乙女心は複雑怪奇!?~恋の学園マジカル☆ミラクル~ 作:カオス案山子
【人は必ず誰かを好きになる】
随分昔の話だ。そんなキャッチコピーの同人ゲームがネットを中心に流行っていた。
自分はプレイしたことが無いからそのゲームのことはわからないし知らない。
いや、少しだけ知っている。
[乙女心は複雑怪奇!?~恋の学園マジカル☆ミラクル~]
そんな名前の乙女ゲームだった。
友人の一人がめちゃくちゃおすすめしてきたが、あいにくとその時は時間がなくざっくりとあらすじや評判を調べたくらいだ。
まぁ今となっては殆ど記憶にないが。
あるとすればそのタイトル画面のスクリーンショット。
主人公であろう緑髪女子が儚げに笑みを浮かべている後ろに攻略対象であろう男が数名映っている画像のみ。
あとは特徴的すぎる名前の学校だろうか。
名前は[恋愛城東高等学校]
ウン。まず恋愛なんて名前つけるな。そんな名前の学校一回聞いたら忘れたくても思い出してしまうわ。しかも読み方もそのまんま「れんあいじょうとう」だし。
恐らく創立者は相当疲れていたのだろう。そうじゃなきゃこんな名前でGOサイン出さないだろ。
あとこんな名前の高校出身なんて言ったら将来滅茶苦茶バカにされるだろ。
こんな高校に入学するなんて御免だね。
・・・・・・・・まぁ、今日からここに通うんですけどね畜生。
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自分でもどうかと思うが。
案外この名前の高校に違和感を持つのは俺だけらしい。
しかしながらこの恋愛城東高校……もうめんどいから恋愛高校でいいか。
恋愛高校は中々に評判がいい。地元じゃかなり上位の進学校だ。
それでいて案外入学に必要な偏差値が低い。俺も滑り込み受験でここに入学できた。
この学校に通えることは実はかなり強運なのかもしれない。
そう考えれば今までのネガティブな考えからも少しはプラスに持っていけるのだ。
そう切り替えて入学式を受けているときに、思い出してしまったのだ。
この名前、ゲームで聴いたな。というか髪色派手な奴多いな。あの緑髪どっかで見たことあるな。と。
そこからは早かった。こんなアホみたいな名前の学校、記憶の検索エンジンに一発でヒットしたわ。
ははぁん?これが転生か?
そう思ったがそもそも自分にはそれ以外の記憶というものがない。
もし転生ものならもっとこう……それっぽい特典というか、そういうのがあるだろ。
だが、無い。天才的な頭脳や体力も、滅茶苦茶モテるフェイスも。ない。
ではこれはなんだ?そう考えたときにひらめいた。
これ、前世の記憶って奴か!
とまぁそんなこんなで入学式が終わり今は教室にいるわけで。
しかしこの世界があの乙女ゲームの世界だとするとあの特徴的すぎる緑髪女が主人公というわけか。
…よし、アレとかかわるのはやめよう。
乙女ゲームはプレイしたことないが、主人公と一緒にいるということはそれなりのめんどくさいイベントが起きるはず。
平穏な高校生活を送りたいのなら、アレとはかかわらなければいい。
・・・・・・いや同じクラスの時点でなんか無駄な気がするけど。
出来るだけ、避けていきましょう。
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「はーい皆さん入学おめでとうございます。私はこの1年2組、つまり君たちの担任をする草加 満[くさか みちる]って言います。よろしく」
紫色の髪をした教師、草加先生が黒板に名前を書きながら自己紹介をする。
……やっぱり髪の毛派手だなぁ。あとその胸は何なんですかね。デカい。
こういったところからもこの世界が現実離れしていることを思い知らされる。
「えー、じゃぁ自己紹介してもらうか。おい浅香、お前から順番に」
流れるように自己紹介始まったし。
ぼけっとしながら自己紹介を聞いていくと俺の番がくる
「ハイ次―」
「はい。臼井 玄[うすい げん]です。よろしくお願いいたします」
なるべく普通に。モブっぽい感じでやる。これがかかわらないようにする為の第一歩になるんじゃないかなぁ。なってほしいなぁ。
「はいよろしく。んじゃ次」
「あ、ああ、はい。え、えと、江藤 紅葉[えとう もみじ]です。す。よ、よろ、よろしくおねg、お願いします。」
俺の後ろのコイツ。かなりどもってるが…主要キャラか?んや、こんなやつパッケージにはいなかったと思うが……
そいつの見た目は前髪が目元に軽く被っているくらいのなんと言うかザ・陰キャって感じだな。
それに髪色も普通の黒だし、これはよくあるちょっと特徴的なモブって奴だな。
「……おい」
「は、はい?」
「さっきの自己紹介聞いてたからわかると思うが……俺は臼井、よろしく」
こういう奴が一人でも友人になっていると色々とイベントを避けられるだろう。
それに高校デビュー初日に友人ゼロはちょっと寂しい。
下心こそあれど、こいつとはなんか長い付き合いになりそうだ。
「……ふぇ?あ、あああええと・・・よろしく?」
「何故にクエスチョン???」
「い、いやええと……ち、ちゅうが、中学では友人なんていなかったから……」
ちょっと俯きながら自信なさげに話す江藤。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいだろ。同年代だし、同性だぞ?
「お、おう。いや俺も中学の友人なんていなかったから。アレだな。似た者同士って奴だな。ならなおさらいい友人になれそうじゃないか?」
「え!?……そう、だね。……へへ、親友……」
「段階早くね?」
アレ?初手話掛ける相手間違えたか????
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[乙女心は複雑怪奇!?~恋の学園マジカル☆ミラクル~]
そのゲームに出会ったのは社会人4年目だったか。
色々と理不尽に揉まれて。
現実というものがすべてモノクロに見えていた。
就職をする前までは確かにあったはずの夢も。
いつの日か見えなくなっていた。
いつも死にそうな顔と死にそうな目をして。
働いて、働いて。
働いて働いて働いて働いて働いて働いて……
そんな毎日を過ごしていた。そんなときに。
偶々、SNSで話題になっていたそのゲーム。
目的も、やりたいこともなくなっていた私は。
そのゲームを買ってみた。
プレイした。
そこには「色」があった。
難しいことは言わない。
滅茶苦茶ハマった。
寝る時間も惜しんで攻略した。
何度フラれても。
何度告白されても。
飽きなかった。
普通なら飽きるが、そのゲームは定期的にDLCが販売されたから。
攻略できるヒロイン・・じゃないね。メンズが増える。
最終的には男だけでなく、友人の母親や女教師などもうなんでもありになっていた。
そんな中、突如として公式~アナウンスが来る。
『次回DLCが、このゲームの最終DLCとなります。文字通りこのDLCをもちまして
[乙女心は複雑怪奇!?~恋の学園マジカル☆ミラクル~]は完結となります。長い間プレイをしていただき誠にありがとうございました。どうか最後まで、彼女と彼女を取り巻く彼ら彼女らの物語を暖かく見守りください。』
・・・・・なるほど。
形あるものは何時か終わりが来る。
うん。まぁ買い切りゲームだから。いいんだけど。
とはいえ少し寂しい。
完成度は高いからゲーム的には文句はないが。
いや、一つだけある。
このゲームにおける私の最推し。
そのキャラクターは乙女ゲームなどにおける友人キャラではない。
偶々固有グラがあるだけの意味深キャラ。
キャラ人気はそこそこ。だけどルートが無い。
でも次の最終DLCに収録される!・・・はずだ!!!
……はぁ。
終わった。
終わっちゃった、なぁ……
最後の最後に解放された彼のルートはすごかった。
実は大企業の隠し子だった貧乏男子ルート。
イケメン高身長男装女子ルート。
義理の弟ルート。
本名が「モブ山モブ男」ルート。
みたいなルートはあったが。
「根暗陰キャを育てて最高の彼氏にする」という鉄板がここで来るかぁ!!
うーん。満足。
……不満があるとすれば。
このルートが最後の最後に解放されて。
そこにがっつりとかかわってくる私の最推し。
お前を!!!攻略させろ!!!!
そう何度心で叫んだことか。
だが現実は非常である。
そんなルートは無い。
私は、目的を失った。
また死んだように働く毎日が待っている。
……そんなの嫌だ!
私は、私は!!!
―――――一瞬の浮遊感が体を包む。
眩しい。
あ、電車。
『続いてのニュースです。今朝会社員の女性が駅のホームに立っていた所、女にホームに突き落とされ、列車に轢かれ死亡しました。女はその場で駅員に取り押さえられ、「誰でもよかった」等と供述しており、警察は詳しい経緯などを調査しています』
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そのキャラクターは何もかも知っているようだった。
「えーじゃ次」
もしかしたら、この世界が乙女ゲームだと知っているのかもしれない。
だけど、私はソレも知っている。としたら。
「はい!」
画面の向こう側では捕まえられなかったけど。
「所沢 恋[ところざわ れん]です!よろしくお願いします!!」
今生では捕まえてやる。
この世界が乙女ゲームだと知っている私なら!
あなたを幸せにする!!!
だから!覚悟しておいてくださいね?
なんか主人公っぽい奴にめっちゃ見られてるぅ……
あいつアレだよな。推定主人公ちゃん。
あの緑髪は間違いないだろ。よし。
「アイツとはかかわらないようにしよう」
「絶対堕としてやる・・・!」
皆さんも仕事頑張りましょう。
休みがもっと欲しいよぉ~