プラネタリウム・ドリーム   作:ななしのあ

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ある日

 ルナ事務所の奥にある工房。ルナ工房事務所。

 巨大な作業台の上にはヘンテコと言わざるを得ない道具の数々が置かれている。

 

 

「うーん……」

 

 

 その前で頭を捻らせる者が一人、その様子を眺める者が一人。

 

 

「ボツ!!!」

 

「ボツですか」

 

「ルモ!これ全部廃材置き場へと持っていって!」

 

 

 これらの道具はたった今ガラクタ行きが確定した。

 

 

「……じゃあ、向こうの売店で適当に売っぱらっておきますからね」

 

 

 彼女の部下がせっせと機械をかき集め、何処かへと運び出していく。

最後に作業台の上に残ったのは……

 

 

「……黄金の枝」

 

 

 丸いケージに入ったあの黄金の小枝。

 

 

「何をするにしても中途半端……E.G.Oの再現は仕組みがあまりにも訳わからなさすぎてボツ、ねじれ関係についても現状お手上げ、じゃあ他の特異点のような事が出来るかと言われたら出来ない……」

 

 

 脳裏によぎった物事の数々を言葉にしてみる。人はそれを独り言と呼ぶ。

 

 

「うちの事務所の特異点に応用できるかなー、ぐらいか。うーん、実力不足だなー」

 

 

 黄金の枝。無限の可能性を秘めた枝。そう言えば聞こえはいいだろうが、残念ながらコレは今の所観賞用の枝としか使われていない。

 どんな夢も見る事ができ、どんな望みにも手を伸ばす事が出来る。だが、この黄金の枝では決してその願いに手が届く事はない。

 もどかしさ。小さな望みで叶える事の出来る夢もまた小さいのだ。

 

 

「あーあ、凄い天才になりたいなー。こう……ファウストみたいに……」

 

 

 ゲゼルシャフトを覗いてみる。

 

 

 

796:名無しのフィクサー

沈潜、お前の前にいるのは、3.5章から存在した最強ギフトセット(ドラムスティックとパサパサ胸肉)だ。

 

 

 

「……黄金の枝振り回してみる?」

 

 

……都市で指折りの天才にはなれそうになかった。

 

 

「プシュケちゃーん、やっぱ無理だって。工房の技術でどうにかなる問題じゃないって」

 

『分かりました。では此方でなんとかしてみましょう』

 

「そうしてー。『右足』。運んできて」

 

「はっ。姫様」

 

 

 義体に身を包んだ男が黄金を枝が入ったケースを持って何処かへと消える。

 

 

「……うーん。ちょっとだけ寝るか」

 

 

 そう言って作業台から去ろうとした刹那。

 

 

 

…………。

 

 

 

 トレス組部長の動きが止まる。

 

 

「……おい、『手足』。全員来い」

 

『はっ』

 

 

 瞬時に彼女の目の前に人だかりができる。約十数名、といった所か。

 先程までのどこか気軽そうな雰囲気は消え去り、視線が一瞬だけ宙をさまよえば彼女の額から冷や汗が流れる。

 

 

「おい『口』。今いないのは?」

 

「先程黄金の枝を運びに行った右足、左目と右耳が遠征中です」

 

「右足は即座に運ぶよう指示、その他は今すぐ呼び戻せ」

 

「はっ」

 

「……姫様、どうされまし——」

 

「緊急事態」

 

「……はっ」

 

「全員、迎撃体制を取り、命を捧げろ」

 

 

「下手すれば今日がこの事務所最後の日になる」

 

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……凄い。ルナ事務所の常識が根本から変わるぞ」

 

 

 とある事務所の中。そこら中に死体が転がる上を歩く黒いコートの男。

 

 

「一般フィクサーの戦闘力向上は勿論、部長格も更なる成長が見込める。……届くかもしれない」

「流石だねウーフィ組部長。役割が違えば見方もここまで違ってくるのか」

 

 

「なんなんだお前……なんで色んなフィクサーの技を使う事が出来る?」

 

「……諦めてよ。これも仕事なんだって。よくあるでしょ、変に恨みを買って酷い目に遭うヤツ。お前達がやらかした罪が最終的にお前達に帰ってきただけだよ」

 

「いや俺はそのヘンテコ技術を——」

 

 

 

——。

 

 

 

「……しかし、これは革命だ。これなら都市の星も落とせる」

 

 

 愉悦に浸る男。相当ご満悦の様だ。

 

 

「そうすれば——」

 

「いた!『デリバリーキャリア・猛獣捕獲モード』!」

 

「えちょ待ってあー!!」

 

 

 突如割り込んできた小柄な女の持つ次元鞄から網が放たれれば、黒いコートの男はあっさり捕まり運ばれていく。

 

 

「え!?パンドラちゃん!?どうしたの?」

 

「なんでゲゼルシャフト繋いでないんですか!?まずい事になってるんですよ!?」

 

 

 白く長い髪が揺れ、最高速でルナ事務所へと走っていく。

 

 

「あー、これやってるとゲゼルシャフト使えないんだよね。なになに……」

 

『全ルナ事務所フィクサーに告ぐ!』

 

「おっ、本部長じゃん。どうした——」

 

 

 

『黒い沈黙の襲撃を確認!』

 

 

 

『全てのルナ事務所フィクサーは即座に事務所へと戻り、代表が来るまでの時間を稼げ!』

 

『ねじれや図書館に関する情報は一切話すな!死んでも特異点だけは守り抜け!』

 

『特異点が破壊されればこの事務所に未来は無い!命を賭けてこの事務所を守り抜け!!!』

 

 

 

「……まじ?」

 

「本当に事務所の危機なんですよ!どうしようも無いレベルの!」

 

 

 網に包まれた男は何かを考えてた後、崩れていた黒いコートに袖を通し、姿勢を整える。

 

 

「…………なんとなく、本部長が何をしたいのかは分かった」

 

 

 

「やってみよう。一か八かの足掻きってヤツを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっとの事で掴んだ幸せは、いとも簡単に手から零れ落ちた。

 

 たった一つの幸せすら、都市は持つ事を許してくれなかった。

 

 ……俺はこの都市を呪った。

 

 俺の窮地に背を向けた者を恨んだ。

 

 この復讐とも呼べるか分からない殺戮の先に何があるかなんて考えなかった。

 

 ああ。背を向けたんだ。

 

 そんなもんだって、勝手に納得したんだ。

 

 するしかなかったんだ。

 

 

 

 ……この都市は変わらない。

 

 俺も都市の苦痛に拍車をかけながら、都市を巡るのだろう。

 

 こうするしか出来なかったんだ。俺だけじゃなく、この都市に住む者ならば全員そうだろう。

 

 俺も、これから死ぬお前らも、誰も悪くない。

 

 ただ…………。

 

 

「それはそれで、これはこれだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     Proelium Fatale

 LASCIATE OGNI SPERANZA, VOI CH'ENTRATE(この門をくぐるものは一切の希望を捨てよ)

 

 

 

 

 

 




負けたな、風呂入ってくる。

一通りお話を書いてから出すので投稿遅れます
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