プラネタリウム・ドリーム   作:ななしのあ

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Furioso-2

 廊下を駆ける黒い影。

 その進路を阻もうと数多のフィクサーがソレへと襲いかかる。

 

 

「『煉獄拳』!!」

 

「『バレストラフォント』!」

 

 

 炎を纏った一撃と鋭く研ぎ澄まされた一振りが黒い影へと振り落とされる。

 

 ……が、全てすり抜ける。

 

 

「……『デュランダル』」

 

 

 襲いかかった二人の胴体が切り裂かれる。

 

 

「あがっ!!」

 

 

 一人の体は真っ二つとなり、もう一人はかろうじて致命傷を免れた、といった所か。

 

 

「……ねじれについて知っている事を話せ」

 

 

 横たわるセンク協会のフィクサーを踏みつけ、二つの剣を彼の両手に突き刺す。

 

 

「何も知らない……って!知らない事を推測で話すバカにはなりたくな——」

 

 

 両手の手の平が半分に分かたれる。

 

 

「——ァァアアア!!!」

 

「推測でも嘘でも良いから話してみろよ……。何の情報も持たずに突っかかって死んでいく奴は今日だけでも五十はいる」

 

「……一つ、心当たり……が」

 

 

 黒い影の動きが少し止まる。

 

 

「言え」

 

「言った所でどうせ殺すんだろ?なら……高い金持ってきてからなら…………考えてやらん事もない……」

 

「……お前が話せば、この事務所とお前の命は助けてやる。話せ」

 

「………………」

 

 

 踏みつけられた男は虚空を覗いた後、目を瞑る。

 

 

「……約束って言葉ほど、信用できる言葉は無い……か」

 

 

 男の手が少し強張った。

 

 

「……」

 

「……教えてやろう」

 

 

 

「ピアニストはねじれだ」

 

 

 

 ……首が刎ねられた。

 

 

「そんなペーペーのガキでも知ってる事を聞きに来たんじゃねぇんだよ」

 

 

 首から流れ出る血液が、廊下に血溜まりを作る。

 後ろを振り返れば、壁や床に多くの肉片や血液がへばり付き、ボロボロになった衣服やフィクサー達が使っていた武器の数々が落ちている。

 

 

「…………」

 

 

 黒い影は決して動きを止めない。

 とっくの昔に超えてはならないラインは超えてしまったから。

 ここで止まれば今までに奪った命を全てドブに捨てる事になるから。

 

 

「『デリバリーキャリア・崩壊ガジェット』!」

 

 

 ケヤキ工房。

 

 

「『ツヴァイ式月詠剣術・玉兎』!!」

 

 

 狼牙工房。

 

 

「…………『死撃』」

 

 

 ムク工房。

 

 

 ハンマー。

 メイス。

 斧。

 短剣。

 太刀。

 剣。

 ガントレット。

 ランス。

 

 

 数多の武器を振り回せば、肉が弾け血が流れる。

 どこからともなくやってくるフィクサー達を退ければ、辺りは赤一色に染め上がる。

 

 

「……どうしてお前は命を懸けてこの事務所を守ろうとする?」

 

 

 今にも事切れそうな者に語りかける。

 

 

「ははっ……命を懸けてでも……守りたい物がある……それだけだ…………」

 

 

 死にかけの者は黒い影をあざ笑いながら、かすかに声を出す。

 

 

 ——グシャ。

 

 

「生命保険のお陰で死んでも生き返れると高を括ったバカが本当に多いんだな……今まで脳天をかち割られた事が無かったのか?」

 

 

 赤いシミだけが残った。

 

 

 足を早める黒い影。

 そこまでして守りたい物ならば、きっと何かあるはずだと。

 この怒りの矛先が、きっと見つかるはずだと。

 

 

「…………!!」

 

 

 巨大な扉がある。

 扉を蹴り飛ばして中に入れば……そこは大広間だった。

 宮殿の様な円形ホールの会場。その端には背丈の数倍はある巨大な本棚の数々。様々なファイルや本が内蔵されており、おそらくここが事務所の本拠地なのだろうと推測出来る。

 

 ……その中央に居座るフィクサーが一人。

 

 

「来ましたね。黒い沈黙」

 

「……多い。待ち伏せしていた……って所か」

「一応聞いておくが、お前はねじれについて何か知っているか?」

 

「残念ながら何も」

 

「……セブン協会の癖に何も知らないのか」

 

「ええ。知っていたら法外な値段で売りつけてますよ」

 

 

「……本当に何も知らないのか?ねじれ事件に手を出しているのに?ねじれを事務所へと持ち帰っているのにか?」

 

「生憎、何もわからない事だけがわかったんですよ」

 

「嘘だな。この事務所にはねじれに関する決定的な情報がある。金蔓を他人に渡したく無いのか、お偉いさんの命が大事なのかは知らないが、お前らはねじれに関して独自の結論を出している筈だ」

「セブン協会所属、ノーティティア。ねじれに関する情報を全て出せ」

 

 

「……私は何も知りません。かと言ってこのまま素通りさせる訳にも行かないんです」

「お引き取り下さい」

 

 

 腰に下げた細身の剣を引き抜く。

 黒い影の手袋から二つの剣が飛び出す。

 

 

「『クリスタルアトリエ』」

 

「……さて、特色相手にどこまで粘れますかね」

 

 

 男が駆け出した刹那。

 

 

「……では、お願いします」

 

「デリバリーキャリア全開!『タイプ・ルナ』!!」

 

 

 本棚の影から飛び出してきた、次元鞄を持った男へと視線を向ける。

 

 

「『デリバリーキャリア・タイプ:レーヴァテイン』!!」

 

 

 次元鞄が剣へと変形し、赤く燃え上がりながらクリスタルアトリエの双剣へと振り落とされる。

 

 

 ——ッッ!!

 

 

 その一撃は二つの剣によって阻まれるが、黒い影を押し出す事には成功した。

 

 

「……『ロジックアトリエ』」

 

 

 彼が持つ双剣はリボルバーへと姿を変え、次元鞄を持つ男へと銃弾を放つ。

 

 

「いってぇ!」

 

「『ムリネ』」

「『フレッシュ』!」

「『リポスト』!」

 

 

 影の中から現れたセブン協会のフィクサーと距離を詰めたノーティティア。

 三方向から振りかざす細身の剣が黒い影の体を抉ろうと——

 

 

「『狼牙工房』」

 

 

 二人の首元を切り裂き、ノーティティアを大きく吹き飛ばす。

 そのまま向かうは次元鞄を持つ男。

 

 

「『ムク工房』」

 

「ッ!『デリバリーキャ——」

 

 

 左腕を斬り刻み、右手を飛ばす。

 

 

「『老いた少年工房』」

 

「いっ……くそ!」

 

 

 かろうじて動く左腕で次元鞄を盾として使った後、彼の腕へと次元鞄が捕まえる。

 

 

「……器用だな、その鞄」

 

「おい!俺ごと吹き飛ばせ!」

 

「『デリバリーキャリア・タイプ:ミョルニル』!!」

 

 

 後ろからやってきた別のヂェーヴィチ協会フィクサーが次元鞄を振りかざす。

 ふさまじい衝撃は向こうの本棚を倒し、先程まで黒い影の近くにいた男は肉塊となってしまった。

 

 

「……『アラス工房』」

 

 

 ……最も、黒い影は正面から受け止めた様だが。

 

 

「ッ!!!」

 

 

 黒い手袋から現れたランスはそのままヂェーヴィチ協会のフィクサーの腹に大きな穴を開け、壁の向こうまで吹き飛ばしたノーティティアへと……

 

 

 いない。

 

 

「……チッ」

 

「『超圧縮型衝撃弾』!!」

 

 

 黒い影がいた場所が吹き飛ばされる。

 

 

「……ルモさんですね。生きていましたか」

 

「姫様の命令です。セブン組に助力に行け、と」

 

 

 両手で抱き抱えられ、上空を飛ぶノーティティア。

 彼女を抱えて空を飛ぶのはトレス組部長の直属部隊『手足』の一人、ルモ。

 彼の手にはあの魔改造拳銃が握られている。

 

 

「……落としますよ。このまま宙に留まってもジリ貧になるだろうし、そもそも『翼』が持たない」

 

「このまま援護をお願いします。もう少し、黒い沈黙の行動を見る必要があります」

 

 

 ノーティティアが地上へと戻る。

 

 

「了解しまし——」

 

「『ロジックアトリエ』」

 

「たぁ!!!」

 

 

 弾丸が胴体を射抜こうとする。

 

 

「なるほど。金食い虫なだけはあったか」

 

 

 床を踏み鳴らす靴の乾いた連続音が鳴り響く。黒い影はひとまず空を飛ぶ男の始末は諦め、目の前の女から手を打つ事にした。

 

 

「『クリスタルアトリエ』」

 

「……此方も運動不足ですから……手加減して欲しいものです」

 

 

 細身の剣による突き。片方の剣によって軌道を逸らされる。すぐさま胴体を捻り切り上げるかの様に薙ぎ払う。双剣へとぶつかり火花が上がるが黒い影には届かない。

 

 

「ッ!!」

 

 

 しなった細身の剣が振り落とされ、左側の剣へと叩き込む。黒い影の姿勢を崩す。

 狙うは……心臓への一突き。

 

 

 ——ッッ!!!

 

 

 もう片方の剣が彼女の胴体が大きく裂き、血が溢れ出す。

 そのまま流れるように止めの一撃を……

 

 

「させるか!『パラード』!!」

「『フレッシュ』!!」

 

 

 新しくやってきた二つの細身の剣が黒い影へと振り落とされる。

 

 

「……そうか。面倒だな。『ケヤキ工房』」

 

 

 斧によって胴体を裂き、メイスが頭部へと振り落とされる。

 

 ……その一撃は致命傷にはなれど、一発で命を奪う事は出来ない。

 

 

「……そろそろ見慣れてきた頃か」

 

 

 彼等が狙うは長期戦。全員で攻撃の手を回し続ける事で相手を休ませない。一人がやられたらまた別のフィクサーが、またやられたら他のフィクサーが。一斉に襲いかかるよりもより長く戦え、より多くダメージを与える事が出来る。

 

 その流れは協会間を跨ぎ、繰り広げられる。

 

 

「離れろ!『絶対零度氷結弾』!!」

 

 

 黒い影の周りが一瞬にて凍りつく。……が、そんな事はお構いなしに黒い影は走り続ける。

 

 

「っ!マズイ!黒い沈黙の動きを止めろ!」

 

 

 狙いの先は……ノーティティア。未だ胴体のダメージから回復しきっていない。

 

 

「『狼牙工房』」

 

 

 右手のガントレットで短剣握り、彼女の心臓へと——

 

 

 

 ドゴォン!!!

 

 

 

 火花が散り、その一撃を遮る。

 燃え盛る籠手によって掴まれた薙刀が、黒い影を大きく吹き飛ばす。

 

 

「……リウ協会所属、ポール。どうしてこの事務所にはこんなにも多くの協会のフィクサーが居るんだ?」

 

「まあ、そう言うモン、って事で納得してくれ」

 

「……情報を吐かせる為に手加減してやろうと思っていたが……余りにも面倒だな」

 

 

 黒い影が後ろに下がる。

 

 

「お前らのお偉いさんだけを残して、他は全員殺す。それで良いな?」

 

「……良いのか?俺がとんでもない情報を握っているかもしれないぞ?」

 

「どうせありもしないカスみたいな事しか話さないんだろ?なら結構」

 

 

 黒い手袋から、また武器が取り出された。




生存状況

代表…○
特異点ネキ…○
本部長…○

ツヴァイネキ…✖️
トレスネキ…✖️
シニキ…○
センクネキ…○
リウニキ…○
セブンネキ…△
エイトニキ…○
ヂェーヴィチネキ…○
ディエーチネキ…○
ウーフィニキ…○
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