそ見とはなァ」

 

気を逸らしたのは、一瞬。

その一瞬で、目の前にクリスが迫っていた。

 

「随分と余裕じゃねえか――あァァァッ!!」

 

獣じみた咆哮とともに、迫る銃火。

凶悪な速度と圧力が、空気ごと叩き潰すように響へと迫る。

 

「っあァ――!?」

 

視界がぐらりと揺れ、全身が宙へと放り出される。

衝撃。肺が裏返るほどの圧力。

着地の態勢を整える暇もなく、次の瞬間、訪れた衝撃によって響の身体は壁へと叩きつけられる軌道を描いていた。

 

「――っあ!?」

 

逃げ場がない。

けれど、背後から走る殺気の方が、壁よりも遥かに致命的だった。

 

「デュランダル!!」

 

叫びとともに、クリスの背後で光が爆ぜる。

それは刃を振るうための一閃ではない。

背後に向けて振るわれた一閃。

推進――己を前へと叩き出すための爆炎だ。

 

轟音と閃光を背に、弾丸のごとき速さで少女は迫る。

回避など許さぬ速度で、殺意だけを携えて。

 

その手に握られていたのは――白き陽剣、莫耶。

煌々と輝く切先が、まっすぐに響の喉元を狙って迫る。

 

「――ッ!」

 

咄嗟にクリスの腕を掴む。

その反動を軸に、響は壁を駆け上がった。

爪先が砕けそうなほど石壁を蹴り、息が詰まる高さまで駆け上がる。

 

「待って! 私は……戦うために来たんじゃないッ!!」

 

必死の叫び。

頂点でその腕を放し、身体をひねり、壁を蹴って――。

回転の勢いを借り、クリスの背後へと着地する。

 

「まだそんなことをッ!!」

 

振り返るクリスの瞳には、揺らぎ一つなかった。

次の瞬間、デュランダルが咆哮のように光を放つ。

だが、先程推進に力を割いたせいか、光は鈍り、刃は浅い。

 

それでも死を孕む輝き。

響は身を低く折りたたみ、そのまま地を蹴って跳ぶ。

光刃が頭上を掠め、髪を焼き焦がしていった。

 

「あっつ!!」

 

焦げた熱気に顔を歪めながら、響はそれでもクリスに向き直った。

 

「ねえ、貴女の名前を教えて! どうしてそんなに苦しそうなの!?

理由は分からないけど……でも、話してくれたら、きっと――!」

 

必死の声。

けれど返ってきたのは、怒声だった。

 

「阿呆かッ!!」

 

クリスの双眸が苛立ちに揺れる。

その感情を叩きつけるように、腰のユニットが展開した。

 

「一々うるせぇんだよ、テメェはッ!!」

 

轟音と共に、小型ミサイルが雨のように吐き出される。

一発一発が分厚い城壁をも穿つ威力を秘め、幾重もの軌跡を描いて響を包囲した。

 

だがそれで終わりではない。

クリスは両手の武器を瞬時に干将・莫耶へと切り替え、爆炎の幕を突き破るように突進する。

 

「逃げ場なんざ――あるもんかァ!!」

 

火線と刃。

二重の死が、響の眼前に迫った。

 

本来、遠距離兵装と近距離兵装を同時に振るうなど常識ではあり得ない。

切り替えにかかる僅かな時間が決定的な隙となり、

加えて乱戦では同士討ちを招きかねない――だから誰もやらない。

 

だが、シンフォギアを纏った雪音クリスには、その常識は通じない。

 

彼女の全身そのものが兵器であり、武器の切り替えなど存在しない。

だからこそ、ミサイルを撒き散らしながら刃を振るうという暴挙が可能になる。

 

そして――。

 

「……解析、開始」

 

低く呟くと同時に、無数の魔力が視界に浮かぶ。

ミサイルの軌跡、速度、爆心地。全てが瞬時に演算され、

クリスの意識へと流れ込んでいく。

 

爆炎の渦の中でさえ、彼女の爆撃は一度たりとも味方(かのじょ)を誤爆しない。

いや――それどころか、自らをかすめることすらない。

 

完全なる制御。

ゆえに雪音クリスは、一方的に遠近同時の飽和攻撃を成立させていた。

 

「うっ……!?」

 

クリスの斬撃を、響は咄嗟に腕の装甲で受け止めた。

だが――次の瞬間。

 

四方八方から炸裂する爆炎。

避ける間もなく、衝撃が全身を叩きつける。肺の奥で呼吸が跳ね飛ばされる。骨が金属音を立てる錯覚が脳に響いた。

 

「遅いッ! トロいッ! 甘っちょろいッ!!」

 

タン、と軽快な音を残して、雪音クリスが響を蹴り飛ばした。

彼女の体は弾丸のように吹き飛び、視界がぐらりと揺れる。

 

クリスはそのまま宙へと跳躍する。

上空――天を背負った彼女の姿が、圧倒的な支配者のように小さく見下ろす。

降り注ぎ続けるミサイルは、地鳴りのような轟音を立て、地表を揺らす。

その中心に、響だけが取り残されていた。

 

「くっ……!」

 

一瞬、世界が無音になった気がした。

 

降り注ぐは業火。連続する光と衝撃。爆発の先にまた爆発。

地獄の震央。そこから逃げる術はない。

響が顔を上げたとき、クリスは既に剣を掲げていた。

 

「大天使よ。我が誓いは此処に――」

 

冷ややかな祈りの声。

 

「我が怨嗟の声は過去に――」

 

白刃が光を帯びる。

 

「唸れ、絶世剣!  不屈の極聖(グラモロース・デュランダル)!」

 

光が炸裂し、天と地を裂く白の奔流が、響めがけて降り注ぐ――。

 

「ぐっ……!」

 

降り注ぐ光に、響は思わず身を縮こまらせた。

ただ耐えることしか出来ない。少しでも被害を抑えようと。

 

だが――それが致命的だった。

 

「甘ぇんだよ!」

 

クリスの嘲笑が木霊する。

戦闘の本質は、一手先ではなく二手三手を同時に繰り出すこと。

経験無き響の反応は、ただ目の前を受け止めるだけ――だから追い詰められる。

 

「強化――付与ッ!」

 

空中で加速したクリスが、轟音と共に地面へと着地する。

その間も、放たれたミサイルは途切れない。爆炎が舞い、轟音が世界を満たす。

これが、()()()

 

そして――

 

「強化魔術、全開ッ! 干将・莫耶――オーバーエッジ!!」

 

刃が光を喰らって肥大化する。

干将・莫耶は鎧のような鱗を纏い、その両翼を広げた。

まるで、空を覆う巨大な翼。

 

「……っ!」

 

目の前に立つ雪音クリスは、もはや“人”ではなく。

音と炎を従えた兵器そのものだった。

 

「オラァッ!!」

 

荒々しい咆哮と共に、双つの刃が嵐のように振るわれる。

瞬きよりも速く、六度の斬撃が空間を切り裂いた。

 

これが、()()()

 

「きゃあっ!」

 

乱撃の奔流に呑まれ、響の身体は再び吹き飛ぶ。

 

「もうテメェに用はなくなった!

 テメェが生きようが死のうが、どうでもいいんだ!

 だ!か!ら! さっさと(かばね)を晒しやがれぇッ!!」

 

巨大な双剣がガリガリと大地を削りながら迫る。

焼け焦げた地面をめくり上げるその光景は、まるで世界そのものが裏返っていくかのようだった。

 

「……っ」

 

目の前に迫る刃。

届かない。早すぎる。現実感すら掴めない。

だからこそ――響には、それが一瞬、他人事のように見えた。

 

スラリと、バターを切るように――

響の肩が斬り裂かれた。

 

「ぁああああッ!!」

 

焼けつくような痛みが全身を駆け巡る。

もはや「痛い」という感覚は通り越し、ただ熱が、身体の隅々まで灼き尽くしていく。

 

「惚けてんじゃねぇッ! あたしが“殺す”って言ったの、聞こえてなかったのか!!」

 

クリスの陽剣が翻る。

次の瞬間、柄頭が響の頭に叩きつけられた。

 

「これでもまだ、“話し合おう”なんて甘っちょろいことを言うのか……? あァ?」

 

ガン、と。

再び。

 

ガン、ガン。と一度打ちつけたのにも関わらず、更に陽剣を持ち上げて、更に打ち続けた。

何度も何度も、ぜんまいで動く人形のように繰り返す。

 

「言えるのか……言えるのか……言えるのかッ!!」

 

乾いた衝撃音が、規則的に虚空を切り裂いていく。金属と骨がぶつかるたび、世界は赤の水彩に滲んでいった。

 

「終いだ。」

 

響の身体が床に沈む。力の抜けた肩、震える指先。クリスはそれを、冷たく見下ろし、吐き捨てるように言い放った。

これで片付いた。これで良いんだ。自分は、目的のためには道を空けるだけでいい。

そうすれば、もう失わない。失敗しない。

自分に失敗は許されない。

 

足を動かし、行ってしまおう──そう自分に言い聞かせたその刹那。

 

「グゥ……ああ……」

 

「ーーーッ!?」

 

背後からか細い声が零れ、クリスは反射的に振り向いた。

完膚なきまでに叩き潰したはずの女が、血を吐き、体を震わせながらも立っている。額から滴る赤が、まるで意志を形どるように落ちる。

その瞳は、血と痛みに濁りながらも、真っ直ぐにクリスを射抜いていた──あまりにも確かな、抗い続ける光だった。

 

 

「なんで、立ち上がる?」

「だって言ったでしょ! 話し合おうって!

 私たちはノイズとは違う。話せるんだから、ここでただ殴りあって終わりなんて認められない!

 それに、あなたがそんな悲しい顔をしてるのに、何も知らないで『間違ってる』なんて言えるわけない!」

 

クリスが、思わず一歩下がる。勝っているはずの自分が、どうしてこんな子に不自由なほど動かされるのか——答えが出ない。

 

「何なんだよ? お前は何がしたいんだ?」

「『お前』じゃない!」

 

響は即座に訂正して、矢継ぎ早に自己紹介を始める。

 

「私は立花響、15歳! 誕生日は9月13日! 血液型O! 身長はこの前で157cm! 体重は仲良くなったら教えるね! 趣味は人助け、好きなものはごはん×ごはん! 彼氏いない歴は年齢と一緒っ!!」

 

勢いだけで畳みかける響に、一瞬、場の空気が和らいだ。笑いでも嘲りでもない、純粋な昂ぶりがそこにあった。

 

「阿呆か!

テメェのことを知ったからなんだ!お前がそうしたって、裏切られたりする現実が変わると思ってんのかよ!」

「思わない!」

「お前に、あたしの何がわかる!」

「分からない! だから話したいんだ!!」

 

短い言葉が次々に返される。響の叫びは、純粋でまっすぐだ。クリスはその声に、自分でも知らなかった“本音”が漏れているのを聞き取れなかった。裏切られることへの恐れ、理解されないことへの怯え――それらが混ざった声だと気づかないまま、苛立ちだけが喉を震わせる。

 

「話し合おうよ。私たちは戦っちゃいけないんだ。言葉は通じるんだから――」

「うるさい! 分かり合えるものかよ……人間が、そんなふうに出来てるわけがないだろうが!!」

 

クリスの喉から迸った声は、ただの拒絶ではなかった。

それは己が歩んできた道を守ろうとする、歪んだ祈りの破裂音。

受容を恐れ、裏切りを呪い、それでもなお縋り続ける――

矛盾の奔流が、雪音クリスという存在を駆動していた。

 

「あたしはお前達を信じない。

お前達の声など聞こえない。

ただ、あたしの信じる正しさだけを、この手で遂行する!!」

 

咆哮は雷鳴のように空気を裂き、響の身体を痙攣させる。

胸の奥で答えを探す。どうすれば、この虚無に触れられるのか。

 

――そのとき。

 

『今、胸にあるものを思い描きなさい。

それこそが――立花響の力となる』

 

翼の囁きが、幽かに、しかし絶対の確かさをもって心を打つ。

胸に残る温度。翼と交わした、あの一瞬の光。

それは幻ではない。

 

更に言うならば、それは決して間違いであるはずがない。いや、たとえ世界がそれを否定しようとも、響はもうそれに怯えることはない。

 

ならば、躊躇は不要だ。

燃え滓のように残る恐怖を、拳で叩き潰せばいい。

理屈も未来もいらない。ただ、この瞬間、全力で貫き通す(心を伝える)ことこそが、彼女の回答。

 

怯えなど、もう存在しない。

 

 

叫ぶように、拳を握りしめる――行動だけが、答えを作るのだ。

 

「――っ!!」

 

姿勢を落とす。クラウチングスタート。

それは走るためではなく、ただ“前へ”突き進むための構え。

 

「阿呆か! 結局はそうなんだよ!!」

 

雪音クリスの咆哮と同時に、空は鉄火の雨に変わる。

数え切れぬミサイル。

無数、幾多、無限。

天地そのものを覆う質量が、少女一人を殺すために収束する。

 

逃げ道はない。防御など存在しない。

立花響の戦闘経験では、この質量攻撃を読み、避け続けるのは不可能。

――ならば。

 

ドン、と大地が震える。

爆炎が重なり合い、光と轟音が視界を白で塗りつぶす。

 

そのただ中から、煙を切り裂いて現れる影。

 

「うおぉぉぉおおお!!」

 

声は獣の咆哮。

振りかぶられた拳は、理を拒絶する単純な暴力。

 

(防いだ……? 違う……! こいつ、防御を放棄しやがった!!)

 

防げない? なら防がない。

避けられない? なら避けない。

ただ前へ――その一心で、立花響は爆炎の渦を拳で割った。

 

「このッ!!」

 

ミサイルが降り注ぎ、双剣が突き刺さる。

だが、構わない。無視する。

 

戦闘の本質は一手先ではなく、二手三手を同時に繰り出すこと。

経験のない響に、そんな読みは出来ない。

だが――それで良い。

 

全てを受け止める。

憎悪も、怨嗟も、痛みすらも。

そのすべてを抱え込んで、拳ひとつに込めればいい。

 

考えない。ただ、一撃を届かせることに全神経を集中する。

 

想いを叩きつける。

思いを叩きつける。

感情を叩きつける。

 

――するべきことは、それだけだ。

 

「ッ!!」

 

視界の先に、クリスの姿。

崩れかけた身体で、それでも掴み取った一点。

 

ーー最速で。

 

右腕を振りかぶる。

 

ーー最短で。

 

腰を捻る。

 

真っ直ぐに――!

 

理屈も勝算も要らない。

ただ、少女へと伸びていく拳。

世界を殴り変えるかのように。

 

『いい? 貴女がするべきことは、ただ名前を呼ぶこと。

そうすれば――ガングニールは必ず応えてくれる』

 

その言葉を信じよう。伝えたい。話し合いたい。わかり合いたい。この思いを伝えてくれ。

 

「トレース……」

「ーーー世界貫く想い(ガングニール)!!」

 

叫びと共に、拳が燃え上がる。

それは武器でも槍でもない。

立花響という存在そのものを削り出し、ひとつの象徴へと変じた姿。

 

拳が振り抜かれるたびに、空気は悲鳴を上げ、大地はその軌跡に従う。

それは形ある武器ではない。

ただ真直ぐで、ただ熱くて、ただ強い――想いの槍。

 

誰もが幻と嗤うだろう。

だが確かにここにある。

彼女がそう叫んだ瞬間、拳はガングニールそのものだった。

 

「があっ!!」

 

雪音クリスの身体が吹き飛ぶ。

壁を二度突き破り、瓦礫を撒き散らしながらなお勢いを失わない。

そのまま地面に叩きつけられ、轟音と共に地表を抉った。

――ようやく止まったとき、彼女の身体には明確な破損が刻まれていた。

 

「テメェ、アームドギアのエネルギーを、そのまま使用したのか……ゲホォッ!」

 

言葉は血で遮られる。クリスの口から血が零れ落ちる。

インパクトの直前に強化魔術で防御を展開していた――それでも衝撃を抑え切れない。

拳は、理屈を凌駕して届いたのだ。

 

響は拳を突き出したまま、その場に立ち尽くす。

全力で殴った分、息が荒い。

けれど視線の先には、確かな手応え。

 

(クソッ!フィーネの野郎、真名詠唱まで教えてやがったのか。よっぽどあたしに聖杯を手にして欲しくないと見える。)

 

追撃が途切れた静寂に、響は歌でフォニックゲインを維持しながらも構えを解く。彼女の目はただ、クリスを捉えていた。

 

「お前……馬鹿にしてるのか、私を、雪音クリスを」

「……そっか、クリスちゃんって言うんだ」

「な……」

 

クリスが初めて名を名乗る。響はその音を嬉しそうに噛みしめる。世界で初めて、生の名が頬をかすめるように鳴る瞬間だった。

 

「ねぇ、クリスちゃん。こんな戦い、もうやめよう。ノイズとは違う。私たちは言葉を交わせる。話せば、きっと分かり合える。だって私たち、同じ人間なんだよ」

「……嘘くせぇんだよ」

 

響の言葉に、クリスは短く吐き捨てる。

「嘘くせぇ……」

「…………」

「アホくせぇ!」

「……そっか…………でも、話してくれてありがとう。」

 

その「ありがとう」は、刃のように胸に突き立つ。

話す? あたしが? そんな戯れに馴染むほど、この世界は優しくない。信じれば刃で返され、抱擁は重石となる。

行き着く先は絞首台。

 

それでも――それでも、認められるものか!

あたしが、雪音クリスが!

 

「干将・莫耶! 強化魔術、最大出力。

 干将・莫耶――オーバーエッジ!!」

 

「──!?」

 

陰影が裂け、クリスの掌に宿る刃が膨れ上がる。だが、それは序章に過ぎない。

黒い何かが刃を呑み込み、存在の輪郭を塗り替えていく。

 

「構造、変遷。イチイバル!」

 

刃は銃と剣とを溶かし合わせた異形へと変貌した。それは銃剣。名前なき幻想がようやく形を得る瞬間。

その兵装は、終わるはずだった武器たちの怨嗟を纏っていた。

 

「立花響!! テメェはあたしが、必ず潰す!!」

 




Q, 原作よりも強化されたクリスにどうやって攻撃を当てる?
A, 根性!!
(実際のところ、防御から攻撃への急転換、そして真名解放によるクリスの想定する威力とのズレが大きな決め手です。)



真名:世界貫く想い(ガングニール)
ランク:A+
種別:対人/対軍宝具
レンジ:1〜50
最大捕捉:100人

北欧神話において主神オーディンが携えたとされる神槍。
「必ず標的を穿つ」ことを宿命づけられた逸話を持つ。
一度放たれれば必中必殺――すなわち「回避も防御も不可能」とされる、極めて理不尽な伝承武装である。

本作においては、立花響の「拳」がその代行者となる。
彼女にとってのガングニールは、既存の槍として具現するのではなく、**「理屈を超えて相手に届く想い」**そのものを槍と定義する。
すなわち拳を振るうその瞬間、必ずや敵に想いが突き刺さる――という結果だけが現実に書き込まれる。

ゆえにこのガングニールは、通常の武具を凌駕した「因果操作」に近い特性を示す。
拳を武器として扱う彼女にとって、**「殴る」=「貫く」**が同義に変換されるためである。

技名の詠唱は《世界貫く想い》。
この一文が彼女の宝具の本質を端的に表す。
槍の形を取らずとも、彼女が名を呼ぶだけで、その行動は「ガングニール」として成立する。

ただし使用者が響なので、結局やっていることは「拳で殴っている」に等しい。必中必伝の拳、それが彼女におけるガングニールである。
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