プラネタリウム・ドリーム   作:ななしのあ

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L社通勤三日目-2

「ッ、全員!アレに近づくな!」

 

 

 二次被害を増やさないようオフィサーに声をかけるアレン。

 寄生樹により苗木へと変貌した職員。鳴り響くトランペット。間違いなく非常事態である。

 これ以上被害を増やさないために、即刻破壊を試みる。

 

 

「ッツ!」

 

 

 巨大なクローバーがしなり、苗木を薙ぎ払おうとする。

 

 

「……ッ、効きが悪い……!」

 

 

 ……確かに苗木に傷は入りはするが、へし折るまではいかない。

 

 

「……なら!」

 

 

 アレンはクローバーを引き、苗木に向けて突き刺さそうと……

 

 

 ——ッ!

 

 

 瞬時に後ろへと後退する。その直後、苗木から謎のガスが噴き出す。

 

 

「……口を塞げ!今すぐメインルームから退避しろ!」

 

 

 それを聞いたオフィサー達が慌てて何処かへと逃げていく。

 

 

「……クソッ……」

 

 

 苗木一つにかなり手間取っている。他のチームで何が起こっているのかがわからない以上、コレを生かしておくのは余りにも危険だろう。

 アレンが口を塞ぎながらクローバーを振り回そうとすると——

 

 

「オラアッ!!」 

 

 

 後方。誰かが苗木の後ろから飛び掛かった。

 その熱された拳は、苗木を完全に破壊した。

 

 

「ベレット!!」

 

「アレン!生きてたか!」

 

 

 あのマタドールがアレンの前に現れる。

 

 

「ベレット、あのガスは……」

 

「ああ?大丈夫だ!この通り……」

「大丈夫な訳ないでしょ!ちょっと来なさい!」

 

 

 聞き覚えのある声がもう一つ。

 

 

「モフ!無事だったか!」

 

「はいベレット!精神中和ガス持ってきたからコレ吸って!」

 

「おお、ありがとな」

 

 

 そこには、モコモコ姿のモフがいた。

 ……相変わらず鶏の頭と巨大なお札を付けている。

 

 

「モフ。何が起こっている?」

 

「分からない。ただ……寄生樹の脱走としか……」

 

 

 [あ、あ、あー、聞こえてる]

 

 

「……え?」

 

 

 どこからともなく聞こえる声。

 

(ゲゼルシャフトか?)

 

 

***:特異点ネキ

……スピーカーからですよ。

 

 

 ふと顔を上げる。スピーカーから声がする。

 

 

 [えーと、そこの三人。聞こえてる?]

 

 

「……俺らの事か?」

 

 

 ガスを一通り吸い終わったベレットが話す。

 

 

 [そうそう、そこのコントロールチームのメインルームの三人組]

 

 

「……やっぱり俺らの事みたいだな……」

 

 

 [詳しいことは省かせてもらうが、この支部の管理人だ。今から君達に指示を飛ばす]

 

 

「唐突だな」

「唐突ね」

 

 

 [寄生樹の脱走個体は5体。1つはスヌープ君が、2つはメイベル君が、先程君達が1つを破壊してくれた]

 

 [そこで君達には後一つ、教育チームにいる苗木を破壊してほしい]

 

 

「……従うか?」

 

「他に動けそうな事もねぇし、良いんじゃねえか?」

 

「……そうね。教育チームに行ってみましょう」

 

 

 [ありがとう。君達の健闘を祈るよ]

 

 

 三人は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 情報チームの廊下に佇む老婦人。

 

 

「これは……酷いことになったわね……」

 

 

 コントロールチーム部門長、イザベル。

 非常事態ではあるが、その余裕は崩れていない。

 

 

「こんな騒動があれば……必ずと言っていいほど、貴方が来るのよね」

 

 

 銀色の取っ手を掴み、構える。

 

 

「私は貴方とは相性が良くないのだけれど……」

 

 

 ——廊下の奥から、何かが高速で地面を這うように進む。

 人型。その者は全裸であり、細長い手足を奇妙に動かし此方に向かってくる。

 痩せ細った体とは裏腹に、腹だけは膨れ上がっている。

 

 

「D-01-110。風雲僧。悪いけど、今は構ってあげられるほど暇じゃないの」

 

「南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……」

 

 

 ソレはまごまごと何かを口ずさみながら、地面に長い爪を食い込ませる。

 前傾姿勢。腰を下げ、脚に力を入れる。未だイザベルとの距離は離れているが、おそらく瞬きを一つする間に距離を詰める事が出来るだろう。

 

 

「……他も忙しいみたいね。援軍は期待出来ない、って所かしら」

 

 

 迎えるはピアノに恋をし、月を夢見る。そんな俗世に生きる煌びやかな老婦人。

 対するは悟りを求め、修行を重ねる僧が、悪鬼に惑わされ堕ちる所まで堕ちた哀れな餓鬼。

 

 

「じゃあしょうがないわね……。貴方に向けて……報告書の言葉を引用させてもらおうかしら」

 

「魔羅汝不極樂往生。貴方は、極楽浄土には行けない」

 

 

 餓鬼の口が大きく開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……安全チームの部門長は何をしている……!」

 

 

 情報チームのメインルーム。そこにいるのは……

 

 

「知りません。連絡がつかないです」

 

 

 コントロールチームチーフ、オリーブ。

 装備しているE.G.Oは『ねばつき』。

 

 

「アイツそろそろクビになるんじゃねえの?」

 

 

 情報チームチーフ、サンチェス。

 装備しているE.G.Oは『たぷつき』。

 

 

「あんの馬鹿野郎……!何度言えば……!」

 

 

 情報チーム部門長、ジョシュア。

 装備しているE.G.Oは『阿弥陀』。

 

 そして、現在情報チームのメインルームを牛耳る、一体のアブノーマリティ。

 

 

「『T-02-11-04』……『衝撃ムカデ』……」

 

 

 とぐろを巻き、此方を赤い瞳で睨みつける一体の巨大ムカデ。アレは己を蛇か何がだと思っているのかは分からないが、アレも蛇と同じく『狩る』側なのだろう。

 

 

「最近この支部に入ってきたばかりのアブノーマリティ……。どのような性質を持ち合わせているかよくわかっていません」

 

「だから部門長の俺が来たんだろ。気を引き締めておけよ」

 

「嫌でも分かってますよ」

 

 

 サンチェスが姿勢を整えた後、衝撃ムカデに飛び掛かる。

 

 

「ハアッ!」

 

 

 彼の持つ棒の先端に巨大な緑の塊が作られ、それをムカデを纏う金属の鎧へと振り下ろす。

 

 

 ガギィィィィィィィン!!!

 

 

 甲高い音と共にムカデの姿勢が崩れかける。

 

 

「!!」

 

 

 その隙を逃さず、ジョシュアは飛び掛かりムカデの頭に錫杖を突き刺す。

 

 ……しかし、ムカデの体制は崩れない。

 

 

「ヤァ!」

 

 

 オリーブがクローバーを振り下ろした瞬間、ムカデはとぐろを解き、クローバーを避ける。その後、ムカデは無数の足を動かし体を所々宙に浮かせながら動き回る。

 

 

「ッ!早い!」

 

 

 辺りを縦横無尽に駆け回る。ムカデの体に刺さった釘に電気が走る。

 そして——最も痛手を負わされた敵に標的を向ける。

 

 

「!!サンチェス!離れろ!」

 

 

 彼は既にあの百足の間合いに入っていた。

 

 

「な……!」

 

「!!サンチェスさん!」

「バカ!離れるぞ!」

 

 

 ジョシュアはオリーブを掴み遠くに離れる。

 その直後、サンチェスの体にムカデの胴体が巻きつき——

 

 

 ——桁違いの電流が、メインルームを駆け巡る。

 

 

「……!」

 

 

 黒焦げになった男。おそらく、ジョシュアがオリーブを引っ張らなければ、彼女も黒焦げになっていただろう。

 

 

「チッ……」

 

「サンチェスさん……!」

 

 

 ムカデは黒くなった人間を放り投げた後、一人しか仕留められなかった事に首を傾げる。しかし、やる事は変わらない。

 

 

 あの(ムカデ)の獲物は、後二匹。

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