恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者 作:エヴォルヴ
明日夢さんと辰巻さんが搬送されたのは、俺が何度もお世話になった大型病院の一つ。ここの病院の長が元戦士で、鵐頼首相の旧友ということもあって間違いなく信用できる病院である。鵐頼首相は旧友であっても日本の子供を傷付ける可能性があるものを切り捨てるからな……今も交流がある病院長の病院なら信用できるというもの。
まぁ、それはそれとして。
「情報を纏めると……だ。明日夢さんと辰巻さんがダンジョンに行って」
「見慣れない武器が刺さっていたので回収しようとして」
「触れたら妙なやつが出てきて死に戻ったと。しかも病院に連れてかれるくらいのダメージ喰らって」
「「はい……」」
俺と素敵なご友人との三人で情報を纏めると、病院のベッドの上で申し訳なさそうにしょぼくれる当事者二人。恐らく戦士が落としていったものとか、朽ちた武器の類だと思って回収しようとしたのだろうが……正直運が悪かったとしか言えないんだよな……
「集合」
その言葉で俺とスクラムを組む形で集合した遥斗と麗良。情報の摺り合わせということもあるが、状況証拠から察した俺の結論が間違っていないかを確かめるための儀式である。
「
「海外で見たし大体そう」
「海外で見たしほとんどそう」
「だよなぁ……」
ゲームであれば、オンラインで死んだプレイヤーの屍鬼を撃破することで装備やアムリタを獲得出来たりしたのだが……この世界ではどうなるのだろう。…………気になるな。
「全ロスコースか……」
「やはり検証か。いつ出発する? 私も同行する」
「陽之輪院」
「実際問題、どうなるのか検証しないとですもんね」
死に戻りしまくっている人間がここにいるわけだが、落としたアムリタはいつも回収していたから、俺のアムリタが屍鬼になったことがないので、俺が落としたアムリタがどうなるのか分からない。分からない状態をそのままにしてトラブルが起きても困るので、検証をしないといけないって思うワケ。ミクトランでテスカトリポカ様も頷いている。
「検証はするとして、一旦解散。明日夢さんと辰巻さん、聞いてもいい?」
「何?」
「所持してたアムリタって回収してある?」
「あ、はい。直接ではありませんが……霊帰の札で、ほとんどは」
「あれかぁ……あれ効果のわりに高いよな……」
「背に腹は代えられぬ、って言うし、仕方ないかなって」
霊帰の札というのは、簡単に言えば死んで落としたアムリタを回収できるアイテムだ。ゲームでは10割回収できたのだが、この世界では総数の約8割しか回収できない。この辺りはフレーバーテキストのせいで割りを喰ったアイテムという感じ。とはいえ、10万のうち8万回収できるとなれば保険にはなる……のか? 道中の怪魔をもう一度ぶち殺しながら回収すれば収支プラスになると思うのだが……まあ、面倒な怪魔がいるダンジョンで落としてしまったのならばそれもやぶさかでないのだけれど。面倒だと思うなら面倒なやつの対策をしないといけないだろうがぶっ飛ばすぞ。
「まぁ、五体満足で良かったよ」
「うん。それで……あれは何だったのかな……?」
「多分、屍鬼でしょう。海外で何度か見ました」
海外だとダンジョンじゃない場所に怪魔がいることが結構ザラにあるために、戦士が死ぬことが結構あるらしい。限定式の死に戻りシステム自体高度な術式なせいで、今でも神様やら神獣やらの力を借りている状態なのだ。しかも結構コストがかかるそうで、百鬼夜行の度に結構なお金が動くのだとか。誰から聞いたかって? 鵐頼首相に聞いたよ。あの人凄いフレンドリー。
「そういえばお二人はどなたですか?」
「あ、そういえば自己紹介してなかったな。陽之輪遥斗です。座右の銘は即死コンボこそ格ゲーの華。よろしく」
「そして私が陽之輪麗良です。好きな言葉は始めよう暴力の世界。よろしくお願いします」
「……もしかしなくても、巡君の同類?」
「大体そう」
「部分的にそう」
「オセアニア的にそう」
「うん、分かりました。間違いなく同類ですね」
お、リンゴの飾り切り上手くいった。見よ、見事な辰巻家の家紋を……花と神獣っていう家紋は五家の共通だったりするのだろうか? 虎成家は薊と白虎、薔薇苑家は薔薇と鳳凰(朱雀)、辰巻家は桜────ウコンザクラなるものらしい────と青龍、三野家は紫陽花と玄武、瑞騎家は菖蒲と麒麟。分家も神獣がないだけで家紋は花。何か決まりでもあるのかしら。
「ところで屍鬼というのは?」
「死に戻りできずにそのまま死んだ戦士が怪魔化する……みたいな感じのやつです。一般人が瘴気に呑まれて怪魔になることもありますが」
「……それって、誰かが死んだってこと? 死に戻りせずに?」
「いや、死に戻りした後アムリタを回収できないでまた死に戻りして、アムリタを全ロストしても出現するみたいだから、日本だとこれが主流じゃねぇかな」
「海外だと違う、と言っているように聞こえますが……」
「そうですね。海外は日本以上に広大で、戦士の母数が少ないです。そのせいもあって、日本で言うところの百鬼夜行が起こる度に結構な数の犠牲者が出てます」
だからこそ、海外からのスカウトが日本国内にたくさん潜んでいるわけなんですよね。
なお、母数が少ない、と言っても日本国内よりも戦士の数はある程度確保されている。ただ、ボス級怪魔相手に臆せず接近戦で戦える戦士が少ない。そういう接近戦ができる人達はネームドで、戦士の特集をやってる雑誌を開けばすぐに名前が見つかる。
とはいえ戦いは数だよ兄貴って言うが、数を揃えても前線を維持できなければ元も子もないのよ。なお、銃の開発が海外じゃ結構進んでいるから、対怪魔用銃弾なんかも作られている。なお費用。やっぱり魔法や弓を使った方がいいじゃんとなるそう。あ、ちなみにこの世界でもちゃんと軍隊とか自衛隊は存在している。怪魔相手ではなく、主に人間相手にはなってしまうが……下手な戦士よりも強いし、指揮系統がしっかりしているし、災害にはどこよりもすぐに動けるので欠かせない存在だ。じゃあ軍や自衛隊を戦士にすればいいじゃないかって? 戦士はとんでもなく食べるんだよね。あと何百人規模でダンジョンに突撃かましても狭すぎてすし詰め状態で終わるので、やるとしても特殊部隊なんだわ。
それはそれとして、海外は百鬼夜行で討ち漏らした怪魔を殲滅するには土地が広すぎる。だから討ち漏らしが大繁殖して大事になるのだ。日本からすれば「どうして百鬼夜行で怪魔を討ち漏らしたらすぐに討伐隊を派遣しないんですか?」って電話猫状態なのだが、海外からすれば「この広大な土地をカバーするには人が足りないんですが?」という状態。だからこそ一人でも多く優秀な戦士を育てる、もしくはどこからか連れてくるっていう思考に至るのも分からんでもない。世界中で戦士の育成に凄い金をかけているし、気を揉んでいるわけだが……日本ほど戦士の質が高い国もないという。精霊、守護霊、神獣、神様含めて加護持ち戦士の母数も多いしな! 世界に広げようとりあえず拝んどけスタイルの輪。時代は八百万の神々だぜ!! 一神教の加護を受けた教会騎士などは間違いなく強いし悪い人達ではないんだが、派遣先で衝突することが多いらしい。日本にも教会騎士はいるけど、そういった話は聞かない。この差はなんだ?
「まぁ、海外の話は置いておいて。今回お二人が出くわしたのは、戦士がロストしたアムリタから生まれた屍鬼だと思われます。怪魔らしからぬ技なんかも使ってきたのでは?」
「あ、うん。確かに。槍を器用に使ってた」
「それと魔法も使っていましたね。あれほどの実力がある戦士が全ロストする、とは考えにくいですが……」
「屍鬼はその姿の元となった人間の真似をする、と言われていますが、ちょっと違います。その人間の装備やスキルから一番強い技を擦ってきます」
「つまりは得意を押し付け続ける怪魔ってことですわ」
ゲームだと操作に反応しているんじゃないかと疑う挙動を見せる屍鬼。この世界では元となった存在が使える技の中で一番強い技を選択してくる怪魔となっているようだ。……つまり、俺の屍鬼は奈落星から超新星を狙ってくるということか……鴨では? カスみたいな量のアムリタしか抱えていない状態の超新星なんてたかが知れているし、奈落星は発動する瞬間が分かりやすいし。そもそもの話、メイン武器が人間相手じゃ使い物にならないやつだからダメージ0だし。ダメージ0の超新星は逆に見てみたいわ。0に何を掛けても0だからね……ダメージを出せずに自爆する情けない姿を見たくないかと言われたら見たいよね。
「えーと、つまり……オートパリィとかしてくるチーターみたいなものってこと?」
「技の出を潰せば動けないのでチーターよりも雑魚です。チートはダメですが」
ま、そんなことは置いておいて……と遥斗と麗良は手を叩き、リンゴを食べている明日夢さんと辰巻さんに真剣な眼差しを向けた。
「「この馬鹿に無茶振りされたらこちらのコールセンターにご連絡お願いします」」
そう言って取り出したのは遥斗と麗良の連絡先が書かれたメモ用紙。柑橘系の香りがするのは恐らく、火炙りすると文字が現れるやつ*1だな?
「できない無茶振りはしないぞ」
「一寸先は闇で二寸先が光と見せかけた闇の無茶振りだろ、騙されんぞ」
「どこまで行っても闇で蜘蛛の糸の如きか細い光を追いかける程度の無茶振りだぞ?」
「もう無茶振りの域超えてるよね!?」
「前から思っていましたが、もっと手心はないんですか、模歩先輩」
「テ=ゴコ=ロ……? そんな神話生物いたっけ」
「きっとミ=ゴの親戚でしょう」
実際問題、俺ができたんだからネームドキャラの皆ができないわけがないはずなんよ。限界の先にある限界のその向こう側にある限界をぶち壊した先にある世界がさ。未来予知ができるジョブを使っている俺が言っているんだから間違いない。未来予知しながらTRPGとか人狼ゲームやると結構面白いぞ。預言者ってこんな気持ちなんだなぁって思えるから。
「ところでご意見箱に新しい依頼来てたんだけど、どうする?」
「ご意見……あ、神様達の?」
久しぶりにご意見箱を確認────天照大御神様から許可を貰った────したら、いくつか手頃な依頼が入っていた。現人神の俺か、豊穣の女神の加護を得ている明日夢さんしか受けられないのが残念で仕方がないくらいの、手頃な依頼だ。
「そそそ。あれだったら俺だけで行ってくるけど」
「あ、じゃあ俺と麗良も行く」
「ん? ……ああ、そういえばお前ら豊穣の女神の加護持ちか」
募集要項的に遥斗と麗良が参加しても問題ないやつだし、こいつら連れて行けばいんだわ。……というか。
「宇迦様、明日夢さんに何か言ってないんです?」
『会う機会もないと思っていましたから……』
『そういうちょっと抜けてるのは変わらないわよね、宇迦は』
メタ的に考えると、前作主人公と今作主人公がエンカウントするなんてことはレアケースって話なのだろう。実際、討魔シリーズで前作主人公と会う際は隠しボス的な立ち位置でしかなかったはず。しかも序盤から挑めるし、報酬がとても美味しいので報酬に目が眩んだ初心者たちが挙って群がり、例外なく全滅してキレ散らかすという討魔の受け継がれし伝統。このゲームのメインシナリオクリアできるくらいのレベルが適正レベルだよって警告文が出るのに、それを無視して挑むのが悪いよね。
次回はお使いクエ