かなり短めです
——ロボトミーコーポレーション
K-04支部
三日目
ご飯を食べる。美味しい。
K社は食糧の生産にも力を入れており、ここK-04支部にも美味しいご飯がやってくる。
「お米が美味い……!」
アレンはその事実に驚愕する。日本のお米と同等、またはそれ以上な事に都市の技術力の高さが伺える。
コンコン。
ノック。誰かがアレンの部屋の前にいるようだ。
ご飯タイムを邪魔され、不機嫌になりながらドアを開ける。
「はーい……!!」
「よおアレン!元気だったか?」
ベレット。茶色を基調としたスーツの上に、右肩に赤いコートを掛けている。
光り輝く紅の拳からは熱気を感じられる。
『カポーテ』。闘牛士と呼ぶに相応しい格好をしている。
「いやー、初っ端からやらかしちまったな!まさかあの牛に踏まれるとは……」
「何でアレに踏まれて生きてるんだ……」
「まあ、頑丈だからな!一日寝たきりにはなったが……」
なんやかんやで縁ができた二人。同僚が生きている、というだけでここまで嬉しいとは。
『一人で出来る事には限界がある。特にこのリウ協会ではな』
『なんかあったら必ず頼れ。リウ組にでも、ルナ事務所にでも、これからお前が働く先で出会う奴らにでも』
ふと、アレンはここに来る前にリウ組部長から話された言葉を思い出す。
「……どうした?」
「いや、なんでもない」
頼りになる仲間がいる。なんてありがたいことだろう。
アレンは心の中で感謝する。
「……ところで、準備は出来てるのか?見た感じ、まだE.G.O装備はつけてないようだが……」
「……え?」
「後十分で業務開始だぞ。中々来ないから呼びに来たんだが」
……誰か助けてほしい。
いつもの緑のゼリーに身を包み、大きな四葉のクローバーを背負う。
アレンが今日担当するのは……
[F-01-11-12の管理を開始します]
「お!お客さんか!」
収容室へと入った瞬間、悪臭が鼻に付く。
紳士妖精。巨大な緑色の胴体に、黒い帽子とネクタイ。その胴体にある巨大な口からは酷く甘酸っぱい香りがする。
「あぁ、待ってろ……今、もてなしてやるからな」
「では、お願いしよう」
紳士妖精は何やら準備をしている。
今回、アレンがするのは愛着作業。
つまり、このアブノーマリティのもてなしに付き合う必要がある。
「よし!この妖精酒なんてどうだ!」
紳士妖精から手渡された巨大なお酒。到底飲み物とは思えない異臭が漂い、その器の中には何かが入っている。
「この、器の中に入っているのはなんだ?」
「これはな、オイラが暮らしていた所でよく作られていた妖精酒だ!生後間もない食用妖精の胴体から手足を千切ってよく熟成させた後、天然の果実によーく漬けて味を染み込ませるんだ。そしたら、女王様の涙と一緒に器に入れて完成!健康を気にして妖精だけを食べる奴もいれば、女王様の涙が美味いからって一気に飲む奴だっている。お前さんも好きな方で飲むといい。別にどっちを選んでも失礼に値する、とかはないからな!」
聞きたくもない。紳士妖精の説明を聞き流し、目の前のお酒と睨み合う。
「ん!」
「おー、いい飲みっぷりだな!」
酷い香りと過度に酸っぱい味が舌に伝わる。妖精の胴体が口の至る所に当たり、生臭さと気色悪い感覚が口の中に広がる。まるで吐瀉物が腹から湧き上がり、口の中で暴れ出しているかのよう。喉にソレを通す瞬間、緑の液体と妖精の体が喉へと当たり、到底言葉に出来ない感覚が体を襲う。体の全身に鳥肌が立ち、嗚咽が口の中から飛び出しそうになる。
アレンは吐き気と嗚咽をどうにか抑える。
「おお!もっと飲みたいか?ちょっと待ってろ、もっと他の物も……」
「イャ……アノ……ケッコウデス……ヨウジ……アリマス……」
「そうか?まあ、変に止めるのも失礼だからな……またいつでも来いよ!」
アレンはとぼとぼと収容室を出た。
「くっっっっっっっっっっっそまずい……」
コントロールチームのメインルームで寝転ぶアレン。
周りのオフィサーから変な目で見られる。
***:特異点ネキ
紳士妖精の妖精酒って、なんやかんや美味い所もあるって聞くんですが……
「どこが……」
***:特異点ネキ
妖精酒がとても不味くなっている。多分、そこがリンバスの個体と変わっている所でしょうね。
「マジでいらない……」
幸い、酔いは無さそうだ。なんとか体を持ち上げ、胃の中の物体を抑え込む。
長く休んだお陰で、なんとか動く事ができそうだ。両足で立った後……
「はぁ!はぁ!はぁ!」
突如、メインルームに職員が入ってくる。
「!?」
「お願いします!世界樹様!助けて下さい!もう一度……もう一度だけ、私にチャンスを下さい!」
おそらく、安全チームの職員。名前は知らない。
「今度こそ貴方の祝福を皆に広めますから!貴方の良さを皆に知らせますから!どうか!どうか!」
あの者はパニックになっているようだ。この巨大な四葉のクローバーを使えば、あの者の正気を戻す事も出来るだろう。
そう思い脚を動かした刹那。
「ひっ!い、嫌だ!誰か!助けて!助けて下さい!助けて……」
……その職員の体から幹が生え、苗木へと姿を変えた。
***:特異点ネキ
寄生樹……!
Second Trumpet。WAWクラス、またはHEクラス複数体の脱走。
K-4支部は、修羅場へと姿を変えた。