「……ぁぁ」
「目が覚めましたか」
……アレンは瓦礫を枕にしながら目を覚ます。
その身には、かろうじて着れたあの緑の服。
「いやはや、いくら何でも起きるのに時間がかかり過ぎではありませんか?」
どこからか声がする。
なんとか首を動かし、声の持ち主を視界に入れる。
「——っ!」
「まあ、そうなるでしょうね」
立とうとするが足に力が入らない。
「足長……妖精」
F-01-11-45、足長妖精。彼が初日に作業をしたアブノーマリティ。
「……食うのか?」
「食べるならとっくの昔に食べていますよ」
アレンはどうにか動こうとする。
……が、そもそも体に力が入らない。
「当たり前です。もう何日も寝ていたんですよ?」
「……どうして助けてくれたんだ?」
ゲゼルシャフトへと接続を試みる。
……繋がらない。
「私のツレが貴方の事を大層気に入ったみたいでしてね。その御礼です」
「……ありがとう」
「感謝するなら彼の方にするべきですよ」
足長妖精はその巨大な左腕を使い、地面に絵を描く。
……室内にいたはずが、何故か床が土へと変わっている。
(相当下まで落ちたのか?)
「いたでしょう?こんな顔の妖精が」
「……紳士妖精か」
F-01-11-12。紳士妖精。彼が三日目に作業をしたアブノーマリティ。
「私は貴方に対して何もしていません」
「なら俺はとっくの昔に死んでいたはずだ」
「……彼の作った妖精酒を飲んだのでしょう?あれは妖精界の中では特に有名な養命酒の数々でしてね」
「一杯飲めば1000年生きると言われるすごいお酒なんですよ」
「……大体吐き出したみたいですけど」
「……そう、だったのか」
「今も貴方は数日間何も摂取をしていないにも関わらず、脱水症状や栄養失調は見られない」
「後一日くらいなら、飲まず食わすでもなんとかなるでしょう」
「……そうか」
突如、目の前に等身大の四葉のクローバーが現れる。
「それに捕まって下さい。上まで運びますよ」
「……なぜ、ここまで?」
「ツレの太客へのサービスですよ」
しっかりとクローバーを掴んだ瞬間、足長妖精の右手からパチン、と音がする。
「っ!……ありがとう!」
クローバーは空へと向かって成長していった。
「……あと少し起きるのが遅ければ、死んでいましたね」
「残念です」
——アレンがいた空間と妖精は、せり上がる地面によって押し潰された。
——ロボトミーコーポレーション
K-04支部
■日目
もはやこの支部は原型を留めていない。
壁であったモノの上を歩き、瓦礫の山から上を目指す。
「クソ……」
あのクローバーはそこそこ上まで運んでくれたが、未だ空は見える気配がしない。
233:名無しのフィクサー
おい……か支…………
234:名無しのフィクサー
……デオが…………ぞ!
235:名無しのフィクサー
……るの支………………
236:名無しのフィクサー
う………………
「!?」
頭の中に響く言葉。
特異点ネキからされていたあの通信。
240:特異点ネキ
やっと繋がった!
聞こえてる?
「はい!?」
ゲゼルシャフトからする声。
なんと今回は一人だけではないようだ。
243:名無しのフィクサー
イェーイ支部ニキー!
244:名無しのフィクサー
(ファミチキください)
245:名無しのフィクサー
無事なんか支部ニキ!!
246:名無しのフィクサー
何してたん支部ニキ
247:名無しのフィクサー
いえーい支部ニキ見てる〜?
今からこの生放送中の配信を……
248:名無しのフィクサー
みんなで観戦しちゃいまーす!!
249:名無しのフィクサー
いえーい!!
250:名無しのフィクサー
NTRだ!
みんなでNTRするぞ!
251:名無しのフィクサー
>>250
何をどうやって寝取るんだよ
252:名無しのフィクサー
マジレスするとちょっとでも現在地の情報が欲しいからみんなで見に来たぞ
253:名無しのフィクサー
よく生きてたな支部ニキ
てっきり死んだのかと思ってたぞ
254:リウニキ
お前生きてたんか
255:名無しのフィクサー
今どこなんや
見る限り情報チームの何処かっぽいけど
256:名無しのフィクサー
ヤジは任せろ!
257:名無しのフィクサー
指示厨が現れるのはプロムンゲーあるあるやで!
258:名無しのフィクサー
>>257
負の遺産じゃねぇか
「うるせぇ……」
ゲゼルシャフトから直接脳内に情報が送られる。
余りの情報量に頭が痛くなる。
……しかし、生存者が誰もいないこの現状において、共に誰かとこの状況を共有できるのは心強い。
261:名無しのフィクサー
支部ニキ装備は着てるのね
262:名無しのフィクサー
あのクローバー無いの?
263:名無しのフィクサー
>>261
赤耐性ガバガバ装備か
264:名無しのフィクサー
支部ニキ武器ないマジ?
どっかに落っこちてたりしない?
265:リウニキ
素手で殴り殺せ
266:名無しのフィクサー
警棒ぐらいありそうやけどな
267:名無しのフィクサー
>>265
それが出来るのは貴方だけです
268:名無しのフィクサー
>>265
素人は黄金狂付けないと無理なんだよ
269:名無しのフィクサー
せめてオフィサーが持ってる拳銃ぐらいは無いんか
270:名無しのフィクサー
任せとけそれっぽいのあったら教えたる
一寸先は闇。
頼りになるのは非常灯の灯りのみ。
気が狂いそうになる中、いつものようにバカ騒ぎをする彼等の事が……
279:名無しのフィクサー
あれなんかいない?
……強い血の匂い。恐る恐る目を凝らしそちらを見る。
そこにいるのは……
281:名無しのフィクサー
風雲僧やんけ!
282:名無しのフィクサー
出たなストーリーくそ凝ってる奴!
……死体を貪る餓鬼。
283:名無しのフィクサー
待ってあの死体見た事あるくね?
284:名無しのフィクサー
レインコート着てる?
285:名無しのフィクサー
教育チームのチーフか?
……ぼろ切れを着た人間を食している。
「……!」
餓鬼がこちらを見る。
先程まで食していた人間を捨て、此方へと這い寄ってくる。
「……マジかよ……」
290:名無しのフィクサー
あかんあかん逃げて!
291:名無しのフィクサー
もうダメだ……おしまいだぁ……
292:名無しのフィクサー
REDダメ200オーバーは洒落にならん!
293:名無しのフィクサー
やばい食われちゃう!
294:名無しのフィクサー
コーナーで差をつけろ!
295:名無しのフィクサー
>>292
弱点だしレベル差補正あるからもっと上振れるぞ
296:名無しのフィクサー
普通に引っかかれるだけで致命傷になるって!
「うるせぇぇぇぇ!!!」
直ぐに後ろへと走り出す。足場の悪い中、全てを蹴り飛ばしながら逃げる。
後ろから追いかける餓鬼も、瓦礫を掻き分け獲物へと這い寄る。
あの者を食した所で、仏舎利は増えるとは到底思えないが、もはやあの餓鬼には些細な事なのだろう。
アブノーマリティに、理屈は通らない。
299:名無しのフィクサー
せっかくだから俺は右の道を推薦するぜ
300:名無しのフィクサー
走れ走れ走れ!
少しずつ追いつかれてるぞ!
「……おい!代表!」
301:名無しのフィクサー
代表ー!
今一番アツい男からのご指名だー!
302:名無しのフィクサー
アツいってかヤバい
303:名無しのフィクサー
おーい代表
右の角を曲がり更に走る。
餓鬼は未だ標的を見失う事は無い。
304:代表
なんや
305:名無しのフィクサー
代表まだなの
306:名無しのフィクサー
今支部ニキ食われそうなんやけど
「まだ……なのか!」
307:代表
今K社のお偉いさんとカツ丼食ってる
308:名無しのフィクサー
?????
309:名無しのフィクサー
は???
310:名無しのフィクサー
お前がやったんだろ……お前がやったんだろ!!
311:名無しのフィクサー
もしかして代表って無能?
312:名無しのフィクサー
カツ丼くえよ……カツ丼くえよ!!
313:名無しのフィクサー
なんでワイらはこんな奴の下で働いてんの
「……くそっ」
天井に空いた穴へと飛び込み、上へと這い上がる。
餓鬼も上へと飛び上がるが……
「オラッ!」
瓦礫の塊を投げつけ、下へと打ち落とす。
314:名無しのフィクサー
うまい
315:名無しのフィクサー
やるやん
流石L社勤務
316:名無しのフィクサー
代表より有能
317:超絶天才ディエーチネキ
ごめん!
K社にはなんとか入れそうだからもうちょっと我慢して!
318:名無しのフィクサー
頼むよディエーチネキとツヴァイネキ
代表を止められるのはあんたらだけやからさ
319:正義執行ツヴァイネキ
善処します
320:名無しのフィクサー
はいあいつが死ぬに賭けた奴ざまぁ
321:名無しのフィクサー
俺の有り金がー!
322:名無しのフィクサー
>>320
サラッと賭けしてんじゃねぇよ
323:名無しのフィクサー
とりあえず無事なのデカい
324:名無しのフィクサー
そこからさっさと離れるんやで
325:名無しのフィクサー
>>321
ちゃんとウーフィニキ監督の元行ってんぞ
326:名無しのフィクサー
お前ら支部ニキの事なんだと思ってんだよ
「はぁ……はぁ……」
走り続ける。あの餓鬼が登ってくるまでに、なんとかして遠くまで行かなくては。
あのまま鬼ごっこを続ければ、捕まるのは時間の問題だろう。
「……はぁ……くそ……」
息を切らしながら物陰へと隠れる。
風来僧から逃げるので精一杯となり、もはや今どこにいるのかもわからなくなった。
「……はぁ……」
——地響き。
「——ッ!」
息を殺す。
335:名無しのフィクサー
なんか揺れてる?
336:名無しのフィクサー
あの餓鬼まだ来てるの?
337:名無しのフィクサー
にしては地面揺れすぎじゃない?
「……っ……っ……」
鼓動が体中に響き渡る。
339:名無しのフィクサー
何が来てんの?
とんでもなくデカいんだけど
340:名無しのフィクサー
この支部そんなデカいのいた?
あの牛とか?
341:名無しのフィクサー
あかん怖い
「……っ!……っ!……っ!……」
342:事務方セブンネキ
これ天井が近づいてません?
「……?」
343:名無しのフィクサー
ほんまやん天井近づいてるやん
344:名無しのフィクサー
つまり潰されると?
345:名無しのフィクサー
走れー!!!
潰されるぞー!!!
346:名無しのフィクサー
あ違うこれ天井が近づいてんじゃねえわ!
地面が上がってきてるわ!
347:名無しのフィクサー
ああだから地響きがしてんのね!
「あー!!!!!」
一息する度に天井が近づいてくる。
彼はまた行く宛も無く走り出した。