プラネタリウム・ドリーム   作:ななしのあ

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L社通勤三日目-5

 黒い羽が宙を舞い、巨大な傘は敵を薙ぎ倒さんと振り払われる。

 三つある目の一つは黒鳥に似た格好の女を睨み、一つは緑に包まれた男を眺め、最後の一つは有象無象の三人を視界に収める。

 煙に巻かれた哀れな黒鳥。かの鳥の羽ばたきを阻止する為、各々の手には武器が握られている。

 

 

「はは!どうだ黒鳥!お前から抽出した傘は痛いだろう!」

 

「……勝手に突っ走ると援護出来ませんよ……」

 

 

 教育チーム部門長、ローザ。

 安全チーム部門長、メイベル。

 

 彼等があの傘を弾き、胴体に矢を突き刺す。

 その間を縫って……

 

 

「オッラア!」

「ほっ!」

「えいっ!」

 

 

 一人は赤く燃えた拳で、一人は四葉のクローバーで、一人は鶏のパペットで。

 その拳は胴体を焼き、クローバーの葉っぱは傘へと喰らいつき、パペットから放たれる叫び声が黒鳥の耳をつん裂く。

 

 

「……!!」

 

 

 黒鳥が傘を開く。

 

 

「おっと!お前ら!あの傘に触れるなよ!攻撃がそのままこっちに反射されるからな!」

 

「……あの傘が邪魔で矢が飛ばせませんね……」

 

「傘を殴っちゃ駄目なら……回り込んで殴れば良いだけだろ!」

 

 

 傘を器用に避け黒鳥の傷を増やし続ける。アレンも後ろに回り込み、クローバーを振り下ろし……

 

 その瞬間、奇妙な物を見る。

 

 黒鳥の首元にある、オレンジ色の奇妙な飾り。

 

 それが突如二つの頭部を呑み込むように閉じ……

 

 

「おっとお!ここからが本番、って所だな!」

 

「……醜いガチョウですね……」

 

 

 頭があった部位は、嘴へと姿を変えた。

 

 

 

 ガァァッアアア!!!!

 

 

 

 ガチョウが叫ぶ。その声はメインルーム全体へと響き、脳内に直接響くかのような衝撃を与える。

 

 

「ヒッ……う、うああああああぁぁぁ!!!!!」

 

 

 ベレットが悲鳴を上げ、ガチョウへと殴りかかる。

 

 

「ベレット!」

 

「……ベレットさん!此方へ……」

 

 

 完全にパニックへと陥ったベレットが、ヤケクソにガチョウへと殴りかかる。

 それを見たガチョウは傘を閉じた後、彼の頭部目掛けて……

 

 

 

 ……振り払われた傘は空間を切る。

 

 

 

「俺がっ、全員!全員ぶっ飛ばして……」

 

「大丈夫。落ち着きなさい」

 

 

 誰かに抱き抱えられながら後方へと移動したベレットの頭部に銀の蛇の取っ手を当てれば、彼は地面へとへたり込む。

 

 

「イザベルか!」

 

「……イザベルさん……ご無事で良かったです……」

 

 

 そこには、コントロールチームの部門長の姿があった。

 

 

「……モフ、アレン。彼を連れて前線を下がってくれる?」

 

「イザベルさん。俺らは……」

「アレン。下がろう」

 

「ええ。貴方達にはまだ、あの叫び声はキツイでしょうからね」

 

 

 イザベルは彼を諭す様に話した後、あのガチョウに向き合う。

 

 

「大丈夫。あの鳥の処理は得意な方なの」

 

「何を!あの鳥程度で退くと言う甘ったれな……」

 

 

 [彼等は撤退した方が良いだろうね]

 

 

「は!新人は戦線を離脱せよ!」

 

「……正直……あの鳥をここまで追い込めれば上々ですよ……」

 

 

 部門長達がガチョウの攻撃を捌きながら話をする。

 

 

 [……新人二人。ベレットを連れて情報チームのメインルームへと向かうように]

 

 

「……はいっ」

「ベレット。動けるか」

「……ああ」

 

 

 急いでメインルームから駆け出す。

 ふと後ろを見た時の彼らの姿は、何処か大きかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急げ!これ以上事故が起きる前に作業を終わらせるぞ!」

 

 

 情報チームのメインルーム。そこでは部門長のジョシュアが指示を飛ばしていた。

 

 

「スヌープはT-02-11-03に!マックスはT-04-11-20へと!……新人達か!」

 

 

 ジョシュアが声を荒らげながら反応する。

 

 

「部門長。指示を……」

 

「モフはF-01-11-15に!ベレットはM-01-11-07に!アレンは……」

 

「……部門長。ベレットは今は少し……」

 

「……もう大丈夫だ。これ以上心配掛けらんねぇよ」

 

 

 彼はそう答えた後、直ぐに作業へと移っていった。

 

 

「……俺も行ってくるよ」

「ええ」

 

 

 アレンも指示の元、指定されたアブノーマリティへと作業へと向かう。もはや嫌とかは言ってられない。

 

 急いでエネルギーを回収する。

 

 今、彼等が出来る一番の仕事。

 廊下を走り、遂にソレの収容室までやってくる。

 

 アレンは腹を括り、収容室の扉を開ける。

 

 [F-01-11-12の管理を開始します]

 

 

「マスター!一番良いのを頼む!」

 

「……おっ!朝に来たお客さん!少し待ってろ!今一番良いやつを作ってやるからな!」

 

 

 

 

 

 ……7度、吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 酷く長い一日が終了した。

 

 アレンは社員寮に入り、自分の部屋へと歩いていく。

 ……あの後、黒鳥の夢は無事鎮圧された様だった。

 

 ……寄生樹の脱走から始まり、風雲僧、衝撃ムカデ、黒鳥の夢。余りにも多くの職員が犠牲になった。

 ……とてつもなく濃い一日に流石に疲れの色を隠せない。

 

 

「はあ……」

 

 

 たった一度のミスが支部全体を壊滅に陥れる。

 

 改めてアブノーマリティの恐ろしさをこの身に刻まれた。

 

 

「……寝るか」

 

 

 ベットの上に寝転がる。

 残念ながら、明日も何も変わらず業務が待っている。昨日の疲れが取れないからといって仕事が消えてくれる訳では無いのだ。

 

 

「……」

 

 

 ふと、ゲゼルシャフトで中々返事が出来ていない事に気づく。特異点ネキからも忙しくて返事がほぼ出来ていなかった。

 

 ……眼を瞑り、ゲゼルシャフトを覗いてみる。

 

 

63:名無しのフィクサー

なんかL社から光の柱が出てない?

 

64:名無しのフィクサー

は?

 

65:名無しのフィクサー

嘘やろ?

 

 

「……は?」

 

 

66:名無しのフィクサー

あれマジ?

ほんとにあそこL社?

 

67:名無しのフィクサー

うわマジやん

って事は俺のL社就職がー!

 

68:名無しのフィクサー

おいシ組

確認はよ

 

 

 

「は?????」

 

 

 

69:名無しのフィクサー

うわマジで光っとるやん

 

70:名無しのフィクサー

え?L社死んだ?

アイン50日チャレンジ達成?

 

71:名無しのフィクサー

白夜黒昼来ちゃった?

 

 

 

 

「はぁ????????????」

 

 

 

 

72:名無しのフィクサー

これ支部ニキマズくね?

 

73:名無しのフィクサー

ほんまやん

支部ニキ気づいてー!!!

 

74:名無しのフィクサー

あかんマジで支部ニキマズいって!

 

 

 

 

 

75:L社支部通勤ニキ

はぇ?????????????????

 

 

 

 

 

76:名無しのフィクサー

>>75

マジであかんぞ支部崩壊するぞ避難しろ!

 

77:名無しのフィクサー

>>75

すぐ避難してくれほんと

地中埋まったら掘り出すのしんどいって!

 

78:名無しのフィクサー

>>75

マジで死ぬぞ支部ニキー!!

 

 

 

***:特異点ネキ

アレンさんアレンさん!!!

L社が折れました!!!!!

 

 

 

 ——支部が揺れ出す。

 

 

 

【今から100秒後、敷地埋没が始まります】

 

「待って!」

 

 ベットから飛び出しクローゼットの前に行く。

 

【まだ避難出来ていない職員は、速やかに建物から脱走して下さい】

 

「待って待って!!」

 

 クローゼットに掛けられたパスワードを解除し、E.G.O装備を手に取る。

 

【カウントダウン開始。95、94……きゅうじゅ……】

 

「待って待って待って!!!」

 

 寝巻きの上からあの緑のスーツを着る。

 

【……8、7、6……】

 

 

 

「待てっつってんだろこのクソボケがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

 

 ——K-04支部が、崩壊した。

 

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