雪音クリスは衛宮士郎に拾われる   作:バースデー

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赤バー満タンになりましたあ!!やったー嬉しい!!


天下の往来、独り占め作戦

 

―――二課の後ろ盾となっていた広木防衛大臣が、何者かに暗殺された。

 そのことを電話で知らされた響は、慌てて二課へと向かった。

 

「すいません!! 遅れました!」

「大丈夫よ。まだ時間に余裕はあるんだもの」

 

 二課に駆け込んだ響に対して、了子はヒラヒラと手を振りながら出迎える。

 その隣で、弦十郎が静かに響に向き直った。

 

「……ああ。我々としても、急な呼び出しで済まなかった。だが、事態は切迫している」

 

 弦十郎は了子に一瞥をくれると、すぐに二課の面々へと向き直った。

 

「知っての通り、今朝、広木防衛大臣が暗殺された。

 複数の革命グループが犯行声明を出してはいるが、真偽は不明だ」

 

 要するに、「自分たちの犯行だ」と誇示する連中が名乗りを上げているのだ。

 日本の防衛大臣の暗殺に便乗する形で。

 ただ、ネフシュタンの少女の存在や二課周辺で増えているノイズへの言及が一切なかったことを踏まえると、犯行声明を出した連中に実行犯がいるとは考えにくい。

 

 それが、現時点での二課の見解だった。

 

「だが、了子君が入れ違いで機密指令を受け取っていた。

 そこに記された任務を果たすことが、広木防衛大臣への最大の弔いとなるはずだ」

 

 そうして、背後の大画面に、了子が受け取った機密指令の内容が映し出される。

 

 

 

 

 

「任務は、完全聖遺物――『デュランダル』の護送よ」

 

 静まり返る会議室。

 了子はさらに説明を続ける。

 

「デュランダルは、EU連合が経済破綻した際、日本が不良債権の肩代わりを条件に管理を引き受けた、数少ない完全聖遺物の一つ。

 国家レベルで担保に取った“力”――価値もリスクも桁違いで、その存在を狙われることは、日本にとって看過できない脅威よ」

 

 それだけに、今回の移送任務は国家の意志そのものだった。

 

「ですが……移送先は?」

 

 オペレーターの朔也が手を挙げ、控えめに問いかける。

 

「これ以上の防衛体制は、どこにもないはずです」

 

 二課本部の防衛システムはかなり厳重だ。

 何より、デュランダルが保管されているアビスという場所は、その中でも一番厳重で、二課本部の地下深く。

 深さはおよそ1800メートル。東京スカイタワー三本分に相当する、まさに地の底だ。

 アビスよりも安全な場所など、世界中を探してもあるかないか、と言ったほどだ。

 朔也の質問には弦十郎が答える。

 

「永田町最深部、特別電算室――通称『記憶の遺跡』だ。そこならば……と政府は判断した」

 

 言いながら、弦十郎は小さく肩をすくめる。

 

「もっとも、朔也の懸念ももっともだ。

 だが俺たちは、木っ端役人だ。お上の命には逆らえんさ」

 

 任務は命令。それ以上でも、それ以下でもない。

 危険だと分かっていても、背を向けることはできない。

 

 場が静まり返ったところで、響がそっと手を挙げる。

 了子がやわらかく指差した。

 

「はい、響ちゃん?」

「あの……その子は、来るんでしょうか?」

「……そうね。確証はないけれど、可能性は高いわ。

 だからこそ、政府はこのタイミングでデュランダルの護送を決めたんでしょうし」

 

「そう……ですか」

 

 そこから了子が受け取った意図は、響の実際とは違っていた。

  響が怯えているのだと思ったのだ。

 敵が、自分を狙ってくるという恐れから、あの問いを口にしたのだと。

 

 だが実際のところ――違う。

 

 響は、ただ確認したかっただけなのだ。

 あの少女が、再び現れるのかどうかを。

 

ーー戦場(いくさば)で、何を馬鹿なことを

 

 一瞬、あのときの彼女の言葉が、頭をよぎった。

 

 あの時は言葉を飲み込んでしまった。けれど、伝えたいことはあった。

 もしまた会えるなら、自分という存在を知ってほしい。

 敵としてでもいい。声が届く可能性が、少しでもあるなら。

 

「私、頑張ります!

 ……この日のために、師匠に鍛えてもらいましたから!」

 

 強く、まっすぐな声が響く。

 その姿に、誰もが一瞬、顔を上げた。

 

 

 沈黙の後――

 

「……済まないな」

 

 弦十郎が低く呟き、静かに頭を下げた。

 その横で、了子がふわりと笑みを浮かべる。

 まるでヒラヒラと風に舞うリボンのような、軽やかで柔らかな笑顔だった。

 

「さすが、響ちゃんね」

 

 了子は嬉しそうに頷き、それから声のトーンを改める。

 

「さて。あの子が現れる可能性が高い以上、今わかっている情報を――みんなと共有しておきましょうか」

 

 パンパンと両手を叩き、全員へ向き合う。

 

「ああ。あの子の持つ完全聖遺物については話をしたが、彼女についてはまだだったからな」

「そうねえ……完全聖遺物を三つも集めているなんて、普通は無理よねえ」

 

 了子が指を唇に当てて考える動作をする。

 

「完全聖遺物は、世界中の国が血眼になって探している物。

 それを複数持っているなんて、何処か……それこそ米国のような大国との繋がりがあるのでは?」

 

 オペレーターの一人が手を挙げて言うと、了子はその指を今度は頬へ当て、小さく首を傾げた。指が、頬をわずかに押しつぶす。

 

 

「その可能性は高いわ。でも……だったら、ちょっと動きがちぐはぐじゃない?」

 

 了子は視線を巡らせながら続ける。

 

「あれだけの聖遺物を確保できる組織なら、もっと人員を投入する余裕があるはず。それにしては、現場に出てくるのはあの女の子だけ。ちょっと“孤軍奮闘”しすぎよ」

「確かに、大国の関与にしては、彼女の行動は奇妙だな。普通、あれほど大胆に動かせるものか?」

 

 弦十郎の言葉に、了子がそれにね。と付け加える。

 

「あの子の持っていた剣、干将・莫耶だったかしら?

 アレについても気になることがあるのよね?」

 

 了子の一言に、場の空気がわずかに張りつめる。視線が一斉に彼女に集まった。

 

「本当に、あれが干将・莫耶なのかしら? 

 少し、可笑しいと思ったのよ」

「えっと、それって、どういう意味ですか?」

 

 響が思わず問い返す。

少女が剣の名をそう語った――それ以上の情報はない。

 故に、少女の持つ剣が名乗った通りの武器かどうか、真偽は判然としない。

 それなのに、了子が「可笑しい」と言う理由とはどう言うことだろうか?

 

「そもそもの話、ノイズに対抗するためのシンフォギアが生まれたのは、ごく最近のことよ。

 私の“櫻井理論”によって、ね」

 

 そう口にした了子は、わずかに肩をすくめて続けた。

 

「でも、それ以前にも人類は何とかしてノイズに立ち向かおうとしてきた。

 シェルターなんかは、その典型ね」

 

 ノイズ出現時における避難先。

 無機物をすり抜けるノイズに対して、果たしてどれほどの意味があるのかと疑問の声も多い。

 だが、ノイズが“視認した人間”を狙うという性質上、姿を隠すこと自体には一定の抑止効果がある。

 ……ほんの気休め程度ではあるが。

 

「もちろん、そんな方法じゃ被害は減らせなかった。

 政府も見せかけの“対策パフォーマンス”だと批判されてより実効性のある対策が求められたわ」

 

 例えば――。

 

 ある独裁国家では、死刑囚をノイズへの“囮”として前線に送り込んでいたという情報がある。

 また、別の国では物理エネルギーの総量でノイズを上回ろうと、

 一時間以上にわたる連続爆撃を敢行。

 その衝撃で山の地形すら変わり、直後の豪雨で土砂災害が発生。

 皮肉なことに、ノイズ以上の被害を自国民にもたらした。

 

 了子はそこで一拍置いて、話を核心に移す。

 

「そんな中でシンフォギア誕生以前に採られた、もうひとつのアプローチがあったの。

 それが、“過去の完全な異物”を使うというものよ」

「それって?」

 

  響の問いに、了子は頷いて言葉を継ぐ。

 

「完全聖遺物のことよ。

 知っての通り、聖遺物は今の技術じゃ再現できない、 異端技術(ブラックアート)の結晶

 発掘されても、大半は経年劣化や損傷で使い物にならない。

 けれど、ごくわずかに“完全な状態で発掘されたもの”もあったの。

 ――最初から起動していた“完全聖遺物”よ」

 

 了子の言葉に、部屋の空気がわずかに変わる。

 

「神話や伝承の中には、怪異や災厄を打ち払う武器って、いくつも出てくるわよね?それこそ星の数ほど。

 そういったものが、実在する“完全聖遺物”として見つかっていたの。

 今回輸送するデュランダルもその類。」

「えっと……それを使えば、ノイズを倒せたってことですか?」

 

 響が慎重に問いかける。

 

「ええ。最初は試しに使ってみただけだったのよ、ダメ元で。

 でも――それが通用した。それが世界中で、数件、似たような事例が見つかったの。

 どうして通用したのか。世界中の様々な可能性を検討した中で、ある一つの共通点が見つかったのよ。

 それがノイズに通用した異物は、全て過去に怪異や妖怪と言った人ならざる怪物を討伐したと言う、“逸話”を持っていたと言うこと。

 このことが“過去の怪異や失踪事件の多くはノイズによるものだったのでは?”という通説の大きな根拠にもなったの」

 

 了子は少し目を細め、わずかに首を振った。

 

「とはいえ、完全聖遺物は数が圧倒的に少なかった。

 それに加えて見つかったとしても起動できるとは限らないし、ノイズに対抗できる保証もない。

 本当に“使える”ものなんて、ごく一握りよ」

 

 了子は響に目を向け、静かに言葉を続ける。

 

「だからこそ、“カケラ”でも起動できて、ノイズの位相差障壁を無効化できる――

 そういう性質を持つ《シンフォギア》が、新たな対抗策として選ばれたのよ」

 

 そこで一拍置いて、了子は小さく手を打った。

 

「――さて、話を戻しましょうか」

 

 雰囲気を切り替えるように彼女は話題を元に戻す。

 

「ただ、シンフォギアが生まれる前は、それ以外の手段が無かったからね。

 各国は世界中の遺跡を片っ端から洗って、怪異に対抗したという逸話を持つ遺物を探し回ったのよ。

 干将・莫耶も、その中のひとつ」

 

「かつてから探されていた(つるぎ)が……今になって見つかった、ってことか」

 

 弦十郎が静かに呟く。

 

「でもね、干将・莫耶はそれほど高名な聖遺物じゃないの。

 普通なら、後世に伝えようなんて誰も思わなかったでしょうね。

 

 だから既に、『干将・莫耶は現存しない』という結論が出されていたのよ。そんな、“この世に存在しないはずの剣”を持つ彼女って、一体何者なのかしら?」

 

 

 *

 

 

 

 早朝。少女は無数の人々が行き交う交差点に辿り着いた。

 小さな蜘蛛のようにどこにも留まらずに人混みを縫って歩き、やがて適当なベンチに腰を下ろす。

 

『ふざけんなッ!!なんでアイツが殺されなきゃならない!!

 お前ら、アイツに散々助けてもらったのに、最後の最後で見捨てるのか? 本気で』

『許してくれ。感謝はしてるさ。でも、仕方ないだろ? 俺たちだって死にたくない。

 それに、誰も助けてくれなんて頼んじゃいないか。

 頼んでもいないことをしておいて、恩に思えだなんて、理不尽だ』

 

 

 

 

「そんなわけ、あるか……」

 

 ぽつりと漏れた独り言に、道行く人々が一瞬だけ彼女に視線を投げた。

 だが次の瞬間にはまるで何事もなかったように歩みを再開する。

 

「はあ……」

 

 ため息が漏れる。

 考えたところでどうにもならない――そう分かっているのに、思考はどうしても止まらなかった。

 

 

 どのくらい経ったのだろう?

 数時間かもしれないし、もしかしたら数秒も経っていないのかもしれない。

 

 早朝だからなのか、ここは人通りが多すぎる。

 歩道には人がごった返し、横断歩道が青になれば、車を堰き止める勢いで人波が流れていく。

 人波の大部分は少女とそう変わらない年齢だ。

 ソイツ等は笑顔か、訳知り顔で前へ前へと歩いていく。

 そこに迷いはない。いやーーー迷いなんて考えたこともないんだろう。

 連中の顔には思案のシの字もなくて、叶えたい夢、信じている未来の為に今を生きている顔つきにはとても見えない。

 誰も彼も、解っているような顔で行く。けれど、その中に本当に「分かっている」者が、一体どれほどいるというのか。

 

 全員か? それとも……ほんの一握りか?

 

 いや、そんなはずがない。

 

 こんな連中に、何が分かるというのだろう。

 

 平和の尊さも、犠牲の重さも、知るわけがない。

 コイツ等は、例えこの国以外が戦争を始めたとしても、同じような訳知り顔でこの横断歩道を渡っているのだろう。

 

 そうじゃなきゃ、あの男は死ぬ事はなかった。

 

 こんな幻想を持ちもしないことを、賢さだと宣うようなヤツ等が。

 

「ねえ、この先、通行止めだって」

「マジ!? なんで?」

「あー、ほら。あのなんかの大臣。殺されたじゃん? あれの検問らしいよ」

「はあ? あんなジジイのために? ふざけんなよ」

 

 ほら、何も知らない。

 通りすがりの人々の、意味のない会話に、少女は小さく鼻を鳴らした。

 

 もうこれ以上、ここにいる理由なんてない。

 というより、いたくもなかった。

 

 彼女はベンチから立ち上がると、ざわめく交差点を背にして、薄汚れた路地裏へと足を踏み入れる。

 

 人混みという奔流を、音もなく後にして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 明朝5時。

 日も登りきっていない中で、デュランダルの移送は行われようとしていた。

 車は数台。黒い車が複数と、その中央にピンク色をした了子の車が1台。

 了子の車には、了子本人と響、さらにこの車に厳重に保管されたデュランダルが積み込まれている。

 複数台の黒い車には二課のエージェントが2人ずつ乗り込んでいた。

 

 弦十郎はヘリコプターに乗って空から状況を確認し、指示を行う。

 

 この配置で、敵の襲撃として最も考えられるのはノイズだ。

 その場合、響を飛行機に乗せて空路を行くのは慣れない戦場に彼女を立たせるという非常にリスキーな選択となる。

 さらに、飛行機で輸送した場合には前後左右に上下が加わった全方位からの襲撃に警戒しなければならない。

 それを考えると対処が難しい飛行型ノイズよりも、対応しやすい地上型ノイズのほうが幾分マシということで、地上移送を選んだのだった。

 

「防衛大臣殺害犯を検挙する名目で検問を配備! 記憶の遺跡まで一気に駆け抜けるッ!」

 

 ルートの確保は容易だ。

 二課の立場を利用すれば、検問の設置は簡単。

 あとは、何も気にせず一気に突き進めばよい。

 

「名付けてぇ〜、『天下の往来、独り占め作戦』!」

 

 響は緊張しているのか、やや肩を強ばらせ、表情も硬い。

 それぞれに反応を見せる中、了子は愉快そうに作戦名を告げる。

 

 車は四方に配置され、その中央にデュランダルを乗せた了子の車。

 検問のおかげで、普段は車通りの多い道も我が物顔で通行できるというもの。

 こんな状況でなければ、ドライブにはもってこいだろう。

 

 永田町までの道のりはやや遠く、しばらく走っても、目的地である記憶の遺跡まではまだ時間がかかりそうだ。

 朝5時に出発したとはいえ、5月の日の出は早い。時間が経ったこともあり、すでに辺りは明るい。

 

 日の光は、ライトを点けなくとも走行に支障がないほどに強く、遠くまでよく見える。

 そして、その広大な視界の中には、誰の姿もなかった。

 

「……やっぱり、来ないのが一番ですよね」

 

「それはそうね。もし、あの子が来たら、確実に被害が出る。

それが大きいのか小さいのかは分からないけれど……でも、響ちゃんはそういう被害が出るの、嫌でしょ?」

 

「はい……私も、そう思います。

でも、なんとなく、不安なんです。胸の奥がザワザワする感じで……何かが見えそうで、見えない、そんな時みたいな感じがするんです。

変……ですよね」

 

 俯いて了子の言葉に応じる響に、了子は相変わらず明るい調子で言葉を投げかける。

 

「そうねえ。でも、女の子の勘は的中するものよ。

何もないのが一番だけど、油断なく行きましょう

 弦十郎君、ノイズの反応はあるかしら?」

『いや、現状は何も無い。』

「オッケー!」

 

 そう、了子が明るく、努めて普段通りに呟いた次の瞬間。

 

 ――バキリ、と鈍い音が響いた。

 

 

「了子さんッ!!」

 

 響は目の前の道が崩れるのを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






二つの原作の世界観を擦り合わせながら、面白い設定を作るのって難しい。
誤字脱字も多いし。
これで投稿頻度を下げない上位の人達って何……(畏怖)

頑張ろ!!

Q,シンフォギアの産まれた流れは?
A,公式サイトによると元から聖遺物はあり、そこからシンフォギアがあったようなので、自分なりに解釈した結果、ノイズ倒すのに聖遺物使える!!→でも数が少ないしデメリット多い……→ウオオオ!!櫻井理論!!デメリット解消!!シ・ン・フォ・ギィィッ――ヴウゥワアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!となったと予想。

Q,干将・莫耶でノイズって倒せるの?
A,倒せます。シンフォギアの世界ではノイズこそが過去の妖怪や大量失踪事件の原因なのではないか、と言う説があるので、ノイズ=怪異
つまり怪異特攻=ノイズ特攻と言う無茶苦茶な理論によってノイズを倒せます。
と言うか怪異特攻の宝具は全てノイズに有効です。
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