《第13回 代表のありがたいお言葉 より抜粋》
「あぁ……えーとね、あ、そうそう、E.G.O関係の話もしたかったんだよね」
「ほら、E.G.Oって色々あるじゃん。場所型、道具型、装備型」
「場所型は……図書館とか、ユリア工房とか、夢の洗濯屋とか。ネデアの奴のカジノもそうだね」
「場所型の1番の特徴はやっぱり自分のスペースを簡単に確保出来る点だよね。そこで商売するも良し、簡易テントみたいに使いまくるのも面白そう。でもまぁ、戦闘型ではないよね。使えなくはないけど」
「道具型は……モーゼス女史のキセル、アラヤちゃんの赤い糸とかかな。あれは持ち運びが場所型よりも楽々で戦闘にも応用しやすい、なんというかフリーター向けのE.G.Oって感じがする」
「……まぁ、E.G.Oって言ったらやっぱ装備型が1番ピンと来るんじゃない?使ってる人なんて多すぎて言うだけで疲れるくらいにはいるじゃん」
「俺はねー、開花E.G.O、特に装備型は……対人戦闘特化の装備だと思ってんの」
「だって考えてみろよ。さっきまで戦ってた相手が突然訳わからない格好と能力を使ってハイになりながら突っ込んでくるんやぞ?時と場合によっては自我心道に巻き込んで環境すらも相手のペースに持っていかれる。まぁこれはどちらかと言うとねじれの方がピンと来るんだけど。やられた側からしたら迷惑極まりない」
「良くも悪くも型破り。だから心理戦を含む対人戦闘では開花E.G.Oは必殺の切り札になり得る。逆に言えば戦闘に心理戦が含まれない場所……例えば、幻想体との戦闘とか、大湖の鯨狩りとか。そういう時は真価を発揮出来ないだろうね。全く意味が無い訳では無いだろうけど」
「まあ何が言いたいかと言うと!ねじれ事件解決とかそういうことしてる時にEGOった野朗に出くわしたら『逃げ』の選択枝を入れとけよってこと!」
「俺も対峙した事あるけどパナいぞアレ!舐めてかかると勢いのまま全部
《以上 記録終了》
「……魔法、少女」
眩い光に目を細めながら、ぶつぶつと小言を繰り返すペルタ。彼女の隣には南部ツヴァイの強行班係、エドガーと鋼鉄の愛犬ラング。
「……早着替えか?巷で話題のねじれ、とはまた違うみたいだな」
「エドガーさん。詳しく説明する余裕はありませんが……あれは間違いなく『ヒーロー』です。そして——」
「どうなっているかは分からないが、今までとは一味違うんだろうな」
エドガーは言葉を漏らした後、持っていた通信機を投げ捨てる。
「エドガーさん」
「良い。どうせろくに繋がらないガラクタだ。それに俺にはラングがいる、大抵の通信はラングがやってくれる」
「ピピピ」
ラングから電子音が鳴る。その音を聞いたと同時に、エドガーは眉を顰めた。
「……なんだ?ラング」
「……」
「……ペルタ。お前は、あの野郎がやった行為に関する知識を持っているな?」
「……神秘」
「神秘?」
「ねじれとは似て非なる現象を、『神秘』と呼んでいるようです」
「ツヴァイ1課ですら知らない情報を2課の協力事務所が出してきたか。後で詳しく話を聞かせてもらう」
「……」
ペルタは少しの間そっぽを向き、エドガーはゆっくりとビルに向けて歩み始め、その後ろをラングがついていく。
「L社。ねじれ。今の『ヒーロー』の状態。それらが全て一点に繋がるのだとしたら……看過は出来ないだろう」
「ピピピ」
「……明るいな。誰よりも光り輝いて……どんな暗闇をも照らせるような光だ」
ビルの上に佇む1人の少女。首に取り付けられた黒いチョーカーは肥大化し、桃色のマフラーのように長く大きくなびき続けている。黒一辺倒だった服装にも桃色の装飾が加わったことで僅かに柔らかさを感じさせる。
特筆すべきはやはり左手に持った黄金の杖。黄金の小枝ど同化するようにE.G.Oと組み合わさった杖は『憎しみの女王』が持つ魔法の杖と酷似している。
「オレはオレの正義を信じる。お前達もまた、お前達の正義を持っている事も分かってる」
ヒーローは2人と1匹を見下しながら、左手に持った黄金の杖をビルの屋上に突き刺す。
瞬間、辺り一帯にピンク色の魔法陣が幾つも召喚される。
空高くにポツンと置かれたものから、地上付近に固まって召喚されたものまで。四方八方に生成された魔法陣は光を発しながらも消える事なく、戦場となったL社の裏路地一帯に散りばめられた。
「なら、競い合うしか無いだろ。決して止まることのない流れを壊し、変わる事のない都市を覆してみせる」
「ラング。もう一度……正義執行の時間だ!!!」
「『
藍色の閃光と桃色の軌跡が衝突し、空中で激しい火花を撒き散らす。
瞬きする暇すら与えずにラングと一体化したエドガーに、黄金の杖を
(魔法陣……間違いなくヒーローのE.G.O、予測されるのは……テレポート。概ね、『憎しみの女王』、もしくは『貪欲の王』に類似した能力を持っていると推測出来る)
目が眩むような閃光を撒き散らしながら飛び回る2人を横目に、ペルタもまた地面を蹴りビルの隙間を通り、空中で行われている乱闘の真下にまで到着する。
(こちらも負傷しているものの、それはヒーローだって同じ)
(……なら、このまま押し切ってみせる)
ペルタの両手に持つ盾とツヴァイヘンダーが一体となり、巨大な大剣に変わった後、地面に浅い穴を開けながら急激に加速する。
そのまま建物の壁を使い空中へと駆け出し、閃光が撒き散る場所へと近づき。
「『ツヴァイ式月詠剣術・玉兎』」
「ッ!?」
振り上げられた大剣がヒーローを地面に叩き落とす。
「——ふっ。そりゃあもう一方の盾も混じってくるよな」
「ピピピ」
犬の姿となりながら駆け降りてきたエドガーが魔法少女に追撃を加えようと拳を突き出すも、すぐさまヒーローは身体を捻り、空となった地面に大きな割れ目を加えるだけに留まる。
ヒーローはそのまま距離をとるようにピンク色の魔法陣へと近づき、彼女の身体と魔法陣が触れた瞬間。
魔法陣が輝き、ヒーローの姿が消える。
「……やはりあの魔法陣はテレポート関連」
「チッ!」
エドガーはどこに逃げたのか分かったかのように、はたまたがむしゃらに動き回っているだけなのか、ビルの壁をつたいながら移動をし続けてる。
辺りの魔法陣が輝いては消えるを繰り返す。
「……速い。追いつけない」
地面へと着地したペルタは一度脚を止め、盾と一体化した大剣を構える。
(……なら、ここで一度ヒーローを迎え撃つ)
魔法少女。
都市の人々に眠る概念の1つとして存在する、世界を救う主人公、またはその素質を持つ者達の総称。
魔法少女の持つ能力のどれもが強力かつ多彩であるが、その中でも特に汎用性があるのは
加えて、ヒーローの武器は素手によるインファイト。テレポートによって強制的に相手を捉える事が出来るなら、ヒーローが使わない理由が無い。
故に。
「…………」
背後。
ペルタの背後に突然、巨大な魔法陣が現れる。
その円から姿を見せるのは勿論、桃色のマフラーを巻いたヒーロー。
「『ツヴァイ式月詠剣術・鰐』!」
「『メジャーアルカナ・戦車』!」
直ぐに振り返り突き出された大剣と、桃色に光り輝いた左腕が衝突し、眩い輝きと衝撃波が辺り一帯に広がる。
(——ッ!重い!)
一瞬の均衡の後、ペルタが大剣をねじるように回し捻り、ヒーローの左腕を地面に押し付ける。
(マジかっ!上手く流された!)
「エドガーさん!」
ビルの上空から駆け降りてくる一匹の犬。
左腕を地面へと押し付けられ、身動きが充分に取れないヒーローに追撃を加えようと、四つん這いの姿から人型へと姿を変え——
「……『マイナーアルカナ』」
ペルタの後方から、またしても魔法陣が現れる。
(……魔法陣、ビームのような光線?、いえ、間に合わない、少なくともこの短時間で繰り出せる光線の火力はお粗末、その前にエドガーさんがヒーローを潰す方が早い)
(なら、このまま——)
魔法陣が光り輝く。
「————『杖』」
現れたのは、黄金の杖。
「——ッ!!!」
魔法陣から飛び出してきた黄金の杖は、星を先頭にペルタのうなじ付近へと吸い込まれ。
身体を捻り回避しようとするも、ペルタの左肩を黄金の杖が貫き壊し。
彼女の左腕が宙を舞った。
空に左腕と血飛沫が浮かぶ中、大剣による拘束が外れたヒーローはそのまま進んできた魔法の杖を掴み、上空から落ちてくるエドガーへ向けて杖を構える。
「『マイナーアルカナ・円盤』!」
杖の先頭についた星が輝き、ヒーローとエドガーの間に光の壁が生まれる。
ヒーローの手から離れ、宙へと浮かんだまま光の壁を展開する黄金の杖目掛け、上空から振り下ろされたエドガーの右腕が衝突する。
「——クソッ、硬い!」
その壁はエドガーを押し出しはするものの、鋼鉄の鎧もまた光の壁に割れ目を入れる。
一瞬の時間稼ぎ。されどその一瞬が、ペルタへの追撃を可能にする。
「『メジャーアルカナ・正義』!!!」
左腕を失い、大剣を落としたペルタに、鋭く研ぎ澄まされたヒーローの両手が突き出され——
「『草炎掌』!!!」
「デリバリーキャリア解放!『タイプ・ルナ』!」
寸前、ペルタの前後を緑の光が包んだ後、桃色の光が一帯を抉り飛ばした。
「……なんか邪魔が——」
光の欠片が舞い散る。
「ラング!」「ピピピ」
殺意を溢れるまで流し込んだ拳がヒーローの上半身へと撃ち込まれる。咄嗟に割って入った黄金の杖によって威力を弱められ、ヒーローを吹き飛ばしはするも致命傷には至らない。
「……それでも、あの盾はもうマトモに動けないだろ」
「私は元々2課の協力事務所に期待などしていない」
「後はお前を殺すだけだ、ツヴァイ1課のエドガー」
「……やってみろ」
「…………いてぇ」
(違う、違った。なにかが……)
「……俺が見た時とは何もかもが違うんだが」
吹き飛ばされた先で、3人が折り重なりながら壁にもたれかかる。
ヒーローの一撃を受ける寸前、ペルタとヒーローの間に入り草炎玉球にて援護をしたブロフロア。
ペルタの背後へと回り、自らの身体と次元鞄を使いクッション代わりになったテクスタ。
「いてぇ……いてぇよぉ……」
「ペルタさん。なんでツヴァイ1課強行班係のエドガーがここにいるんだとかあのヒーローが魔法少女モドキで無双してんだとか色々聞きたい事はあるが……とりあえず現状報告だ、聞いてくれ」
「……どうぞ」
テクスタはペルタとブロフロアを押し除け、わんわん小言を言う男をそこら辺に放り出し、ペルタの左肩からの出血を止める手当を始める。
「……テクスタさん。緊急用のHPアンプルがあります、それを使ってください」
「部長専用に配られる緊急用HPアンプルか。それって使ったら部長でも一ヶ月はタダ働きになる貴重な物だったよな?」
「いいから使ってください」
「……はいよ」
「……この感じ、俺の事は心配してくれないんだな」
小言を漏らすブロフロアを横目に、テクスタは彼女の首元にHPアンプルを注入する。少しづつではあるが、傷口が治り腕が再生している。
「……まず、なんでか分からんがゲゼルシャフトが使えなくなっている。アネサさんともまともに連絡を取り合えていないし、周りの治安維持隊の動向も不明のままだ」
「その点で1番不味いのは第4ポイントとの連絡が取れない事だ。残響楽団のターニャの動向が現状全く分からないし、指ニキ……プグヌスさんの生死も不明だ。『死組』の連中が今回収に向かっているがゲゼルシャフトも通信機もパッパラパーになった今、正確な情報が届くのはいつになるのか分からない」
「……ともかく、現在最も警戒するべきはターニャがこの現場に乱入した場合だ。乱入されたらもうここは怪獣大決戦の会場、俺らが生きて帰れる、死体を回収出来る確証なんてどこにも無い」
「……つまり、テクスタさんが言いたいのは——」
「……撤退するべきだ」
テクスタは次元鞄を抱え、少し俯きながら、確かにそう言った。
「指ニキの生存確率は高くない。このままヒーローとの乱闘に入ってペルタさんにまで死なれると……ターニャ乱入とか関係なく帰還が困難な状況になる。ゲゼルシャフトが機能していないこの状況下でL社跡地小隊のリーダーの2人にまで死なれたらマトモな団体行動すら不可能だ、そうなれば命綱で蘇生待ちの奴らを持って帰る事なんて出来っこない。ターニャ乱入となればなおさらだ」
「今ならツヴァイ1課のエドガーに気を取られてヒーローは手一杯だ。俺らにまで手を出す余裕は無い、あってもまだなんとかなる範囲だ」
「……勿論、今回の都市の星事件の失敗となれば損失も大きい。だが、このままだと取り返しのつかない大失態、エイト組の崩壊すら超える大損失になりかねない!」
「今動けば……まだ統率が取れる。ペルタさんも生きているし、情報網もおそらく、辛うじて繋げられる。『死組』も死体を回収してから合流出来るだけの算段はついている、その他の面子も同じようにだ。今、今なら……全員生きて帰れる」
「……ルナ事務所ツヴァイ組部長、ペルタ。判断を下してくれ」
遠くで金属音と建物が崩れる音が鳴り響く中、そう淡々と、どこか切羽詰まったかのように話すテクスタ。その目からは寂しさのような、悔しさのような感情が滲み出ているようだった。
「……変に同意する訳ではないが、俺も庇ったせいで腕がへにょへにょだ。俺を戦力として数えない方がいいだろうな」
ブロフロアもぐちゃぐちゃになった両手を置き、うつ伏せになりながら小言を漏らした。
「一度——」
「あわぁ!えっ!ツヴァイネキじゃん!大丈夫なんか!?」
「やっと着いたで!全速力で来てもけっこう時間かかったのぉ!」
突如、上空に2人の人影が映る。
紫の帽子と、黒い獣。
「ワラギ!」
「ワラギさん」
「クソカスなギャンブラーか……」
「よす!俺の名前はワラギ!こっちは訳あって連れてきた黒獣!」
「はぁ!?お前あの黒獣そのまま連れてきやがったのか!?」
「しゃーないやろなんかヤバそうなんだったし!」
「いや部外者をなんでここまで連れてくるんだよ今以上に面倒臭い事になるに決まってんじゃねぇか!!!」
「ウーフィのフィクサー、ワシはもう好きに動いてええじゃろ?」
ワラギとテクスタが口論をする最中、黒獣のヤギがワラギへと目合わせをする。
「え?えーと、それは……」
「構いません」
「あっ、はい、ご自由にどうぞ!」
「そりゃどうも!好き勝手にやらせてもらうけぇの!」
その1つ返事を残して、黒獣のヤギは光り輝く方へと飛び去っていった。
(黒獣……報告にあったH社の刺客ですね)
「多分ワイはここにいた方がいいよな」
「おい、あんま場面を掻き回すような真似は——」
「ペルタさーん!!!」
これまた上空から、旅人っぽさのあるジャケットを羽織った女性が落ちてきた。
「お、コロモちゃんだ。ひっさびさに見た気がする」
「テクスタさん!ペルタさんはどこ?」
「ここ」
「あっ!ペルタさんっ!」
プリーツスカートにローファーの靴を履いた少女は慌てながらペルタの前へと立つ。少女の左腰には細長い刀を引き下げている。
「はい、『死組』からの報告です!指切り拳万ニキさんことプグヌスさんは死亡、そして——」
「『狼の時間』はどうなりましたか?」
「『狼の時間』、ターニャの姿が確認出来なかったとのことです!」
「マジ……?」
「確認できなかった?つまりこの付近にはいなくなってたってこと?」
「追い払った……か?」
「わかりました」
コロモと呼ばれた少女がそう伝えれば、プロフロア、ワラギ、テクスタ、そしてペルタの順番で声を漏らす。
(『狼の時間』は成すべき手を作れてたと考えていいでしょう。なら、後は——)
「ところでペルタさん、その左腕どうしたんですか?」
「えっ、わっ!ホンマやんか!どうした!」
「気付くの遅いし細かく言う時間は無い」
「すげー、ちょっとずつ生えてきてる」
「生えてきてるって事はアレ使ったんですか、緊急用HPアンプル。私の部長も使ったって言ってたんですけど……どんな感じなんですか?」
「デリカシーが無い」
「えっごめんなさい」
「ヘラポイセス?だっけ、ともかくHPアンプルなんて高過ぎてワイらはまず使えないからな。部長に配られてるヤツだってそこまで効力は強くなかったはず。片腕一本ぐらいなら戻せるけど、逆に言えば治せて片腕一本だけ」
「ケチだよなー。もっと高いやつ欲しいのに」
「K社の高い製品ってマジでどこまでも高いからやめとけって」
「こんな事ならもう1人ぐらい部長を持ってきた方が良かったよな、贅沢は言わないからリウニキとか引っ張ってきてさ」
「無理。ポールさん旅館に出掛けてる」
「休暇か!?」
「仕事だよ!!!」
「……静かに」
ペルタのその一言で周りは静まり返った。
「一度プシュケさんと連絡を取りたいです。なんとかしてゲゼルシャフトを繋ぐ方法はありませんか?」
「あぁ……うーん、アネサさんなら何とか出来るかもだが……」
[出来るかやってみましょう]
ペルタの体から声が聞こえてくる。
「……ツヴァイネキ、なんか喋った?」
「静かに」
「はい」
[セブン組、『情報屋』のアネサです。ゲゼルシャフトは今も万全に機能していませんが、1人だけなら私経由で事務所まで繋ぐ事は出来るかもしれません]
「早急にお願いします」
「繋ぐって……ゲゼルシャフトって電波みたいなものなの?そもそもなんで繋がらないのかも分からないのに——」
[あっ、はい、はい!聞こえてますか?プシュケです!]
ワラギの疑問を遮り、やや切羽詰まったような声が聞こえてくる。言葉の隙間から漏れてくる浅い息から事務所内の混乱が想起される。
「よす特異点ネキ。ゲゼルシャフトが——」
[一度ペルタさんの視界を共有させて貰いますね、事務所からなら皆さんの大まかな位置が分かるのでそちらの情報はアネサさんに共有しておきます、プグヌスさんはこちらで確認を取るので死体は回収してください、どうしてゲゼルシャフトが機能していないか分からない以上対策の取りようがないのでセブン組とシ組、ヂェーヴィチ組の皆さんに情報共有を頼んで下さい、くれぐれも孤立した小隊が生まれないようにして下さいね]
「……だ、そうだ」
「何が」
「わかりました。プシュケさんにはこのままお願いしたい事があるので、接続はそのままでお願いします」
[元からそのつもりです]
生え切った腕を曲げ伸ばし、衝突音が鳴り響く方へと歩き始める。
「……ツヴァイネキ?」
「私の大剣を回収してきます」
「えっ、ちょっと!」
「その必要は無い。残念ながら雑用は小生らの役割だからな」
建物の隙間から、肩に大剣を担いだ男がゆっくりと歩いてきた。
首元にぶら下げられたネックレスには、小さな鍵が光っている。
「それよりもするべきなのは、小生らがこれからどうするべきなのかを教えて貰いたい」
「おっ鍵ニキだ。生きてたんだ」
鍵を首元からぶら下げられた男は大剣をペルタの近くに突き刺し、鍵にある丸いレンズから激しい衝突音が鳴り響く方を覗き込む。
「事態はどうも最善ではないが、見た限り最悪でもない。現状の塩梅からどう選択するかはペルタ氏の判断に委ねよう」
「その選択がどのようなものになろうとも、小生らはペルタ氏の判断を最大限尊重しよう」
一瞬の静寂が辺りを取り囲んだ後、ペルタがゆっくりと諭すように喋り始める。
「……あのヒーローは、私とエドガーさんと黒獣で必ず瀕死に持ち込みます」
「皆さんには、
撤退ではなく継続。
ここで諦めるにはには、余りにも好条件が整い過ぎていたようだ。
「……ま、部長なら多少の差はあれど同じような事言ってたと思う。パンドラさんだって同じように判断するだろうからな」
テクスタはどこか呆れたように、それでいて安心したかのように話した後、次元鞄を持ち直す。
「なら、最後まで付き合おう」
「ワイ、ゲゼルシャフトが使えないせいでレスアンカーも使えないから戦力外、後頑張ってくれ」
「コロモ。俺のこと運んでくれないか?」
「ぜったい嫌です」
「小生も知識の予備は……あまり自信が無いな」
「……もしかしてマトモに動けるのは俺だけか?」
外野が雑談をする間に、ペルタは大剣の持ち手を強く握りしめ、大剣がツヴァイヘンダーと盾に分解される。
「では、お願いしますね」
そう言い残し、ペルタは戦場へと戻っていった。
「……で、お前らはどうするんだ?」
ペルタが去った後に残された5名。その中の一人、テクスタが仕切るように話し始める。
「俺はもう戦えない」
「じゃあお前はアネサさんの所に合流しておけ」
「そもそもアネサのいる位置が分からないんだが」
「探せ」
ブロフロアは「まだ俺頑張らないといけないの?」と小言を呟きながら、両脚を器用に使いながら建物の上へと登っていった。
「ワイも戦えないけど」
「お前はあの黒獣の元に行け。咄嗟に合わせられるとしたらお前以外いないし、万が一の時にはお前が責任を取る必要があるだろ」
「えぇ……」
ワラギは不服そうにハルバードを持ち直し、激しく音が鳴り響く方へと走り始めた。
「えっと、私はどうしたらいいですか?」
「俺ら3人はツヴァイネキのバックアップに専念しよう。コロモ、指ニキは回収出来てるんだよな?」
「その筈……です。他の『死組』の方がほんの少しだけいるので、その人達が回収してくれた筈、です」
「なら、コロモと俺はゲゼルシャフトの代役だな」
「待て、テクスタ氏」
コロモとテクスタか動こうとした時、鍵の男が2人を止める。
「なんだよ」
「『逃亡防止案』はどうするつもりだ?」
「あぁ、大雑把には聞いているが……それって他の奴らの仕事じゃなかったか?」
「同じく聞いてますが、詳しくは知りません」
「いや、先程ペルタ氏が……あぁ、あれは明らかにペルタ氏も言葉不足だし……」
2人が難色を見せた事に対し鍵の男は思う所があったようだか、すぐに飲み込んで説明を始める。
「……現状のヒーローに追い付けるのはコロモ氏とテクスタ氏の2人だけだ。他の人員は間違いなく追いつけない、小生も含めてだ」
「……そうか?」
「だからこそ、2人には『逃亡防止案』の実行に移ってもらいたい。特にテクスタ氏」
「……なんで俺だ?それならコロモに任せておけば良いだろ。純粋な瞬間速度なら向こうの方が上だ」
少しの思考の末、鍵の男が自信ありげに話す。
「強いて言うなら……お前がやった方が効果が出るからだ」
「……ギリ悪口だろそれ」
235:都市伝説検証系ネキ
今回の対ヒーロー討伐作戦が失敗するのなら、考えられる原因は『ヒーローに逃げられる』という一点のみだと予想しています
236:名無しのフィクサー
そうなの?
ぶっちゃけ戦力は足りない方だから真正面からぶつかったら普通に負けるんじゃね?
237:名無しのフィクサー
>>236
俺達だけでそこそこ良い所まで行けてたから部長なら楽勝レベルだと思う
238:名無しのフィクサー
真正面ドーンがヒーローの勝ち筋なら翼3つに喧嘩売った時点どころかピアニストの演奏に巻き込まれた時点でヒーローは間違いなく死んでる……と、思う
239:都市伝説検証系ネキ
先程話したように今回のターゲットはチュノックンを跳ね除け、T社の時間切断すら避け、H社の迷宮『鴻園』からの逃亡を成功させています
240:名無しのフィクサー
H社に関しては黒獣もセットで対応して逃げれたんだろ?
『黒獣のいる鴻園はR社の要塞と大差無い』って酒場のおっちゃんが言ってるぐらいだからそこ突っ込んで生きて帰って来たならまぁ化け物よ
241:名無しのフィクサー
T社5級職員から逃げれたって事は少なからず時間に対する才能があったって事でいいのかな
時間の流れ、空間、瞬間?そういうのを見分けられたらT社職員相手でも有利に立ち回れるって聞いた事がある
242:都市伝説検証系ネキ
ハナ協会も本件を都市の星に認定した理由として、『多数の人員に被害をもたらす思想と戦闘力、及び圧倒的な逃亡性能が挙げられる』と記述されています
243:名無しのフィクサー
んでそこからどうやってヒーローを逃がさないようにするのってのが3つ目の『逃亡防止策』になるのね
244:名無しのフィクサー
ならどうやってヒーローさんを逃がさないようにするの?
今回の戦場予定地はL社跡地ですけど
245:名無しのフィクサー
逃がさないように逃亡経路全部潰すは現実的じゃないよな
L社内ならまだしも、裏路地で戦闘となれば逃げ放題だし
246:名無しのフィクサー
>>245
鴻園で逃げれてるならL社跡地なんぞ寝ながらでも逃げれるだろ
外野もいるしヒーローの周りをガチガチに囲んで逃げれなくするのは不可能と考えていい
247:名無しのフィクサー
じゃあどうする?
どっかに誘い出す?
248:名無しのフィクサー
>>246
そもそもヒーローの現在位置すらよく分かってない
249:名無しのフィクサー
>>247
アリ
袋小路に誘い込んでボコボコにするのが正解かと
250:名無しのフィクサー
ほなら袋小路をどこに作るのかって話をですね
251:名無しのフィクサー
鴻園から逃げれてるから生半可な作りだとすり抜けられて終わりだぞ
252:名無しのフィクサー
そもそも戦力的な問題もあるしトントン拍子で物事が進むと考えない方がいいでしょ
253:名無しのフィクサー
>>250
1番はユリア工房みたいな密閉空間に閉じ込める事じゃない?
開花E.G.O持ちが無理矢理引きずり込ませる事って出来るんじゃない?
254:名無しのフィクサー
>>253
E.G.O空間に引きずり込むのはアリよりのアリってか多分ワイらが出来る対策の最適解に近い
問題は場所型のE.G.Oを使える奴がどこにもいないって事だけ
255:名無しのフィクサー
ユリアちゃん引っ張り出す?
256:名無しのフィクサー
>>255
誰もメンバーシップを持ってねぇし付き合ってくれねぇよ……
257:名無しのフィクサー
>>254
あれ、カジノの人いたじゃん
ネデアだっけ?
258:名無しのフィクサー
>>257
誰それ
259:名無しのフィクサー
>>258
元ルナ事務所メンバー
今はJ社でカジノ運営してる
260:名無しのフィクサー
無理矢理ヒーローをカジノに拉致して全員でボコボコ?
261:名無しのフィクサー
いいやんそれ
ネデアの方も土下座したら手伝ってくれそうだし
262:都市伝説検証系ネキ
『情報屋』の方でも当初その方針で進めていたのですが、ネデア様のやむを得ない事情により却下されました
263:名無しのフィクサー
えなんで
ネデアの連絡先知らないとか?
264:名無しのフィクサー
>>263
代表とかクレドさん辺りは連絡先知ってる筈だけど
265:名無しのフィクサー
理由は知らないが駄目なら駄目で代案を用意してもらわないとどうしようもないぞ?
他の場所型E.G.Oを使える奴を持ってくるとかさ、トラップ仕掛けて掛かるのを待つとか
266:名無しのフィクサー
代表とネデアさんって仲良かった筈だけどなー
「手伝って♡」とか言ったら「しゃーなし動いたる」みたいなノリで動いてくれる人だった気がするんだけど
267:名無しのフィクサー
>>266
あの人そんな軽い人だったっけ?と思ったけど軽い人じゃなかったらカジノ運営なんてしないか
268:都市伝説検証系ネキ
>>265
故に代案を持ってきました
私達は今まで『逃げるヒーローをどのようにして阻止するのか』について考え続けてきましたが、そこから見直します
269:名無しのフィクサー
おっとお?
270:名無しのフィクサー
流れ変わったな
271:名無しのフィクサー
なんかもう嫌な予感しかしない
272:都市伝説検証系ネキ
そこで私達が考え出した作戦としては『ヒーローを、自らの意志で、その場に留まらせ続ける』事に焦点を置く事になりました
273:名無しのフィクサー
はぁ
274:名無しのフィクサー
それが出来たら苦労はしない
ヒーローから逃げの選択肢を排除するって事だろ?
275:名無しのフィクサー
生きる為の一手すら押し除けてその場に留まらせる理由なんてそう簡単に作れるものじゃないぞ?
276:名無しのフィクサー
>>274
『逃げの選択肢を排除させる』って点は中々良い所ついてると思うぞ
逃げれない環境を作り出すよりも、逃げたくない、逃げるよりも良い選択肢がある環境を作る方が金も時間も戦力も少なく済む
277:名無しのフィクサー
>>276
ならどうやって逃げない環境を作るんですか
278:名無しのフィクサー
前哨戦からしてもヒーローの行動に信念があるのは分かったし上手くやれれば出来る……かも
279:名無しのフィクサー
>>277
頼んだ都市伝ネキ
280:名無しのフィクサー
>>279
大事な所で他力本願
281:都市伝説検証系ネキ
そうですね、単刀直入に言いましょうか
282:名無しのフィクサー
お願いします
283:名無しのフィクサー
へい
284:都市伝説検証系ネキ
ヒーローとレスバをしましょう
後編も9.5-1〜復刻7.5-2の間で出す予定です
出なかったら察して下さい
*???
フィクサー名:コロモ
ルナ事務所所属、シ組の精鋭部隊『死組』の5級フィクサー。ザ・文学少女。未だ幼さが抜けきっておらず経験不足も否めないが、身体能力と暗殺技能は折り紙付き。
*代表のありがたいお言葉
ゲゼルシャフトにて定期的に流されている代表の雑談配信。直近ではスーパーチャット機能の開発に成功し、配信頻度が増えている。曰く、『絶対俺らの事を見下す前提で話を作ってる』『暇なの?』『年中燃えてるせいで炎上という概念がない』『こいつがトップなの信じられない』『ひたすら自論を展開されて相手の意見は全く受け付けないのマジでキツい』『ブレーキの効かないF1カー』『カネだけ取って逃げるスロット台』『不純物認定待ち』……との事。
*緊急用HPアンプル
部長にだけ配られるお注射。中にはHPアンプルが入っているが、性能はあまり高くない。使ったり無くしたりしたら給料から差し引かれる……らしいが、『無くしたならともかく使って給料分差し引かれるのはいかがなものか』などの不満もあり現在では有耶無耶になっている。
私はあの子達に手を差し出すべき、なのかな?
-
そうだ。彼ら彼女らを、貴方が導くべきだ。
-
うーん。貴方の後輩に任せるべきでは?
-
貴方達はあの者達に関わるべきではない。