プラネタリウム・ドリーム   作:ななしのあ

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久しぶりにストックを作らずに投稿します。囚人ムルソーぐらい投稿速度が遅いのであしからず。

目標:かっこいい戦闘描写を書く


招待状の欠片:エセヒーローの凱旋
主人公(ヒーロー)前哨戦 前


 窮屈な人生に嫌気が差していた。

 理不尽な世の中に諦めを抱いていた。

 

 どれだけ不満を抱こうが、それを表に出すことはない。

 声を上げて聞いてくれるだけなら御の字、何事もなかったかのようにすり潰されるのがオチだろうから。

 

 だから俺らは諦めていた。この都市の中で自身を殺し続ける今日を享受していた。

 

 

 だが、その日は違った。

 

 俺は見たんだ。どうしようもない足枷を全てぶっ壊すヒーローの姿を。

 俺らは見たんだ。地位、富、家族、職場、経歴。人々に巻きついた鎖から解き放たれ、ありのままを生きる人間の姿を。

 

 

「だから俺らはついてきたんだ!元来のヒトとしての生き方を取り戻す為に!」

 

「……いや、もう少しあるでしょ。あなた達のヒーローについて」

 

 

 旧L社の裏路地。辺りは白い煙に包まれ、視界はあまり優れない。

 

 現在の12区は都市の中でも生粋の危険地帯。数多の組織とフィクサーが金に釣られて、一世一代の大勝負の最中である。

 

 そんな中、壁にもたれかかる男に、ケインソードを構える女。どうやらお取り込み中のようだ。

 

 

「ははっ!俺らはただ共にファイトをするだけの関係だ!それ以上深くは関わらねぇ!そいつがどんな奴か互いに知らねぇし知ろうともしねぇ!ただ、そいつがどれだけクソッタレなのかはここにいるだけでよく分かるさ!」

 

「つまり互いに素性は知らないし、その様子じゃヒーローの素性も知らないでいい?」

 

「ああそうさ。つまり俺はお前が欲する情報を持っていない。そしてお前は最後に俺を殺すだろう。そうするしかないだ——」

 

「ちょっとうるさい。……はい、もしもし」

 

 

 男の口に切り込みがついた。余りにも強引である。

 

 

「……はい此方L社跡地捜索隊情報屋、有力な情報無し。他部隊の状況報告を求めます」

 

[此方L社跡地捜索隊死組、此方は現在手掛かり無し]

 

[此方L社跡地捜索隊運び屋、ねじれと遭遇し捜索が不能。誰か助けて下さい]

 

[此方L社跡地捜索隊陽炎1番隊、B7地点に『ヒーロー』を発見。交戦します]

 

 

 ……。

 

 

「え?ちょっ、ちょっと待って!」

 

[は?おい待て早とちりし過ぎだ馬鹿おいおい待て人の話を聞けよおい!]

 

[おい!無断行動はよせ!せめてもうちょっとこっちの用意が整ってからにしろ!]

 

「あくまで今回は偵察だからね!?レスアンカーは禁止!映像繋いで情報残して!……はあ」

 

 

 ふと現れた溜息。口から血が溢れている男の隣で、やや文句ありげな様子を見せる。どうしてこうも協調性が無いのか。コートを着た女が少しブツブツと文句を言いながら壁にもたれかかる。

 

 

「…… はへは、ひへぇ(勝てや、しねぇ)

 

「……‥なんて?」

 

ほはえはははほ『ひーほー』ひははへへぇ(お前らはあのヒーローには勝てねぇ)

 

「……まあ、お手並み拝見、って感じですよ。貴方達のヒーローとやらのね」

 

 

 女は興味を失ったかのように、そっぽを向いてどこか遠くへと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたは逃げる事も出来た」

 

「クッ……ソ」

 

 

 小さな広間の中央。踏みつけられているごろつきに、軽蔑と憐みの視線を向ける中性的な顔立ちの女。ピンク色に染まった柔らかく長い二本のツインテールは、彼女が動く度にふわりと揺らいでいる。

 

 この都市に住まう者としてはかなりの小柄でありながら、並外れた腕力を見せる。身体強化施術は勿論、装飾品にも気を配っているのだろう。

 

 

「それでもあんたは戦いを挑んだ。その度胸だけは讃えてやる。けど……褒めれる所がそこしか無い」

 

「人の……家族を……殺しておいて……」

 

「……痛い?」

 

 

 ヒーロー、と呼ばれている者が胸ぐらを掴む。ごろつきは空高くに掲げられたかのように持ち上げられる。

 

 

「憎い?苦しい?悔しい?」

 

「……クソッタレ!」

 

 

 ごろつきの男がヒーローの頬を殴る。鈍い音と共にヒーローとツインテールが少し揺れる。

 

 

「……その痛みはあんたが生きているという唯一の証明となり!」

 

 

 ごろつきを地面に叩きつける。

 

 

「そうしてようやく!クソッタレなテメェが奪い奪われる素晴らしい人生を歩む事が出来る!」

 

 

 横たわったごろつきを蹴り飛ばす。肉と骨が潰れる音と、重い風切り音が鳴り響いた。

 

 ごろつきはそのまま壁に叩きつけられ、赤い染みへと姿を変えた。

 

 

「……ん?」

 

「うおっ危な」

 

 

 ごろつきだったものの横に立っている、新しいチャレンジャーが視界に入る。

 

 

「ツインテールのピンクの髪に、灰色のパーカー……その下には黒いインナー……インナーってアレか?」

 

 

 赤いコートに黒いシャツ。一般に南部のリウ協会の格好の者。何かを確認するようにブツブツと言葉を発している。

 

 

「チョーカーにリストバンドにショートパンツにハイカットスニーカー、全て黒色……蜂がいたら真っ先に刺されてそうな格好だな。……あとハイカットスニーカーってなんだ?アレで合ってるのか?」

 

 

 ……特筆すべきは両手にはめられた巨大なグローブ。恐らく、発火装置が備え付けられていると予測が出来る。

 

 

「……あんた、新しいチャレンジャーか?」

 

「チャレンジャーじゃない。俺はピチピチのフィクサーだ」

 

「それはどうも。じゃオレとファイトしに来た、って事か?」

 

「それも違う。俺は星を堕としに来たんだ」

 

「オッケー。大体考えてる事は分かった」

 

 

 青年……と言うには少し老け込んだ大柄な男。ポケットに手を突っ込んでいるが、グローブが巨大故に入りきっていない。

 

 

「……後、女の子なのに一人称『オレ』はお勧めしないぞ。『私』がキュートかつラブリーで可愛いからオススメだ」

 

「……あんた。流石に人を小馬鹿にするのは辞めた方が良いよ」

 

「馬鹿にしてたか?そりゃすまない、コンプレックスってのは案外デリケートなもんだからな、クソガキ」

 

「……クソッタレ」

 

 

 少女の足元にヒビが入り、風切り音が鳴り響いた後——。

 

 

「——危ねえな。いきなり何すんだ」

 

 

 頭部目掛けて振り抜かれた少女の右ストレートを、男の左手のグローブが受け止める。

 

 

「……いいね。ファイトしがいがありそう」

 

「お互いに自己紹介ぐらいはやっても良いと思うんだが」

 

「ここは匿名でのファイトも歓迎だよ」

 

「……ルナ事務所所属、リウ組陽炎1番隊隊長、ブロフロアだ。お前は?」

 

「……ヒーローだ」

 

「答えになってねぇじゃん」

 

 

 ヒーローが一度後ろへと下がり、体勢を整える。

 

 

「……ま、良いか。『炎拳』、起動」

 

 

 ブロフロアの両手から、溢れんばかりの赤い炎が飛び出してくる。空間はあっという間に紅く色づき、吸う空気に熱を感じる。

 

 

「さて、覚悟しろよ。今日、星が一つ沈むことになる」

 

「あんたみたいな野郎が何しでかすのか知んないけど、ま……素晴らしいファイトを送ろう!」

 

 

 ブロフロアは両手を後方の空間へと叩きつける。空気が揺れる音のすぐ後に、とんでもない爆音が鳴り響いた。

 

 爆風は彼を空高く打ち上げ、空からヒーローを見下す。ヒーローは快楽を感じさせるような笑みを残したまま動こうとしない。

 

 ブロフロアは己の後方に手をかざせば、再び爆風。また彼を強く押し出し、ヒーロー目掛けて落下。

 

 

「『モジュール』、解放」

 

 

 ブロフロアの両手を纏う炎が緑色へと姿を変化し、衝突と共に爆発。辺りを熱波が支配し、広間はあっという間に焼け野原へと姿を変えた。

 

 

「……熱い」

 

 

 ブロフロアの突き出した両手を、両腕で壁を作るようにして防ぐヒーロー。緑に染まった炎は徐々に赤色へと戻ってくる。

 

 

「熱い止まりか。やっぱこれだけじゃ足りねぇよな」

 

「良いね。正直舐めてた。オレを獲りに来たのは間違い無さそう」

 

 

 それを少々不服そうに眺めるブロフロア。ヒーローをのけぞらせる事は出来てもガードまでは崩せない。

 

 

「でもさ……ファイトしに来たってなら、血みどろになる覚悟は出来てるだろうね!?」

 

 

 ヒーローは左脚を軸に回し蹴り。ブロフロアの腹部へと食い込むが、受け流される。

 

 距離をとったブロフロアは両手のグローブから爆風を起こし、広間から離脱。建物の隙間へと入り込み姿を眩ませる。

 

 

「……こっちも礼儀として名乗ってあげる。このクソッタレな世界をぶち壊しに来たヒーローだ」

 

 

 辺り一面が炎に支配された広間。ヒーローはその中央で右の拳を大きく振りかぶり——

 

 

「じゃ、よろしく。『コンサバティブ・硬楔』!」

 

 

 中央に巨大なクレーターが作られた後、衝撃波が周りの炎をかき消した。

 

 

「……んだアイツ。なんの返答にもなってねぇし、さっきの一撃より明らかに強くなってねぇか?」

 

 

 建物の隙間を駆け抜ける中、その一部始終を覗き見たブロフロア。ピンク髪のヒーローは中央で佇んだまま動かない。

 

 

「おい情報屋。とりあえずは身体能力でゴリ押すタイプ、身体強化施術をこれでもかって程取り込んでやがる。条件次第で身体能力が飛び跳ねると見た」

 

[想定通りです。一発貰ったら死ぬと考えて下さいね]

 

「……とんだクソゲーだな」

 

 

 ブロフロアは壁を蹴ると同時にグローブを起動、爆風によって加速しながら広間へと突っ込む。

 

 此方の行動に気づいたヒーローが笑顔を見せると共に左手を振りかぶり、正拳突きを放つ。

 

 

「三連爆撃、起動」

 

「『リベラル・専心』!」

 

 

 互いの拳が衝突する寸前、ブロフロアの両手が3度爆ぜる。赤い光がヒーローを包む。

 

 

 轟音。両者の拳が衝突し、静止する。

 

 

「重い……出会い頭の一発は本当になんだったんだよ」

 

「一発でぶち抜くつもりだったけど……ま、何発も殴るもまた趣か」

 

「……『モジュール』、解放」

 

 

 ヒーローがブロフロアを押し除け、ラッシュの構えを取る。膝と腰を曲げ重心を下げれば、白く淡い両腕に到底籠ってはいけない殺意が宿る。

 

 対するブロフロアの両手には緑の炎。広間を緑の焔が支配し、目の前の敵を燃やし尽くさんと爆炎が立ち込める。

 

 

「『リベラル・千棘』!」

 

「十連爆撃起動、『臥薪嘗胆』!」

 

 

 爆音。

 

 緑の世界が白い肌を蝕み、白い両腕が緑の炎を貫く。

 

 ヒーローは己を包む炎がなんのその、無謀ともとれる程のインファイトを見せる。

 

 ブロフロアはそんな乱打を、持ち前の武術と炎を用いて受け流し続ける。

 

 

 序盤はブロフロアが優勢、しかし緑が赤へと戻れば徐々に炎の勢いが弱まり、骨と筋肉が軋む音が響き始める。

 

 

「……ちっ」

 

「炎頼りだね、その拳法はせいぜいお飾りって所か」

 

 

 ヒーローの乱撃により体勢を崩したブロフロアが守りの体勢に入る。

 

 

「じゃあなチャレンジャー。……『リベラル・破天』!」

 

 

 ヒーローはブロフロアの動体へと両手を突き出し、肉と骨を抉りながら吹き飛ばす。その勢いのまま幾つもの建物をぶち抜き、白と茶色の煙の中へと消えていった。

 

 

 衝突、崩壊。壁が崩れ、煙が上がる。

 

 

「………………っ、いって……」

 

 

 瓦礫が落ちる音がする。建物の持ち主はたまったものではない。

 

 

「……終わりか。期待外れだったな」

 

 

 可愛らしい声から毒が吐かれる。

 

 ヒーローは砂煙の上がる場所へと歩いてくる。コツ、コツと靴の鳴る音のみが響き渡っている。

 

 

「うわっぱちの熱ばっか。そうやって作った炎が何を焼き尽くせるの?」

 

「……説教か?」

 

 

 瓦礫にもたれかかる男が視界に入る。傷だらけになりながらも、未だ戦意は消えていない。

 

 

「やっぱ足りないな……もっと死に物狂いで……げほッ」

 

「…………」

 

「げほッ、げほッ……、は……、ゴホッ、ゴホッ」

 

 

 ヒーローが咳をし始める。まるで肺が空気を取り入れるのを拒絶するかのように空気を追い出し、されど体は酸素を求めて空気を吸う。

 

 そして起こるのは呼吸困難である。

 

 

「……お前さ、炎も煙もたらふく吸い込んだだろ。それも12区産燃料の」

 

「こひゅ、ふっ、ゴホッ!、っふ、げほッげほッ!」

 

「そりゃそうなるだろ。もうお前の肺はズタボロだと思うが」

 

 

 うずくまるヒーローに対し、瓦礫を押し除け立ち上がるブロフロア。ヒーローが咳をする度に地面に赤色の液体が飛び散る。

 

 ブロフロアのグローブに、また炎が湧き出て始める。

 

 

「部長からもよく怒られてる。『炎は所詮リウの拳法の飾りであり、リウの強さの根底にはなり得ない』って」

 

「ふっ、げほッげほッ!、はっ、はっ、馬鹿に、ゴホゴホッ!」

 

「でもよ、俺らリウは勝利を渇望する組織だ。勝利を掴める戦法を、誰が非難出来るんだ?」

 

 

 傷だらけになった身体を動かし、ヒーローへと近づくブロフロア。つい先程とは形勢がひっくり返ってしまった。

 

 

「これもまたリウの味だ、よく覚えておけ。『モジュール』、解放」

 

「……っ、はっ、えふっ、ふっ」

 

 

 世界がまた緑の炎に包まれる。ただでさえ少ない酸素が更に消えていく。

 

 

「人をぶん殴るならぶん殴られる覚悟はしておけよ、ガキ」

 

「舐め……ゴホッ!」

 

「全弾爆撃、オーバーヒート」

 

 

 膝をつく一回り小さい女へと向け——

 

 

「『臥薪嘗胆・大成』」

 

 

 放たれた両手は爆炎を纏い、世界を緑が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やったか?」

 

 

 赤い炎が散らばる空間。幾つもの建物が破壊され、そこら中に散らばっている。

 

 炎が生み出した黒煙が周囲を包み、元からL社を包む白い煙も相まって一寸先も見えない。

 

 

「全リソース注いでぶん殴ったんだ、少しばかり響いてくれりゃ良いが……」

 

 

 それでもブロフロアは見透かしているかのように、遥か遠くの敵を見続けている。

 

 

「……ああそうだ、此方L社跡地捜索隊陽炎1番隊隊長。リソースを全て使い果たした、今から——」

 

 

 ——破壊音。衝撃波が辺りを駆け抜ける。

 

 

「……はぁ。ま、やってる訳無えよな」

 

 

 煙を全て吹き飛ばし、透き通る空間の向こうに佇む1人の人間。

 

 どんな悪にも屈せず、己の正義を貫き通すその姿はまさしく……。

 

 

主人公(ヒーロー)……だな」

 

 

「悪かったなチャレンジャー。オレは色々あんたを誤解してた」

 

「まずいな……あー……訳あって俺は帰らせてもらう事になった、いやー申し訳ない」

 

 

 ブロフロアは遠くのヒーローを視界に入れる。

 

 全身が焦げ、皮膚が爛れているにも関わらず、ヒーローは笑っていた。

 

 

「始めよう、チャレンジャー。オレとあんたで素晴らしいファイトを繰り広げようじゃないか!」

 

「全く聞いてねぇし……なら……」

 

 

 ヒーローは右手に殺意を込め、遥か遠くにいるチャレンジャーへと狙いを定める。快楽に溺れた拳から放たれる一撃が簡単に命を奪う事は想像に容易い。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。このまま戦えば彼は綺麗な肉片へと早変わり。間違いなくロクな死に方はしないだろう。

 

 

「……もういるんだろ?助けろよ」

 

 

 だからこそ、彼が取る次の一手は想像に容易い。

 

 ……のだが、何かが違った。

 

 

 チリンチリン。

 

「ちりんちりん」

 

 

 突然、ベルの音と人の声と共に、煙の中から何かが飛び出してきた。

 

 

「……?」

 

「はぁ……なんでそれで来たんだよ」

 

 

 煙の中から、迷える者を導く為にやって来た——

 

 

「チャリで来た」

 

「ふざけるなよ密売ニキ。1人用じゃねぇか」

 

 

 自転車だ。




*点火グローブ愛用ニキ
フィクサー名:ブロフロア

ルナ事務所所属リウ組『陽炎』1番隊隊長の3級フィクサー。単純な戦闘力なら精鋭部隊以上部長未満。強いという理由だけで1番隊の隊長に任命された。


*ヒーロー
???:???

この世界をぶち壊しに来た我らがヒーロー!(敵味方識別不可)

私はあの子達に手を差し出すべき、なのかな?

  • そうだ。彼ら彼女らを、貴方が導くべきだ。
  • うーん。貴方の後輩に任せるべきでは?
  • 貴方達はあの者達に関わるべきではない。
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