単行本・大怪獣時代は人間に厳しい時代です 作:アイアイホイホイおさるさん
爆発四散。そしてボタボタと降り注ぐナーイギガの肉片とアミルドジのパーツ。自らの傲慢により自滅した敵将二体であるが、ジゴラもクイーンギドラもこれで居城に帰ってまた愛し合おうと思えるほど能天気ではない。
『………部隊長』
『はっ!』
特に、地球でなら文句無しに
配下のクリスタラック達に対し、命令を下す。
『全ての民を避難させろ。兵士は総力を挙げて
『はっ!!』
兵士階級のクリスタラック達が蜘蛛の子を散らすように駆けてゆく。仕事の早さから、クイーンギドラのカリスマ性とクリスタラック達の有能さが伺えた。
そして、それを持ってしても勝てるかどうか怪しい敵が、すぐそこまで迫っている事も。
『クイーン、まさか………』
『この感じ………あの赤ハゲじゃな。かなりの数でこちらに向かっておる』
ジゴラは肉眼では見えなかった。だがクイーンギドラには自身に向けられた強烈な敵意、一種の邪念とも言えるものを感じ取っていた。
………
***
人間ならば見上げる程の巨木を、怪獣達は雑草のように踏みつけながら進む。種の違う怪獣達の集まりであったが、隊列を成して進む様はさながら歩兵の行軍のよう。
『見えたぞ、あそこだ』
惑星最大の勢力を相手にしているにも関わらずどうやろうと自身の軍門に下らない
『あの小娘の羽根を引きちぎって、全員の目の前で土下座させてやるわ………!』
『ほほほ!土下座とはまた大きく出たのう?赤いの』
噂をすればなんとやら。怒りに燃えるレッドモンスに応えるかのように、重力操作のリリリという飛行音を響かせて、青い羽根がひらひらと舞い落ちる。
『来たぞ!』
『クイーンギドラだ!』
『それに………ジゴラもいる!』
配下の怪獣兵達も、両足でジゴラの肩を掴んで………怪獣大戦争で合体攻撃をした時のゴジラとラドンのようなあの体勢でこちらに舞い降りてくるジゴラとクイーンギドラを前に狼狽える。
幾度となく侵攻を退け大勢の味方を殺した敵将が、脱走した自軍の強豪怪獣を引き連れて現れたのだ。自軍の緊張は一気に高まる。
『ジゴラ貴様ッ!裏切り者の分際でよくもヌケヌケとレッドモンス様の前に顔を出せたな!?』
『フンッ!裏切るも何もお前らの味方じゃねーよバーカ!!』
義憤に燃えるゴロンバに対し、ビッと中指を立ててみせるジゴラ。
しかし地球特有の挑発サインは誰にも伝わらなかったらしく、ゾゲランも怪獣兵も「何あれ…?」と困惑している。が、ゴロンバだけは戦士の勘によりバカにされている事は分かったらしく、ギギギと怒りを露わにする。
『下がれ、ゴロンバ』
『………はい』
そんなゴロンバを制止し、レッドモンスは節足の足をギチギチと鳴らしながら前に出る。
いざ対峙して分かったが、レッドモンスはかなり大きい。サソリのような「這う」体勢でありながら、体高はジゴラより頭一つ程度大きく、尻尾を除いた体長でも200に迫る。
そんなレッドモンスが巨大な顔でこちらを睨んでいるのだから、かなりの圧と迫力をジゴラに感じさせる。
『これが最後の警告だ。クイーンギドラ、この場で自害するか、さもなくば我が軍門に下り、
要求や交渉と言うよりは、それは最初から決まっている事を伝えているだけのような威圧感と自信に満ち溢れた「警告」である。
『嫌じゃ』
『なんだと?』
『キサマ難聴かの?なら何度でも言うたるわ。い、や、じゃ、ばぁ〜〜〜か』
わざと煽るように、徹底的に見下して、クイーンギドラは蛇のように舌をチロチロキロキロさせてアッカンベーをしてみせた。
レッドモンスの家父長の威厳レベル100とも言うべきそれであるが、通じるのはあくまで自らの支配下である
『それに、
そして見せつけるようにジゴラに対してベタベタキロキロして見せる。ジゴラを含めて臨戦態勢で来た全員の中でクイーンギドラのこの態度は完全に異質でおり、妙な空気になってしまっている。
だが、レッドモンスを煽るという作戦は成功であった。この世の全てが自分に支配され、好きにされて当然だと心底信じていたレッドモンスにとって、クイーンギドラのこの態度は最大限の侮辱であった。
『………もういい、交渉は決裂だ』
真っ赤な顔に青筋を立てて、怒りで余計に赤くなった顔を歪め、レッドモンスは眼下の恥れ者の
『殺せェ!!』
殺戮命令を受け、怪獣兵達はギャオオオン!!と咆哮し、荒野を染める死神の列となり、たった二体のジゴラとクイーンギドラ向けて殺到する。
『………来るよ、あいつら』
『そうじゃの』
『一人あたりどれぐらい仕留める?』
『数えるのは面倒じゃ、目についた片っ端からぶち殺せ!』
『オーケィ!!』
クイーンギドラが鷹のように空高く飛び立ち、ジゴラは狼の狩りが如く軍勢に向け突撃する。
2対無数の、絵面だけみればジゴラ側が圧倒的に不利のこの状況であるが、二体の反逆者達が
ギャエエン!!ギャアアン!!
ジゴラの全身は、長い戦いを経て戦うために最適化されていた。どこをどうすれば相手を効率よく破壊できるか、その為に脳と身体が連動する。
まず一体を腹を貫いて殺し、それを盾にしながら相手に突撃。背中から迫る敵に対してはテールハンマーによる粉砕。より広範囲にダメージを与えたいなら、口から吐き出すガンマブレスが役に立った。
キィィーーーロロロロッ!!
クイーンギドラもまた、多人数を相手にした戦いには慣れていた。羽ばたきで起きる重力の嵐は、眼下にいる怪獣兵を吹き飛ばした。
二つの首から放たれる引力光線を四方八方に吐き散らせば、後に残るのは吹き飛んだ怪獣兵のみ。そして勿論クイーンギドラは出来る女性なので、自らの全体攻撃に愛しのダーリン・ジゴラを巻き込むようなヘマはしない。
『どうなっている!?何故たかが二体の怪獣にここまで蹂躙される?!』
『攻撃ができないんです!飛び道具は使えば味方を巻き込みます!』
そして
仮に怪獣兵の一体が口から火を吐いたとすると、間違いなく味方に当たる。その危険性から皆身動きが取れずにいた。
そこをジゴラとクイーンギドラに狩られてゆく様は、さながら某コーエーテクモやバンダイナムコの無双ゲームのよう。
『構うな、やれ』
『し、しかし………!』
『聞こえなかったか?やれ』
しかし、レッドモンスがそんな事を気にするわけがなかった。
彼にとって配下の怪獣兵というのはあくまで駒にすぎない。たとえ死のうが敵を倒せればいいし、従わないなら殺すだけだ。
『う………撃てェ!!!』
ギャオオン!!
怪獣兵達が火を吹いた。そもそも、レッドモンスが怖くて皆従っているのがこの
どっちみち殺されるなら、少しでも生きる可能性が高い方を選ぶだけだ。たとえ、仲間を巻き添えにしようと。
『待て!俺は味方………うわああ!!』
案の定、それは直接二体と戦っている味方を巻き込んだ。炎や光線は味方ごとジゴラとクイーンギドラに直撃し、爆発が周囲を飲み込む。
思わず「やったか!?」と言いそうになるが、そこは仮にも歴戦の戦士たるレッドモンス。これしきで二体がやられるなど毛頭思っていない。勿論次の手に出ようとしたが………
『レッドモンス様!緊急事態です!』
『なんだ貴様、こんな時に!』
血相を変えたゾゲランが駆けてくる。大事な時に邪魔をするなと苛立つレッドモンスであるが、告げられたのは最悪の知らせだった。
『我が
『なんだと………!?』
真っ赤な顔を見開き、レッドモンスは驚愕した。理解ができなかったからだ。
***
しかし、彼らにとってイレギュラーな事があった。それは。
グルガァアーーーーッ!!
再結成された彼らは、グレイトエイプの最大の武器=知恵により石や木、革を組み合わせて作った武器や鎧を身に着けて、主なき
『怯むな!突撃しろ!一気にここを攻め落とせ!』
その先頭で指揮を取るのは、闘技場におけるジゴラのライバルであり、グレイトエイプ達のリーダーであるジャンコング。
かつて惑星ヴォルトに居たという超巨大怪獣の骨を加工して作った棍棒を振り回し、敵を次々と蹴散らしてゆく。
『お、俺たちもいくぞ!』
『そうだ!もう腹ペコは嫌だ!!』
そして
防衛に当たっていた
***
………我々の地球における例を挙げると、例えばミツヒデ・アケチ、例えばヨシフ・スターリン、例えばルイ・シャルル。強大な力を持ちながらも呆気なく破滅した指導者など少なくない。
それらは人間の話であるが、超常の力と知性を持つ怪獣も例外でない。その例の中に、たった今レッドモンスが加わった。それだけだ。
『何故だ………?何故、私が負ける。そんな事は許されん』
しかしそれを認められないレッドモンスは配下の怪獣たちに責任転嫁し、粛清しようと尻尾を振り上げた。
だがそこに、待ったをかけるかのように一体の怪獣が躍り出た。
それは。
『貴様………!?』
『直接顔を合わせるのはこれが初めてだな、レッドモンス!!』
そうジゴラ、ジゴラだ、ジゴラがやってきた。